【鑑賞日時】2023.5.13.(土)11:00~
【上映館】TOHOシネマズ上大岡
【上映作品】『Tar/ター』2022年米国
【日本公開】2023.5.12.全国一斉公開
【監督】トッド・フィールド(『イン・ザ・ベッドルーム』『リトル・チルドレン』他多数)
<プロモート言>
『イン・ザ・ベッドルーム』『リトル・チルドレン』トッド・フィールド監督16年ぶりの待望の最新作!
ベルリン・フィル初の女性マエストロ<リディア・ター>、
芸術と狂気がせめぎ合い、怪物が生まれる。その衝撃に世界平伏!
ケイト・ブランシェットが、自身の最高傑作を塗り替えた!4度目となるゴールデン・グローブ賞、ヴェネチア国際映画祭女優賞、全米・NY・LAの批評家協会賞と名誉ある賞を次々と制し、『ブルージャスミン』に続くアカデミー賞®も最有力との声が日に日に高まっている。
監督と脚本と製作は、これまで手掛けた長編映画『イン・ザ・ベッドルーム』と『リトル・チルドレン』の2作で、アカデミー賞®脚色賞にノミネートされたトッド・フィールド。16年ぶりとなる全世界熱望の最新作だ。
フィールド監督が、その鋭敏な表現力によって、「唯一無二のアーティスト、ケイト・ブランシェットに向けて書いた」と語るのは、絶対的な権力を振りかざす天才的な指揮者リディア・ターの物語。音楽界の頂点に上りつめたターだったが、名声を守り続けるための重圧と、何者かに仕掛けられた陰謀によって、少しずつ心の闇が暴かれていく─。崇高なる芸術と人間の欲望と狂気が交錯し、誰も体感したことのない禁断の交響曲を奏でる、驚愕のサイコスリラー!
- ヨーロッパの名優たちが本気で極めた演奏と演技
本物の芸術を追求した驚異と陶酔の映像世界
世界最高峰のオーケストラの一つであるドイツのベルリン・フィルで、女性として初めて首席指揮者に任命されたリディア・ター。彼女は並外れた才能とそれを上回る努力、類稀なるプロデュース力で、自身を輝けるブランドとして作り上げることに成功する。今や作曲家としても、圧倒的な地位を手にしたターだったが、マーラーの交響曲第5番の演奏と録音のプレッシャー、そして新曲の創作に苦しんでいた。そんな時、かつてターが指導した若手指揮者の訃報が入り、ある疑惑をかけられたターは、追いつめられていく─。
ターに扮するケイト・ブランシェットは、ドイツ語とアメリカ英語をマスターし、ピアノと指揮をプロフェッショナルから本格的に学び、すべての演奏シーンを自身で演じきった。ターのオーケストラのコンサートマスターで、ターの恋人でもあり、養女を一緒に育てているシャロンには、『Yella(原題)』でベルリン国際映画祭銀熊賞(女優賞)を受賞し、本作でインディペンデント・スピリット賞にノミネートされたニーナ・ホス。きれいごとの愛だけには収まらない二人の関係を、複雑な感情をたたえた強い瞳で体現した。ターのアシスタントで副指揮者を目指すフランチェスカには、『燃ゆる女の肖像』で一躍注目され、セザール賞にノミネートされたノエミ・メルラン。師弟関係にありながら、どちらも相手を信用できずにいる緊張感あふれる人間模様を表現した。ロシア人チェロ奏者オルガ役には、実際にチェロ奏者として活動し、本作が俳優デビューとなるソフィー・カウアー。多数の演奏家と俳優が参加したオーディションで見事に抜擢され、ターを振り回す自由奔放なオルガを瑞々しく演じた。投資銀行家でターの財団を支援するエリオットには、『キングスマン』の名優マーク・ストロング。
本物のクラシックの世界を描きたいと考えたフィールド監督のために、「指揮者は何を考えているか」の著書で知られ、レナード・バーンスタインと親交の深かった指揮者ジョン・マウチェリが脚本の監修を務めた。さらに、ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団の本拠地での撮影が実現。『ジョーカー』でアカデミー賞®を受賞したヒドゥル・グドナドッティルが音楽を担当、クラシック音楽映画にジャズと民族音楽も忍ばせ、独自の世界観を構築した。
五感を震わせる圧巻のラストが、あなたを待つ! 目を凝らせ!
【某経済紙評】
世界最高峰の名門オーケストラ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で女性として初の首席指揮者となったリディア・ター。 芸術に全人生をささげた彼女はマエストロと敬われ、輝かしいキャリアの頂点を極めていたが、その完璧な世界に少しずつ、狂気に彩られた悪夢が広がっていく・・・・。
本作のワールドプレミア上映となったベネチア国際映画祭では6分間におよぶスタンディングオベーションが起こり、ケイト・ブランシェットが同映画祭の主演女優賞を獲得。
さらに本年度アカデミー賞の作品賞、主演女優賞を含む主要6部門にもノミネートされるなど、世界各国で話題を集めた映画『TAR/ター』がいよいよ日本でも5月12日より全国公開される。
本作主人公のリディア・ターを演じるのは、女優のみならず、プロデューサー、アートディレクター、人道家としても活躍するケイト・ブランシェット。アカデミー賞に八度ノミネートされ、二度のオスカー受賞を果たすなど、まさに世界でもトップクラスのキャリアと実力を誇る女優のひとりである。
ブランシェット演じるターは、アメリカの5大オーケストラで指揮者を務めたのち、ベルリン・フィルの首席指揮者に女性として初めて就任。さらに作曲者としても、エミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞のすべてを制覇。
また、ベルリン・フィルで唯一録音が果たせていないと言われるマーラーの交響曲5番のライブ録音を任されるという名誉にあずかり、さらには自伝の発売も予定されている。
その一方で、若手女性指揮者に教育と公演のチャンスを与える団体も設立し、後進の指導を行うなど、その輝かしいキャリアはまさに完璧そのもので、頂点を極めていた
ブランシェット演じるターは、アメリカの5大オーケストラで指揮者を務めたのち、ベルリン・フィルの首席指揮者に女性として初めて就任。さらに作曲者としても、エミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞のすべてを制覇。
また、ベルリン・フィルで唯一録音が果たせていないと言われるマーラーの交響曲5番のライブ録音を任されるという名誉にあずかり、さらには自伝の発売も予定されている。
その一方で、若手女性指揮者に教育と公演のチャンスを与える団体も設立し、後進の指導を行うなど、その輝かしいキャリアはまさに完璧そのもので、頂点を極めていた
だがそんな彼女も近ごろは、新曲の生みの苦しみにさいなまれるようになる。交響曲5番のライブ録音も間近に迫っていたが、そのリハーサルもうまくいかず、いらだちは募るばかり。そんなある日、彼女が目を背けたくなるような“とある一報”が彼女のもとに届くと、彼女の完璧な世界は少しずつ崩壊しはじめる――。
本作の監督・脚本・製作を務めたのは、映画監督デビュー作となった2001年の『イン・ザ・ベッドルーム』、続く2006年の『リトル・チルドレン』、そして本作とこれまで手がけた作品すべてがアカデミー賞にノミネートされたトッド・フィールド監督。
本作は彼にとっておよそ16年ぶりの新作となるが、この挑発的な題材を非常にクールなまなざしで見つめ、かつ非常に的確な音響設計や撮影、演出スタイルなどを組み合わせながら、非常に濃密な映画的体験を提供している。
本作の脚本はコロナ禍初期、世界中が閉塞(へいそく)感に包まれていた時期に執筆されたという。脚本を担当したフィールド監督は「唯一無二のアーティスト、ケイトのために書いた。もし彼女が断ったら、この映画は日の目を見ることはなかった。あらゆる意味でこれはケイトの映画だ」と断言する。
すべての演奏シーンを自ら行う
ブランシェットは、フィールド監督から受け取った脚本を読み「吸い込まれるような思いがした」と振り返る。そして自分のセリフのみならず、ほかの人物のセリフや、脚本を執筆する際の参考資料などすべてを暗記し、ターという役柄を何とかつかみ取ろうとしていたという。
そのうえでレッスン動画や、歴代の名指揮者たちの映像資料を浴びるように鑑賞するなど、入念なリサーチを行った。
また、オーストラリア出身のブランシェットは、ドイツ語とアメリカ英語、さらにはピアノと指揮をプロフェッショナルたちから本格的に学び、すべての演奏シーンを自分で行った。ブランシェットはヴァニティ・フェア誌のインタビューに「まったく恐怖だった。でもやることが多すぎて緊張している暇はなかった」とそのときの心情を語っている。
この役を演じるにあたり、ブランシェットは並々ならぬ意欲をもって取り組んでいたとフィールド監督は証言する。「昼間に別の作品の撮影があっても、夜になると僕に電話をしてきて。そこからさらに準備に費やすんだ。ドイツ語とピアノも習得して。演奏シーンはすべてケイト自身が演じている。リサーチに至るまで本当に抜かりがないし、彼女はまさに独学の達人だね」と。
本物のクラシックの世界を描きたいというフィールド監督は、『指揮者は何を考えているか』(白水社刊)の著書があり、レナード・バーンスタインとも親交のあった指揮者のジョン・マウチェリに本作の脚本監修を依頼。マウチェリは非常に協力的だったとのことで、本作の物語に深みを与えることに寄与した。
またベルリン・フィルハーモニーホールの特徴である、ステージのまわりを客席が囲む「ヴィンヤード型」のホールを拠点に持つドイツのオーケストラということで、ドイツのドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団に協力を依頼。彼らの本拠地となるクルトゥーア・パラストの一部で撮影が行われた。
「人生を変えるほどの大きな名誉」
演奏シーンも実際にブランシェット自身がリディア・ターとして、ドレスデン・オーケストラを指揮している音源が使用されている。この体験を「人生を変えるほどの大きな名誉」と語ったブランシェットだが、この演奏を収録したサウンドトラックがCDとして発売。
同サントラのジャケット写真は、指揮者クラウディオ・アバドの「マーラー:交響曲第5番」のジャケット写真を想起させるものになっているという。
新人チェリストのオルガに入れ込むターに楽 団員からも反発が
英ガーディアン紙のインタビューで「この作品はわたしの軸を素晴らしい形で狂わせてくれた」と語っていたブランシェットは、フィールド監督との共同作業で、普段は舞台でしか味わえないような自由をこの映画でも体験したという。
「そのプロセスは、最終的にどこに行き着くのかがまったくわからなくてスリリングだった。よりダイナミックで、セーフティーネットがないような感じ。映画では、このような方法で仕事をすることはあまりないんです」と語るブランシェットだが、本作に通底する圧倒的な不協和音と狂気が入り交じった空間は唯一無二のもの。それが彼女の鬼気迫る芝居と相まって重厚なひとときを提供してくれる。
【配役】
CATE BLANCHETT/Lydia Tár ケイト・ブランシェット/リディア・ター役
NOÉMIE MERLANT/Francesca Lentini ノエミ・メルラン/フランチェスカ・レンティーニ役
NINA HOSS/Sharon Goodnow ニーナ・ホス/シャロン・グッドナウ役
SOPHIE KAUER/Olga Metkina ソフィー・カウアー/オルガ・メトキナ役
STAFF
Written, Produced, and Directed
by TOD FIELD
Cinematographer
FLORIAN HOFFMEISTER, BSC
Production Designer
MARCO BITTNER ROSSER
マーラーとエルガーの楽曲への想い
フィールド監督は、マーラーの交響曲第5番第4楽章を取り上げた理由について、こう語る。「ヴィスコンティ監督の『ベニスに死す』に使われたことで、大衆的な曲だと見做されるようになった。だから、ジョン(マウチェリ)に好きなクラシック音楽の作品を聞かれた時、恐る恐る恥ずかしそうに、マーラーの交響曲第5番第4楽章だと言った。するとジョンは、『本当にクラシック音楽を分かっている人なら、第4楽章に対して皮肉を言ったりしない。『ベニスに死す』で使われていたから何だ。マーラーの交響曲第5番を基にストーリーを作ればいい』と怒った。だから、僕はその通りにした」
本当に好きだと思う音楽を追求しようと思えるようになったフィールド監督は、エルガーのチェロ協奏曲にも取り組むことにした。フィールド監督は、「エルガーがこの協奏曲を書いた当時、女性奏者がオーケストラに参加するなんてもっての他だった。だけど、最初の録音時、EMI(現在のアビイ・ロード・スタジオ)の第1スタジオで、当時まだ全員が男性奏者だったロンドン交響楽団の前で演奏したのは、ベアトリス・ハリソンという女性チェロ奏者だった。しかも、その演奏の指揮を務めたのが、エルガー本人だったんだ」と説明する。この曲はずっと忘れ去られていたが、1965年にジャクリーヌ・デュ・プレが再録音を行なったことで、再び注目を集めた。指揮者はジョン・バルビローリが務めたが、ハリソンが録音した時と同じスタジオ、同じオーケストラが使われた。
(※Hukkats注)ジャクリーヌ・デュ・プレ
彼女は若くして夭折した英・オックスフォード生まれのチェロ奏者(享年42歳)。10歳で国際コンクールに入賞、16歳でエルガーのチェロ協奏曲を録音し、チェロ奏者として国際的名声を得た。21歳で現在も活躍中のバレン・ボエムと結婚、夫婦で数々の演奏を行った。26歳で難病の多発性硬化症を発症し、1987年に亡くなった。
1961年から73年までの約12年間の活動期間中に残された録音の多くは、集中度の高い情熱的な演奏が特徴で、現在も名盤とされる。本映画中で主人公がチェロのソロ演奏者として抜擢した少女が、Tarの「何故チェロを始めたか?」の問いに「デュ・プレの演奏の録画を見てから」と答えている。
ドレスデン・フィルハーモニー
管弦楽団の本拠地で撮影
ロケ地は、ベルリン、ニューヨーク、東南アジアにまで及び、撮影場所は、コンサートホールやホテル、レストラン、ターの実家、ターがベルリンで住んでいたアパート、シャロンと娘と生活を共にしているブルータリズム建築の家などがあった。撮影監督のフロリアン・ホーフマイスターは、Arriflexにレンズと、今では全カメラに搭載されているエマルジョンプリントシステムを特注で発注した。
プロダクション・デザインを務めたマルコ・ビットナー・ロッサーの最初の課題は、ヴィンヤード型のコンサートホールを拠点にするドイツのオーケストラを探すことだった。撮影スタッフが占拠するだけでなく、建物全体を思いのままに使わせてくれるホールが必要だったので、ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団を説得し、その本拠地であるクルトゥーアパラストの一部を使用させてもらった。さらに、ドレスデン・フィルでコンサートマスターを務めるヴォルフガング・ヘントリッヒが制作に参加し、ニーナ・ホスにコンサートマスターの役割を教え、劇中では彼女と同じ机で仕事をする人物としても出演している。
ケイト・ブランシェットの完璧
を超えた恐るべき役作り
ケイト・ブランシェットが本作の制作に入ったのは2020年の9月だったが、彼女は同時進行で他にも2作品に参加していた。フィールド監督は、こう振り返る。「昼間に別の撮影があっても、夜になると僕に電話してきて、そこからさらに何時間も準備に費やすんだ。ドイツ語とピアノも習得して、演奏シーンはすべてケイト自身が演じている。リサーチに至るまで本当に抜かりないし、彼女はまさに独学の達人だね。制作期間中はろくに睡眠もとらなかった。1日の撮影が終わると、ピアノに直行するか、ドイツ語とアメリカ英語の指導を受けに行くか、指揮棒の振り方を教わりに行っていた。撮影がない日には、アレクサンダー広場にある環状交差点と全く同じ寸法の競馬場に行ってリハーサルを行い、スタントマンが運転する8台の車に囲まれながら、時速100キロで滑走した。皆が目指すべき水準を示してくれて、僕たちは彼女についていくのに必死だったよ」
ブランシェットは、ターの人物像についてこう説明する。「ターには権威のある地位に就いている人特有の不可解さがある。それを、どう表現するかがカギとなった。観客がターの体験に共感できるような場面を作ることも重要だった。彼女は、自分のことをあまり分かっていない人だから。女性指揮者は往々にして、室内楽曲をあてがわれて、大作は任されない。それで彼女はがっかりしてしまうの。彼女はこの世界に浸透した慣習に疲弊した結果、賢明とは言えない決断を下してしまう」
さらに、ブランシェットは、自らのリサーチについて説明する。「まずは、イリヤ・ムーシンの音楽セミナーと、アントニア・ブリコについての熱いドキュメンタリーを参考にした。ターが目指していた指揮者像としては、クラウディオ・アバド、カルロス・クライバー、エマニュエル・アイム、ベルナルト・ハイティンクの映像を観たわ」そして、ナタリー・マーレイ・ビールから指導を受けたブランシェットは、「指揮は言語であり、クリエイティブなコミュニケーション手段だから、指揮者によって癖が異なるの」と指摘する。
【感想】
この映画はクラシック音楽好きには見るまでも興味芯々で、見ている時も成程なるほどとこたえられない味わい深さを感じていました。実際楽器演奏する人や指揮者が見たらさらに興味深いものとなるでしょう。ただ登場人物で主人公の秘書やら副指揮者やら副指揮者候補やらがどういった人達なのか?又そういった人達と主人公の関係がいま一つクリアでなかった事や、ミステリー映画的側面、スリラー映画といった方がいいかも知れない不可解な現象が、いま一つクリアでなかった事が、見終わった後でも尾を引いて何かスッキリしない印象を受けたのは自分だけだろうか?と思いました。実は友人(男性)と二人で観に行ったのですが、彼も同じことを言っていました。でもケイト・ブランシェットは演技が上手ですね。本物です。楽器演奏も本物の様ですし、またドイツ語が非常にうまい。オスカーもこれまで助演女優賞、主演女優賞をとったことの或る大女優です。現在まだ50代半ばですから、これからさらに賞を重ねる事は間違いないでしょう。