HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

ペトレンコ指揮・ベルリンフィル『エレクトラ(演奏会形式)』鑑賞

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【演奏日時】2024.4.7.

【会場】ベルリンフィル・デジタルコンサートホール

【演目】R.シュトラウス/歌劇『エレクトラ《演奏会形式》』全1幕

【管弦楽】ベルリンフィルハーモニ―管弦楽団

【指揮】キリル・ペトレンコ

【出演】

・ニーナ・シュテンメ(エレクトラ・ソプラノ)

・ミヒャエラ・シュスター(クリテムネストラ・メゾソプラノ)

・エルザ・ヴァン・デン・ヒーヴァー(クリソテミス・ソプラノ)

・ヴォルフガング・アプリンガー=シュペルハッケ(エギスト・テノール)

・ヨハン・ロイター(オレスト・バスバリトン)

・アンソニー・ロビン・シュナイダー(オレストの養育者・バス)

・その他、(年老いた下僕、監視の女、第1の侍女~第5の侍女、クリムネストラの腹心の侍女)

 

【演奏の模様Ⅰ(主として女性歌手について)】

 一昨日4月21日(日)に「東京春音楽祭」で同演目を、主力歌手(外人4人+藤村さん)の演奏会形式をヴィグレ・読売響の演奏で聴き、その迫力に大いに感動したものですが、丁度今月初旬にベルリンフィルでも、バイエルン州宮廷歌手の称号を持つワーグナー歌手ニーナ・シュテンメがタイトルロール、エレクトラ役で歌うことを知り、デジタルコンサートホールでその演奏を観・聴きました。

 結論的には「東京春祭」時の凄さの一回り、いや二回りも大きい筆舌に絶する程の大迫力の演奏でした。エレクトラ役シュテンメは結構年配に見えますが、父王暗殺以降は、母親とその間男やその侍女達の冷遇を受け、半ば獣の様な姿と精神錯乱状態にあるエレクトラの魔しょう性を見事に表現していたはまり役でした。声量は溢れる程有るし、凄みは出ているし、それでいてその声質の基本は美しいしなやかさを持つソプラノで、終盤、妹に弟の処に行こうと誘われても、ただ奇跡的な勝利と喜びに浸る心を歌ったアリアは、前半の妹や母親との二重唱のやり取りの様な、強い叫びあげる様な歌唱では無く、この上ない美しいシュトラウス節の旋律に載せて歌ったのには驚愕しました。

  一方妹役のエルザ・ヴァン・デン・ヒーヴァーもこれまた力強いエネルギッシュな歌唱で、この二人のTWO TOPで、ソプラノ歌手三人分くらいの凄さを感じる歌声でした。さらに母親役のミヒャエラ・シュスターが悪女的凄みのある歌い振りを見せ、この人は昨年同ホールのライヴ配信で観た「影の無い女」にも出ていましたが、その時感じた筋肉質的歌声を強弱を細やかに自在にコントロールする技巧的な歌い振りを交え、さらにその表情たるや将に百面相で、フルオペラその物の演技かと見間違ごう程の迫力でした。この表情作りはエレクトラも妹も負けず劣らず、従って一番時間が長いこの三女性主力歌手の表情は歌唱の効果を何倍にも増幅していたと思います。この点に関しては都合6人(だったかな?)の侍女達も主演歌手に負けない表情豊かな表現で歌っており、そうした極端とも思える程の表情造りは、日本人歌手の歌唱法の通常では余り見られない演奏会形式オペラの演奏でした。

   (エレクトラ役ニーナ・シュテンメ)

 

(エレクトラとの二重唱の終盤に駆け寄って来た侍女が、母親役ミヒャエラ・シュスターに何か耳うち話)

 

息子のエギストが死んだことを伝えられたのです。最初驚き歌う内に次第にほくそ笑む表情に変わり、クリトムネストラの気持ちを実に名役者の如く表現したシュスターでした。即ち実の息子の死に驚き本来嘆く立場であるのに、息子に命を狙われていることを知っている母親は、一安心と胸を撫でおろしたのでしょう。