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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

東京春祭2024ムーティ『アイーダ(演奏会形式)』を聴く(第一幕)

東京・春・音楽祭

【日時】2024年4月17日 [水] 14:00〜

【演目】ジュゼッペ・ヴェルディー作曲、歌劇アイーダ全四幕

【上演時間】3時間50分

 〇第一幕14:00〜14:40(40分)

 〇第二幕15:00〜15:45(45分)

 〇第三、四幕16:05〜17:15(70分)

 各幕間に20分の休憩時間有り
 
【管弦楽】東京春祭オーケストラ
【指揮】リッカルド・ムーティ
【合唱】東京オペラシンガーズ
【合唱指揮】仲田淳也
 
【登場人物】 
 
 
アイーダ:エチオピアの王女。エジプトに
 
【出演(配役)】

○アイーダ(ソプラノ)マリア・ホセ・シーリス

〈Profile〉

今日を代表するソプラノ歌手の一人として認められている。ベルカントからヴェリズモまで幅広いレパートリーを持ち、ヴェルディやプッチーニの最も有名なヒロインにおいて高い評価を得る演者として頭角を現わした。イタリア系ウルグアイ人として生まれ、幼い頃から音楽を学び始めた。パリ国立高等音楽院で学んだ後は、イレアナ・コトルバシュに師事した。

2008年、ジェノヴァのカルロ・フェリーチェ劇場における《イル・トロヴァトーレ》レオノーラでヨーロッパ・デビューを果たし、その後ミラノのスカラ座で《アイーダ》タイトルロールを演じた。それ以来、キャリアを急速に伸ばし、とりわけ16年には《蝶々夫人》タイトルロールでスカラ座のシーズン開幕を飾り、それからマノン・レスコーやフランチェスカ・ダ・リミニを演じた。17年には名誉ある国際オペラ賞(オスカー・デッラ・リリカ)を受賞し、一躍スターダムにのし上がった。イタリアの主要な劇場に出演しており、特にアレーナ・ディ・ヴェローナとは長期的な関係を築いている。
ドイツ、ベルギー、スペインと並んで、ラテンアメリカ、日本、ロシア、イスラエル、東欧諸国の主な劇場とも変わらぬ繋がりを築いている。得意な役としては、これまでに150回演じたアイーダをはじめ、オダベッラ、アビガイッレ、ヴァロワ家のエリザベッタ、ルクレツィア・コンタリーニ、トスカ、マノン・レスコー、修道女アンジェリカ、アドリアーナ・ルクヴルール等がある。昨シーズンは、ロイヤル・オペラ・ハウス、バーデン=バーデン祝祭劇場、グラーツ楽友協会にデビューした。
CDやDVDの録音も数多くあり、『ロッシーニのためのミサ曲』や『蝶々夫人』(デッカ)の他、『ドン・ジョヴァンニ』、『三部作』、『アッティラ』、『ナブッコ』、『二人のフォスカリ』、『ノルマ』、『アドリアーナ・ルクヴルール』(ナクソス、ダイナミック)等が挙げられる。
最近の出演としては、アレーナ・ディ・ヴェローナで《アイーダ》、聴衆と批評家から絶賛された《蝶々夫人》と《ナブッコ》アビガイッレ、さらにフィレンツェ五月音楽祭で《エルナーニ》と《イル・トロヴァトーレ》、ドレスデン・ゼンパーオーパーで《アイーダ》、ジェノヴァのカルロ・フェリーチェ劇場で《トスカ》、ボローニャ市立劇場で《蝶々夫人》、ベルリン・ドイツ・オペラで《ナブッコ》等がある。
この2023/24年シーズンには、ベルリン国立歌劇場で《アイーダ》、東京へのツアーで《トスカ》、スカラ座で《ドン・カルロ》エリザベッタ、モンテカルロ歌劇場で《カヴァレリア・ルスティカーナ》サントゥッツァ、トリエステ・ヴェルディ劇場で《ナブッコ》アビガイッレ等に出演する予定

 

○ラダメス(テノール)ルチアーノ・ガンチ

〈Profile〉

 新しい世代では最も興味の惹かれる声を持つ一人とみなされているテノール歌手。彼が音楽への最初のステップを踏み出したのは、ドメニコ・バルトルッチが指揮するシスティーナ礼拝堂合唱団のボーイ・ソプラノとしてだった。子どもの頃から歌、ピアノ、オルガンを学び始め、ローマのサンタ・チェチーリア、フロジノーネのリチーニオ・レフィーチェ、ラティーナのオットリーノ・レスピーギといった音楽院でディプロマを取得した。音楽の勉強に加えて、測量の高校卒業資格も取得。その後、ローマ・サピエンツァ大学で都市計画や土地計画における土木工学の学位を取得した。2006年以来、主にローマでオテロ・フェリーチ指導のもとに抒情的な歌唱を勉強した。

たっぷりとした輝かしい声質に恵まれ、09年にモーツァルト《フィガロの結婚》とプッチーニ《ジャンニ・スキッキ》でデビュー、10年にはヴェルディ《椿姫》アルフレードに役デビューした。これらの公演に続いて、ロドルフォ、ピンカートン等でプッチーニの数作品にデビューした他、《十字軍のロンバルディア人》オロンテ、《カヴァレリア・ルスティカーナ》トゥリッドゥに出演した。12年にはザルツブルクでの《椿姫》で国際デビューを果たし、その数カ月後には、《友人フリッツ》、ベートーヴェン《オリーブ山上のキリスト》、モーツァルト《レクイエム》、《イル・トロヴァトーレ》にデビューを飾った。また、12年にはシャンドス・レーベルにマスカーニ作品の新アルバムを録音した。以降さらに新しい役が続き、13年に《海賊》、《アッティラ》、ヴェルディ《レクイエム》、14年に《トスカ》マリオ・カヴァラドッシ、《マクベス》マクダフ、ベートーヴェン「交響曲第9番」、15年にヴェルディ《ルイザ・ミラー》ロドルフォ、ロッシーニ《エジプトのモーゼ》アメノフィ(DVDに収録)、《ノルマ》ポリオーネ、16年に《ジョヴァンナ・ダルコ》カルロ7世(DVDに収録)、17年には《仮面舞踏会》グスタフ3世、ヴェルディ《スティッフェリオ》タイトルロール(DVDに収録)、プッチーニ《ミサ曲》、ドン・ホセを歌っている。
翌年、ザンドナーイ《フランチェスカ・ダ・リミニ》マラテスティーノ、ドニゼッティ《ランメルモールのルチア》エドガルド、ロッシーニ作曲《小荘厳ミサ曲》にデビュー。19年、ヴェルディ《運命の力》ドン・アルヴァーロと《アンドレア・シェニエ》タイトルロールを歌い、20年にラダメス、21年にはボローニャ市立劇場で《アドリアーナ・ルクヴルール》マウリツィオを演じた。その後、クレモナのポンキエッリ劇場のオープニング・ガラで歌い、マチェラータ音楽祭の開催式では、音楽祭のオペラ100周年を記念して《アイーダ》ラダメスを歌った。また、アムステルダムのコンセルトヘボウでは、演奏会形式のジョルダーノ《フェドーラ》ロリス・イパノフにデビューした。21年には、ウェックスフォード・オペラ・フェスティバルでカタラーニ《エドメア》オベルトにもデビュー、《アドリアーナ・ルクヴルール》と《トスカ》をウィーン国立歌劇場で初めて歌った。22年には、ヴェルディ《アロルド》アロルドでラヴェンナ、ピアチェンツァ、モデナの各劇場にデビューし、《妖精ヴィッリ》ロベルトでトゥールーズのアール・オ・グランにデビューした。ボローニャ市立劇場でアンドレア・シェニエをイタリアで初めて歌い、リエージュのワロニー王立歌劇場で《アルツィーラ》ザモーロ、そして彼の代表的な役柄のひとつであるカヴァラドッシでローマ歌劇場にデビューした。23年には、再びローマ歌劇場で《アイーダ》ラダメス、他に《道化師》、《蝶々夫人》を歌った。
最近および今後の出演としては、ボローニャの新市立劇場でヴェルディ・ガラと《マノン・レスコー》、ワロニー王立歌劇場で《アドリアーナ・ルクヴルール》、ベルリン・コンツェルトハウスで《ダリンダ》、アレーナ・ディ・ヴェローナで《アイーダ》、サッサリで《道化師》、トッレ・デル・ラーゴとオスロで《蝶々夫人》、ピアチェンツァとモデナで《フェドーラ》と《二人のフォスカリ》、東京の新国立劇場で《シモン・ボッカネグラ》、ザルツブルクでヴェルディ《レクイエム》、デュッセルドルフで《ドン・カルロ》、ヴェローナのフィラルモニコ劇場で《仮面舞踏会》と《スティッフェリオ》、ヴェルディ音楽祭の《マクベス》と《アッティラ》等が挙げられる。
ここ数年で歌ってきた会場には、ミラノ・スカラ座、ナポリのサン・カルロ劇場、アレーナ・ディ・ヴェローナ、ボローニャ市立劇場、パレルモのマッシモ劇場、フィレンツェ五月音楽祭、パルマのヴェルディ音楽祭とレージョ劇場、トッレ・デル・ラーゴのプッチーニ音楽祭、ヴァッレ・ディトリア音楽祭、ザルツブルクのモーツァルトのための劇場、グラーツ歌劇場、ベルリン・コンツェルトハウス、バレンシアのソフィア王妃芸術宮殿、バルセロナのリセウ大劇場、アムステルダムのコンセルトヘボウ、マチェラータのアレーナ・スフェリステリオ、バーリのペトルッツェッリ劇場、アテネのヘロディス・アッティコス音楽堂、ベルギーのアントワープとヘントの歌劇場、モスクワのボリショイ劇場とサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場、ブダペスト春の音楽祭、オマーンのマスカット王立歌劇場、アラブ首長国連邦のアブダビ劇場、カザフスタンのアスタナ歌劇場、北京の国家大劇院、兵庫オペラ・フェスティバル、ソウルの芸術の殿堂等がある。
また、コンサートやリサイタルを、ローマ、ナポリ、パルマ、カッラーラ、ミラノ、ブレシア、パドヴァ、アンコーナ、ペルージャ、ルッカ、ヴェローナ、ブッセート、クレモナ、ピアチェンツァの他、インド、カナダ、スイス、スロヴェニア、チェコ、韓国、日本、ハンガリー、オマーン、マルタ、ウクライナ、ロシアでも行なっている。 

 

○アモナズロ(バリトン):セルバン・ヴァシレ

〈Profile〉

 故郷ブカレストの国立音楽大学で学び、国立芸術大学の試験も受けている。その後、2007~09年にかけて、クリスティアン・バデア(指揮)、エドゥアルト・トゥマジャン(バリトン)、ネリー・ミリチオウ(ソプラノ)、ジョルジェ・クラスナル(バス)のマスタークラスを受講した。
数多くの賞を受賞しており、スポレート(イタリア)、マエストリ・アルテイ・リリチェ(ルーマニア)、アスリコ(イタリア)、第1回サリチェ・ドーロ(イタリア)第2位等が挙げられる。
これまでに、《ランメルモールのルチア》、《セビリアの理髪師》、《エディプス王》、《エジプトのジュリアス・シーザー》、《ビリー・バッド》、《チェネレントラ》等の作品を、コモ、ブレシア、ブカレスト、ラヴェンナ等で歌っている。
主な出演としては、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場とアムステルダムのオランダ国立オペラで《ファルスタッフ》フォード、ブカレスト国立歌劇場で《エフゲニー・オネーギン》、《ファウスト》ヴァランタン、《愛の妙薬》ベルコーレ、《セビリアの理髪師》フィガロ、ジョルジェ・エネスク・フェスティバルでマーラーの交響曲第8番、《ファウストの劫罰》ブランデル、《ヴォツェック》、カイロ・オペラハウスとブダペスト、バッサーノ・デル・グラッパで《イル・トロヴァトーレ》ルーナ伯爵、また、クラヨーヴァ・オペラとグラーツ・オペラ、ブカレスト国立歌劇場で《ドン・カルロ》ポーザ侯爵、フィレンツェ市立劇場とテルアビブのイスラエル・オペラで《ファウスト》ヴァランタン、ラヴェンナ音楽祭とノルチャ(リッカルド・ムーティ指揮)、クルジュ=ナポカで《マクベス》、ラヴェンナ音楽祭(舞台監督クリスティーナ・ムーティ)とクルジュ=ナポカ・オペラで《ナブッコ》、ローマ歌劇場とダブリンで《椿姫》ジョルジョ・ジェルモン、フィレンツェ五月音楽祭で《異国の女》ヴァルデブルゴ男爵、ラヴェンナで《アイーダ》アモナズロ、《カヴァレリア・ルスティカーナ》アルフィオ、《道化師》トニオに出演した他、ニース・オペラ座、マルセイユ市立オペラ、トゥーロン歌劇場、アヴィニョン歌劇場で《スペードの女王》エレツキー公爵、ミラノとラヴェンナ(リッカルド・ムーティ指揮)で《ナブッコ》、シュトゥットガルト州立歌劇場で《蝶々夫人》シャープレス、ニース・オペラ座で《ラ・ボエーム》マルチェッロ、ヤシ(ルーマニア)で《カルメン》エスカミーリョ、ボローニャ市立劇場で《イオランタ》エブン=ハキア、東京・春・音楽祭のリッカルド・ムーティ指揮で《仮面舞踏会》レナート等がある。
今後の出演予定としては、《椿姫》でアヴィニョン歌劇場、ハンガリー国立歌劇場、プラハ国民劇場、《ナブッコ》でラヴェンナ(リッカルド・ムーティ指揮)、《イル・トロヴァトーレ》でマルセイユ歌劇場等がある。


○アムネリス(メゾ・ソプラノ)ユリア・マトチュキナ

〈Profile〉

ロシア出身のメゾ・ソプラノ歌手。2022/23年シーズンは、一連の重要なデビューと再出演を飾った年である。再出演では、メトロポリタン歌劇場で《ドン・カルロ》エボリ公女、ロサンゼルス・オペラで《仮面舞踏会》ウルリカ、ベルリン・ドイツ・オペラで《アイーダ》アムネリスと《ローエングリン》オルトルート、チューリッヒ歌劇場で《イル・トロヴァトーレ》アズチェーナ、ローマ歌劇場とボルティモア交響楽団、オランダ国立オペラ(演奏会形式)でヴェルディ《レクイエム》等があり、デビューでは、東京・春・音楽祭でリッカルド・ムーティ指揮による《仮面舞踏会》ウルリカの他、ロイヤル・オペラ・ハウスで《ドン・カルロ》エボリ公女、バイエルン国立歌劇場で《仮面舞踏会》ウルリカ等が挙げられる。

さらなるデビューとしては、コヴェント・ガーデンのロイヤル・オペラ・ハウス、アレーナ・ディ・ヴェローナ、ベルリン・ドイツ・オペラ、オランダ国立オペラ、チューリッヒ歌劇場、ボルティモア交響楽団等で、《ドン・カルロ》エボリ公女、《イル・トロヴァトーレ》アズチェーナ、《アイーダ》アムネリス、《カルメン》タイトルロール、《ローエングリン》オルトルート、ヴェルディ《レクイエム》等に出演。
最近の主な出演としては、メトロポリタン歌劇場で《リゴレット》マッダレーナ、ロサンゼルス・オペラで《タンホイザー》ヴェーヌス、スカラ座とシカゴ交響楽団(リッカルド・ムーティ指揮)で《仮面舞踏会》ウルリカ、アレーナ・ディ・ヴェローナに《カルメン》タイトルロールでハウス・デビュー、オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団とヴェルディ《レクイエム》、パリ国立オペラで《ホヴァーンシチナ》マルファ、ベルリン・ドイツ・オペラで《ドン・カルロ》エボリ公女と《カルメン》、ザルツブルク音楽祭とハンブルク州立歌劇場で《ルイザ・ミラー》フェデリカ、ラス・パルマスで《カヴァレリア・ルスティカーナ》サントゥッツァ、ロッテルダムのデ・デーレンで《ファウストの劫罰》マルグリート、フィラルモニ・ド・パリで《パルジファル》クンドリ、東京の新国立劇場で《ドン・カルロ》エボリ公女と《サムソンとデリラ》デリラ、ミュンヘンのガスタイクとエルプフィルハーモニー・ハンブルク、バーデン=バーデンで《トリスタンとイゾルデ》ブランゲーネ、モスクワのボリショイ劇場と東京の新国立劇場で《皇帝の花嫁》リュバーシャ、サンクトペテルブルグのマリインスキー劇場では、《アイーダ》アムネリス、《アドリアーナ・ルクヴルール》ブイヨン公爵夫人、《トロイアの人々》ディドン、《サムソンとデリラ》デリラ、《修道院での婚約》クララ等といった役を演じた。
マリインスキー劇場屈指のソリストとして、《アイーダ》アムネリス、《ドン・カルロ》エボリ公女、《アドリアーナ・ルクヴルール》ブイヨン公爵夫人、《トロイアの人々》ディドン、《サムソンとデリラ》デリラ、《タンホイザー》ヴェーヌス、《パルジファル》クンドリ、《スペードの女王》ポリーナ、《ベンヴェヌート・チェッリーニ》アスカーニオ、《ドン・キショット》ドゥルシネ、《ファウストの劫罰》マルグリート、《オルレアンの少女》ジャンヌ・ダルク、《ホヴァーンシチナ》マルファ等で登場している。2015年、第15回チャイコフスキー国際コンクールで第1位と金メダルを受賞した。
今後の予定としては、《仮面舞踏会》ウルリカでバイエルン国立歌劇場、《カヴァレリア・ルスティカーナ》サントゥッツァでシカゴ・リリック・オペラにデビュー、《アイーダ》アムネリスと《ローエングリン》オルトルートでベルリン・ドイツ・オペラに再出演する他、《タンホイザー》ヴェーヌスと《イル・トロヴァトーレ》アズチェーナでバイエルン国立歌劇場、《ドン・カルロ》エボリ公女でドレスデン・ゼンパーオーパー、《サムソンとデリラ》デリラでテネリフェ歌劇場、《カルメン》タイトルロールでラス・パルマス歌劇場、ヴェルディ《レクイエム》でチューリッヒ歌劇場、ロイヤル・オペラ・ハウスへの再出演等がある。

 

○ランフィス(バス):ヴィットリオ・デ・カンポ

〈Profile〉

 1992年イタリアのティラーノ生まれ。ミラノ=ビコッカ大学で経済学と商学を学びながら、同時にパトリツィア・ファブリ指導のもとでオペラ歌唱の研鑽に励んだ。
その才能は様々な国際声楽コンクールで認められており、受賞した賞には次のようなものがある。2022年、第14回ジュリオ・ネリ・コンクールで最優秀バス・ヴォイス賞及び聴衆賞、22年ハンス・ガボア・ベルヴェデーレ国際声楽コンクールで聴衆賞及びユールマラ(ラトビア)のズィンタリ・コンサートホールにおける特別賞コンサート
22年SOIイタリア・オペラ学校コンクールで第3位、カリアリ・リリコ劇場賞(2022/23シーズン契約)、ブラジル・サンパウロ市立劇場賞(コンサートもしくは新制作参加)、22年マルモ・アロペラ・コンクール第1位、23年ジュディッタ・パスタ・コンクール第1位、 オペラ・ラス・パルマス賞(2023/24シーズン契約)、22年マグダ・オリヴェロ国際声楽コンクール第1位等である。
トッレ・デル・ラーゴのプッチーニ音楽祭における《トスカ》で初舞台を踏み、ラヴェンナのアリギエーリ劇場における秋の三部作ではクリスティーナ・マッツァヴィッラーニ・ムーティ演出、ニコラ・パスコフスキ指揮による《アイーダ》でランフィスに役デビュー、またアレッサンドロ・ベニーニ指揮による《ノルマ》オロヴェーゾにも抜擢された。さらに、マドリードのテアトロ・レアルで開催されたコファレス財団の第25回チャリティ・コンサートでは、カイナン・ジョンズ指揮で《ラ・ボエーム》コッリーネを演じた。この役はスペインのオーディトリオ・デ・サラゴサでも演じた。
ソリストとしては、マドリードのテアトロ・レアルでカイナン・ジョンズ指揮によるベートーヴェンの交響曲第9番に出演、マドリード国立音楽堂とサラゴサでも歌った。
「リッカルド・ムーティ イタリア・オペラ・アカデミー」に参加、リッカルド・ムーティ指揮で《ナブッコ》ベルの大司教を、ミラノ、リミニ、ラヴェンナで歌った。22年夏には、エアフルトのドームシュトゥーフェン音楽祭でもこの役を演じている。
アルバニア・ティラナのシュチプタルラジオ・テレビでは、ヤーコポ・シーパリ・ディ・ペスカッセーロリ指揮によるヴェルディ《レクイエム》でソリストを務めた。また、ラヴェンナとリミニで《ラ・ボエーム》コッリーネ、23年夏にはエアフルトのドームシュトゥーフェンでベルリオーズ《ファウストの劫罰》メフィストフェレスを演じた。
アレーナ・ディ・ヴェローナ音楽祭では、

1992年イタリアのティラーノ生まれ。ミラノ=ビコッカ大学で経済学と商学を学びながら、同時にパトリツィア・ファブリ指導のもとでオペラ歌唱の研鑽に励んだ。
その才能は様々な国際声楽コンクールで認められており、受賞した賞には次のようなものがある。2022年、第14回ジュリオ・ネリ・コンクールで最優秀バス・ヴォイス賞及び聴衆賞、22年ハンス・ガボア・ベルヴェデーレ国際声楽コンクールで聴衆賞及びユールマラ(ラトビア)のズィンタリ・コンサートホールにおける特別賞コンサート、

22年SOIイタリア・オペラ学校コンクールで第3位、カリアリ・リリコ劇場賞(2022/23シーズン契約)、ブラジル・サンパウロ市立劇場賞(コンサートもしくは新制作参加)、22年マルモ・アロペラ・コンクール第1位、23年ジュディッタ・パスタ・コンクール第1位、 オペラ・ラス・パルマス賞(2023/24シーズン契約)、22年マグダ・オリヴェロ国際声楽コンクール第1位等である。
トッレ・デル・ラーゴのプッチーニ音楽祭における《トスカ》で初舞台を踏み、ラヴェンナのアリギエーリ劇場における秋の三部作ではクリスティーナ・マッツァヴィッラーニ・ムーティ演出、ニコラ・パスコフスキ指揮による《アイーダ》でランフィスに役デビュー、またアレッサンドロ・ベニーニ指揮による《ノルマ》オロヴェーゾにも抜擢された。さらに、マドリードのテアトロ・レアルで開催されたコファレス財団の第25回チャリティ・コンサートでは、カイナン・ジョンズ指揮で《ラ・ボエーム》コッリーネを演じた。この役はスペインのオーディトリオ・デ・サラゴサでも演じた。
ソリストとしては、マドリードのテアトロ・レアルでカイナン・ジョンズ指揮によるベートーヴェンの交響曲第9番に出演、マドリード国立音楽堂とサラゴサでも歌った。
「リッカルド・ムーティ イタリア・オペラ・アカデミー」に参加、リッカルド・ムーティ指揮で《ナブッコ》ベルの大司教を、ミラノ、リミニ、ラヴェンナで歌った。22年夏には、エアフルトのドームシュトゥーフェン音楽祭でもこの役を演じている。
アルバニア・ティラナのシュチプタルラジオ・テレビでは、ヤーコポ・シーパリ・ディ・ペスカッセーロリ指揮によるヴェルディ《レクイエム》でソリストを務めた。また、ラヴェンナとリミニで《ラ・ボエーム》コッリーネ、23年夏にはエアフルトのドームシュトゥーフェンでベルリオーズ《ファウストの劫罰》メフィストフェレスを演じた。
アレーナ・ディ・ヴェローナ音楽祭では、アンナ・ピロッツィ、グレゴリー・クンデ、パク・ヨンジュンとの共演で、ダニエル・オーエン指揮による《アイーダ》エジプト王を歌った。
今後の予定としては、パレルモのマッシモ劇場でリッカルド・ムーティ指揮、キアラ・ムーティ演出による《ドン・ジョヴァンニ》騎士長、「リッカルド・ムーティ イタリア・オペラ・アカデミー」で《ノルマ》オロヴェーゾ等がある。最後には、もう一度《ラ・ボエーム》コッリーネを、ベニート・ペレス・ガルドス劇場の「オペラ・デ・ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア」で歌う予定。

・ピロッツィ、グレゴリー・クンデ、パク・ヨンジュンとの共演で、ダニエル・オーエン指揮による《アイーダ》エジプト王を歌った。
今後の予定としては、パレルモのマッシモ劇場でリッカルド・ムーティ指揮、キアラ・ムーティ演出による《ドン・ジョヴァンニ》騎士長、「リッカルド・ムーティ イタリア・オペラ・アカデミー」で《ノルマ》オロヴェーゾ等がある。最後には、もう一度《ラ・ボエーム》コッリーネを、ベニート・ペレス・ガルドス劇場の「オペラ・デ・ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア」で歌う予定。

 

その他日本人キャストについては、良く名の知られた歌手達なので、詳細は割愛します。

○エジプト国王(バス):片山将司

○伝令(テノール):石田基幾

○エジプト国王(バス)片山将司

○巫女(ソプラノ)中畑有美子

 

【粗筋】

第 一幕
第 1 場 古代エジプトの都市メンフィスにある宮殿、その広間
祭司⻑ランフィスが、⼥神からエジプト軍の将を指名する神託を授かったとラダメスに告げる。⾃分こそはと期待に胸をふくらます⼀⽅、今は奴隷として囚われている敵軍の王⼥アイーダへの愛を吐露するラダメス。そこへ王⼥アムネリスが登場。愛するラダメスの気を惹こうとするが、アイーダの姿に動揺する
ラダメスを⾒て、⼆⼈の秘めた思いに気づき、嫉妬の炎を燃やす。王が家⾂を従えて現れ、エチオピア軍のテーベ侵略を報せる。敵軍の将はアイーダの⽗アモナズロ。エジプト王がラダメスを軍の将に任命すると、⼀同は「勝って帰れ!」と⼠気を上げる。みなが去り、ひとり残されたアイーダは、愛するラダメスか、祖国の⽗か、選べぬ気持ちに思い悩む。第 2 場 神殿の内部巫⼥とランフィスをはじめとする神官たちが、創造神プタハ(フター)に祈りを捧げる。巫⼥たちの神秘的な踊り。ランフィスはラダメスに聖なる剣を授け、神聖な武具を⾝に着けさせる。ラダメスの武運を願って、⼀同の祈りの合唱が重なる。

 

第 二幕
第 1 場 アムネリスの館、その広間
⼥奴隷たちに囲まれているアムネリス。若いムーアの奴隷たちの踊り。そこへアイーダが登場。アムネリスは同情すると⾒せかけて、アイーダの本意を探る。「ラダメスが戦いで死んだ」と嘘を告げると、アイーダはいたたまれなくなり、ラダメスへの愛を⾃⽩する。奴隷のくせに! と激昂するアムネリス。怒りを鎮めるよう、アイーダは必死に懇願する。

第 2 場 テーベの城⾨前
エジプト王臨席のもと、勝利の⼤合唱。華麗なファンファーレとともにエジプト軍が凱旋する。戦利品を携えた⼀隊の踊り。ラダメスが現れ、捕虜たちが御前に引き出される。そこにアモナズロを⾒つけて息をのむアイーダ。しかしアモナズロは、⾃分が王であることを漏らさぬようアイーダにこっそり命ずる。アモナズロと捕虜たちはエジプト王に助命を嘆願するが、ランフィスら神官は死罪を強く主張する。ラダメスの願いにより、捕虜たちには恩赦が与えられる。さらにエジプト王は、ラダメスに褒美として王⼥アムネリスと、いずれ王
位を譲ると宣⾔する。歓喜に包まれる⺠衆や捕虜たち。そのなかで勝ち誇るアムネリス、絶望するラダメスとアイーダ、復讐を誓うアモナズロ、様々な思いが交錯して壮⼤なアンサンブルとなる。

 

第 三幕
ナイル河の岸辺
遠くイシスの神殿から⼈々の合唱。ランフィスとアムネリスが、婚前の祈りを捧げに神殿へ向かう。アイーダ登場。愛を失った今、⼆度と祖国を⾒ることはないと歌う。そこにアモナズロが現われ、今こそ復讐をはたすとき、ラダメスからエジプト軍の機密を聞き出せ、さもなくばもはや娘ではない! とアイーダを脅す。祖国と愛との間で引き裂かれ、苦悶するアイーダだが、最後は了承してしまう。アモナズロが隠れると、ラダメスが姿を⾒せる。進退きわまったアイーダは、ともに逃げようと促すが、ラダメスはさすがに躊躇する。ならば
アムネリスのもとへ⾏きなさいと⾔われ、ラダメスは逃げる決⼼をする。そしてエジプト軍が向かう⾏路を聞かれ、うっかり⼝を滑らせてしまう。それを聞いたアモナズロが突然、姿を現わし、⾃分こそエチオピア王と名乗りをあげる。愕然とするラダメス。ランフィスとアムネリスも神殿から出てきて、裏切者!となじる。アムネリスに襲いかかるアモナズロを制してラダメスは捕縛されるが、その隙にアモナズロとアイーダを逃がす。


第 四 幕
第 1 場 メンフィスの宮殿、その広間愛するラダメスを死罪にすべきか救うべきか、懊悩するアムネリスだが、思いを断ち切れず、ラダメスを連れてこさせる。アムネリスは、アイーダを忘れて⾃分を選ぶよう説得をこころみるが、ラダメスはアイーダのために死ねるなら本望と、聞く⽿を持たない。ランフィスら神官たちによる審問が始まるが、ラダメスはいっさい弁明しようとしなかったため、⽣きながら墓に⼊れられると
いう残酷な刑が宣告される。絶望したアムネリスは神官たちを激しく呪う。第 2 場 神殿の内部と、その下にある墓岩⼾が閉められ、墓のなかにひとり閉じ込められるラダメス。アイーダを思い返していると、何と暗闇のなかにアイーダその⼈が! ラダメスとともに死のうと、予め墓に忍び込んでいたのだ。ようやく愛が成就し、恍惚とするなか今⽣に別れを告げる⼆⼈。そこへ喪服姿のアムネリスが神殿に現われ、墓の上で愛する者へ鎮魂の祈りを捧げる。巫⼥や神官たちの祈祷が重なりつつ、やがてアイーダとラダメスの声も途切れていき、ひっそりと消え⼊るように幕が下りる。

 

【上演の模様】 

毎年「東京春祭」に参加しているムーティは、今回は演奏会形式の「アイーダ」を指揮しました。平日14:00開演のMatinee公演にもかかわらず、文化会館大ホールは観客でごった返していました。今年の「春音楽祭」の大ホール公演では、3/27の「トリスタンとイゾルデ」、4/6の「アルマ・マーラー+ブルックナー」、4/7の「ニーベルングの指輪」、4/13の「ブルックナーのミサ曲」等を聴きましたが、今回は一番観客が多かったように思います。ホールはほぼ満席状態だったのではないでしょうか。これ等のオペラは何れも演奏会形式、今回は「アイーダ」というありふれた演目にも関わらず、大盛況だったのは、ひとえにムーティーの人気振り依るところが大きいと思いました。舞台に登場したムーティには会場から更なる拍手が沸き起こり、終演後のカーテンコール時のムーティに対する聴衆の熱狂はすさまじいものが有りました。その熱狂は時間的にも何時までも長く続いたのでした。

 さて今回の舞台には、奥の雛壇には男女合唱団が同数づつ計100人程が右左に並び、その下に打、金管、木管、弦、そして指揮台のすぐ奥の弦部隊の中心の狭い空間にソリスト達が横2列に並びました。ムーティとしてはソリストも眼中に置きたかったのでしょう。楽器編成は、三管編成(Fl.3 Ob.2 Cl.3  Hrn.4 Trmp.3 Trmb.3 Fg3その他打楽器)弦楽五部14型(14-14-12-6-8)思ったより数が少ない(目測なので若干の誤差有り)。特筆すべきは、第二幕第二場で舞台の両はじに、それぞれ4+4=8つのアイーダトランペットが配置されたこと。凱旋行進曲を吹き鳴し華やかな勝利のファンファーレを響かせました。 

第一幕 

Vn,アンサンブルの序奏が、高音で細い糸の様にひき出され、続くVc.アンサンブルが鳴るとしっかりとしたテーマ奏が弦・管で響き出しました。ソリストは、椅子に座っていましたが、先ず最初に神官のランフィス役のカンポとラダメス役のガンチが起立、再度エチオピアが攻めて来ること、イシス神から神官に、攻撃から国を守る者は誰かのお告げがあったこと、誰であるかは王に告げる前にラダメスに教えることは出来ないこと等を対話の形で歌い進みました。ガンポの歌声は太く重いバリトンで会場に良く響いていました。一方テノールのガンチの方は、粗削りの感は残りますが、声量も有るテノールを響かせ、続いて有名なアリア❝Ceteste Aida (清きアイーダ)・・・❞を歌い出しました。高い音も最初はかなりの無理をして出した印象ですが、キチンと高い音程をしっかり出ていました。特に❝天使の様な清らかなアイーダ、麗しい姿形よ❞そして❝ergenti un trono vicino al so(冠を捧げよう)❞の「ergenti」を特に強く声を張り上げた時には会場一杯に響き渡ったと思います。

 すると次はアムネリス役のマトーチュキナが歌う番です。

❝Quale insolita gioia Nel tuo sguardo! Di quale Nobil fierezza ti balena il volto!Degna d'invidia, oh! Quanto Saria la donna il cui bramato aspetto Tanta luce di gaudio in te destasse! ❞と歌い、ラダメスの嬉しそうな様子に皮肉っぽく言ったのでした。

それに対するラダメスの返歌は、❝嬉しい夢に心も踊る。今日、女神が我がエジプトの総大将の名前を告げ給います。あぁ、神よ、我を選び給え。❞ とアイーダの事は誤魔化したのですが、アムネリスは内心、❝まだそのほかにも何か、嬉しいことでもあるの? この街にお好きな人でも?❞と歌い、内心疑念を抱くのでした。同様にラダメスは、❝私が!(独白)不思議だ!では、この胸を悟られたのか、あの人の名がもしも知れたら❞と内心では心配します。

マトーチュキナの歌い振りは、それは磨き抜かれたメゾソプラノだとすぐ分かる響きを有していましたが、先に歌ったアイーダ同様、何か少しもやもや感が抜けないというかすっきりとストレートに心を打つ歌い振りでは無かったのでした。これは後程の幕では、かなり違った印象になるのですが。

 この後、アイーダとアムネリスのやり取り、ラダメスの独り言の歌を通して、三角関係の疑念が浮き彫りになって行き、互いの胸の内を歌うのでした。ここでは、やはりアイーダのシーリは弱含みの歌唱で、アムネリス役のマトーチュキナは次第に調子を上げ、低迷する女性歌手分をラダメス役ガンチが頑張っているといった様相でした。

換言すれば、タイトルロール、アイーダ役のマリア・ホセ・シーリは、第一幕で、エジプトの王女アムネリス役ユリア・マトーチュキナと歌のやり取りを交わしたのですが、最初だからなのか、シーリは歌い振りは美しい響きを有しているものの、強さに欠けるソプラノで、且つマトーチュキナの方も、それよりかは大ホールに届く声でしたが、思っていたよりやや不満なメゾの初歌を聴いた思いでした。

 

そして国王に指揮権を委ねられたのはやはりラダメスでした。国王は有名な一節❝Su! del Nilo al sacro lidoAccorrete, Egizi eroi;D'ogni cor prorompa il grido:Guerra e morte, morte allo stranier!(行け、ナイルの岸辺、急げ強者よ勇ましい勇者よ、敵を打ち砕け)❞をリズミカルに敵愾心を次第に駆り立てるが如く歌ったのでした。此の国王役は日本人歌手の片山将司さん、国王として硬いけれど威厳のある立派なバスの声を張り上げ、随分と健闘していたと思います。

オケのスペクタクルでドラマティックな大きな音と大合唱の中、❝Guerra! Guerra! Guerra!(立て!立て!立て!)❞と囃し立てられるラダメス、さらにアムネリスには❝Ritorna vincitiri(勝ちて帰れ!)❞と駆り立てられ、アイーダにまでが,❝勝ちて帰れ!私の我が口からかかる言葉が出るとは、我が父に勝てと、私を連れ帰り、私に再び、栄誉を与えるために戦うに。我が父に勝てと、あさましや、その血潮に濡れ、誇らしげに帰り来る人を、我が父もまた囚われて共に帰る❞と深い悩みと苦しみの気持ちを歌い上げられたラダメスは如何なる気持ちだったでしょうか、複雑だったでしょう。単に敵に勝てばすべて目出度し目出度しであれば、戦意も高揚し敵に全力でぶつかるかも知れませんが、ラダメスの気持ちの中には、「たとえ勝ったとしてもその先はどうなるか?アイーダとの関係は?」と一抹の不安があったでしょう。でも総指揮官ですから、そうした気持ちを一端飲み込み、実際に闘う兵士達に大号令を掛けて、エチオピア軍を再び破ったのでしょう、きっと。

第一幕から、ムーティ指揮のオケは大回転、もともと力強いヴェルディの曲をいかん無く持てる力を発揮して演奏している様子でした。一体、この「東京春祭オーケストラ」とはどのような構成員なのか知らなかったので調べたところ、郷古さんをコンマスとする、N響や都響、読売、新日フィル、東フィル、パシフィックフィル、東京シティ・フィル、東響楽団、藝大フィル等の都内オーケストラからの奏者達にソリストを交じえ、その他群馬、岡山、ラハティ市のオーケストラなどからも参加している様です。ソリストも含めほとんどがプロの集団だと思いますから、俄か造りのオーケストラであっても、ムーティと一回リハーサルをすれば、皆さん全て飲み込みが速くて本番でも力を発揮することが出来る人達だったのでしょう、きっと。

 また合唱団の「東京オペラシンガーズ」の実力は先日の「ブルックナーミサ曲3番演奏会」でも証明済みです。今回はその時よりも多いメンバー数でしたので、大ホールでの歌声はそれだけ迫力がアップしました。でもミサ曲とは違ってオペラの演奏会形式ですから、ソリスト中心、オーケストラ中心、そして合唱が演奏全体の色付けをするという役回りでしたので、出番はミサ曲よりはやや少なめだったかな。その役目を立派に果たしていたと思います。

(続く)

 

 

 

 

 

 


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HUKKATS hyoro Roc(再掲)
2023-04-17
新国立劇場オペラ/ベルディ『アイーダ』第五日目鑑賞
 

【演目】ベルディ『アイーダ』

【主催】新国立劇場(NNTT)

【会場】NNTTオペラパレス

【公演日程】2023.4.5~2023.4.21.
Ⅰ.2023年4月5日  (水)18:00

Ⅱ2023年4月8日  (土)14:00

Ⅲ.2023年4月11日(火)14:00
Ⅳ.2023年4月13日(木)14:00

Ⅴ.2023年4月16日(日)14:00

Ⅵ.2023年4月19日(水)18:00

Ⅶ.2023年4月21日(金)14:00

【鑑賞日時】第五日目 2023.4.16.(日)14:00~

【主催者言】

巨匠ゼッフィレッリによる壮大な歴史絵巻!
古代エジプトの愛の悲劇
新国立劇場開場25周年を記念し、祝祭的大作『アイーダ』を上演します。1998年に開場記念公演として制作されたゼッフィレッリの豪華絢爛な演出には、新国立劇場ならではのダイナミックな舞台転換が盛り込まれます。歌手、合唱、バレエ、助演が織りなす"凱旋の場"は音と視覚の大スペクタクル。オペラファンならずとも、一度は観てみたい舞台です。
『アイーダ』はヴェルディ後期の大作で、スエズ運河開通を記念し建設されたカイロ歌劇場で初演されました。1ヵ月後のスカラ座公演ではアンコールが 40回も続く成功を収め、その後も世界の歌劇場で高い人気を誇っています。
物語は、古代エジプトの戦士ラダメスと、敵国エチオピアの王女アイーダの一途な愛を描きます。ラダメスのアリア「清きアイーダ」や、アイーダの「勝ちて帰れ」、「凱旋行進曲」と輝かしい名曲が続き、後半では恋人たちの愛、父娘の想い、誇り、嫉妬など心理的葛藤が描かれます。最終場のアイーダとラダメスの二重唱「運命の岩がとざされた」では、二人の愛が昇華する清らかな音楽が響きます。
タイトルロールには名ソプラノのセレーナ・ファルノッキア、ラダメスには世界最高峰のテノール、ロベルト・アロニカが出演。アムネリスにはベルリン・ドイツ・オペラを中心に欧米の歌劇場で躍進中のアイリーン・ロバーツと、望みうる最高のキャストが揃います。指揮には特にヴェルディを得意とする名匠カルロ・リッツィが待望の再登場です。

 

【上演時間】約3時間50分
(第1幕45分 休憩25分 第2幕45分 休憩25分 第3幕35分 休憩20分 第4幕35分)

【演出・美術・衣裳】フランコ・ゼッフィレッリ

【振 付】石井清子

【再演演出】粟國 淳

【舞台監督】斉藤美穂

【照 明】奥畑康夫

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【指 揮】カルロ・リッツィ

〈Profile〉

  世界有数のオペラ指揮者。生地ミラノ音楽院に学び、ミラノ・スカラ座の音楽スタッフとして経験を積む。1982年に指揮者としてのキャリアをスタートし、オペラとコンサート双方で世界中の一流劇場やフェスティバルで活躍。声楽の知識と演劇的センス、そして世界の劇場で磨かれた協働のスキルにより、オペラの達人として高い評価を獲得している。オペラのレパートリーはイタリア・オペラを中心にワーグナー、リヒャルト・シュトラウス、マルティヌー、ヤナーチェクまで100以上に及ぶ。92~2001年及び04~08年にはウェールズ・ナショナル・オペラ音楽監督を務め、その芸術的水準と国際的知名度を劇的に向上させた。15年から同桂冠指揮者。19年よりオペラ・ラーラ音楽監督。ミラノ・スカラ座、メトロポリタン歌劇場、英国ロイヤルオペラとは特に深い関係を築いており、パリ・オペラ座、テアトロ・レアル、ペーザロ・ロッシーニ・オペラ・フェスティバル、オランダ国立オペラ、シカゴ・リリック・オペラ、チューリヒ歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラ、モネ劇場などでも活躍。最近のオペラ公演では、カナディアン・オペラ・カンパニー『トゥーランドット』、フィレンツェ歌劇場『仮面舞踏会』『椿姫』、ソフィア王妃芸術宮殿『チェネレントラ』、ウェールズ・ナショナル・オペラ『蝶々夫人』、メトロポリタン歌劇場『トスカ』『ラ・ボエーム』、バイエルン州立歌劇場『トスカ』などを指揮。22/23シーズンはメトロポリタン歌劇場『メデア』(シーズン開幕公演)、『トスカ』『ドン・カルロ』、パリ・オペラ座『イル・トロヴァトーレ』を指揮したほか、バイエルン州立歌劇場『マノン・レスコー』、パリ・オペラ座『ロメオとジュリエット』に登場予定。新国立劇場では18年『ファルスタッフ』を指揮している。

【合 唱】新国立劇場合唱団

【合唱指揮】三澤洋史

【バレエ】東京シティ・バレエ団

【児童バレエ】ティアラこうとう・ジュニアバレエ

 

【キャスト】

 


〇アイーダ:セレーナ・ファルノッキア

〈Profile〉

(Serena FARNOCCHIA Soprano)はイタリア・ピエトラサンタ生まれ。1995年フィラデルフィアのルチアーノ・パヴァロッティ国際声楽コンクールで優勝後、ミラノ・スカラ座『ドン・ジョヴァンニ』ドンナ・アンナでデビュー。モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』ドンナ・アンナ、ドンナ・エルヴィーラ、『コジ・ファン・トゥッテ』フィオルディリージ、『フィガロの結婚』伯爵夫人などから、『マリア・ストゥアルダ』タイトルロール、『ノルマ』アダルジーザ、『アンナ・ボレーナ』タイトルロールなどのベルカント・オペラ、ヴェルディでは『ルイザ・ミラー』タイトルロール、『シモン・ボッカネグラ』アメーリア、『ファルスタッフ』アリーチェ、『オテロ』デズデーモナ、『ドン・カルロ』エリザベッタ、プッチーニの『マノン・レスコー』タイトルロール、『蝶々夫人』タイトルロール、『ラ・ボエーム』ミミ、『トゥーランドット』リュー、さらに『カルメン』ミカエラ、『ホフマン物語』アントニアといったフランス・オペラをレパートリーとする。これまでにミラノ・スカラ座、ローマ歌劇場、バイエルン州立歌劇場、チューリヒ歌劇場、フェニーチェ歌劇場、ザクセン州立歌劇場、トリノ王立歌劇場など世界の主要歌劇場に出演を重ねる。フェニーチェ歌劇場、フィレンツェ歌劇場公演やサントリーホールのホール・オペラなどで来日も多い。新国立劇場では2007年『ファルスタッフ』アリーチェ、09年「ニューイヤーオペラパレスガラ」、14年『ドン・カルロ』エリザベッタ、17年『オテロ』デズデーモナに出演している。

〇ラダメス:ロベルト・アロニカ

〈Profile〉

(Roberto ARONICA Tenor)は、イタリア・チヴィタベッキア生まれ。ベルゴンツィのもとで声楽を学ぶ。サンチャゴ・ムニシパル劇場『リゴレット』でデビュー後、ミラノ・スカラ座、メトロポリタン歌劇場、パリ・オペラ座、英国ロイヤルオペラ、シカゴ・リリック・オペラ、バルセロナ・リセウ大劇場、フィレンツェ歌劇場、ローマ歌劇場、ウィーン国立歌劇場、サンフランシスコ・オペラ、ロサンゼルス・オペラなど世界中の主要歌劇場の重要な役に出演。主なレパートリーに、『運命の力』ドン・アルヴァーロ、『イル・トロヴァトーレ』マンリーコ、『アイーダ』ラダメス、『ドン・カルロ』タイトルロール、『オテロ』タイトルロール、『カルメン』ドン・ホセ、『トスカ』カヴァラドッシ、『マノン・レスコー』デ・グリュー、『カヴァレリア・ルスティカーナ』トゥリッドゥ、『サムソンとデリラ』サムソン、『アドリアーナ・ルクヴルール』マウリツィオなどがある。最近の出演に、フィレンツェ歌劇場『運命の力』ドン・アルヴァーロ、ヴェローナ野外音楽祭『アイーダ』ラダメス、ボローニャ歌劇場『トスカ』カヴァラドッシ、オペラ・オーストラリア『ローエングリン』タイトルロール、『カルメン』ドン・ホセ、ボローニャ歌劇場『トスカ』カヴァラドッシ、『オテロ』タイトルロールなど。新国立劇場初登場。

〇アムネリス:アイリーン・ロバーツ

〈Profile〉

 (Irene ROBERTS Mezo soprano)は、
アメリカのメゾソプラノ。パシフィック大学、クリーヴランド音楽院で学び、パームビーチ・オペラのヤングアーティスト・プログラムを修了。ベルリン・ドイツ・オペラ専属歌手として、『カルメン』タイトルロール、『ファウストの劫罰』マルグリート、『ホフマン物語』ニクラウス、『ナブッコ』フェネーナ、『ドン・キショット』ドゥルシネなど多くの公演に出演。近年オランダ国立オペラに『ホフマン物語』ニクラウスで、フェニーチェ歌劇場に『アイーダ』アムネリスで、マチェラータ音楽祭に『カルメン』タイトルロールで、クラーゲンフルト歌劇場に『タンホイザー』ヴェーヌスでデビューした。サンフランシスコ・オペラ『カルメン』タイトルロール、パームビーチ・オペラ『ドン・ジョヴァンニ』ツェルリーナ、『蝶々夫人』スズキ、『フィガロの結婚』ケルビーノ、アトランタ・オペラ『セビリアの理髪師』ロジーナなどにも出演している。21/22シーズンはベルリン・ドイツ・オペラ『カルメン』タイトルロール、『蝶々夫人』スズキなどのほか、サンフランシスコ・オペラ『コジ・ファン・トゥッテ』ドラベッラに出演。『令嬢ジュリー』(ブスマンズ作曲)タイトルロールではロレーヌ歌劇場、ディジョン歌劇場へデビューした。今シーズンはベルリン・ドイツ・オペラ『トリスタンとイゾルデ』ブランゲーネ、『ナブッコ』フェネーナ、『ドン・キショット』ドゥルシネなどのほか、リヨン歌劇場『タンホイザー』ヴェーヌスに出演している。新国立劇場初登場。

【アモナズロ】須藤慎吾(バリトン)

〈Profile〉

(SUDO Shingo)
国立音楽大学卒業、同大学院修了。第42回日伊声楽コンコルソ1位、オルヴィエート国際オペラコンクール2位(イタリア)などを受賞。99年渡伊、各地の劇場にて『椿姫』ジェルモン、『リゴレット』タイトルロール、『オテロ』イアーゴ、『ラ・ボエーム』マルチェッロ、『トスカ』スカルピア、『カルメン』エスカミーリョなどに出演。06年帰国し藤原歌劇団に入団。同団で『愛の妙薬』ベルコーレ、『フィガロの結婚』アルマヴィーヴァ伯爵などに出演。新国立劇場では19年『椿姫』ジェルモンで大成功を収めたほか、『椿姫』ドゥフォール男爵、『アンドレア・シェニエ』フーキエ・タンヴィル、『蝶々夫人』シャープレス、『ルチア』エンリーコ、高校生のためのオペラ鑑賞教室・関西公演『蝶々夫人』シャープレス、高校生のためのオペラ鑑賞教室『トスカ』スカルピア、高校生のためのオペラ鑑賞教室『カルメン』及び同演目びわ湖ホール公演でエスカミーリョに出演。国立音楽大学非常勤講師、藤原歌劇団団員。

 

【ランフィス】妻屋秀和(バス)

〈Profile〉

 (TSUMAYA Hidekazu)
東京藝術大学卒業、同大学大学院オペラ科修了。1994~2001年ライプツィヒ歌劇場、02年~11年ワイマールのドイツ国民劇場専属歌手。これまでにベルリン・ドイツ・オペラ、ベルリン州立歌劇場、ライン・ドイツ・オペラ、スコティッシュ・オペラなどに出演。欧州、日本でモーツァルト、ロッシーニ、ヴェルディ、プッチーニ、ワーグナー、R.シュトラウス等のオペラの主要な役を80役以上演じており、新国立劇場では『ラ・ボエーム』コッリーネ、『ドン・ジョヴァンニ』騎士長、『セビリアの理髪師』ドン・バジリオ、『アイーダ』ランフィス、『ナブッコ』ベルの祭司長、『夜叉ヶ池』鉱蔵、『リゴレット』スパラフチーレ、『ヴォツェック』医者、『アラベッラ』ヴァルトナー伯爵、『ドン・カルロ』宗教裁判長、『マノン・レスコー』ジェロント、『ばらの騎士』警部、『ラインの黄金』ファフナー、ファーゾルト、『魔笛』ザラストロ、『ルチア』ライモンド、『タンホイザー』領主ヘルマン、『トゥーランドット』ティムールなど出演多数。20/21シーズン『夏の夜の夢』クインス、『フィガロの結婚』バルトロ、『イオランタ』ルネ、『ドン・カルロ』フィリッポ二世、『カルメン』スニガに出演。21/22シーズンは『ニュルンベルクのマイスタージンガー』ハンス・フォルツ、『さまよえるオランダ人』ダーラント、『ばらの騎士』オックス男爵、『ペレアスとメリザンド』アルケルに出演。22/23シーズンは『タンホイザー』領主ヘルマン、『リゴレット』スパラフチーレにも出演予定。令和3年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞。二期会会員。

 

【エジプト国王】伊藤貴之(バス) 

<Profile>

(ITO Takayuki)
名古屋芸術大学卒業、同大学院修了。13~14年渡伊。第48回日伊声楽コンコルソ第2位、第6回G.ゼッカ国際声楽コンクール第2位。第41回イタリア声楽コンコルソ金賞受賞。平成24年度愛知県芸術文化選奨文化新人賞受賞。愛知県芸術劇場『ランメルモールのルチア』ライモンドをはじめ、『ドン・ジョヴァンニ』『リゴレット』『トゥーランドット』など多数のオペラに出演。13年藤原歌劇団にデビューし、『ラ・ボエーム』コッリーネ、『ランスへの旅』シドニー卿、『ノルマ』オロヴェーゾなどに出演。新国立劇場では『サロメ』兵士2、『オテロ』モンターノ、『カルメン』スニガ、『ウェルテル』大法官、『ルチア』ライモンドに出演している。22/23シーズンは『ホフマン物語』ルーテル/クレスペルにも出演予定。藤原歌劇団団員。

 

【伝令】村上敏明(テノール)

<Profile>

 (MURAKAMI Toshiaki)
国立音楽大学卒業。日本オペラ振興会オペラ歌手育成部第17期生修了。文化庁派遣芸術家在外研修員としてボローニャに留学。第9回マダムバタフライ世界コンクール優勝など受賞多数。04年には第40回日伊声楽コンコルソ第1位、第35回イタリア声楽コンコルソ・シエナ大賞と国内2大タイトルを獲得。02年にオルヴィエートのマンチネッリ劇場『リゴレット』マントヴァ公爵でヨーロッパデビュー。イタリア各地で『蝶々夫人』ピンカートン、『イル・トロヴァトーレ』マンリーコ、『ナブッコ』イズマエーレ、『トスカ』カヴァラドッシなどに出演。10年にはスポレートのDue Mondi音楽祭より招待され、ヘンツェ作曲『午後の曳航』の舞台上演世界初演で主役のノボル役を演じ絶賛された。藤原歌劇団では『椿姫』アルフレード、『ラ・ボエーム』ロドルフォ、『ルチア』エドガルド、『仮面舞踏会』リッカルド、『リゴレット』マントヴァ公爵などに出演。新国立劇場では『黒船-夜明け』領事、『修禅寺物語』源左金吾頼家、『ドン・カルロ』レルマ伯爵/王室の布告者、『オテロ』ロデリーゴ、『紫苑物語』藤内、『ジャンニ・スキッキ』リヌッチョ、『トゥーランドット』ポン、『ワルキューレ』ジークムント(第1幕)、『カルメン』ドン・ホセ、高校生のためのオペラ鑑賞教室『蝶々夫人』ピンカートン、同『椿姫』アルフレード、同『愛の妙薬』ネモリーノ、同『トスカ』カヴァラドッシなどに出演している。藤原歌劇団団員。

【巫女】十合翔子

 


【粗筋】
《第1幕》
古代エジプト。エジプト軍の若い将軍ラダメスは、王女アムネリスに仕える奴隷アイーダを敵国エチオピアの王女と知らず、密かに愛し合っている。ラダメスは神託によってエチオピア征伐軍総司令官に任命される。人々は「勝ちて帰れ」と若者を激励するが、アイーダはラダメスへの愛と、祖国エチオピアへの想いの間で苦しむ。 


《第2幕》
ラダメスを愛しているアムネリスはアイーダと彼の関係を疑い、アイーダにラダメスは戦死したと嘘を言う。アイーダの動揺を見て、嫉妬に燃えるアムネリス。エジプト軍の勝利を祝う式典が行われ、群衆がラダメス率いるエジプト軍の凱旋を迎える。戦利品に続く捕虜の中に、アイーダの父であり、エチオピア国王の身分を隠したアモナズロがいる。エジプト王は、戦勝の報奨としてラダメスにアムネリスとの結婚を命じる。


《第3幕》
夜のナイル河畔に、アイーダがラダメスとの密会のためにやってくると、父アモナズロが現れて祖国のためにラダメスから軍事機密を聞き出すよう密命を下す。アイーダに情報を流したラダメスは謀反人として捕らえられ、投獄される。


《第4幕》
アムネリスは自分を愛せば命を救おうとラダメスに迫るが、彼は応じようとせず、やがて裁判で死刑を宣告される。地下牢で独り死を待つラダメスの前に牢に忍びこんでいたアイーダが現われ、二人は永遠の愛を誓いながら死を待つ。地上ではアムネリスが死者の冥福を祈り続ける。

 

 

【上演の模様】

歌の重点箇所を振り返ってみますと、

①第一幕ラダメスのアリア「清きアイーダ」

この歌をロベルト・アロニカは、立ち上がりのせいなのかどうか、それ程伸びのある声ではなかったのですが、アイーダの清純な(先進国エジプトと比べたらエチオピアは田舎の小国)素朴な田舎娘(と言っても、れっきとした王女ですが)を誉めるたたえる恋の歌を❝天使の様な清らかなアイーダ、麗しい姿形よ❞と歌い、先ず先ずの出来だったと思います。

 

②凱旋の場(第二幕第二場)

 この戦争に勝利した凱旋将軍たちの行進の場面はこのオペラのみならず、多くのオペラの中でも群を抜いた古代絵画の勝利の場面を復元したかのような錯覚に陥る豪華で華々しい音楽と合唱の大舞台パノラマと言って良いでしょう。見た目ばかりでなくこれまた超、人口に膾炙した凱旋行進曲の音はオケピットばかりでなく、舞台上のバンダトランペッター五、六人が横に整列し吹き鳴らしてファンファーレを響かせていたし、舞台上には一体何人いるのでしょう?衣装も飾りつけも豪勢な群衆やら神官やら貴族たちあらゆるエジプト人達が戦勝ムードを一杯に盛り上げる大合唱の響きを轟かせていました。これぞゼッフィレッリ藝術の真骨頂です。

 

生きた馬まで走らせていた。

 

戦勝品の宝を一杯積んだ車や兵士の行進、僧侶の行進が次々と舞台を横切り、エチオピアの人質・奴隷まで引き立てれられて来ます。

この楽章のフィナーレでは、同じ旋律上に自分の立場からそれぞれの想いの歌詞を歌う多重唱で、複雑な心境を歌いこの凱旋、戦勝祝いの場面をさらに盛り上げていました。

 

これ等の光景を見ていたアイーダが第三幕の始めで歌うのです。

③アリア「おお、我が故郷」

もう帰ることはないだろうと。

この幕まで彼方此方でアイーダ役のセレーナ・ファルノッキーアは歌っていましたが、矢張り突き抜けて目立った声質と声量を持つソプラノでは有りませんが、それでも切々とせつない胸の内を歌うアイーダに同情する人は多いと思います。この辺りはアリア終了の後、すぐにオケの音やら声が鳴り出しすので(拍手しようにも)拍手するタイミングが取れませんでした。(アムネリスの時も同様な箇所有り)

この二人のソプラノTwo Topは幕が進むにつれ声も滑らかに喉から迸り始め、いい歌唱をしていて何回かは大きな拍手が上がっていました。

 

④第四幕第一場

アムネリスの説得〜ラダメスの死刑(第四幕第一場)

アイリーン・ロバーツは幕が進むに連れ、歌声も一幕よりは見違える様に耳に響いて聞こえる様になり、以下に自分がラダメスを愛しているか、秘密漏洩の反逆罪を救えるのは自分きりいないと必死に歌い説得するのですが、対する戦勝将軍ラダメスはここでも余り感情は込めずどちらかというと淡々と歌っていた感がします。要するに醒めている。エジプトの全てに嫌気がさしていたのでは?自分が勝利を呼び寄せたのに、女奴隷(アイーダ)一人位褒美として与えて貰いたい、恋を認めてもらいたい、結婚を許して貰いたいという気持ちは強かったでしょう。東洋であれば、正妻の他に側室という制度があったので、うまく収まったかも知れない等と考えながら聴いていました。

⑤アイーダとラダメスの二重唱「さらばこの世よ、涙の谷よ」

これは最後の最後、悲劇で終わる場面の哀悼歌、この世の別れの歌に聞えました。ヴェルディの時代にも喜劇より悲劇の方が受けが良かったのでしょうね。ギリシャ悲劇以来の伝統が受け継がれているのかも知れません。ここは何故かロメオとジュリエットを連想しながら聴いていました。

 尚、日本人歌手は出番がそう多くは無いですが、妻屋さんは相変わらぬ低い声で場面を弾き締めていたし、少し出番が多かった須藤さんはこれまで、『イルトロバトーレ』の(ルーナ伯爵)や『ランメルロールのルチア』の(エンリーコ)役、『トスカ』の(スカルピア)役、『ホフマン物語』の(シュレミール)役等で聴いたことがありますが何れでも、重要な脇役をしっかりとしたバリトンでこれまた場面を光らせていて、今回も捕虜になって来て娘のアイーダと一緒に歌う場面、ラダメスをアイーダと共に説得する場面などでしっかりとした歌唱を披露していました。

 全体的に(歌ばかりでなく総合的に判断すると)今回のアイーダは、この劇場での長年のノウハウの積み重ねが物をいう良い例の一つとして、今後も歌い継がれていくオペラだと思いました。