テアトロ コロン(ブエノスアイレス)の新しい音楽演奏の映像が、配信されました。今回は、ピアノとオーケストラに依るPiano Concert でした。オーケストラは Orquesta Filarmónica de Buenos Aires 、ピアノ演奏は Lucía Caruso です。全く知らない若い女流ピアニストでした。
【鑑賞日時】2024.12.5.(木) Midnight.
【会場】テアトロ・コロン劇場大ホール(ブエノスアイレス)
【管弦楽】 Filarmónica de Buenos Aires
【指揮】Annunziata Tomaro
<Profile>
コンクールで最高賞を受賞したトマロ氏は、指揮者組合が授与するロビンソン賞、プレッサー賞、主流へのフルブライト奨励賞また、アメリカオーケストラ連盟から「優秀女性指揮者」補助金を授与されました。ジュリアード音楽院プレカレッジ部門で音楽の勉強を始めてから、グスタフ・マイヤー、ケネス・キースラー、マーク・ギブソン、ラリー・ラクレフ、ホルヘ・ペレス・ゴメス、ホルマ・パヌラなど、世界で最も評価の高い指揮教育者に師事。
トマロ氏は約10年間、シンシナティのCCM (カレッジ音楽院) コンサートオーケストラと現代アンサンブルカフェモーマスの音楽監督兼首席指揮者を務めました。ユース交響楽団の音楽監督、シンシナティ室内オーケストラ団の副指揮者、ルッカのオペラ劇場と音楽祭、イタリアのスポレート音楽祭の指揮者兼音楽監督など、様々な役職を歴任しました。
南米で数年間客員指揮者として活躍した後、2014年にアルゼンチンのブエノスアイレスにあるテアトロ・コロンのオーケストラのアシスタント指揮者兼舞台音楽責任者に任命されました。
【独奏】Lucía Caruso (Pf.)
<Profile>
ニューヨークを拠点に活動するアルゼンチンの作曲家兼ピアニスト
マンハッタン音楽学校でクラシックピアノの学士号を取得した後、ニューヨーク大学で作曲と映画音楽の修士号を取得しました。
2021年と2022年の世界ピアノ指導者協会(WPTA)国際ピアノ・作曲コンクール作曲部門第2位、2019年カンヌ映画祭最優秀新進ドキュメンタリー賞、2017年ポルトガル国際音楽賞、2015年、2016年、2020年、2022年の3回のASCAP Plus賞など、数々の賞を受賞しています。ルシアは、2020年に審査員全員の一致によりアルゼンチン作曲家協会の会員に選出されました。彼女はオーケストラ、ダンス、映画への委嘱を受けるなど、国際的なキャリアを持っています。
【曲目】Lucía Caruso作曲:管弦楽とピアノのための協奏曲《Luz y Viento(光と風)》
【演奏の模様】
楽器編成:二管編成弦楽五部10型(10-8-6-5-4)
先ずピアニストのLucía Carusoがマイクを持って事前の略説をしました(西語⇒英語翻訳の字幕)。
字幕が見ずらいので以下に転記します。
I am going to say a few words so you know what you are going to hear.
This is my piano concert.
It was commissioned by a great Korean artist,a photographer, who took over 4million photos of nature from one wind.
And when he commissioned it,he simply said to me “Light and wind are wht pint the photograph”
So I was inspired by al those nature photographs, and I hope that with music you can see and feel it.
そしてピアノの前に着座し、弾き始めました。
冒頭からピアノはグリッサンドの上行、下行を繰り返し、上行のピークで右手最高音域の和音を一発打鍵、その間金管が合の手を入れました。オケ全体が強奏でスタート。何回かグリッサンドが繰り返された後は、ピアノがとても穏やかな調べを響かせると、弦楽奏は静かな流れる様なアンサンブルとなりました。
管の異郷的な合の手がピアノのかなりの強速打を誘い、引き続く管の調べは東洋的です。
ピアノカデンツア部に入り、ピアニストは鍵盤を上から下まで自在往来、縦横無尽に弾きまくりました。しかし、それは早いテンポのリズム音の羅列で、旋律性には事欠く場面が多かったと思います。
これまで見たことも無い面白いシーンは、第2楽章に入ってからでした。ピアニストLucía Carusoの補助奏者が一人いて、蓋を開けたピアノに近寄ると、ピアノの金属弦を手で以てはじいて演奏した事です。
補助奏者はグリッサンドを弾く器具も手に持ち、何回か盛んにグリッサンド演奏、その間ピアニストも鍵盤上をグリッサンドで何回も上下行していました。両者の立てる音量は倍加され、DUOの音とも、二台のピアノ協奏とも趣きの違った響きを醸し出していました。
このピアノの撥弦楽器もしくは打楽器としての使用は、最終第三楽章に於いても為されました。
即ちピアノ奏者が、立ち上がりピアノの上に身を乗り出して右手にバチを持ち、左手を広げて、その両手を使って、張弦を叩き始めたのです
続いて、左手で鍵盤を弾き、右手で張弦を叩くという技も見せて呉れました。
兎に角、面白い。変わっている。
こうしたピアノの可能性を広ろげる試みは、前向きに評価したいと思いました。
演奏全体としては強弱、緩徐に随分変化に富んだ曲で、流石自分の作曲した作品だけあって、自信に満ちた技巧も相当高度に駆使した演奏でした。迫力あるピアノ演奏でした。
でもピアノのその他の特性、例えば繊細な弱音を響かせるとか、粒ぞろいの音の美しさの表現等には若干程遠い作品で又演奏だったと思いました。