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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

オペラ速報NNTT『トリスタンとイゾルデ』初日

◎リエネ・キンチャ(イゾルデ役)、貫禄の重量ソプラノ披露。『愛の死』は、疲れを毫も見せず熱唱。この日の大賞級!!

◎藤村(ブランゲーネ役)実力発揮、大健闘!!

◎代役ゾルターン・ニャリ(トリスタン役)一幕終盤から本調子。第二幕で本領発揮。

◎エギルス・シリンス(クルヴェナル)力強い歌唱!!要所を〆る。

◎ヴィルヘルム・シュヴィングハマー(マルケ王役)重量戦車級バス・バリトン。堂々たる歌声!!

◎大野都響、見事な管弦捌き。特に冒頭の前奏は珠玉の演奏、日本版フルトベングラー・ベルリンフィルか?

◎合唱は出番の少い場面を手堅く抑え、演技も過剰にならず、さっぱり感。舞台はシンプル、演技もまずまず。男女の愛の表現は、歌詞内容に合わない素っ気なさ。もっと濃密な愛欲演技の表現があっても良いのでは?

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【鑑賞日時】初日2024.3.14.(水)16:00〜

【演目】リヒャルト・ワーグナー楽劇『トリスタンとイゾルデ』(独語上演、日・英語字幕) 

16:00~17:25 第1幕(85分)

17:25~18:10 休 憩(45分)

18:10~19:20 第2幕(70分)

19:20~20:05 休 憩(45分)

20:05~21:25 第3幕(80分)

 

【会場】新国立劇場(NNTT) オペラパレス
【公演期間】2024年3月14日(木)~3月29日(金)全五日間公演
【公演日時】
3月14日(木)16:00
3月17日(日)14:00
3月20日(水・祝)14:00
3月23日(土)14:00
3月26日(火)14:00
3月29日(金)14:00
【予定上演時間】約5時間45分(2回の45分休憩を含む)                                                

【管弦楽】東京都交響楽団

【指揮】大野和士

【合唱】新国立劇場合唱団
【演出】デイヴィッド・マクヴィカー
【美術・衣裳】ロバート・ジョーンズ
【照明】ポール・コンスタブル
【振付】アンドリュー・ジョージ
【再演演出】三浦安浩
【舞台監督】須藤清香

【登場人物】

 全3幕で演奏時間は約4時間という長大な作品ですが、登場人物はそれほど多くはなく、大部分が主人公トリスタンとヒロインのイゾルデの2人の動きを描いたシーンで占められています。

 

トリスタン:コーンウォール(イングランド南西端)の騎士。マルケ王の甥。

イゾルデ:アイルランドの王女。マルケ王との政略結婚が決まっている。

マルケ王:コーンウォールの王。

クルヴェナル:トリスタンの家臣

メロート:マルケ王の側近。

ブランゲーネ:イゾルデの侍女。

 

【キャスト】
トリスタン:ゾルターン・ニャリ(トルステン・ケール氏急病により変更)
マルケ王:ヴィルヘルム・シュヴィングハマー
イゾルデ:リエネ・キンチャ
クルヴェナール:エギルス・シリンス

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《Profile》

〇トリスタン役:ゾルターン・ニャリ(テノール) (Zoltán NYÁRI)

 ブダペスト出身。ブダペスト演劇映画大学で演劇の学位を取得し俳優として活動した後、ブダペストオペレッタ劇場に所属してミュージカルやオペレッタの主要な役に数多く出演する。その後オペラへ転向、ハンガリー国立歌劇場専属歌手として『エウゲニ・オネーギン』レンスキー、『ルサルカ』王子、『ホフマン物語』ホフマン、『トスカ』カヴァラドッシ、『ラ・ボエーム』ロドルフォ、『椿姫』アルフレードなどに出演。さらにザクセン州立歌劇場『カルメン』ドン・ホセ、フランクフルト歌劇場『ルサルカ』王子などに出演を重ね、グラーツ歌劇場『死の都』パウルの成功で国際的な注目を集める。近年の出演に、ハンガリー国立歌劇場『ウェルテル』タイトルロール、『ルサルカ』王子、『さまよえるオランダ人』エリック、『ジークフリート』『神々の黄昏』ジークフリート、グラーツ歌劇場『トリスタンとイゾルデ』トリスタン、メトロポリタン歌劇場『ルサルカ』王子、デンマーク王立歌劇場『ホフマン物語』ホフマン、オルデンブルク歌劇場「ニーベルングの指環」ツィクルスのジークムント/ジークフリート、ハーゲン歌劇場、ハイデンハイム歌劇場、ベルン歌劇場『トリスタンとイゾルデ』トリスタンなど。昨年のデュッセルドルフ交響楽団『トリスタンとイゾルデ』トリスタンにも出演するなど、ワーグナー歌手としての国際的評価を高めている。新国立劇場初登場。

 

〇マルケ王役:ヴィルヘルム・シュヴィングハマー(バス) (Wilhelm SCHWINGHAMMER)

 バイエルン出身。若手世代で最高峰のバス歌手のひとり。ベルリン芸術大学で学びハンブルク州立歌劇場ヤング・アーティスト・プログラムに参加、2006年~17年はハンブルク州立歌劇場専属歌手として活躍。レパートリーはバロックから現代音楽まで広範に及び、『フィガロの結婚』フィガロ、『ドン・ジョヴァンニ』レポレッロ、『魔笛』ザラストロ、『ローエングリン』ハインリヒ国王、『トリスタンとイゾルデ』マルケ王、『タンホイザー』領主ヘルマン、『さまよえるオランダ人』ダーラント、『フィデリオ』ロッコ、『リゴレット』スパラフチーレ、『エレクトラ』オレスト、『ばらの騎士』オックス男爵などバスの重要な役をレパートリーに、バイエルン州立歌劇場、ベルリン州立歌劇場、ザクセン州立歌劇場、ハンブルク州立歌劇場、ウィーン国立歌劇場、パリ・オペラ座、リヨン歌劇場、ミラノ・スカラ座、ロサンゼルス・オペラなど各地の主要劇場に出演。バイロイト音楽祭『ローエングリン』ハインリヒ国王、ハンブルク州立歌劇場『フィガロの結婚』タイトルロール、『後宮からの逃走』オスミン、シカゴ・リリック・オペラ『ラインの黄金』新制作のファーゾルトは特に成功を収める。バイロイト音楽祭へは12年以来出演を重ね、19年、21年には『タンホイザー』、22年は「ニーベルングの指環」ファフナーで再登場した。新国立劇場初登場。

 

〇イゾルデ役:リエネ・キンチャ(ソプラノ) (Liene KINČA)

 ラトヴィア生まれ。ラトヴィア音楽院で学ぶ。05年ラトヴィア国立歌劇場に『イェヌーファ』カロルカでデビュー。その後『仮面舞踏会』アメーリア、『アイーダ』『トスカ』タイトルロール、『スペードの女王』リーザ、『ワルキューレ』ジークリンデ、『神々の黄昏』グートルーネなどに出演。12年より欧州各地に活躍の場を拡げ、フランダース・オペラ『エレクトラ』クリソテミス、フライブルク歌劇場『イル・トロヴァトーレ』レオノーラ、ブランシュヴァイク歌劇場『スペードの女王』リーザなどで成功を収める。これまでに、フランダース・オペラ『さまよえるオランダ人』ゼンタ、『タンホイザー』エリーザベト、『ローエングリン』エルザ、スロヴァキア国立歌劇場『アイーダ』タイトルロール、フェニーチェ歌劇場、ベルン歌劇場『タンホイザー』エリーザベト、アン・デア・ウィーン劇場『ニーベルングの指環』編曲版ジークリンデ、グートルーネなどに出演。最近では、ジュネーヴ大劇場『戦争と平和』マリヤ、ラトヴィア国立歌劇場『ナブッコ』アビガイッレ、『トスカ』タイトルロール、エストニア・ヴァネムイ劇場『トリスタンとイゾルデ』イゾルデ、ライプツィヒ歌劇場『タンホイザー』エリーザベトなどに出演している。新国立劇場では19年『タンホイザー』エリーザベトに出演した。

 

〇クルヴェナール役:エギルス・シリンス(バス・バリトン) (Egils SILINS)

 ラトヴィア出身。ラトヴィア国立歌劇場でデビュー後、ウィーン国立歌劇場にデビュー。ブレゲンツ音楽祭『デーモン』タイトルロールで称賛され、サヴォンリンナ・オペラ・フェスティバル、グラインドボーン音楽祭などの著名音楽祭に出演。ウィーン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座、メトロポリタン歌劇場、英国ロイヤルオペラ、ベルリン・ドイツ・オペラ、ベルリン州立歌劇場、リセウ大劇場、テアトロ・レアル、チューリヒ歌劇場、バイエルン州立歌劇場などに定期的に登場。「ニーベルングの指環」ヴォータン、さすらい人、『パルジファル』クリングゾル、アムフォルタス、『トリスタンとイゾルデ』クルヴェナール、『サロメ』ヨハナーン、『エレクトラ』オレスト、『ボリス・ゴドゥノフ』タイトルロール、『オテロ』イアーゴ、『トスカ』スカルピアなどレパートリーは70に及ぶ。最近の出演に、バイロイト音楽祭『ラインの黄金』ヴォータン、ウィーン国立歌劇場『ローエングリン』テルラムント、英国ロイヤルオペラ『フィデリオ』ドン・フェルナンド、デンマーク王立歌劇場『トリスタンとイゾルデ』クルヴェナル、ラトヴィア国立歌劇場『椿姫』ジェルモン、ビルバオ・オペラ『サムソンとデリラ』大祭司、ヴィースバーデン五月音楽祭『エレクトラ』オレスト、ベルリン・ドイツ・オペラ『さまよえるオランダ人』タイトルロールなどがある。.新国立劇場では14年『パルジファル』アムフォルタス、23年『ホフマン物語』悪役四役に出演している。

 

メロート:秋谷直之
ブランゲーネ:藤村実穂子
牧童:青地英幸
舵取り:駒田敏章
若い船乗りの声:村上公太

 

◎Introductionはじめに(主催者言)

媚薬の魔力で結ばれた禁断の愛ワーグナー至高の名作

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 2010/2011シーズンに大野和士指揮、デイヴィッド・マクヴィカー演出で上演し、センセーションを起こした『トリスタンとイゾルデ』が再登場します。ワーグナー円熟期の楽劇『トリスタンとイゾルデ』はワーグナー楽劇の最高傑作とも称えられており、愛と苦悩が身を焦がすような音楽で描き上げられ、ワーグナーの魔力を全身で感じていただける作品です。ワーグナー楽劇ならではのライトモチーフ(人物や状況を示すモチーフ)や、旋律から新しい旋律へと連綿と繋がる無限旋律がふんだんに用いられるだけでなく、ワーグナーは『トリスタンとイゾルデ』で半音進行を突き詰め「トリスタン和音」と称される不安定な響きの和声を生み出して、官能と昂揚を表現しました。単独で演奏されることも多い前奏曲や、クライマックスの「イゾルデの愛の死」は特に有名で、甘美なうねりが聴くものをカタルシスに導きます。
芸術監督として、オペラ史上の革命的作品であるこの作品をオペラファンの方々へ届けたいと強い信念を持つ大野和士自らが指揮し、トリスタンにゾルターン・ニャリ、イゾルデにはリエネ・キンチャが出演します。(協力:日本ワーグナー協会)

 

この作品の特長は次の様な物だとも謂われます。

 王女イゾルデと騎士トリスタンは互いに愛を感じていた。それなのにトリスタンは自分の仕えるマルケ王の妃としてイゾルデを迎えにやってきた。アイルランドからコーンウォールへと向かう船上で、事件は起こった。トリスタンを詰問するイゾルデが差し出した毒薬を、覚悟した2人が飲んでしまったのだ。その薬は毒薬でなく、愛の薬だった。
王妃となったイゾルデとトリスタンは王が狩りに出るのを見計らって密会する。これが罠だった。情事は露見し、2人は王たちに囲まれる。罠をしかけた男と対決したトリスタンは傷を負い、逃亡する。
トリスタンの領地で瀕死のトリスタンが待ち侘びているところに、イゾルデが到着した。だがイゾルデの腕の中でトリスタンは息絶える。王妃を追ってきたマルケ王たちの前で、イゾルデは恍惚としてトリスタンの後を追う。
ワーグナー作詞作曲、全3幕、ドイツ語/1865年、バイエルン宮廷歌劇場初演

いつ果てるとも知れない愛の夜がくり広げられる。トリスタンとイゾルデのあいだにある「と」が邪魔になっても、見張る侍女の、まるで2人の陶酔を反映したような警告が聞こえても、やまない。やまないどころか深みへ深みへと落ちていく。第2幕の「愛の夜」くらい人を魅惑し、陶酔させる世界はほかにない。ワーグナーが到達した魔法の夜は、それを聴く健全な人にも危険な愛と死の国を体験させてしまう。第2幕にも一応オペラらしいドラマはある。恋人がやってくるのを待つイゾルデと侍女ブランゲーネのやりとりはあるし、陶酔的二重唱は王の一行の突然の乱入によって断ち切られる。そのあとの王の嘆きやトリスタンのすべてを覚悟した歌だってあるし、トリスタンが自ら死を求め、密告者メロートとの決闘?だってある。だがその出来事のすべてを、愛の夜が飲み込んでいる。トリスタンとイゾルデは第1幕で愛の薬を飲んだ。『トリスタンとイゾルデ』を聴く者は、この第2幕で、飲む。

<軽いオペラ>
 大作《ニーベルングの指環》を作曲中だったワーグナーは、上演する見込みがないので、すぐ上演できる軽いオペラを作ろうとする。それがオペラ史を変える作品に化けてしまった。
<前奏曲と「愛の死」>
 始まりと終りをつなげたコンサート用の曲を作ったのはワーグナー自身だった。確かにこれで『トリスタン』の世界が伝わる。
<海>
 船上で始まり海辺の城で終る。海と作品は通じている。ワーグナーはこれを湖の見える家で書き始め、ヴェネツィアで書き進め、湖の見えるホテルで書き終えた。
<無限旋律>
 寄せては返す波のように、音楽は果てしなく続く。

<王様>
 寛容なマルケ王は第2幕と第3幕の嘆きの歌で、現実世界と愛と死の世界を穏やかにつないでいる。
<侍女と従者>
  イゾルデの侍女ブランゲーネとトリスタンの従者クルヴェナールは2人とも、主人と「愛と死」の世界に忠実に仕える。
<悪人>
 メロートはトリスタンを裏切り、大ケガを負わせる悪役だが、実に影が薄い。
<クスリ>
 死のクスリを、と命じられた侍女ブランゲーネが用意したのは愛のクスリだった。トリスタンとイゾルデは、やはり「愛と死」のクスリを飲んだというべきだろう。
イゾルデと
<マティルデ>
 ワーグナーは人妻マティルデ・ヴェーゼンドンクとの恋愛の中からこの作品を生み出した。といってもマティルデがイゾルデのモデルというわけではない。
<北から南>
 第1幕はアイルランドからコーンウォールへの船上で、第2幕はコーンウォール、そして第3幕はフランスのブルターニュで、物語の舞台は北から南へと進む。
<傷を治す>
 イゾルデは傷を治す秘術を知っている。だがトリスタンは治してもらおうとせず、死んでいった。
<夜>
 第2幕でトリスタンとイゾルデは愛と死とともに「夜」を賛美する。これは夜のオペラでもある。(堀内修)

 

【ワーグナーが作曲した経緯】

 1849年、革命運動に参加したワーグナーは政治犯としてドイツを追放されスイスに亡命しました。そこで「ニーベルングの指環」四部作のうちの2作目「ジークフリート」を作曲するも上演の目途が立たず、いったん中断してより小さな作品を書こうと考えたのがはじまりでした。ワーグナーはケルトを起源とするトリスタン伝説にまつわるゴットフリート・フォン・シュトラスブルクの叙事詩『トリスタンとイゾルデ』を題材に決め、1857年に自作の台本を完成させました。トリスタン伝説とは、騎士トリスタンと主君マルケ王の妃であるイゾルデとの悲劇的な恋愛を描いた物語で、中世の宮廷詩人が語り継いできたとされています。当時ワーグナーは裕福な商人オットー・ヴェーゼンドンクをパトロンとし、彼から提供された家に妻ミンナと共に住んでいました。しかし2人の関係は冷めきっており、ヴェーゼンドンクの若妻マティルデ(※)との恋愛が始まったのです。この不倫関係によって、愛をテーマとしているこの作品の創作意欲が高まったと言われています。このような過程を経て1865年にバイエルン宮廷歌劇場で初演されました。 

  (※)マティルデ・ヴェ―ゼンドンク(1828-1902)

 ロマンティック・オペラと呼ばれる前作「ローエングリン」を最後に、ワーグナーは「もうオペラを書くのをやめる」と宣言しています。これはオペラを総合芸術として捉え、音楽と劇内容を融合させた「楽劇」を目指す、という意味でした。

「トリスタンとイゾルデ」は、「トリスタン和音」をはじめ、半音階進行の音楽を多用することで、それまでの西洋音楽の特徴であった調性音楽・機能和声を崩壊寸前まで追い込むという音楽史上に残る革命的な作品となりました。また不安定な和声を駆使することで、従来に比べ人間の内面をより緻密に表現できるようになったのも特徴と言えます。

ワーグナーにとって音楽の転機となったこの作品は、音楽史上において大きな転換点になりました。

 しかし出来上がった作品は素材に用いたゴットフリートの叙事詩とはかなり異なっています。ワーグナーはゴットフリートの作品における伝統的な多くのエピソードを大幅に削除しており、ワーグナーの作品に主な部分として残されているのは,「婚礼の船旅」と「愛の媚薬」(第一幕),「恋人たちの逢瀬」(第二幕),そして「愛の死」(第三幕)などです。しかもそれらはかなり簡略化されたり、改変されたりしているのです。そのほかになくてはならないエピソードとして,「トリスタンとモーロルトの決闘」タントリスと名乗っての「癒しの旅」、「剣の刃こぼれ」、「マルケ王の求婚」などは、登場人物の台詞の中で回想して語られているに過ぎなません。ワーグナーはドイツ中世叙事詩を素材に用いながらも、それとはまったく違うトリスタン世界を作り上げているのです。ワーグナーの作品はトリスタン伝説の系譜において特異性を有する作品であって、そこには明らかにワーグナー独自の世界が展開されているのでした。

 

【粗筋】

◉第1幕

伝説上の中世。アイルランドの王女イゾルデは敵対するイングランド・コーンウォールのマルケ王との政略結婚のため、王の甥トリスタンが漕ぐ船に乗って護送される。婚約者の仇でもあるトリスタンに密かに心惹かれるイゾルデは、船上で服毒心中を図るが侍女ブランゲーネは毒薬の代わりに愛の媚

薬を手渡したため、若い二人は瞬く間に熱烈な愛に陥る。

 

◉第2幕

マルケ王の妻となったイゾルデだが、トリスタンとの逢引きが続く。しかし、侍女の警告も空しく密会の場に王が現れる。トリスタンは王の家臣メロートの剣によって瀕死の重傷を負う。

 

◉第3幕

トリスタンは従者クルヴェナールに連れられ自分の城に戻りイゾルデを待つ。ようやくイゾルデが到着するが、トリスタンは愛するイゾルデの腕の中で息絶える。媚薬の仕業と知って2人を許そうと王一行がやってくるが、トリスタンとイゾルデは亡骸となっている。

 

 

【上演の模様】

上演の詳細は、別途記録予定。