~海外で活躍する日本人バレエダンサーを迎えて世界とつなぐ~Ballet Asteras 2025

【Introduction】主催者
輝く世界の星たちがひとつにつながる―バレエ・アステラスへようこそ。
「バレエ・アステラス」は、世界のバレエ団で活躍する日本人ダンサーを、毎夏、新国立劇場に迎えてお贈りするスペシャルガラ公演。
人気の古典バレエの名作から日本初演の現代作品まで、アステラスでしか巡り会えない作品も含め、多彩なプログラムが大変好評です。
2009年より開催し15回目となる今回は、5か国8バレエ団の第一線で活躍する16名のダンサーが、世界各地で愛されているバレエの「今」をお届けします。
ゲストに高田 茜/平野亮一を迎え、昨年に続き海外から選ばれた魅力的な注目ダンサーが参加し、豪華な舞台が繰り広げられます。
また、世界のバレエ学校として、優れたダンサーを数多く輩出するパリ・オペラ座バレエ学校が招待参加します。
見どころ満載の「バレエ・アステラス」、どうぞお楽しみに!
*「アステラス」とはラテン語とギリシャ語の造語で「星たち」の意。世界中で輝く星たちが「バレエ・アステラス」で一つにつながりより一層輝いてほしい、そんな思いが込められています。
【鑑賞日時】2025.7.19.(土)14:00〜
【公演期間】2025年7月18日[金]~7月19日[土]
【会場】NNTTオペラバレス
【予定上演〜時間】3時間15分(休憩1回を含む)
【Staff&Cast】
【管弦楽】東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
【指揮】アレクセイ・バクラン
〈Profile〉
Conductor : Alexei Baklan
1987年キエフ国立音楽学院を卒業後ウクライナ国立歌劇場で指揮者を務める。95年キエフ市アカデミー・オペラ・バレエ劇場首席指揮者に就任。ウクライナ芸術功労活動家の称号を授与される。ウクライナ国立歌劇場では『マーメイド』『コッペリア』『ウィンナー・ワルツ』『海賊』、またキエフ市アカデミー・オペラ・バレエ劇場では『リゴレット』『ロメオとジュリエット』『ラ・バヤデール』『ジゼル』『白鳥の湖』『不死身のカシェイ』『森の詩』などのオペラやバレエに指揮者・音楽監督として参加。交響曲ではベートーヴェン『交響曲第9番』ロッシーニ『スターバト・マーテル』、オルフ『カルミナ・ブラーナ』などを手がける。2003年、06年にはメキシコで、マリインスキー劇場、ボリショイ劇場、ウクライナ国立歌劇場、アメリカン・バレエ・シアター、ニューヨーク・シティ・バレエ、シュトゥットガルト・バレエなどで活躍する世界のバレエ界のスターたちを集めて行われたガラ・コンサート「バレエティッシモ」で指揮を務めた。またウクライナ国立歌劇場のドイツ、フランス、スペイン、スロベニア、ポルトガル、韓国、イギリス公演(05、06、07年)に参加。キエフ市アカデミー・オペラ・バレエ劇場首席指揮者およびウクライナ国立歌劇場指揮者。新国立劇場では08年『ラ・バヤデール』、09年、10年『白鳥の湖』、09年『ドン・キホーテ』で指揮を務めている。
【ゲスト出演】
高田 茜 (英国ロイヤルバレエ プリンシパル)
平野亮一 (英国ロイヤルバレエ プリンシパル)
ゲストの演目は次の通り。
※『Within the Golden Hour』よりパ・ド・ドゥ
振付:クリストファー・ウィールドン
音楽:アントニオ・ヴィヴァルディ
ヴァイオリン演奏:城戸かれん(東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団ゲスト・コンサートマスター)
※『アスフォデルの花畑』よりパ・ド・ドゥ
振付:リアム・スカーレット
音楽:フランシス・プーランク
ピアノ演奏:巨瀬励起、滝澤志野
高田 茜
平野亮一
ヴァイオリン演奏:城戸かれん
ピアノ演奏:巨瀬励起
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
【上演プログラム】
《第1部》
①『トリプティーク~青春三章~』
振付:牧 阿佐美
音楽:芥川也寸志
出演:新国立劇場バレエ研修所ダンサー
②『サタネラ』よりパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ
音楽:チェーザレ・プーニ
出演:中島 耀 (ドレスデン国立歌劇場バレエ)、モイセス・カラーダ・パルメロス (ドレスデン国立歌劇場バレエ)
③『アンナ・カレーニナ』よりパ・ド・ドゥ
振付:ユーリ・ポソコフ
音楽:イリヤ・デミューツキー
出演:金澤優美 (ジョフリー・バレエ)、清沢飛雄馬 (ジョフリー・バレエ)
④『ラ・シルフィード』第2幕よりパ・ド・ドゥ
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
音楽:ヘルマン・ルーヴェンシュキョル
出演:ジェシー・ドーティー (ヒューストン・バレエ)、アクリ士門 (ヒューストン・バレエ)
⑤『ロメオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥ
振付:クシシュトフ・パストール
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
出演:チョン・ジェウン (ポーランド国立歌劇場バレエ団)、北井僚太 (ポーランド国立歌劇場バレエ団)
⑥『Within the Golden Hour』よりパ・ド・ドゥ
振付:クリストファー・ウィールドン
音楽:アントニオ・ヴィヴァルディ
出演:高田 茜 (英国ロイヤルバレエ)、平野亮一 (英国ロイヤルバレエ)
ヴァイオリン演奏:城戸かれん(東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団ゲスト・コンサートマスター)
~休憩~(25分)
《第2部》
⑦『ゼンツァーノの花祭り』よりパ・ド・ドゥ
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
音楽:ホルガー・シモン・パウリ
出演:パリ・オペラ座バレエ学校
⑧『ナポリ』よりパ・ド・シス
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
音楽:エドヴァルド・ヘルステッド、ホルガー・シモン・パウリ
出演:パリ・オペラ座バレエ学校
⑨『Take Me With You』よりデュエット
振付:ロベルト・ボンダラ
音楽:レディオヘッド
出演:野黒美茉夢 (西オーストラリアバレエ)、フリオ・ブラネス (西オーストラリアバレエ)
⑩『コッペリア』第3幕よりパ・ド・ドゥ
振付:アルテュール・サン=レオン
音楽:レオ・ドリーブ
出演:升本果歩 (ノーザンバレエ)、石井 潤 (ノーザンバレエ)
⑪『シンデレラ』第2幕よりパ・ド・ドゥ
振付:スタントン・ウェルチ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
出演:藤原青依 (ヒューストン・バレエ)、チャン・ウェイ・チャン (ニューヨーク・シティ・バレエ)
⑫『アスフォデルの花畑』よりパ・ド・ドゥ
振付:リアム・スカーレット
音楽:フランシス・プーランク
出演:高田 茜 (英国ロイヤルバレエ)、平野亮一 (英国ロイヤルバレエ)
ピアノ演奏:巨瀬励起、滝澤志野
〈フィナーレ〉出演者全員
【上演の模様】
今回は、世界各国のバレエ団で活躍する日本人バレエ・ダンサーを中心に、有名演目から抜粋された演目が披露されました。特に、英国ロイヤルバレエから高田茜と平野亮一の二人のプリンシパルを特別招聘し、プログラム前半と後半の最終演技の〆の演技がなされ、また招待校として、「パリオペラ座バレエ学校」が招聘され、「新国立劇場バレエ研修所」との日仏若手交流が実現しました。両バレエ学校のダンサーは後半と前半のトップを飾ってソロやパ・ド・ドゥ等の個人演技の他に、群舞(コールド・バレエ)の魅力も披露しました。
①『トリプティーク ~青春三章~』新国立劇場バレエ研修所
振付 : 牧阿佐美
音楽 : 芥川也寸志
Music: AKUTAGAWA Yasush
牧阿佐美バレエ団が1968年に初演した『トリブティーク〜青春三章~」は、1953年に芥川也寸志によって作曲された「弦楽のための三楽章」に、当時34歳の牧阿佐美が振付けた作品である。 日本人作曲家による音楽に、日本人振付家がモダン・バレエの感性を加えた「日本のバレエ」として注目を集めた。
「希望」という副題のついた第1楽章「アレグロ」では、男女のグループがそれぞれ快活かつ躍動的に舞台を彩る。「感傷」を副題とする第2楽章「子守歌、アンダンテ」では、しっとりとしたメランコリックなデュエットが展開。最終楽章「ブレスト」では 「情熱」をテーマに、群舞とパ・ド・ドゥが力強い踊りを見せる。 ごまかしの効かないクリーンなクラシック・バレエのステップをユニゾンで踊るという挑戦的な構成を取り入れながら、それが美しく揃った瞬間には、「青春」というタイトルにふさわしい鮮烈な爽快感と感動が、一瞬のきらめきとなって舞台に炸裂した。
〇出演
山本梨々香 美濃大和 桑山奈那子 寺沼優
三國日々音 佐藤みもざ 富加見優 三瓶桜子 廣 沙帆子 江口アンリ 金紗也子 園田瑞季
藤井杏優 前さくら 小寺夏鼓 佐竹優真
村田剣一 末吉慶次 松田昂祐
②『サタネラ」よりパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティバ 音楽:チェーザレ・プーニ
〇中島耀(ドレスデン国立歌劇場バレエコール・ド・バレエ)
〇モイセス・カラーダ・バルメロス(ドレスデン国立歌劇場バレエ セカンド・ソリスト)
「サタネラ」の起源は、1840年にパリで初演されたバレ =パントマイム作品「悪魔の恋」(振付:ジョセフ・マジリエ楽:ルベル&プノワ)にさかのぼる。カゾットの同名の幻小説に基づき、美しい女性に化けた悪魔と青年との恋をいた物語である。1848年にはプティバ親子によってロアに持ち込まれ、リャードフの編曲により「サタネラ」 題名で上演された。
現在一般に知られる「サタネラ」のパ・ド・ドゥは、プ ティパが1859年に振付けたもので、バガニーニ作曲「ヴェノィアの謝肉祭」にプーニが編曲を施した音楽が使用されている。当初は音楽の題名をそのままバレエに冠していたが、のちにこのパ・ド・ドゥが全3幕構成の「サタネラ」 の一部として組み込まれたため、現在では「サタネラ」のパ・ド・ドゥとして広く知られている。
「サタネラ」という名前は「サタン」に由来するとされ、 アダージオでは、小悪魔的な魅力を放つヒロインが仮面をつけて登場し、途中でそれを外して素顔を見せるという演出がドラマ性を高めている。華やかな跳躍や回転といった技巧に富んだ見せ場が多いため、今日ではコンクールやガラ公演などで頻繁に上演される人気演目となっている。
③『アンナ・カレーニナ』よりパ・ド・ドゥ
振付:ユーリ・ポソホフ
音楽:イリヤ・デミューツキー
〇金澤優美 (ジョフリー・バレエ)
〇清沢飛雄馬(ジョフリー・バレエ)
2019年にジョフリー・バレエによって初演された「アンナ・カレーニナ」は、ウクライナ出身で、かつてポリショイ・バレエおよびサンフランシスコ・バレエのプリンシパルとして活躍したユーリ・ポソコフによる全2幕のドラマティック・バレエ。ポソコフは音楽を創作の核と位置づけ、 受賞歴を持つ作曲家イリヤ・デミューツキーにオーケストラ音楽を委嘱。トルストイ原作の物語を、雄介な音楽と動きによって濃密に描き出し、2021年にこの作品によってプノワ賞最優秀振付賞を受賞した。
今回上演されるのは、主人公アンナとヴロンスキーではなく、アンナの兄嫁の妹であるキティと、その犬リョーヴィンのパ・ド・ドゥ。ふたりの出会いから始まり、かつてヴロンスキーに想いを寄せていたキティがリョーヴィンに心惹かれ、さまざまな困難を乗り越えながら互いへの愛を深めていく過程が描かれる。最終的には農村で新婚生活を送り、「お互いさえいればそれでいい」という究極の愛の境地に至るまでを、抒情的な動きと技巧的なリフトや跳躍、高度な演技によって繊細に表現している。
④『ラ・シルフィード』第2幕よりパ・ド・ドゥ
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル Choreography: August B August BOURNONVILLE
音楽:ヘルマン・ルーヴェンショキョル
〇ジェシー・ドーティー(ヒューストン・バレエコール・ド・バレエ)
〇アクリ士門(ヒューストン・バレエ ソリスト)
プルノンヴィル版『ラ・シルフィード」は、ロマンティック・バレエの金字塔とされる作品。1832年にパリ・オペラ座で初演されたフィリッポ・タリオーニ版に触発され、デンマークの振付家オーギュスト・ブルノンヴィルが 1836年に完成させたこの版は、今日に至るまで世界中のバレエ団で上演され続けている。
なかでも有名なのが、第2幕のパ・ド・ドゥ。妖精シルフィードと青年ジェームスが幻想的な森の中で戯れ、惹かれ合いながらもほとんど触れ合うことなくすれ違う―そんな美しくも儚い情景が、それぞれの繊細なソロを通して描かれる。ヘルマン・ルーヴェンシュキョルの音楽にのせて、 ブルノンヴィル特有のバットゥリーを多用した軽快で小気味よい足さばき、そして上体の優雅さを保った振付が連なり、ダンサーには詩情豊かな抒情性と卓越したテクニックが求められる。
⑤『ロメオとジュリエット」よりバルコニーのパ・ド・ドゥ
振付:クシシュトフ・パストール
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
〇チョン・ジェウン(ポーランド国立歌劇場バレエ団 ファースト・ツリスト)
〇北井僚太(ポーランド国立歌劇場バレエ ファースト・ツリスト)
ポーランド出身の振付家クシシュトフ・パストールによる『ロメオとジュリエット』は、2008年にスコティッシュバレエによってエディンバラ・フェスティバル・シアター で初演された。誰もが知るシェイクスピアの悲劇を、20世紀 イタリアの歴史を背景に再構成した意欲作である。
1幕は1930年代のムッソリーニによるファシズム台を舞台とし、第2幕では1950年代の政治テロ激化期時代が移り、最終幕では1990年代のベルルスコーニ下における社会分断を描いている。恋人たちの運命はこれらの政治的・社会的動乱に翻弄され、より普遍的かつ現代的な悲劇として浮かび上がる。
なかでも、ロメオとジュリエットが初めて深く心を通わせる「バルコニーのパ・ド・ドゥ」は、作品の中でも最も詩的な場面。バレエにコンテンポラリーの要素を取り入れた振付は、打情的で流れるような動きに加え、ふたりの心の高鳴りを映し出す大胆なリフトや跳躍を織り交ぜながら、恋の喜びと儚さを視覚的に鮮やかに表現している。
⑥Within the Golden Hour』よりパ・ド・ドゥ
振付:クリストファー・ウィールドン
音楽::アントニオ・ヴィヴァルディ
〇高田茜(英国ロイヤルバレエブリンシパル)
〇平野亮一(英国ロイヤルバレエプリンシパル)
ヴァイオリン演奏: 城戸かれん(東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団ゲスト・コンサートマスター)
[Within the Golden Hour」は、クリストファー・ウィールドンが2008年、サンフランシスコ・バレエの創立75周年を記念して創作した作品で、2016年からは英国ロイヤルバレエのレバートリーにも加わっている。グスタフ・クリムトの絵画の色彩を着想源とし、イタリアの作曲家エツィオ・ポッソとヴィヴァルディによる弦楽作品に振付けられた作品は、7つの楽章で構成され、3つのパ・ド・ドゥを中心に展開。「ダンスは音楽を視覚化したときに最も力を持つ」というウィールドンの信念のもと、音楽のもたらすイメージが、詩情と遊び心に満ちた絵画のような振付として舞台上に立ち上がる。クラシック・バレエの技法に他ジャンルの動きを巧みに融合させることで、バレエの語彙に新たな視点をもたらす意欲作である。
この演目では、ヴァイオリンの独奏に合わせて踊る場面が白眉の見処ろ、聞き処ろでした。今日のオケは、シティフィルなので、コンマスの戸澤さんの名演奏かな?と一瞬思いましたが、プログラムをよく見ると、ゲストコンマスの「城戸かれん」さんという女流ヴァイオリニストでした。それはそうですね。ヴァイオリンの音のみに合わせてプリンシパルが踊る訳ですから、その踊りをかなり理解していないとダンサーは、踊れない訳です。城戸さんは相当のバレエ通で、今回もリハを通して合わせる練習をしたのでしょう。見事なヴァイオリンの調べに見事なプリンシパルの踊りでした。城戸さんは、他の演目でもソロ演奏し、美しい舞台にさらに幻想美を付け加えていました。
《25分の休憩》
⑦パリ・オペラ座『ゼンツァーノの花祭り』よりパ・ド・ドゥ
「ゼンツァーノの花祭り」は、1858年にコペンハーゲンで初演された、オーギュスト・ブルノンヴィル振付・台本による全1幕のバレエ。デュマの「航海記」を着想源とし、 19世紀初頭のイタリア・ゼンツァーノの花祭りを舞台に、 若い恋人パオロとローザの恋と試練の物語が描かれる。初演から約70年にわたり上演されてきたが、現在ではパ・ ド・ドゥの場面のみが、コンクールやガラ公演で頻繁に取り上げられ、それ以外の場面は踊られなくなっている。当時のロマンティック・バレエが王侯貴族や神話・伝説上の人物を主人公にしていた中にあって、庶民の男女を主役に据え、普通の若いカップルの生き生きとしたやり取りを描いた点でも、注目に値する作品である。
ブルノンヴィル作品特有の軽快で繊細な足さばきや跳躍、 上体を安定させたまま素早く動く技術が求められるバ・ド・ドゥは、若いダンサーが音楽性、正確なテクニック、そして品格を養うのに理想的なレパートリーとしても知られる。
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル Choreography: August BOURNONVILLE
音楽:ホルガー・シモン・パウリ
⑧パリオペラ座『ナポリ』よりパ・ド・ジス
⑦と同じ振付師。音楽:エドヴァルド・ヘルステッド、ホルガー・シモン・パウリ
『ナポリ』は、1842年にデンマーク王立劇場で初演された全3幕のバレエ。ブルノンヴィルがナポリを訪れた際、 街の色彩豊かで活気に満ちた雰囲気に感銘を受けたことから着想を得たとされ、物語はナポリの漁師ジェナーロと恋テレジーナの恋愛を軸に展開する。
第3幕で踊られるパ・ド・シスは、男性2人と女性4人による構成で、今日では多くのバレエ団により単独演目としても上演されている。繊細な足さばき、明晰なテクニック、軽やかで美しい跳躍、そしてブルノンヴィル作品ならではの明朗で抒情的な精神性を堪能することができる。この作品を観た童話作家アンデルセンは、ブルノンヴィルを「デンマーク・ バレエ界の詩人」と称賛したと伝えられ、現在もデンマーク王立バレエの重要なレパートリーのひとつとして継承されている。
今回特別招聘されたパリオペラ座バレエ団の演技は、パ・ド・ドゥ、ソロ、グラン・パ・ド・ドゥにコールドバレエも含めて、完結する一つのバレエ公演の感があり、さすが世界のバレエを牽引する拠点の一つの面目躍如の演技でした。演技時間もかなり長かった。
⑨『Take Me With You』よりデュエット
振付:ロベルト・ボンダラ
音楽:レディオヘッド(今回はオーケストラ演奏ではなく、スピーカー音源使用)
〇野黒美茉夢(西オーストラリアバレエ ソリスト)
〇フリオ・ブラネス(西オーストラリアバレエ プリンシバル)
ロベルト・ボンダラは、ポーランド出身の振付家・ダンサー。ポーランド国立歌劇場バレエ団での活躍を経て創作活動を開始し、その繊細な心理描写と緻密な構成力に定評がある。クラシックとコンテンポラリーのボキャブラリーを融合し、抽象性と物語性のバランスを巧みに取りながら、人間性を深く掘り下げる作品を数多く発表している。
『Take Me With You』(2016年初演)では、レディオヘッドふたりのダンサーの関係性が、一見シンプルだが複雑なの楽曲、特に「In Rainbows』収録の「Reckoner」にのせ、
ムーブメントによって目まぐるしく展開する。カップルの物語のようにも見えるが、その本質にあるのは、互いを理解しようとする切実な〈個〉と、その変容のプロセス。ペア・ フィギュアスケートのような動きも交え、互いに委ね、分離と再接続を繰り返す様は、人が他者と出会い、関係を築き、そして変化していく過程そのものを映し出す。〈一人でも生きていける)と信じる人間が、それでも他者に関わろうとする姿は、ダンスを通して私たちに共感と発見をもたらしてくれる。
⑩『コッペリア』第3幕よりパ・ド・ドゥ
振付:アルテュール・サン=レオン
音楽:レオ・ドリーブ
〇升本果歩 (ノーザンバレエ)
〇石井潤(ノーザンバレエ)
「コッペリア」は、フランス人振付家であり、ロシア帝室バレエ団のメートル・ド・バレエも務めたアルテュール・ サン=レオンによって振り付けられ、1870年にパリで初演された全3幕のバレエ作品。その後1884年にブティバがロシア帝室バレエ団のために再振付したものが、ロシア革命後英国に伝えられ、1933年に英国ヴィック=ウェルズ・バレエ(現在のロイヤルバレエの前身)が上演。英国ロイヤルバレエは、その時に主演したニネット・ド・ヴァロワによる版を今なおレパートリーとしている。
物語の下敷きになっているのは、E.T.A.ホフマンによる怪奇小説「砂男』。好奇心いっぱいの村娘スワニルダと恋人のフランツ、変わり者の人形師コッペリウスを中心として、フランツが人形コッペリアに恋をしたことをきっかけにコミカルな物語が展開する。
今回上演されるのは、数々の冒険を経て、仲直りしたスワニルダとフランツが結婚式で披露する第3幕の〈平和のグラン・パ・ド・ドゥ)。ゆったりとした曲調のドリーブの音楽にのせ、お互いへの信頼を取り戻したふたりの愛が描かれる。
この演目は、昨年まで、NNTT他で何回も見ていて、何か身近な懐かしさを感じるものでした。「コッペリア」の色々な場面が走馬灯の様に頭をよぎりました。
⑪『シンデレラ』第2幕よりパ・ド・ドゥ
振付 :スタントン・ウェルチ Choreography: Stanton WELCH
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
〇藤原あおい(ヒューストン・バレエ ファースト・ソリスト)
〇チャン・ウェイ・チャン(ニューヨーク・シティ・バレエ プリンシバル)
スタントン・ウェルチは、クラシック・バレエの技法を基盤に、音楽性とドラマ性に富んだ作品を生み出してきたオーストラリア出身の振付家。1997年、オーストラリア・ バレエによって初演された彼の「シンデレラ」は、プロコフィエフの音楽を用いながらも、紋切り型のシンデレラストーリーのプロットを潔く排し、登場人物の心理や背景に焦点を当てた再構成が特徴となっている。
今回上演するのは、シンデレラと冴えない王子の秘書ダンディーニが心を通わせる場面。恥じらいを帯びたおずおずとしたアイコンタクトや、柔らかなアラベスク、滑らかなリフトを通して、互いに惹かれ合う過程が丁寧かつリアルに描かれる。しなやかに流れる腕の動きや細やかな足捌きは、恋の始まりのときめきと緊張感を同時に表現し、空間を縫うような振付によって、ふたりの世界が静かに近づさ、重なっていく様子が演出されている。クラシック・バレエのステップを基盤としながらも、どこまでも現代的な感性が息づいた『シンデレラ』となっている。
⑫『アスフォデルの花畑』よりパ・ド・ドゥ
振付:リアム・スカーレット
音楽:フランシス・プーランク
ピアノ演奏:巨瀬励起、滝澤志野
〇高田茜(英国ロイヤルバレエブリンシパル)
〇平野亮一(英国ロイヤルバレエブリンシパル)
「Asphodel Meadows」は、将来を嘱望されながら2021年に35歳で早逝した英国人振付家リアム・スカーレッが、2010年に英国ロイヤルオペラ・ハウスの大舞台で、わずか24歳にして鮮烈なデビューを飾った出世作。 ダーランク作曲 「2台のピアノと管弦楽のための協奏曲」にのせて展開する1幕の抽象バレエで、2011年には ・ショナル・ダンス・アワードの振付部門で最優秀賞に輝くなど、20人のダンサーによる構成美と空間設計巧みさが際立つ野心作として高く評価された。
タイトルは、ギリシャ神話に登場する(アスフォデルの野〉(英雄でも罪人でもない魂が行くとされた冥界の一部)に来する。物語性は持たないものの、静谧で耽美な、流れるような振付が緻密な構造の中に織り込まれ、メラコリックな抒情性を生み出している。複雑なパートナリングや大胆なリフトなど、スカーレット作品特有の気もすでに随所に現れており、彼の振付家としての軌跡の原点を示すうえでも重要な作品といえる。
以上多くの作品からの一部場面抜粋で上演されましたが、海外からの参加者も多く、上演時間は、3時間もかかりました。海外で活躍中の日本人バレエダンサーが、一つのバレエ大会で、こんなにも集まるということは、氷山の一角でしょうから、実際はこの何倍も活躍している日本人がいるに違いありません。逆に言うと、海外で踊りを学び、そのまま残るのは、活躍できる受容力が諸外国にあるという事がもとになっているのでしょうから、国力が落ち目の日本からは、今後益々優秀な人材が流出する恐れが無きにしもあらずだと思いました。

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