HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

オペラ速報/春音楽祭『トスカ』初日鑑賞

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【演目】プッチーニ『歌劇《トスカ》』(全3幕)演奏会形式

【上演時間】約3時間(休憩2回含む)

【会期】2023年4月13日(木)18:30開演(17:30開場)

    2023年4月16日 (日) 15:00開演(14:00開場)

【鑑賞日時】2023年4月13日(木)初日18:30~

《出演楽団談》

メトロポリタン歌劇場、ウィーン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座など世界の歌劇場で活躍する名匠フレデリック・シャスランが指揮し、当代を牽引するソプラノ歌手の一人であるクラッシミラ・ストヤノヴァ、明るく情熱的な声で世界各地の歌劇場で歌うイタリア人のテノール歌手イヴァン・マグリ、世界を魅了する現代最高峰のバス・バリトン歌手ブリン・ターフェルら豪華歌手たち、東京オペラシンガーズらが出演します。

読響も近年、「蝶々夫人」や「トゥーランドット」などプッチーニ作品でも高い評価を得ており、「トスカ」での演奏にも期待が高まります。名匠の指揮の下、世界的歌手達の歌声と読響によるエネルギー漲る熱い演奏を、どうぞお楽しみください。

 

【指揮】フレデリック・シャスラン

<Profile>

指揮者、作曲家、ピアニストであり、作家としても活動。パリに生まれ、パリ国立高等音楽院とザルツブルク・モーツァルテウム大学で学んだ。1987~89年までパリ管弦楽団とバイロイト音楽祭でダニエル・バレンボイムのアシスタントを務め、89年からはアンサンブル・アンテルコンタンポランでピエール・ブーレーズのアシスタントとなって、91年まで務めた。

音楽監督として、ルーアン歌劇場(1991-94)、エルサレム交響楽団(1998-2001)、マンハイム国民劇場(04-07)、サンタフェ歌劇場(09-13)、エルサレム交響楽団の二期目(11-19)を歴任。その指揮活動を、オペラと管弦楽作品とに同等に振り分けており、オペラでは、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場(02年より)、ロサンゼルス・オペラ、ベルリン・ドイツ・オペラ、ミュンヘンのバイエルン国立歌劇場の他、ライプツィヒ、ドレスデン、マドリード、ボローニャ、ローマ、ヴェネツィア、トリノ、東京、オスロ、コペンハーゲン等で指揮を務めた。1993年にオーストリア・デビュー、ブレゲンツ音楽祭で《ナブッコ》(93、94年)と《フィデリオ》(95、96年)を振った。97年からウィーン国立歌劇場の常任客演指揮者として、34タイトル250公演近くを指揮し、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とは指揮者として、またピアニストとしてコンサートで共演している(2001年9月ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第5番」、18年パリルでマーラー「交響曲第5番」)。
最近の主な出演としては、ドレスデンとコペンハーゲンにおける《ホフマン物語》の2つの新演出が挙げられる。交響楽のレパートリーでは、フランスのあらゆる主要なオーケストラ(パリ管弦楽団、フランス国立管弦楽団、フランス放送フィルハーモニー管弦楽団、パリ国立歌劇場管弦楽団)の他、ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団、RAI国立交響楽団、マンチェスター・ホール、フィルハーモニア管弦楽団、ロンドン交響楽団、ウィーン交響楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、スペイン国立管弦楽団、グルベンキアン管弦楽団(リスボン)、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団等を指揮した。また、指揮者/ピアニストとして、ピアノ協奏曲を度々演奏している(ラヴェルの2曲のピアノ協奏曲、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲、ウィーン室内管弦楽団とモーツァルトのピアノ協奏曲第23番)。
作曲家としては、5つのオペラと、50を超えるソプラノ、メゾ、バリトンのための作品を書いている。これらのオペラからの抜粋は、最も有名なソプラノ歌手たち(ネトレプコ、デセイ、ペレチャッコ)によって歌われ、録音されてきており、ダムラウは自身のCD『フォーエヴァー』(ワーナー)にそのアリアを収録している。管弦楽作品には、ヴァイオリンと管弦楽のための《ジプシー・ダンス》やチェロ協奏曲等がある。最新作《トロンボーンと管弦楽のための11の変奏曲》は、世界有数のトロンボーン奏者たちに彼の名を広めた。
作家としては、エッセイ『Music in Every Sense』をパリ(France-Empire)とドイツで出版しており、Kindleでは英語版を入手できる。17年10月には、グスタフ・マーラーの生涯に基づいた小説『Being Gustav Mahler』(Fayard, Paris)を、マーラー「交響曲第10番」の自身による補筆版とともに発表、これは18年11月30日にザグレブ・フィルハーモニー管弦楽団によって初演された。
19年5月3日からスタートした、プラシド・ドミンゴによってロサンゼルス・オペラのために委嘱された最新のオペラ/ミュージカル《モンテ・クリスト》のワークショップや上演は、ロサンゼルス・オペラ、バレンシア(スペイン)、パリ、モンテカルロ、ボローニャ、リスボン、ウィーン等で行なわれた。
最近の指揮者としての活動には、ボローニャで《カヴァレリア・ルスティカーナ》と《道化師》、ウィーンで《マノン》、リエージュで《ラ・ボエーム》、ブダペストで《ペレアスとメリザンド》、ブカレストで《死の都》の他、カリアリでドニゼッティ《連隊の娘》、ロッシーニ《スタバート・マーテル》とコンサート・シリーズ、モンテカルロで《カルメン》、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場で《ファウスト》等が挙げられる。今後の活動としては、ブダペストで《ペレアスとメリザンド》の再演、ボローニャ市立劇場で《聖セバスティアンの殉教》、リエージュとシャルルロワで《ラクメ》、リエージュで《ミニョン》、ヴェネツィアでグノー《ファウスト》等がある。

 

【出演】
①トスカ(ソプラノ):クラッシミラ・ストヤノヴァ

<Profile>

当代を牽引するソプラノ歌手の一人であり、聴衆のみならず評論家からも称賛を浴びている。ブルガリアに生まれ、プロヴディフ音楽院で声楽とヴァイオリンを学んだ。1995年、ソフィア国立歌劇場でデビューを果たし、レパートリーを広げる。その後、ウィーン国立歌劇場で国際的なキャリアをスタートさせ、引き続き定期的に客演、2009年には宮廷歌手の称号を授与された。

主要な歌劇場にも定期的に出演し、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場、パリのオペラ・バスティーユ、コヴェント・ガーデンのロイヤル・オペラ・ハウス、ミラノ・スカラ座、チューリッヒ歌劇場、ミュンヘン、ハンブルク、ドレスデン、ベルリンの国立歌劇場等で歌っている。著名な指揮者とも共演しており、ダニエル・バレンボイム、リッカルド・シャイー、チョン・ミョンフン、ウラディーミル・フェドセーエフ、ダニエレ・ガッティ、ベルナルト・ハイティンク、マンフレート・ホーネック、マリス・ヤンソンス、ファビオ・ルイージ、ジェームズ・レヴァイン、ズービン・メータ、リッカルド・ムーティ、小澤征爾、ジョルジュ・プレートル、ユーリ・テミルカーノフ、クリスティアン・ティーレマン、フランツ・ウェルザー=メスト等が挙げられる。
ソプラノのオペラ・レパートリーは、ベルカントからヴェルディ、プッチーニの大役、リヒャルト・シュトラウス、スラヴのレパートリーまで多岐にわたる。さらにドニゼッティ《ロアン家のマリア》、ヴェルディ《レニャーノの戦い》、ドヴォルザーク《ディミトリー》等、演奏機会の少ない作品にも情熱を注いでいる。03年、ザルツブルク音楽祭デビューで《ホフマン物語》アントニアを歌い、大絶賛された。同音楽祭では、《ばらの騎士》元帥夫人や《ダナエの愛》ダナエでも大成功を収めている。
重要な公演としては、バイエルン国立歌劇場、ウィーン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座、ウィーン楽友協会におけるリサイタルの他、リッカルド・ムーティ指揮シカゴ交響楽団でロッシーニ《スターバト・マーテル》のコンサート、ミラノ・スカラ座のアイーダ及び《シモン・ボッカネグラ》アメーリア、クリスチャン・ティーレマン指揮によるドレスデン・ゼンパー・オーパーで新制作《ナクソス島のアリアドネ》、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とのコンサート、演奏会形式によるシカゴ交響楽団との《アイーダ》、リッカルド・ムーティ指揮ザルツブルク音楽祭でのヴェルディ《レクイエム》、バイエルン国立歌劇場での《イル・トロヴァトーレ》レオノーラ等が挙げられる。
コンサートの舞台でも引く手あまたの歌手の一人であり、例えばベートーヴェン交響曲第9番などは、ラヴェンナ音楽祭でリッカルド・ムーティと、ロンドンのセント・ポール大聖堂でコリン・デイヴィスと、バチカンでマリス・ヤンソンスと、さらにクリスティアン・ティーレマンやミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団と歌っている。コンサート・レパートリーとしては、ヴェルディ《レクイエム》、ベートーヴェン《ミサ・ソレムニス》、シュトラウス《4つの最後の歌》、ドヴォルザーク《レクイエム》や《スターバト・マーテル》等が挙げられる。コロナ禍にも関わらず、19/20年シーズンはシカゴ・リリック・オペラの新制作《ルイザ・ミラー》に看板役で登場し、グラーツ楽友協会とチューリッヒ歌劇場ではリサイタル、ウィーン楽友協会ではリッカルド・ムーティ指揮のヴェルディ《レクイエム》に出演している。
近年の特筆すべき出演には、ミラノ・スカラ座でリッカルド・シャイー指揮によるヴェルディ《レクイエム》とベートーヴェン交響曲第9番、アーティスト・イン・レジデンスとしてミュンヘン放送交響楽団とのいくつかのコンサート、ドレスデンのゼンパー・オーパーでクリスティアン・ティーレマン指揮の新制作《アイーダ》、そして《ナクソス島のアリアドネ》タイトルロールは、ミラノ・スカラ座(ズービン・メータ音楽監督)とフィレンツェでの新制作(ダニエレ・ガッティ指揮)がある。
来る22/23年シーズンは、マドリードのテアトロ・レアルとローマ歌劇場にアイーダで再登場する他、ウィーン国立歌劇場で《トスカ》にも出演予定。加えて、マーラー交響曲第8番等のいくつかのコンサートも予定されている。
オルフェオ・レーベルからリリースされた4枚のソロCD『愛の胸騒ぎ』『スラヴ・オペラ・アリア集』『ヴェルディ』『ヴェリズモ』は、重要な賞を獲得している。ソプラノとピアノのためのプッチーニ全歌曲集を収録した最新のCDはナクソスからリリースされている。


②カヴァラドッシ(テノール):イヴァン・マグリ

<Profile>

シチリアのカターニアに生まれ、ドメニカ・モンティに声楽を習う。ジョヴァンニ・カネッティとウィルマ・ボレッリの指導のもと、2005年にミラノのジュゼッペ・ヴェルディ音楽院を優秀な成績で卒業、またテノール歌手ルチアーノ・パヴァロッティにも教えを受けている。多くの国際コンクールで入賞しており、リッカルド・ザンドナーイ国際声楽コンクールやフランチェスコ・マリア・マルティーニ国際コンクール等が挙げられる。

2006年、《ドン・パスクワーレ》エルネストでオペラ・デビューしたのち、ウーディネとポルデノーネで《愛の妙薬》にデビュー。2008年には、ジェノヴァのカルロ・フェリーチェ劇場でダニエル・オーレン指揮《マノン・レスコー》、ボローニャ市立劇場とフェラーラ市立劇場で《ランメルモールのルチア》に出演したほか、サッサリのヴェルディ劇場とベルガモのドニゼッティ劇場ではドニゼッティ《マリーノ・フェリエーロ》で好評を博した。
続くシーズンでは、《清教徒》アルトゥーロをボローニャ、リガ、ブラチスラヴァで、《リゴレット》マントヴァ公爵をコモ、ラス・パルマス、ボローニャ、ベルリン・ドイツ・オペラ、トリノ、エストニア、カターニアのベッリーニ劇場、バレンシアの芸術宮殿、ブダペストで歌った。また、リマ、ベルガモのドニゼッティ音楽祭、トリノのレージョ劇場、ローマ歌劇場で《愛の妙薬》、マチェラータ音楽祭、ベルリン・ドイツ・オペラ、バレンシアの芸術宮殿、テルアビブではズービン・メータ指揮で《椿姫》に出演した。さらにフロリダ・オペラ、バイエルン国立歌劇場、ソウルの国立歌劇場、ベルリン国立歌劇場等、著名なオペラ・ハウスにも登場している。
その後の主な出演としては、バレンシアでヴェルディ《シモン・ボッカネグラ》と《二人のフォスカリ》、パルマのレージョ劇場で《一日だけの王様》、ピアチェンツァで《十字軍のロンバルディア人》、エストニアで《ウェルテル》、ウェックスフォード・オペラ・フェスティバルでメルカダンテ《ヴィルジニア》、ベルガモのドニゼッティ音楽祭で《ルデンツ家のマリア》、トリノのレージョ劇場で《メリー・ウィドウ》、チューリヒ歌劇場とハンブルクで《ルイザ・ミラー》等が挙げられる。さらに、《リゴレット》をブダペスト、ズービン・メータ指揮のもとローマとフィレンツェで、《愛の妙薬》をブエノスアイレスで、《ラ・ボエーム》をバーリで、《椿姫》をミラノ・スカラ座で歌った。
これまでに、ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスで《愛の妙薬》、フェニーチェ劇場で《椿姫》、モナコで《ルイザ・ミラー》、バーリとオスロで《ランメルモールのルチア》、ヒューストンとシドニーで《ラ・ボエーム》、サヴォンリンナ、ロンドン、メノルカ島、バーリで《リゴレット》、シュトゥットガルトで《蝶々夫人》、モナコで《二人のフォスカリ》、パルマで《ナブッコ》、ウィーンで《蝶々夫人》、ベルリンで《椿姫》の他、シドニー・オペラ・ハウスで《ファウスト》、マドリードで《椿姫》と《リゴレット》、ベルリンとナポリで《椿姫》、プッチーニ音楽祭で《トゥーランドット》、グラインドボーン音楽祭で《ルイザ・ミラー》に出演している。
今後の予定としては、リマで《トゥーランドット》、ベルリンで《アイーダ》、ヴェローナで《アムレット》、ブエノスアイレスのテアトロ・コロンで《蝶々夫人》等がある。


③スカルピア(バス・バリトン):ブリン・ターフェル

<Profile>

ウェールズ出身のバス・バリトン歌手。世界に名だたるコンサート・ホールやオペラハウスに定期的に出演し、並外れたキャリアを築いてきた。
1989年BBCカーディフ国際声楽コンクールで優勝した後、90年にウェールズ・ナショナル・オペラの《コジ・ファン・トゥッテ》グリエルモでプロのオペラ歌手としてデビュー。国際的なオペラ界へのデビューは、91年ブリュッセル・モネ劇場の《魔笛》弁者で、アメリカ・デビューは同年サンタフェ・オペラで演じたフィガロだった

④アンジェロッティ(バリトン):甲斐栄次郎
<Profile>

東京藝術大学音楽学部声楽科卒業、東京藝術大学大学院音楽研究科声楽専攻(オペラ)修了。1998年第29回イタリア声楽コンコルソ シエナ部門第1位・シエナ大賞受賞。1999年第4回藤沢オペラコンクール第3位入賞。2002年6月イタリア、リーヴァ・デル・ガルダで開催された第8回リッカルド・ザンドナイ国際コンクール第3位入賞、同年11月プーリア州レッチェで開催された第10回ティト・スキーパ国際コンクール第1位

 

⑤堂守(バス・バリトン):志村文彦

<Profile>

武蔵野音楽大学卒業、同大学大学院修了。第22回イタリア声楽コンコルソ・ミラノ部門金賞受賞。第27回日伊声楽コンコルソ第1位。二期会《ドン・ジョヴァンニ》騎士長でオペラデビュー。以後、同《ワルキューレ》フンディング、《ファルスタッフ》ピストーラ、新国立劇場《魔笛》ザラストロ、《愛怨》竜勝、日生劇場開場40周年記念《ルル》猛獣使い等出演。2012年には、錦織健プロデュースオペラ《セビリャの理髪師》バルトロ、


⑥スポレッタ(テノール):工藤翔陽

<Profile>

鹿児島県出身。昭和音楽大学卒業。同大学院修了。第11回昭和音楽大学学長賞声楽コンクールで優秀賞(第1位)。文化庁委託事業「平成26年度 次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」披露演奏会出演。2018年文化庁大学における文化芸術推進事業日中韓新進歌手交流オペラプロジェクト《ファルスタッフ》フェントンを始め日生劇場主催公演 NISSAY OPERA 2019《トスカ》スポレッタで出演

    

(右上写真指揮者)(下写真)左から  ①  ② ③ ④ ⑤ ⑥ 

シャルローネ(バリトン):駒田敏章
看守(バス):小田川哲也
羊飼い:東京少年少女合唱隊メンバー
管弦楽:読売日本交響楽団

合唱:東京オペラシンガーズ
児童合唱:東京少年少女合唱隊
合唱指揮:仲田淳也
児童合唱指揮:長谷川久恵
※当初出演を予定しておりましたピエロ・プレッティは、健康上の理由により出演ができなくなりました。代わりまして、イヴァン・マグリが出演します。 

 

【粗筋】春祭H.P.より

第1幕 1800年6月のある日、サンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会、聖堂内

 人けのない聖堂に脱獄犯アンジェロッティが入ってきて姿を隠す。やがて画家のカヴァラドッシが壁にマリア像を描く仕事に戻ってくる。肖像のモデルはアッタヴァンティ侯爵夫人だが、カヴァラドッシの恋人は歌姫トスカ。アンジェロッティが再び姿を見せると、旧知の二人は再会を喜ぶ。その時、トスカの声が聞こえ、アンジェロッティは再び隠れる。現れたトスカは、誰かがいた空気に、嫉妬の鎌首をもたげ、壁のマリア像を見て、アッタヴァンティ侯爵夫人に違いないと疑う。トスカは信心深く、聴罪師に話してしまうので、アンジェロッティがいることは打ち明けられない。優しく慰められてトスカは出ていく。郊外の隠れ家を教えていると、脱獄を知らせる砲声が鳴って二人は慌てて退場。入れ違いに聖堂の番人が皆を集めてナポレオン軍の敗退を知らせる。そこに悪名高い警視総監スカルピアが登場。脱獄犯の痕跡を見つけたスカルピアは、マリア像を描いているのがトスカの恋人と知って奸計をめぐらす。折悪しくトスカが戻ってくる。以前からトスカを我がものにと企んでいたスカルピアは、現場に残された侯爵夫人の扇を見せて嫉妬心を煽り、逆上して出て行くトスカを尾けるよう部下に命じる。聖堂内で枢機卿の行列が始まり、荘厳な「テ・デウム」の合唱を背景に、スカルピアは邪悪な心のうちを吐露する。

第2幕 ファルネーゼ宮殿、警視総監スカルピアの部屋

 スカルピアが己の欲望を満たすべく策をめぐらしているところへ、カヴァラドッシが連行されてくる。折しも王妃の広間で戦勝祝賀カンタータがはじまり、トスカの歌声も聴こえてくる。カヴァラドッシは脱獄犯の行方について口を閉ざしたまま。そこでスカルピアは演奏を終えて現われたトスカを揺さぶるため、隣室でカヴァラドッシを拷問する。恋人の悲痛な叫びに、トスカはついに隠れ家の場所を吐いてしまう。カヴァラドッシは、トスカの裏切りに怒りをにじませるが、その時、先ほどの戦報は誤りで、実はナポレオン軍が勝ったとの知らせ。勝利だ! と叫ぶカヴァラドッシ。スカルピアは直ちに投獄を命じる。連行されるカヴァラドッシを追うトスカを止めて、スカルピアはトスカを口説く。恋人の助命と引き換えに身体を要求するスカルピアに、トスカは侮蔑を投げつけるが、あと1時間で処刑と脅されては、承諾するしかない。スカルピアは見せかけの銃殺刑を部下に命じる。さらにトスカは逃げるための旅券も所望する。スカルピアがそれを書く間に、トスカは食卓のナイフを後ろ手に隠し、自分を抱こうとするスカルピアを刺殺する。

第3幕 サンタンジェロ城の露台

 暁の鐘、牧童の歌声。獄に繋がれたカヴァラドッシが、トスカとの幸せな愛の日々を思い出していると、自由の身になったことをトスカが告げに来る。そして、スカルピアを殺した、と。二人は国を出られることの喜びを分かち合う。その前に見せかけの銃殺刑をやらねばならない。夜明けを告げる鐘が鳴り、処刑の時刻が迫る。芝居がうまくいくか、トスカは気が気でない。銃声がして、カヴァラドッシが倒れ込み、兵士たちが去ったのを見届けて、トスカはカヴァラドッシに駆け寄るが、彼は死んでいた! スカルピアに騙されたのだ。慟哭するトスカ。やがてスカルピアの殺害に気づいた部下たちが、犯人を捕えようとやってくるが、トスカは城壁から身を投げて、幕となる。

 

【上演の模様】

このオペラの物語は何といっても次の三羽烏のやり取りが中心となります。

 

①第一幕〈妙なる調和〉カヴァラドッシの独唱

Vincenzo La Scola -Recondita armonia di bellezze diverse!
È bruna Floria, l'ardente amante mia.
E te, beltade ignota, cinta di chiome bionde,
Tu azzurro hai l'occhio,
Tosca ha l'occhio nero!

L'arte nel suo mistero,
le diverse bellezze insiem confonde...
Ma nel ritrar costei,
Il mio solo pensiero,
Il mio sol pensier sei tu,
Tosca, sei tu!

様々な美しさの中に秘められた調和よ!
私の情熱的な恋人フローリアの髪は栗色だ
そして名も知らぬ美しいあなたは
豊かな金色の髪、そして青い瞳、
トスカは黒い瞳を持っている!様々な美しさは芸術の神秘の中に溶け合っている。
だが、私がこの婦人の肖像を描いている間も、私のただ一筋の思いは、トスカよ、ただ一人、君だけに!

 

今日のカヴァラドッシは、代役のイヴァン・マグリです。これまでの経験上、代役の当たり外れは五部五部、ガッカリしたこともあれば、大当たり万馬券を得た様な得した気持ちになった時もありました。今日の歌はどちらでしょう。将に万馬券、マグリの第一声からして、朗々と大ホールに響く大きく強いテノールの声、潤いまであります。これには、びっくり、歌い終わった後一瞬の静寂の後、会場からは、熱狂的な拍手喝采と歓声が上がりました。

 

②第二幕〈歌に生き 愛に生き〉トスカ独唱

Vissi d'arte, vissi d'amore,
non feci mai male ad anima viva!
Con man furtiva
quante miserie conobbi aiutai.

私は歌に生き 愛に生き
他人を害することなく
困った人がいれば
そっと手を差し伸べてきました

Sempre con fè sincera
la mia preghiera
ai santi tabernacoli salì.
Sempre con fè sincera
diedi fiori agli altar.

常に誠の信仰をもって
私の祈りは聖なる祭壇へ昇り
常に誠の信仰をもって
祭壇へ花を捧げてきました

Nell'ora del dolore
perché, perché, Signore,
perché me ne rimuneri così?

なのにこの苦難の中
なぜ 何故に 主よ
何故このような報いをお与えになるのですか?

Diedi gioielli della Madonna al manto,
e diedi il canto agli astri, al ciel,
che ne ridean più belli.

聖母様の衣に宝石を捧げ
星々と空に歌を捧げ
いっそう美しく輝いた星々

Nell'ora del dolore,
perché, perché, Signore,
ah, perché me ne rimuneri così?

なのにこの苦難の中
なぜ 何故に 主よ
何故このような報いをお与えになるのですか?

 このアリアはこのオペラだけでなくあらゆるオペラのアリアの中で最も有名なものの一つです。古今東西、名だたる名ソプラノが競って歌ってきました。ティバルディ、カラス、フレーニ、リッチャレッリ、ネトレプコ、ヨンチェヴァ等々。伝説の歌手達も多いのです。それらは、現在でも多くの録音、録画で楽しむことが出来ます。今日のタイトルロールのストヤノヴァは、この苦渋に満ちた切ない心境を吐露する歌を、予想以上の声量と強く透徹する素晴らしいソプラノで歌ったのでした。

 これで、今日のTwoTop が、期待出来る歌手だということが判明、これに第二幕の最初から登場していた、スカルピア役のターフェル、彼の歌は先日のオペラコンサートで、実証済みの並外れのバリトン・バスの歌声ですが、この三羽カラスが揃いも揃った我が国での「トスカ」では、近年にない位の歌手陣になったのです。

 又ストヤノヴァはこうした絶叫調の歌だけでなく、純真な愛に期待する歌を、抑制した静かな調子で歌っており、声にコントロールを効かせる熟達した歌唱も披露、例えば第一幕での次の歌唱の処などです。

 「あの森の私たちの小さな隠れ家に行きたいって思わないの?私たちの秘密の巣、 俗世から離れた場所、神秘と愛に満たされたあそこに?まるで寄り添っているみたいに夜の静寂と星影を感じられるわ
密やかな声が立ち上っているようよ!森や茂みや萌え立つ草や崩れた廃墟の奥からタイムの香りが漂ってくるの夜は呟きからいずるのよ。小さな愛の神々の彼らの不実な誘惑に心はすっかり油断してしまうの。咲き誇る花々、広い野原、胸は躍る。月明かりの中の海風 雨にも睦み合い、時には星空の元で!トスカは愛で燃え上がっているの!(頭をカヴァラドッシの肩にもたせかけながら)」

 と、ここでは、恋人に自分の歌の演奏会がすぐ終わるから、Entranceで落合い別荘に行って楽しみましょうと、カヴァラドッシに持ちかけて歌う箇所です。愛情溢れる恋する女性を如何なく表現したいい歌唱でした。

  幕が進むにつれ、トスカの歌声もますますよくホールに透り、勢いも強さも出て来て、上記「歌に生き 愛に生き」の後の箇所など、自分を篭絡しようとする総監スカルピア(ターフェル)にどうしようもないくやしさをぶつける歌を生き生きと歌っていました。演技も含め仲々迫真に迫る歌でした。対するターフェルはこれまた見事、これ以上の悪役は求められないだろうと思う程の迫力で悪どさ、悪魔性を歌だけでなく演技的にも表現していました。執拗にトスカにせまる卑劣なスカルピアを見事に演じていました。

 

③第三幕〈星は光ぬ〉冒頭のカヴァラドッシ独唱。

 E lucevan le stelle
ed olezzava la terra,
stridea l'uscio dell'orto,
e un passo sfiorava la rena,
entrava ella, fragrante,
mi cadea fra le braccia. 

輝く星々 香る大地
きしむ庭の戸
砂を踏む足音
現れた彼女は
花のごとく香り
私の腕の中へ

Oh! dolci baci, o languide carezze,
mentr'io fremente le belle
forme disciogliea dai veli!
Svanì per sempre
il sogno mio d'amore.
L'ora é fuggita, e muoio disperato,
e non ho amato mai tanto la vita !

ああ 甘い口づけ
とめどない愛撫
僕は震えながら
まぶしい女体を露わにしていく

永遠に消え去った僕の愛の夢
時は過ぎ 絶望の中で僕は死んでいく
これほど命を惜しんだことはない 

 

 これまた上記トスカのアリアに負けずとも劣らぬ有名な箇所です。これまで数多くの世界の名だたるテノール達、モナコ、パヴァロッティ、ドミンゴ、カレーラス等々が名演を重ねて来ました。今回の代役マグリは、びっくりする程の素晴らしさで歌ったのでした。最初から最後まで力強く朗々と美声を張り上げました。会場からは、大きな拍手、自分も思わず両手が痛い位強く叩いていました。でも三大テナーに比べるのは、おこがましいですが、上記ストヤノヴァの「歌に生き、愛に生き・・・」の時程は、会場が盛り上がらなかった様です。三大の皆さんいつ聴いても、熱唱の最たる歌を披露していましたが、どういう訳か、マグリは、やや情熱が少なかったのかも知れない。むしろその後のトスカとのやり取りの歌や二重唱の方が、一幕、二幕の時と同様な良く伸びる力強さで歌っていました。「星は光ぬ」の時は、少し上がったのかな?

 

 その他の歌手の皆さんも個性的な演技と歌唱を披露していましたが、何分出番が多くはないので印象がそれ程強くは有りません。

 出番的には、スカルビアが時間が、一番長く、次いでトスカ、そしてカヴァラドッシの順の様です。スカルピアの副官(密偵、スパイ)であるスポレッタの出番も時間的には長い方ですが、役が役だけに工藤さんの印象は余り目立たなかった。スカルビア総監の指示を忠実にこなす実直なテノールに徹していました。三幕での牧童の歌は、舞台裏でソプラノが歌う例などがあるのですが、今回は、児童合唱団から一人が、無人の合唱団のひな壇に登場してきて、綺麗なボーイソプラノを響かせていました。カウベル共々いい雰囲気の音が出ていました。タンホイザーでも牧童役が出て来るのですね。そこでも矢張りカウベルの音が鳴らされ素朴な雰囲気が醸し出されます。

 それから東京オペラシンガーズ合唱団はどういう経歴の歌い手が多いのか分かりませんが相当高い実力と見えました。前回の『ニュルンベルグのマイスタージンガー』でも立派にコーラスを通じて、オペラを盛り上げていましたし、また東京少年少女合唱隊は何年か前に定期公演を聴きに行ったことがあります。指導者が熱心で児童も年々入れ替わりがある様ですが、高いコーラス水準を維持している合唱団という事が分かります。

男声も女声も、特にアカペラのバックコーラスが、聴いていて静かに心に響いて来て、場面効果に抜群の作用を果たしていました。

 またフレデリック・シャスラン指揮の読響は、目立った瑕疵もなく、最初から最後まで、力強いオーケストレーションで、歌手陣をバックアップしていました。強力な歌手陣だったせいもあり、指揮者は遠慮なく管弦打の腕を充分に発揮させることが出来たのでしょう。

 今日のオペラ上演は、演奏会方式とは言え、歌手の出番、退出のタイミングや、歌手の歌に合わせる表情など、出色の出来で、舞台セットがないだけで、フルオペラに遜色ない優れた上演だったと思いました。今年のローマ歌劇場は、どんな上演を見せて呉れるのでしょう、見ものです。



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