
【日時】2025.8.11(月・祝)15:00開演〜
14:20〜 プレトーク
【会 場】ミューザ川崎シンフォニーホール
【管弦楽】東京交響楽団
【指 揮】原田慶太楼(東京交響楽団 正指揮者)
【出 演】服部百音 (Vn.)※
【曲 目】
①芥川也寸志『八甲田山(1977)』
No. 1 八甲田山(タイトル)す
No. 10 徳島隊銀山に向う
No. 37 棺桶の神田大尉
No. 38 終焉
(曲について)
今年生誕100年を迎えた芥川也寸志(1925 ~ 1989)は、戦後の日本を代表する作曲家のひとり。芥川龍之介の三男として生まれ、出世作となうった『交響管弦楽のための音楽』で大きな注目を集めた。明快な旋律と躍動感あふれるリズムを特徴とした洗練された作風で知られる。
映画音楽や放送音楽の分野でも活躍し、1977年に公開された映画『八甲田山』の
ための音楽は、第1回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞している。森谷司郎監督
によるこの映画は一大ブームを呼び、「天は我々を見放した」の名セリフは当時の流行
語となった。冬の大自然の容赦のない過酷さと、これに立ち向かう人間の弱さが、悲劇的な曲想から伝わってくる。
②バルトーク『ヴァイオリン協奏曲 第2番 』※
演奏者の服部百音さんは略して「モネさん」と以下からは記させて下さい。
(曲について)
ベラ・バルトーク(1881 ~ 1945)は20世紀のハンガリーを代表する作曲家。民謡の収集と研究を通して、民俗音楽と先端的な書法を融合させた独自の作風を築き上げた。ヴァイオリン協奏曲第2番の作曲は1937年から38年にかけて。同じハンガリー出身のヴァイオリニスト、ゾルタン・セーケイのために作曲された。バルトークは当初、この協奏曲を巨大な単一楽章の協奏曲として構想していたが、セーケイの強い要望により現行の3楽章制の協奏曲の形に落ち着いた。初演は第二次世界大戦前夜の1939年3月。ファシズムを嫌ったバルトークは、その翌年にアメリカに移住している。
③ニールセン『交響曲 第4番 op. 29 〈不滅(滅ぼし得ざるもの)〉』
(曲について)
カール・ニールセン(1865 ~ 1931)はデンマークを代表する作曲家。オーケストラの第2ヴァイオリン奏者を16年間にわたって務めた後、作曲に専念し、6曲の交響曲をはじめとする数々の傑作を生み出した。1914年から16年にかけて作曲された交響曲第4番『不滅』は、ニールセンの最高傑作のひとつとして名高い。作品のコンセプトについて、作曲者は「生命の衝動、抑えることのできない生きる意志」を表現したいと述べている。あらゆる生命が持つ根源的な力、生命の不滅性が作品のテーマになっていると考えてよいだろう。
ニールセンの交響曲は、この第4番以降の作品において多調性を採用しており、『交響曲第6番』までの3つの交響曲については基本となる調が記されていない。これは古典的な交響曲のような、基本となる調を設定し、他の調との対比により構成する、という概念を排す意図からである。
【演奏の模様】
演奏本番に先立って、原田さん(指揮者)とモネさん(Vn.独奏)によるプレトークが有りました。お二方の話は、以下の様な多岐に渡るもので、原田さんは、相変わらず明るい調子でソリストにツッコミをかけたのに対して、モネさんは、軽くいなす調子で卒なく答えていました。頭のいい若手Vn.奏者だと思いました。
・ バルトーク協奏曲の選曲理由と演奏上の難しさについて
・演奏曲(作曲者)の選定理由と演奏順について
・ニールセンのシンフォニーの選定理由
・舞台上の楽器配置に関して、特に第2Timp.の配置とその由来、
・二つのTimpの活躍の場について
最後は如何にも原田さんらしく、ミューザ川崎特製の「F.S.M.扇子」を片手に、❝まだ購入されていない方は、ロビーの方に残量がある様ですから記念に是非購入下さい❞と、営業活動も指揮して笑いを誘っていました。休憩時間にはもう売り切れとなっていた。ハラダ営業部長の凄さか!
①芥川也寸志『八甲田山(1977)』
〇楽器編成:フルート2、オーボエ2、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン2、テューバ、ティンパニ、小太鼓、大太鼓、シンバル、ヴィブラフォン、ハープ、ピアノ、 二管編成弦五部14型(14-12-10-8-6)
演奏された四つの楽曲は、映画化された中の音楽で使われています。

・No.1 八甲田山(タイトル):この曲は童謡「月の砂漠」をモチーフにしていて、荒涼とした雪原をひたすら歩く場面を想像して作曲されたそうです。そう言えばリズムが似ているし、旋律の変遷も類似系かな。何となく日本歌謡がバックグラウンドに匂う曲でした。
・No. 10 徳島隊銀山に向う:これも西洋音楽と言うより日本歌謡的匂い芬々の曲で又どことなく延々と続く果てしない行軍的旋律に絶望感が感じられました。楽器違いの類似テーマ奏と言った感じ。
・No. 37 棺桶の神田大尉:美しくも悲しみに満ちた弦楽奏ですが、いつかどこかで聴いた様な旋律、西洋音楽風情。
・No. 38 終焉:この四つの曲の中では一番西洋風味も感じられる味わい深いしっとりした曲でした。弦楽奏のポルタメント奏法が抒情性をいや増しにしていた。非常に短い曲でした。
②バルトーク『ヴァイオリン協奏曲 第2番 』
〇楽器編成:独奏ヴァイオリン、フルート2(第2奏者ピッコロ持ち替え)、オーボエ2(第2奏者コーラングレ持ち替え)、クラリネット(A管)2(第2奏者バスクラリネット持ち替え)、ファゴット2(第2奏者コントラファゴット持ち替え)、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、小太鼓2(スネアあり、なし)、大太鼓、シンバル(合わせシンバルとサスペンディッド・シンバル)、トライアングル、タムタム、チェレスタ、ハープ、二管編成弦五部14型(14-12-10-8-6)
〇全三楽章構成
第1楽章 Allegro non troppo
第2楽章 Andante tranquillo
第3楽章 Allegro molto
確かにこの曲の超絶技巧性は、テクニックだけでなくその変拍子演奏が、管弦楽と如何に齟齬なく溶け合えるかのリズム問題も有り、ソリストはその難しさを十分認識していることを、トークでも語っていました。
第1楽章ではハープのポン、ポン、ポンという和音連打で開始され、ソロVn.が民俗風調べを重音奏を交え情熱的に演奏。後半では四分音(半音のさらに半分の音程)を用いて弾くソロVn.が第1主題の五音音階風から第2主題に至ると12音階の音が総出で繰り出され、目くるめく効果を作り出していました。この演奏では①で使われたPf.の姿は無く、チェレスターがユニークな音をHrp.と共に奏でていました。
第2楽章は内省的な曲で6つの変奏曲が演奏されました。ゆったりと高音を奏でるモネさん、バルトークは管弦楽とソロ演奏の音の配分を(自らは難しいピアノ協奏曲を演奏する腕前のピアニストだったので)熟知していることが、モネさんの弱奏箇所やソロ的演奏箇所では管弦楽の音量が低めの調べとなり、ソリストの難しそうな旋律処理が明確に際立たせていたし、カデンツアまでは行かない迄もソロ演奏のパッセッジでは、やはり管弦の音は控え目でした(これはこの協奏曲を熟知している原田さんの差配なのかも知れませんが)
第3楽章は第1楽章の自由な変奏といった感がする、目まぐるしい変化とオケ対ソロの強弱の錯綜する演奏でした。はっきり申して、第1と第2楽章のソロ演奏は、若干迫力に満ちないか弱さを感ずる時もまま有りましたが、最後の3楽章が一番出来が良かったと思います。重音奏も迫力満点、ハーモニクス音に至る高音も美しく発音していたし、こんなに長く難しい演奏をして、まだこれだけ弾けるのか?と感心する程の力強い圧巻の演奏を見せて呉れました。終わりよければ全て良しで、モネさんの演奏は初めて聞いたのですが、最後の楽章の演奏により、印象は極めて良いものになりました。

尚、ソリストアンコール演奏が有りました。
《ソリストアンコール曲》ファジル・サイ『クレオパトラ』から
全々聴いたことのない曲でした。ファジル・サイはトルコのピアニスト兼作曲家でジャズも手掛ける模様。
モネさんは自らのPizzicatoを合の手に、次々と旋律を混じえたモザイク画の様な調べを、ゆっくりと静かに繰り出し、かなりの高等技術と思われる演奏を披露しました。会場には、本演奏の時と同じ様に大きな歓声、拍手が飛び交いました。
③ニールセン『交響曲 第4番 op. 29 〈不滅(滅ぼし得ざるもの)〉』.
〇楽器編成: フルート3(3番はピッコロ持ち替え)、オーボエ3、クラリネット3、ファゴット3(3番はコントラファゴット持ち替え)、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ2人、弦楽五部14型(14-12-10-8-6)
この曲は、原田さんのトークにも有りました様に、全体的にかなり❝うるさい❞位の曲でした。
〇単一楽章による作品ですが、4つの部分から構成されていました。
第1部は輝かしく緊迫感あふれる第1主題と、のびやかな第2主題が対照をなし、
第2部は穏やかで牧歌的に推移し耳を劈くヴァイオリンの叫びとともに第3部へ移行。
第3部での、弦楽器の輝かしい高速パッセージを経て、
最終第4部では高らかな凱歌が奏でられました。ここで初めて二つ目のTimp.が演奏し、1Timp.と2Timp.による掛け合いは強烈なものが有りました。この曲最大の見せ場と言っても過言でないでしょう。
最後は第1部の第2主題が回帰し、壮大なクライマックスを迎え終了したのでした。
尚、プレトークで原田さんが語っていた様に、演奏が終わって各グループの起立・礼が一通り終わると、原田さんは、再度袖から戻ると直ちに指揮台に上がり、アンコール演奏を始めました。
《アンコール曲》山本直純『好きです川崎愛の街』
原田さんの勢いある指揮に、管弦楽団も調子を上げ、会場からの手拍子もあり、ノリノリの将にフィナーレに相応しい雰囲気を十二分に発揮した、原田・東響の演奏でした。
初めて聞きましたが、こんなに楽しい曲を作っていたとは、如何にも直純さんらしいと思いました。
大入りの会場は、「これで今年のF.S.M.も終わった」という満足感からか、大いに興奮、大拍手と歓声が長時間続いたのでした。
