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《NHK音楽祭2023》第1997回N響定演を聴く

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指揮者が変更になりました。

◎お知らせ2023年11月15日
NHK音楽祭2023 NHK交響楽団」(11/20[月]NHKホール)および「11月定期公演Aプログラム」(11/25[土]、26[日] NHKホール)で指揮を務める予定だったウラディーミル・フェドセーエフ氏は、体調不良のため医師のアドバイスに従い、来日を見合わせることとなりました。

つきましては両公演を下記の通り、新たな指揮者を迎えて開催いたします。なお曲目、共演者に変更はございません。また出演者変更による払い戻しは行いません。

フェドセーエフ氏とN響の共演を楽しみにされていたお客様にはまことに申し訳ございませんが、ご理解いただきますようお願い申し上げます。

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【日時】2023.11.25.(土)14:00 〜

【会場】NHKホール

【管弦楽】NHK交響楽団

【指揮】

〈前半〉 平石章人

 〈Profile〉  

 上野学園大学・研究生『指揮専門』にて、下野⻯也、大河内雅彦に指揮を学ぶ。その後東京音楽大学にて広上淳一、田代俊文にも指導を受ける。2017年に渡欧し、ウィーン国立音楽演劇大学にて、ヨハネス・ヴィルトナーのもとで研鑽を積む。2021年9月よりNHK交響楽団にて当時の首席指揮者、パーヴォ・ヤルヴィのアシスタントを務め、2022年1月からは同団の指揮研究員として公演に携わっている。これまでに東京フィルハーモニー交響楽団、広島ウインドオーケストラを指揮したほか、N響室内楽公演での指揮を担当。また「ポケモン × NHK交響楽団スペシャルオーケストラ2023」ではNHK交響楽団スペシャルオーケストラを指揮した。オペラの分野でも活動の幅を広げており、東京・春・音楽祭の《ローエングリン》にてマレク・ヤノフスキの、ロームシアター開館記念オペラ《フィデリオ》では下野⻯也のアシスタントを務めた。

〈後半〉 湯川紘惠

    〈Profile〉

東京藝術大学音楽学部指揮科卒業。同大学大学院音楽研究科指揮専攻卒業。これまでに指揮を高関健、山下一史、尾高忠明、田中良和に、ピアノを小池ちとせ、徳丸聰子、加藤朋子に師事。2018年 スペインにてヨルマ・パヌラのマスタークラスを受講し、カルロス3世劇場で行われた修了演奏会に出演。2021年リッカルド・ムーティによるオーディションを経てリッカルド・ムーティ・イタリアン・オペラ・アカデミーを受講。東京・春・音楽祭において「リッカルド・ムーティ introduces 若い音楽家による《マクベス》」に出演。英国ロイヤル・オペラにてジェット・パーカー・ヤング・アーティスト・プログラム主催のマスタークラスを受講し、リンブリー・シアターで行われた最終公演でシティ・オブ・ロンドン・シンフォニアを指揮。2021年9月より NHK 交響楽団にてパーヴォ・ヤルヴィのアシスタントを務め、2022年1月より指揮研究員として同団の公演に携わる。

【曲目】

①スヴィリドフ/小三部作

(曲について)

  20世紀後半のロシアを代表する作曲家の一人ゲオルギー・スヴィリドフ(1915〜1998)は、ソ連時代のロシアで活躍した作曲家で、ショスタコーヴィチの最初の弟子のひとりでもある。主として声楽曲、特に合唱曲の分野に、親しみやすく叙情性のあふれる傑作を多く残した。管弦楽曲は少ないが、映画『吹雪』や『時よ、前進!』のための音楽、そしてこの《小三部作》などは、ロシア音楽好きにはよく知られている。フェドセーエフはスヴィリドフの作品を昔から積極的に演奏しており、合唱付きの作品を含め、録音も多い。《小三部作》は1964年の作品で、弱音器付きの弦楽器がロシア正教の聖歌風の旋律を歌う第1曲(アレグロ・モデラート・ウン・ポーコ・ルバート)、トロンボーンやテューバの重厚な咆哮(ほうこう)ではじまる第2曲(コン・トゥッタ・フォルツァ、ウン・ポーコ・マエストーソ)、チェレスタ、ハープ、ピアノの刻む和音にのせて、ヴァイオリンとフルートがくっきりとした旋律を歌う第3曲(アレグロ・モデラート)からなる。演奏時間約10分

②プロコフィエフ/歌劇「戦争と平和」-「ワルツ」(第2場)

(曲について)

 セルゲイ・プロコフィエフ(1891〜1953)は、生涯に7作のオペラを完成した。文豪レフ・トルストイの有名な長編小説に基づく《戦争と平和》は、晩年の作曲者が心血を注いだ大作だ。プロコフィエフは1941年にこの作品を書きはじめ、1943年には初稿を完成しているのだが、長大で登場人物の非常に多い作品とあって、上演はなかなか実現しなかった。作曲者は、亡くなるまでの10年間、何度も改訂を繰り返したが、結局、彼の生前に完全な上演が実現することはなかった。現在上演される場合も、ある程度の短縮が行われることが多い。本作の中心的な登場人物であるナターシャ・ロストヴァとアンドレイ・ボルコンスキーが舞踏会ではじめて言葉を交わす場面で演奏されるワルツは、本作でもっとも有名な曲のひとつで、単独で演奏される場合も少なくない。プロコフィエフ自身も、のちに、管弦楽のための《ワルツ組曲》(作品110)に含めたり、ピアノ編曲を行ったりしている。

 

③A. ルビンシテイン/歌劇「悪魔」のバレエ音楽-「少女たちの踊り」

(曲について)

 昨今、アントン・ルビンシテイン(1829〜1894)の作品を耳にすることは少ないが、彼はロシアの音楽史上もっとも重要な音楽家のひとりだ。ルビンシテインは当時最高のピアニストであり、オペラや交響曲など多数の作品を書いた作曲家であり、多くの新しい作品を紹介した指揮者であり、サンクトペテルブルク音楽院を創設してチャイコフスキーらを育てた教育者でもあった。13曲ある彼のオペラのうち、レールモントフの原作に基づいて1871年に書かれた《悪魔》はもっとも有名な作品で、ロシアでは現在でもときどき上演される。物語は、公女タマラに恋をした悪魔が彼女を誘惑し、ついに口づけを奪うが、タマラは死んで救済され、悪魔は永遠の孤独を宣告されるというものだ。〈少女たちの踊り〉は、第2幕、タマラとシノダル王子の結婚式の前に踊られるバレエ音楽の一部で、この直後、結婚式に向かう道中、タタール人に襲撃されたシノダル王子の遺体が運び込まれる。

 

④グリンカ/歌劇「イワン・スサーニン」-「クラコーヴィアク」

(曲について)

 ミハイル・グリンカ(1804〜1857)の《歌劇「イワン・スサーニン」》は、1836年に完成された。農民イワン・スサーニンが、若き皇帝ミハイルを殺そうとするポーランド軍を騙(だま)して森の奥へと導き、自らを犠牲にして皇帝を救うという物語を、民謡風の旋律を取り入れた音楽によって描くこの作品は、最初のロシア的なオペラとして成功を収め、グリンカは、この作品によって、ロシア音楽の祖として後世まで敬愛されることになった。この歌劇の第2幕は、ポーランド軍の陣営で催される舞踏会の場面で、ポロネーズ、クラコーヴィアク、マズルカ(いずれもポーランドの民族舞曲)、それにワルツといった舞曲が登場する。クラコーヴィアクはシンコペーションが特徴的な2拍子の舞曲で、グリンカの時代、ウィーンやパリ、そしてロシアでも非常に人気があった。なお、ショパンの《ピアノ協奏曲第1番》の終楽章にもクラコーヴィアクのリズムが取り入れられている。

 

⑤リムスキー・コルサコフ/歌劇「雪娘」組曲

(曲について)

 ニコライ・リムスキー・コルサコフ(1844〜1908)が生涯を通じてもっとも力をそそいだのは、完成したものだけで15作に及ぶ、オペラの分野だった。第3作《雪娘》は、アレクサンドル・オストロフスキーの同名の童話にもとづき、1881年に完成した作品で、プロローグと全4幕からなる大作だ。物語はやや複雑だが、中心となっているのは、マロース翁(厳寒の擬人化)と「春の美」の間に生まれたスニェグーロチカ(雪娘)が、愛に強く憧れて人間界に赴き、愛を知ったために朝日を浴びて消えてしまうという、神話的、民俗的な物語だ。リムスキー・コルサコフの音楽は、オーケストレーションのすばらしさは言うまでもなく、ライトモティーフなどの技法も効果的に用いた見事なもので、作曲者自身、《雪娘》は自分の最高のオペラだと考えていたようだ。組曲は1895年に出版されたもので、4曲からなる。

⑥チャイコフスキー(フェドセーエフ編)/バレエ組曲「眠りの森の美女」

(曲について)

 ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840〜1893)の三大バレエ、すなわち《白鳥の湖》《眠りの森の美女》《くるみ割り人形》という3作品は、いずれもバレエの歴史における屈指の名作として、現在でも世界各地で上演されている。このうちの第2作にあたる《眠りの森の美女》は、サンクトペテルブルクの帝室劇場(マリインスキー劇場)の支配人だったイワン・フセヴォロシスキーからの依頼により1888年に着手された。フセヴォロシスキーは、当時衰退していたロシア・バレエを改革するには質の高いバレエ音楽が必要だと考え、チャイコフスキーに作品を依頼したのだった。
 原作は、古い伝説にもとづいてフランスの詩人シャルル・ペローが著した童話で、台本はフセヴォロシスキー自身が担当した。チャイコフスキーは、振付師プティパの事細かな注文に応じつつ仕事を進め、翌年5月にスケッチの形で完成、8月後半には全曲のオーケストレーションも終了した。劇場側のこの作品に対する力の入れようは並々ならぬもので、多額の費用をかけ、最高の踊り手たちを集め、リハーサルには皇帝アレクサンドル3世も臨席したという。1890年1月に行われた初演は、《白鳥の湖》ほどの失敗ではなかったが、大成功にはほど遠いものだった。皇帝は短い称賛の言葉を与えたが、これもチャイコフスキーが期待していたほどの反応ではなかったようだ。作品は、フセヴォロシスキーに献呈された。20歳の誕生日に邪悪な妖精の魔法で長い眠りにつき、100年後にデザイア王子の接吻(せっぷん)で目覚めるオーロラ姫の物語はあまりにも有名だ。
《白鳥の湖》や《くるみ割り人形》と同様、この作品は、バレエとして上演されるにとどまらず、オーケストラの演奏会で取り上げられることも非常に多い。その場合、一般的には5曲からなる組曲が演奏されることが多いが、本日は、フェドセーエフ自身が編んだ大規模なセレクションが演奏される。

【演奏の模様】

来日公演予定だった指揮者フェドセーエフの予定曲目に関するメッセージの動画が公開されていますので、抜粋した画像を以下に再掲しました。流石、露音楽界重鎮の言葉は重いですね。

 


①スヴィリドフ/小三部作

フェドセーエフ翁の言葉通り、この曲は初めて聴いても親しみ易いメロディで出来ていました。

第3曲では、Pf.の単音がリズムを刻むのが印象的。


②プロコフィエフ/歌劇「戦争と平和」-「ワルツ」(第2場)

前半は弦楽アンサンブルの弱、強変化やPizzicatoが交錯し、管の響き特にOb.の調べやFl..のソロ音も交えるアンサンブルで、「ワルツ」ではオペラでは、大晦日にアンドレイとナターシャが、ワルツを踊りながら言葉を交わす場面です。ワルツを踊る多くの参加客たちの中でも滑る様に踊るこの二人の姿が瞼に浮かぶような優雅なワルツの調べでした。

③A. ルビンシテイン/歌劇「悪魔」のバレエ音楽-「少女たちの踊り」

弦楽奏のシンコペーションが印象的。


④グリンカ/歌劇「イワン・スサーニン」-「クラコーヴィアク」

 グリンカらしい耳当たりの良い旋律がテーマソングとして各種管や弦楽奏によって軽快な舞曲風に流れました。


⑤リムスキー・コルサコフ/歌劇「雪娘」組曲

シンバルの強い音に合わせて弦楽奏が合の手を入れる曲が多かった。

「雪娘」~「軽業師の踊り」を指揮するフェドセーエフ

 

ここまでの前半を指揮した平石さんは、交代し、休憩に入りました。

  《20分間の休憩》

 後半は湯川紘惠さんの指揮で、『眠りの森の美女』の組曲を、フェドセーエフ版(全曲からの抜粋曲や曲の配列を独自に組立て)で演奏しました。湯川さんの指揮は、今年2月にたまたま或る社会人管弦楽団を指揮するのを聴く機会が有りました。仲々奮闘した指揮で、特にアンコールのシベリウス『アンダンテフェスティーボ』の弦楽奏が最高に良かった記憶が有ります。

⑥チャイコフスキー(フェドセーエフ編)/バレエ組曲「眠りの森の美女」

 もうこれは、名曲中の名曲のオン・パレードでした。本来は第一幕の第8曲a「パ・ダクシオン アダージョ」が、最後の曲として演奏全体を締めくくりました。

オーロラ姫ザハロワ

 フェドセーエフは組曲全体の流れと盛り上がりを考え、スムーズに演奏効果が上がる様に曲を配していました。演奏された選曲及び配列は以下の通りです。

◯第1曲〈行進曲〉(プロローグ第1曲) フロレスタン14世の城の大広間。待望の王女オーロラ姫が生まれ、廷臣たちや侍女たちが、忙しそうに洗礼式の準備をしている。
◯第2曲〈踊りの場〉(プロローグ第2曲) 王女の代母(ゴッドマザー)となる6人の妖精たちが登場する。妖精たちのひとりがリラの精。
◯第3曲〈パ・ド・シス〉(プロローグ第3曲) 妖精たちは、オーロラ姫のゆりかごのところへ行き、気品、美しさ、優しさなど、それぞれの贈り物を贈る。バレエではこのあと、悪い妖精カラボスが、「オーロラ姫は16歳のときに紡錘(ぼうすい)で指を刺して死ぬ」と呪いをかけるが、リラの精が即座に「死ぬかわりに100年の眠りにつき、王子の接吻(せっぷん)で目覚める」と告げる場面が続く。
◯第4曲〈ワルツ〉(第1幕第6曲) 第1幕では、16歳のオーロラ姫が眠りにつくまでが描かれる。有名なワルツは、この幕の前半で村の若者たちによって踊られる曲だ。
◯第5曲〈パ・ダクシオン〉(第2幕第15曲a〈オーロラ姫とデザイア王子の情景〉)
◯第6曲〈オーロラ姫のヴァリアシオン〉(第2幕第15曲b) 第2幕はオーロラ姫が眠りについてから100年後の世界。彼女のことをリラの精から聞き、その幻影を見たデザイア王子は、彼女を救うことを決意する。
◯第7曲〈パノラマ〉(第2幕第17曲) リラの精は、真珠貝の小舟に乗って、今は深い森になってしまったフロレスタン14世の宮殿へと王子を導く。
◯第8曲〈アダージョ〉(第3幕第25曲〈パ・ド・カトル〉) 第3幕は、オーロラ姫とデザイア王子の華やかな結婚式で、童話の主人公たちなどがお祝いに訪れて、踊りを披露する。なお、この曲はもともと、シンデレラ姫とフォルチュネ王子、青い鳥とフロリーヌ姫による4人の踊りだったが、初演時には青い鳥とフロリーヌ姫だけの踊りに変更された。現在でもそれが踏襲されることが多い。
◯第9曲〈テンポ・ディ・マズルカ〉(第3幕第30曲〈終曲〉) 結婚式の最後に踊られる力強いマズルカ舞曲。バレエでは、このあと〈アポテオーズ〉があって、バレエ全曲の幕が閉じられるのだが、フェドセーエフのセレクションではあと3曲演奏される。
◯第10曲〈サラバンド〉(第3幕第29曲) ゆったりした3拍子の舞曲。結婚式の列席者たちが踊る舞曲のひとつで、バレエではマズルカの直前に置かれている。
◯第11曲〈銀の妖精〉(第3幕第23曲〈ヴァリアシオンII〉) 第23曲は、金、銀、サファイア、ダイヤモンドの精が踊るパ・ド・カトル。銀の精の踊りは軽快なポルカとなっている。
◯第12曲〈オーロラ姫とデザイア王子のアダージョ〉(第1幕第8曲a〈パ・ダクシオン:アダージョ〉) 第1幕第8曲の〈パ・ダクシオン〉は4つの部分からなる。最初の〈アダージョ〉は、16歳のオーロラ姫に求婚する4人の王子たちがバラを贈る場面で、「バラのアダージョ」として知られる。

 バレエ全体は何時間もかかる曲から成りますが、僅か数曲だけ抜粋しただけの組曲でも40分程かかったでしょうか。演奏が終わると、湯川さんは大きな拍手に迎えられ何回も奏者を労い、また観客の声援に答えていました。尚、この組曲の最後の方の9曲目だったか10曲の終了時だったかにパラパラ拍手が起きましたが、これもいか仕方ないですね。この演奏会には、オーケストラ曲中心に聴いて来られた聴衆が多いでしょうし、バレエ自体を見ている人は、恐らく少ないと思います。曲自体の意味する舞踊、場面が明確でない場合、終わりがどこか分かり難く、つい早とちりしてフライング拍手してしまう人が出るのもやむを得ないでしょう。しかも今回は組曲自体の独自の選曲がなされ配置も独自なものでしたから。

 湯川さんの指揮は、女性らしい美しい曲を表現するのに懸命にタクトを振っている様子が、初々しくて好感が持てました。代役指揮とは言え、天下のN響でNHKホールデヴューを無事果たしたのですから、今後の益々の活躍と精進を期待出来るでしょう。前半の平石さんについても同様です。


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