〜若き精鋭たちが舞うバレエ名曲選〜

【日時】2025.7.29(火)18:30〜
【会場】ミューザ川崎シンフォニーホール
【管弦楽】洗足学園ニューフィルハーモニック管弦楽団
【指揮】キンボー・イシイ
〈Profile〉
ドイツ・シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州立劇場の音楽総監督。
幼少期を日本で過ごし、ヴァイオリンを風岡裕氏に学ぶ。12歳で渡欧、ウィーン市立音楽院にてヴァイオリンをワルター・バリリ、ピアノをゲトルッド・クーバセック各氏に師事。
1986年に渡米、ジュリアード音楽院にてドロシー・ディレイ、ヒョー・カン各氏のもとで研鑽を積むが、左手の故障(局所性ジストニア)のためヴァイオリンを断念、指揮に転向する。 小松長生、マイケル・チャーリー、小澤征爾の各氏に指揮法を師事。またマネス音楽院にて楽曲分析及び作曲法を学び、当院よりジョージ&エリザベス・グレゴリー賞を受賞する。1993年、1995年のタングルウッド音楽祭に奨学生として参加し、小澤征爾をはじめサイモン・ラトル等に師事。1995年、デンマークで開催されたニコライ・マルコ国際指揮者コンクールで4位に入賞。
これまでにボストン響とニューヨーク・フィルの定期演奏会、及びタングルウッド音楽祭にて小澤征爾、サイモン・ラトル、ベルナルド・ハイティンク等各氏の副指揮者を務めた。また、ベルリン・コミッシェ・オーパー(KOB)首席カペルマイスター、大阪交響楽団首席客演指揮者などを歴任。KOB では、オペラ『フィガロの結婚』『トゥーランドット』『金鶏』などを指揮、オーケストラ・コンサートでも質の高いパフォーマンスを披露した。
19年シーズンまで音楽総監督を務めたマクデブルク劇場では、『後宮からの逃走』『コジ・ファン・トゥッテ』『魔弾の射手』『マクベス』『仮面舞踏会』『ラ・ボエーム』『蝶々夫人』『トスカ』『さまよえるオランダ人』『トリスタンとイゾルデ』『薔薇の騎士』『メッシーナの花嫁 (ドイツ初演)』『死の都』『サロメ』『ワルキューレ』等のプレミエを指揮。
客演指揮者として、ドレスデン・フィル、ドイツ室内管、アウグスブルク歌劇場管、ボストン響室内管弦楽団、上海響、台湾国家響等を指揮。
日本においては、N響、都響、読響、名フィル、札響等を指揮。オペラでは、びわ湖ホール・オペラビエンナーレ『フィガロの結婚』、関西二期会『魔弾の射手』を指揮。草津国際音楽祭出演。
2010年、「第9回斎藤秀雄メモリアル基金賞」指揮者部門受賞。賞金は、次世代の音楽家育成に貢献したいという当人の意向により、ジュニア・フィルハーモニック・オーケストラに全額寄付された。
【出演】
〇ヴァイオリン:物集女(もづめ)純子
〈Profile〉
洗足学園音楽大学の教授であり、日本橋交響楽団のコンサートマスターも務めている。ジュリアード音楽院を卒業し、同音楽院大学院修士課程、およびプロフェッショナル・スタディーズも修了しています。
これまで海野義雄、ドロシー・ディレイ、川崎雅夫、水野佐知香、フェリックス・ガリミア、ポール・ズコフスキー各氏に師事。
また、ジュリアード・オーケストラやウエストチェスター交響楽団のコンサートマスターも務めました。近年では、ロシア各地のオーケストラに客演しており、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を共演しています。
〇バレエ:洗足学園音楽大学バレエコース
(協力:谷桃子バレエ団、東京シティ・バレエ団、牧阿佐美バレヱ団)
【曲目】
ⅰ.ボロディン:歌劇『イーゴリ公』から<だったん人の踊り>
(曲について)
ロシアの作曲家アレクサンドル・ボロディンが作曲したオペラ『イーゴリ公』の第2幕に含まれる曲で、ボロディンの最も有名な曲のひとつであり、またクラシック音楽でも有数の人気曲である。
ⅱ.プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調 op. 19 〜星の王子さま〜
(曲について)
1917年にかけて作曲されたプロコフィエフ最初のヴァイオリン協奏曲。初演は1923年10月18日にパリのオペラ座にてマルセル・ダリュー(英語版)のヴァイオリン独奏とセルゲイ・クーセヴィツキー指揮パリ・オペラ座管弦楽団による。このときは全く作風の異なるストラヴィンスキーの八重奏曲が同時に初演されており、その影響で、歌謡的性格が強いこの楽曲の初演は必ずしも成功ではなかったが、今日ではプロコフィエフの協奏的作品の中で最も愛好される作品の一つになっている。イーゴリ・ストラヴィンスキーは概してプロコフィエフの作品に好意的でなかったものの、この作品については褒めた。カロル・シマノフスキとアルトゥール・ルービンシュタインはこの作品の上演に接した後、感極まって楽屋に作曲者を訪ねたという。
ⅲ.ラヴェル:マ・メール・ロワ
(曲について)
バレエ版
テアトル・デザール(芸術劇場)の支配人、ジャック・ルーシェ(Jacques Rouché)からの依頼により、1911年から翌1912年初頭にかけて編曲。曲順を入れ替え、新たな曲(前奏曲、紡車の踊り、複数の間奏曲)を付け加える形で編曲された。初演は1912年1月28日、ラヴェル自身の台本、ジャンヌ・ユガール夫人の振付、ガブリエル・グロヴレーズの指揮による。バレエ版は依頼主のジャック・ルーシェに献呈された。演奏時間は約27分。
【上演の模様】
(1)ボロディン『歌劇イーゴリ公から〈だったん人の踊り〉』
「だったん人の踊り」は「ポロヴェツ人の踊り」とも呼ばれ、帝政ロシアの作曲家アレクサンドル・ボロディン (1833~1887)の未完のオペラ「イーゴリ公」の第 2幕(版によって異なる)のバレエ場面です。作曲家の死後、リムスキー=コルサコフとグラズノフが楽譜をまとめて完成させ、1890年サンクトペテルブルクで初演されました。振付は、「くるみ割り人形」などの振付で知られるレフ・イワーノフ。
オペラの舞台は12世紀。キエフ大公国のイーゴリ公が、遊牧民族のポロヴェツ人の侵略を防ぐため遠征し、囚われの身となったのですが、無事に帰還する物語です。バレエは、 ポロヴェツ人の首領コンチャク汗 (ハン)がイーゴリ公を踊りの饗宴で盛大にもてなす場面です。異国情緒溢れる音楽と振付けによる舞踊でした。
このバレエの西欧初演は、1909年5月、ディアギレフ率いるバレエ・リュス初のパリ公演でさた。振付はミハイル・フォーキン。あでやかな民族衣装をまとった娘たちの踊りや、兵士たちの勇壮な踊りが強烈なインパクトを与えました。
以下に、ネットで見れるバレエのサンプルを幾つか載せます(本公演は、カーテン・コール以外は、写真撮影禁止でしたので)。本作品は、オペラ上演の一節なので、本来、合唱団付きで、歌とオーケストラと舞踏の三位一体なのですが、今回はオケとダンスのみでした。(以下、字幕が合唱の日本語訳です)









今回の舞踏は、以上の例より明るい色彩のアラビアン系の服装と照明で、カスタネットやシンバルやタンブリンなどの音が管・弦のアンサンブルに混じり、異国風の雰囲気をかもし出す中、(歓迎会の宴席の様なものですから)多くの男女ダンサーが、入れ替わり立ち替わり舞台に登場して踊り、華やかで明るい舞台を形成していました。ただ囚われの身のイーゴリー公と韃靼人の王とおぼしき二人の男子ダンサーの衣服が、それと一見して分かるものだったら、舞踏全体のストーリーもさらに良く観客に理解出来るものとなったでしょう。
(2)プロコフィエフ『ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調 op. 19 〜星の王子さま〜』
「ピータと狼」で有名なセルゲイ・プロコフィエフ(1891~1953)は、帝政時代のロシアに生まれです。1917年のロシア革命以降、ロシアを離れ、アメリカ、 ドイツ、フランスと海外で活動し、1936年祖国に帰りました。交響曲からオペラ、バレエ、 協奏曲、ピアノ曲まで幅広いジャンルの音楽を作曲していますが、バレエ音楽では、「ロメオとジュリエット」 「シンデレラ」などもよく知られています。ヴァイオリン協奏曲は 2曲あり、今回の第1番は、ロシアにいる1917年に完成され、1923年パリ・オペラ座で初演されました。
全体は3楽章からなり、第1楽章アンダンティーノの緩やかなタッチで夢の世界に引き込み、第2楽章スケルツォー ヴィヴァーチッシモで軽快なタッチに転換、第3楽章モデラート - アンダンテで甘美にして壮麗に締めくくられます。ヴァイオリンの技巧をあますところなく引き出した名曲で、変化に富んだ曲想に寄り添うように、「星の王子さま」 の世界が広がっていきます。「奇想天外、悪戯で優しく、そしてどうにも変えられない運命に対する怒り・・・・・・。けれど最後にはその全てが自分の一部となりながらも遠ざかっていくような幻想的音楽に合わせて多くの若手ダンサーにより表現されました。ヴァイオリンソロは、ダンサー達の所属する音大の先生の様です。立上りこそ、その音色も音量も物足りなさを感じるものでしたが、場面が進むごとに本領発揮といった感があり、終盤の重音奏を混じえた演奏はさすがと思わすものでした。
(3)ラヴェル『マ・メール・ロワ』
以下の特徴を有する曲です。
・童話の世界観:各曲が、ペローの童話集「マ・メール・ロワ(=マザーグース)」に登場する物語を題材にしています。
・色彩豊かなオーケストレーション:ラヴェルの繊細なオーケストレーションにより、各曲の情景が鮮やかに表現されています。
・親しみやすいメロディー:子供向けのピアノ連弾曲が原作であるため、親しみやすいメロディーが特徴です。
・バレエ音楽としての拡張:バレエ版では、もともとのピアノ連弾版に「前奏曲」や「間奏曲」が追加され、物語性を高めていました。
全7曲で構成され、童話の世界を音楽で表現していました。
バレエ版「マ・メール・ロワ」の構成:
①前奏曲(Prélude):バレエの幕開けを飾る、神秘的な雰囲気の音楽。
(間奏)
②第1場 紡車の踊りと情景(Danse du rouet et scène)「眠れる森の美女」の情景:眠れる森の美女の物語を想起させる、美しい旋律が特徴。
③第2場 眠れる森の美女のパヴァーヌ(Pavane de la belle au bois dormant):優雅なパヴァーヌの旋律が、眠りにつく美女を描写。
(間奏)
④第3場 美女と野獣の対話(Les entretiens de la belle et de la bête):美女と野獣の心の葛藤を、対照的な旋律で表現。
(間奏)
⑤第4場 親指小僧(Petit Poucet):親指小僧が森をさまよう様子を、軽快な音楽で描写。
(間奏)
⑥第5場 パゴダの女王レドロネット(Laideronette, impératrice des pagodes):東洋風の色彩豊かな音楽で、レドロネットの踊りを表現。
(間奏)
⑦終曲 妖精の園(Le jardin féerique):全ての登場人物が集い、幸福なフィナーレを迎える。
尚、各曲のあいだには場面転換を告げる短い音楽が差し挟まれていました。
曲としては、様々な概念から組み立てられていますが、舞踏としては、出来るだけそれらの概念を守りつつも全体としては、バレエの華やかさを如何に発揮させるかに工夫されている振付だと感じました。ただバレリーナやダンサーとしては、ほとんどが学生や若手の踊り手ですので、高度な技術を身につけているとは言い難く、この演目に限らず、トゥでの立ち位置を保つ際にも、ふらつく不安定な人も散見され、まだまだこれからの精進を要するとも思いました。逆に言えば、春秋に富むというか、訓練次第では、これからの伸びしろの大きい将来が待っているとも言えるでしょう。
(全体的に管弦楽は、かなり高度なレベルの演奏でした。)
予定演目が終わり、アンコールがカーテンコール上演として、行われました。
《カーテン・コール演奏》
チャイコフスキー『バレエ組曲くるみ割り人形より、〈花のワルツ〉』(振付:安達悦子)
様々な素晴らしい曲達を作曲したチャイコフスキーは、バレエ音楽がその大きな原点の一つではないかと思います。中でもこの〈花のワルツ〉は、クラシック音楽愛好者であれば、誰しも口ずさみたくなる様なやさしい綺麗な曲たちです。

