HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

東京春祭「マノン・レスコー(演奏会形式)」(東京文化会館初日)を聴く

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【日時】2026年4月16日 [木] 18:30〜

【会場】東京文化会館 大ホール

【管弦楽】読売日本交響楽団

【指揮】ピエール・ジョルジョ・モランディ

〈Profile〉

    ミラノ・スカラ座管弦楽団の首席オーボエ奏者を10年間務めた。ミラノのジュゼッペ・ヴェルディ音楽院で作曲を学び、ザルツブルク・モーツァルテウムでフェルディナント・ライトナーに指揮を学んだ。スカラ座にいた数年の間に、リッカルド・ムーティ、続いてジュゼッペ・パターネのアシスタント指揮者となり、そこで様式的なイタリアのレパートリーを洗練させ、イタリア・オペラの伝統のあらゆるコツを掴む多くの経験を得た。

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【合唱】新国立合唱団合唱団

【合唱指導】富平恭平

【出演歌手】
◯マノン・レスコー(ソプラノ):

イヴォナ・ソボトカ

〈Profile〉

ベルギーの「エリザベート王妃国際音楽コンクール」で優勝したポーランド出身の国際的ソプラノ歌手です。ベルリン・フィルなど世界的なオーケストラや指揮者と共演し、特に『ラ・トラヴィアータ』のヴィオレッタや『ラ・ボエーム』のミミ役で知られる、表情豊かでパワフルな歌唱が特徴です。  
主な特徴と活動:
輝かしい受賞歴: エリザベート王妃国際コンクール、ワルシャワ・ポーランド芸術歌曲コンペティション、ニューヨークのイースト&ウエスト・アーティスツ国際オーディションで第1位を獲得。
国際的な活躍: パリ・オペラ座でデビューし、バイロイト音楽祭やシュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭など主要な音楽祭に出演。著名指揮者との共演: サー・サイモン・ラトル指揮のベルリン・フィルや、リッカルド・ムーティとの共演実績がある。日本での活動: 「東京・春・音楽祭」のプッチーニ・シリーズなどで来日し、タイトルロールを演じている。 


◯レスコー(バリトン):

ルーチョ・ガッロ

〈Profile〉

イタリア・ターラント生まれ、トリノのジュゼッペ・ヴェルディ音楽院を優秀な成績で卒業。
レパートリー: ヴェルディ(『オテロ』ヤーゴなど)、プッチーニ(『マノン・レスコー』レスコーなど)、ヴェリズモ作品。イタリア人には珍しく、ワーグナー(『さまよえるオランダ人』)やベートーヴェン(『フィデリオ』ピツァロ)も歌う。
主な共演: クラウディオ・アバド、ダニエル・バレンボイム、ズービン・メータなどの著名指揮者と共演。日本での活動: 東京・春・音楽祭のプッチーニ・シリーズなどで来日し、その実力を見せている。  


◯デ・グリュー(テノール):

リッカルド・マッシ

〈Profile〉

 歌唱の魅力: スピント・テノールとしての芯のある声と、甘く艶のある音色を併せ持つ。 瑞々しい声で高音のパッサッジョが非常に自然、と評されている。  
「これぞイタリアのテノール」と称される安定感のある歌唱で、マノンへの情熱的な愛を表現しています。 


◯ジェロンテ(バス・バリトン):

湯浅貴斗

〈Profile〉

 奈良県出身。大阪音楽大学卒業。同大学院声楽研究室オペラ系修了。新国立劇場オペラ研修所第22期生修了。第3回ジュディッタ・パスタ記念熊本復興国際オペラ歌手コンクール第2位等受賞。
これまでにオペラでは、新国立劇場オペラ研修所公演にてP.チャイコフスキー《イオランタ》レネ王役、D.チマローザ《悩める劇場支配人》ドン・クリソーボロ役(日本初演)、W.A.モーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》レポレッロ役などを演じ、修了後は関西を中心に活動。関西歌劇団公演にてJ.マスネ《サンドリヨン》パンドルフ役、F.チレア《アドリアーナ・ルクヴルール》ブイヨン公爵役、P.マスカーニ《カヴァレリア・ルスティカーナ》アルフィオ役、E.ヴォルフ=フェラーリ《イル・カンピエッロ》アストルフィ役、東大阪文化創造館 G.ビゼー 《カルメン》ズニガ役、にしのみやオペラ M.ラヴェル《スペインの時》ドン・イニーゴ・ゴメス役などに出演。

 

◯エドモンド(テノール):

大槻孝志

〈Profile〉 


◯旅籠屋の亭主/弓兵(バス・バリトン):

ジョン ハオ

〈Profile〉


◯舞踏教師/点灯夫(テノール):

糸賀修平

〈Profile〉

 武蔵野音楽大学卒業。同大学院および新国立劇場オペラ研修所修了。文化庁在外研修員として渡伊、その後ロームミュージックファンデーション音楽在外研究生としてドイツにて研鑽を積む。第1回エンツォ・ソルデッロ国際コンクールで入賞し、《セビリアの理髪師》アルマヴィーヴァ伯爵役を獲得。イタリア・クーネオでも同役を演じた。新国立劇場での活躍も目覚ましく、《フィガロの結婚》、《死の都》、《サロメ》、《蝶々夫人》、《ファルスタッフ》、《ウェルテル》、《トゥーランドット》、《カルメン》、《トスカ》、《ピーター・グライムズ》、高校生のためのオペラ鑑賞教室・ロームシアター京都公演《魔笛》タミーノ等出演。また、ロームシアター京都杮落し公演《フィデリオ》ヤッキーノ、藤原歌劇団《ランスへの旅》騎士ベルフィオーレ、あいちトリエンナーレ《魔笛》タミーノ、二期会《こうもり》アルフレード、C.ミョンフン指揮東京フィルハーモニー交響楽団《蝶々夫人》ゴロー、東京・春・音楽祭《トゥーランドット》ポン、セイジ・オザワ松本フェスティバル《フィガロの結婚》クルツィオ等多数出演の他、近年、2024年二期会《コジ・ファン・トゥッテ》フェランド、25年全国共同制作オペラ《愛の妙薬》ネモリーノ等で活躍。地域創造公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)登録アーティスト。東京藝術大学非常勤講師。二期会会員

 ※当初出演を予定しておりました舞踏教師/点灯夫役の澤武紀行は体調不良により出演ができなくなりました。代わりまして糸賀修平が出演いたします。

 
◯音楽家(メゾ・ソプラノ):

林 眞暎

〈Profile〉

 横浜市出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。卒業時にアカンサス音楽賞、同声会賞受賞。同大学大学院音楽研究科独唱専攻修了。サントリーホール オペラ・アカデミー アドバンストコース修了、ジュゼッペ・サッバティーニのもと研鑽を積んだ。
故児島百代、永井和子に師事。ミラノにてソニア・プリーナ、セレーナ・ファルノッキアに師事。

メゾ・ソプラノのみならず、世界でも数少ないコントラルト歌手として活躍し、バロックからロマン派まで幅広いレパートリーを得意とする。
2016年バート・ヴィルトバート・ロッシーニ音楽祭(ドイツ)において《オリー伯爵》ラゴンド役、《マルシコ伯爵》伯爵夫人役で欧州デビュー後、ブッセート・ヴェルディ歌劇場《イル・トロヴァトーレ》アズチェーナ役、ピアチェンツァ市立歌劇場世界初演《オペラ・ミニマ》エラト役、マスカーニフェスティバル(イタリア)《カヴァレリア・ルスティカーナ》ルチア役、2021年サントリーホール・オペラにてルイゾッティ指揮《椿姫》フローラ役、柴田眞郁指揮ひろしまオペラルネッサンス《フィガロの結婚》マルチェッリーナ役、カウナス城オペラフェスティバル(リトアニア)で吉田裕史指揮《蝶々夫人》スズキ役など国内外のオペラに多数出演するほか、井上道義指揮 読売日本交響楽団とのマーラー:交響曲第二番《復活》、新日本フィルとのマーラー:第三番、佐渡裕指揮 新日本フィルとのベートーヴェン:《第九》に出演。
令和元年度文化庁新進芸術家海外研修員。バッハ・コレギウム・ジャパン声楽メンバー。


【合唱】新国立劇場合唱団
【合唱指揮】冨平恭平

【演目】プッチーニ:歌劇《マノン・レスコー》(全4幕/イタリア語上演・日本語字幕付)

【上演時間】全四幕

第1幕 18:30 – 19:10(約40分)
第2幕 19:10 – 19:55(約45分)

          《休憩 》                 (20分)

第3幕 20:15 - 20:40 (約25分)
第4幕 20:40- 21:05  (約25分)

計       約2時間35分      ( 約155分)

 

【粗筋】

《第一幕》
    フランスのアミアンにある宿屋の広場で、若き騎士デ・グリューが友人たちと談笑している。兄レスコーに連れられ、修道院へ向かうマノン・レスコーの姿を一目見たデ・グリューは、その美しさに心を奪われ、マノンが一人になった隙に愛を告白する。
マノンと別れたあと、デ・グリューは彼女の面影を胸に、ロマンティックなアリア〈①なんと素晴らしい美人〉を歌う。甘く流麗な旋律に若々しい情熱が溢れている。
しかし、この出会いを見た好色な老富豪ジェロントもマノンの美しさに目をつけ、兄レスコーを買収し、マノンをパリへ連れ去ろうと企む。計画を知ったデ・グリューは、マノンに真実の愛を訴え、二人は熱い二重唱を交わす。そしてパリへと駆け落ちするのであった。


《第二幕》
デ・グリューとの貧しい暮らしを見限ったマノンは、兄レスコーの手引きにより、ジェロントの豪華な邸宅で愛人として暮らしていた。しかしマノンの心は満たされず、有名なアリア〈②華やかに着飾っても(柔らかなレースの中で)〉を歌う。
このアリアにはプッチーニらしい繊細な心理描写が光っている。
そこへデ・グリューが現れ、マノンの裏切りを激しく非難するが、マノンもまた彼への愛を忘れられない。デ・グリューはすべてを許し、〈③愛の二重唱いとしい 方〉を歌う。ここはオペラ全体のクライマックスの一つであり、音楽は官能的な高揚を見せる。
しかし、二人が抱き合っているところへジェロントが帰宅。忘我のマノンはデ・グリューの制止も聞かず、宝石類を持ち逃げしようとするが、ジェロントの通報で逮捕されてしまう。


     第 二幕と第 三幕の間には、プッチーニの音楽の中でも名高い〈④間奏曲〉が演奏される。痛切なまでの悲み、デ・グリューの苦悩、そして二人の悲劇的な運命を、激情的な管弦楽の響きによって描き出す。


《第三幕》
早朝のル・アーヴル港で、マノンは他の女囚たちとアメリカ行きの船を待っている。デ・グリューは彼女を救おうと試みるが失敗。乗船が始まり、マノンの番が来た時、デ・グリューは彼女と引き離されるくらいなら死んだほうがましだと、アリア〈⑤ご覧ください、狂った僕を〉を歌う。デ・グリューは、自分もアメリカへ連れて行ってほしいと船長に懇願し、特例として許可される。


《第四幕》
アメリカに渡った二人だが、再び問題を起こし、追われる身となった。ニューオーリンズ近郊の広大な荒野をさまよい、疲労困憊したマノンはついに力尽き、倒れ込む。必死に水を探しに行くデ・グリューの姿が見えなくなり、取り残されたマノンは、死の恐怖と絶望に襲われ、最後のアリア〈⑥ひとり寂しく〉を歌う。自らの運命を呪い、デ・グリューへの愛を振り絞るように歌う姿が、聴く者の胸を打つ。
戻ってきたデ・グリューの腕の中で、マノンは「自分は死んでも愛は死なない」
と口にして、息絶える。愛する人の亡骸の上でデ・グリューは崩れ落ちる。

 

【演奏の模様】

    オペラはこれまで様々な演目を観て来ましたが、「マノン」は久し振りに観ました。アベ・プレヴォの有名小説をオペラ化した全 4 幕からなる歌劇《マノン(・レスコー)》は 1893年の初演。騎士デ・グリューと魔性の美少女マノン・レスコーの破滅的な恋愛を描いた悲劇で、プッチーニの出世作となったものです。

◯楽器編成 :ピッコロフルート2、オーボエ2、コーラングレクラリネット2、バス・クラリネットファゴット2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、バス・トロンボーンティンパニトライアングルスネアドラムタムタム大太鼓シンバルグロッケンシュピールチェレスタハープ、その他バンダのフルート、コルネット、鐘、ドラム、

三管編成弦楽五部14型( 14- 12-10- 8-6)

◯合唱団の規模:男声(約26人)∔女声(約30人)=約60人程

 

《第 一 幕》

アミアンで

パリ門のところの大きな広場 右手に並木道 左手にはポーチのある宿屋 ポーチの下には客のためのいくつかのテーブルがある 外には小さな階段があり宿屋のニ階につながっている 学生たち 小市民 農民 娘たち、兵士たちは広場や通りをぶらついている 他の者たちはグループになって会話している その他の者たちは、テーブルに座って飲んだり賭けをしたりしている。

 冒頭、管打の音が混じる管弦楽の軽快な速い調べが、にぎにぎしい街の情景を表現しました。舞台上手から二人の男性(エドモンドとデ・グリュー)が指揮台の方に登場し、エドモンド(大槻)が歌い始めました。

【エドモンド】
(ふざけたようにセンチメンタルに)
ようこそ 素晴らしき夜よ 降り来たるそよ風と星たちの一団を伴って
ようこそ 詩人と恋する者たちに愛しい夜よ…

【学生たち】
ハハ!ハハ!ハハ!
泥棒たちに酔っ払いにもな!
俺たち君のマドリガルを台無しにしたかな!

        〈〜中略〜〉

デ・グリューが入ってくる

【学生たち】
デ・グリューだ!

【エドモンド】
(あいさつだけで友の仲間に加わろうとしないデ・グリューを引きとめて)
ぼくらの中に君も入らないか 友よ そして笑おうそして君も魅力に身を任そう無謀な冒険の
(デ・グリューに仲間に加わるように主張して)
答えてくれないのか?なぜだ?多分
手の届かぬ女性への熱い想いが君を苦しめているのだな?

        〈〜略〜〉

 マノン・レスコーに話しかけて名前を聞いたデ・グリュー、その美しさに雷に打たれた様な彼は、夕刻又この場所に来てくれる様に頼み、遂にはOKを取って有頂天となったデ・グリュー、その気持ちをリッカルド・マッシは感激して歌ったのでした

①〈なんと素晴らしい美人〉

DES GRIEUX
❝Donna non vidi mai simile a questa!A dirle: io t'amo,a nuova vita l'alma mia si desta.
Manon Lescaut mi chiamo!Come queste parole profumate mi vagan nello spirto e ascose fibre vanno a carezzare.O sussurro gentil, deh! non cessare! …Manon Lescaut mi chiamo!Sussurro gentil. deh! non cessar! (こんな(美しい)女性を僕は今まで見たことがない!あなたに告げたい 愛していると新しい人生がこの魂に目覚めたのだ 「マノン・レスコーが私の名前です」あの言葉が香り立って私は心の中に残っているのだ そしてこの全身を震わせる おお優しいささやき、ああ!止まないでおくれ!…「マノン・レスコーが私の名前です」優しいささやきよ ああ!止まないでおくれ!)❞

 最初から大槻さんのエドモンド役の立派なテノール、それに輪をかけた様なリッカルド・マッシの伸びやかなテノールの競演に、(加えるにまだ短い出番ですが、本格ソプラノの予感がするマノン・レスコー役ソボトカ)今日のオペラの素晴らしさの予兆を感じた歌い振りでした。マッシに拍手が出そうな雰囲気でしたが、すぐに管弦楽が音を出してそれは不発に終わりました。


《第 二 幕》

②〈華やかに着飾っても(柔らかなレースの中で)〉は、2022年7月に、東京文化会館でのソニア・ヨンチェヴァ(ソプラノ)のリサイタルで聴いたことが有り、その時は、プログラム演奏とアンコール演奏とで、都合2回聴きました。その時の記録に次の様に記しました。

❝ヨンチェバの歌うマノン・レスコーは、アンコールで歌われた方が完璧だと思いました。全く完全性を備えた安定したこの様な歌い振りを他で聞いたことは記憶にない程。❞

    この曲は、古来ソプラノのディーヴァが歌ってきて、特にマリア・カラスの録画が残っていますが、確かにカラスは一世を風靡した歌姫だけあり、さすがだなとは思います。しかし少し時代が古い歌い方の様に思えて、自分にとってはヨンチェバの歌唱の方が、しっくり受け入れられました。

 今回のマノン役は、イヴォナ・ソボトカ、彼女は上記〈Profile〉にある様に活躍めざましいソプラノで、今回初めて聴きましたが、その歌い振りは、将に久しぶりに聞く本格イタリアオペラのソプラノ歌手そのものといった感がありました。

❝金色の床の間のあの柔らかなレースの中に、氷の様な死の沈黙がそこにあって、その冷たさが私を凍えさせます。そして私は、ずっと慣れてきたのです、あの官能的な愛撫に。熱い唇と燃え立つ腕の 今私はまるで違うものを持っているのよ。おお渡しの粗末な家よ お前は私の前に再び現れる。明るい ふたりだけの白い家。平穏と愛の甘い夢の様に❞

 この最初の第一声は、立ち上がりに歌ったせいか、しかも昔から世界のトッププレイヤーが歌い継いで来た名歌のためが故の緊張感からなのか、少し歌が硬く感じられました。

 

 ③〈愛の二重唱いとしい 方〉


(デ・グリューがドアのところに現れる マノンは激しく動揺して彼を迎えに駆け寄る)
あなたなの あなたなのね 愛する人?あなたなのね!
ああ!私の限りない愛?…神さま!

【デ・グリュー】
(非難するように)
ああ、マノン!

【マノン】
(動転して)
あなたは私を愛してないの
もう今となっては?
あんなに私を愛してたのに!
ああ あの長いキス!ああ あの長い陶酔!
かつてあなたの甘い恋人だった女は待っているわ
あなたの復讐を
ああ そんな風に見ないで そんなではなかったわ
あなたの眼差しは
とても厳しい!

【マノン】ああ来て!
マノンはあなただけが欲しいの!
来て そのあなたの腕で
あなたを愛しているマノンを固く抱いて!

【デ・グリュー】
あなたの瞳の奥底に
僕は自分の運命を読む
この世のすべての宝物は
あなたの聖なる唇の中にある!

【マノン】
ああ!マノンはあなただけに焦がれています
あなたの胸でしっかりと抱いて!
私の憧れのもとに戻ってください
ああ!また再び!
これが私のくちづけなのよ!
これは私の愛なのです!
命とあなたへの陶酔が
私の心の上に!
ああ!また再び!
ああ!命とあなたへの陶酔が
私の心の上に…
私の口は祭壇なのです
そこにするくちづけは神なのです!

【デ・グリュー】
これがあなたのくちづけなのだ!
これがあなたの愛なのだ!
あなたのくちづけは僕を燃え立たせる
素敵な恋人よ!
あなたの中に僕は再び酔いしれる
素敵な恋人よ!
あなたの愛しい腕の中には
快楽と忘却があるのだ!

(マノンはソファにじっと座っていたデ・グリューの腕の中へと飛び込む)

 この辺りになると、タイトルロールも相方も喉が潤ってきたのか、二人共素晴らしい歌い振りで、解除湯からは大城は拍手喝采、歓声が飛び交っていました。

 

④『歌劇マノン・レスコー間奏曲 』

〈間奏曲〉では、罪人となったマノンと彼女を救いたいデ・グリューの思いが甘美な旋律で描かれました。

 この曲は、オペラの第三幕に差し掛かる直前に演奏されました。Vc(1=主席)の深い低音のソロ演奏の音で始まり、引き続きVa.(1)のソロがこれを引き取り、良く鳴らしているVa.主席、相当うまい演奏です。Hp.の音も聞こえる、全弦楽アンサンブルの強奏が入ると金管やTimp.がそれを煽り、さらにFl.とHp.が続いて演奏、Vn.アンサンとVc.アンサンとの掛け合いも面白い。 後半では流麗な流れに弦楽奏が載って美しいアンサンブルを響かせました。

 

《第三幕》 

⑤〈ご覧ください、狂った僕を〉 


デ・グリュー】
(絶望のあまり興奮して脅すように)
ああ!誰も僕から奪えないぞ!
僕が生きている限り彼女を
僕から引き裂くことはできないんだ!…
(艦長を見て感情が爆発し すすり泣きながらマノンに腕を伸ばして)


そうさ!僕は狂ってるさ!
(艦長に)
見て下さい
僕は狂ってる 見て下さい
僕が泣いて頼む姿を…
僕が泣いて頼む姿を ご覧ください
どれほど憐みを求めているのかを!…

デ・グリュー役のマッシは、パバロティー他の三大テナーには及びませんが、久し振りに聴く本流感の有るイタリアオペのテノール、特に高音の伸びやかさは本物で、素晴らしい満足感のある出来でした。

 

《第四幕》

 この最終幕の最終場面で歌われる二人の境遇は、将に灼熱地獄の米国の砂漠だったのです。前楽章で、マノンの島流しとも言える、未開国、米国送りに、一緒に行きたいと懇願して米国行きを認められたデ・グリュー、数年たって結局逃げ惑う二人に降りかかったのは、灼熱の砂漠地帯だったのでした。食べ物は何もない、草、虫さえもいない、水もないのです。口に出来るのは皆無。こうした生き地獄に導いたのはやはり神の思し召しなのでしょうか。静かな弦楽奏序奏の流れる中を今にも倒れんばかりのマノンが最後の力を振り絞って歌いました。

⑥〈ひとり寂しく〉

❝Sola,perduta,abbandonata in landa desilata! Orror!Intrno a me. s’oscira il Ciel Ahime,sin sola! E nel profondo, deserto io cadi,strazio crudel,io,la deserta dona! Ah!non vogly.No! non voglio morir! Tutto dunque e finito.    (ただ一人絶望し見捨てられているわ この寂しい荒野に 恐いわ!私のまわりで 空が暗くなっていく ああ、私は一人!そしてこの深い砂漠で私は死んでいくのね。残酷な苦しみ、ああ!ひとり捨てられて)私は見捨てられた女!私は死にたくない!すべてがもう終わったのね)❞

 Ob.のソロ音が寂寞感をいや増し、時々の空白(G.P.)が死の予感を膨らませました。最後の最後、息をも絶え絶えの筈ですが、タイトルロールのソボトカは、『一人寂しく』を素晴らしい情熱的な、心から張り裂けんばかりの熱唱で歌い絶命するのですが、それはそれでいいと思いました。命ある限り、命の叫びと見ました。ヴィオレッタの死に床の息も絶え絶えの歌唱とは違っていいと思います。大砂漠地獄をも何ものぞとする、その生に対する執念、凄いですね。少しは見習おうかな?

 

   この『マノン』の基となったプレヴォーの小説は枠構造をしています。枠構造とは、小説の中心をなす物語の外に、物語が語られる状況が付け加えられている構造を指します。同じ様な他の例として、オペラ『La traviata』の基となったデュマ・フィスの小説「椿姫」。これはやはり「椿姫と呼ばれた女性の記憶・物語を枠内物語として述開する男性の話」を枠としているのです。しかも面白いことには、この二つの有名オペラは、その原作を通じて関与というか関係性があるのです。それはオペラでは演出されていませんが、原作の「椿姫」の中に、主人公のマルグリット・ゴーチェが「マノン・レスコー」の本を手に取る場面があるのです。アヴェ・プレヴォーが「マノン・レスコー」を書いたのは1731年、デュマ・フィスが「椿姫」を書いたのは1848年、小デュマにとっては実に百年以上の前の古典だったのですね。当時、「マノン・レスコー」はフランばかりでなく欧州諸国で良く知られた有名小説だったと言えるでしょう。因みにヴェルディがデュマ・フィスの物語を基礎として「La traviata」を作曲したのが1853年、プッチーニが、アヴェ・プレヴォーの小説を基に「マノン・レスコー」を作曲したのは1893年、「La travia-a」の40年も後なのです。プチーニはヴェルディに対抗意識を持っていたのかも知れません。(勿論プレヴォーの1731年~プッチーニの1893年の160年程の間、他の作曲家が「マノン」の物語をオペラ化しなかったかと言うとそんなことは無くて、マスネ(仏)がこの題材でオペラコミック『マノン』全五幕を作曲し、1884年パリ・オペラコミック座で主演されています。)

(合唱団)

 

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(兄レスコー役ルーチョ・ガッロ)強さの有るバリトンで存在感大

 

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