HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

モーツァルトマチネ/川崎市・ザルツブルグ市姉妹都市30周年記念演奏会


【日時】2023.1.21.(土)11:00~

【会場】ミューザ川崎シンフォニーホール

【管弦楽】東京管弦楽団

【指揮】川瀬賢太郎

【共演】 モーツァルト・シンガーズ・ジャパン (MSJ)
タミーノ:澤原行正
パミーナ:嘉目真木子
夜の女王:針生美智子
パパゲーノ:近藤 圭
パパゲーナ:鵜木絵里

魔法の鈴(ダンサー):作本美月

魔法の笛(フルーティスト):岡本裕子


ナレーション・進行役:宮本益光

 

【曲目】

モーツァルト:歌劇『魔笛』ハイライト ※日本語字幕付き

①序曲

②「オイラは鳥刺し」

③「何という美しい絵姿だろう」

④「恋と知る程の男の方々は」

⑤「なんと不思議な笛の音だ」

⑥「立派な男が誰も皆」

⑦「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」

⑧「愛の喜びは露と消えて」

⑨「娘っ子か恋女房を」

⑩「私たちは炎を通り抜けた」

⑥「パパパの二重唱」
 

【演奏の模様】

 兎に角、面白い、楽しいそして分かり易い『魔笛』でした。「ザルツブルク友好都市演奏会」と言っても、彼のモーツァルトの家がある都市と交流して演奏者が来日した訳でも、彼の地に派遣した訳でもなく、魔笛を演奏して、彼の地に思いを寄せるという趣向でした。この『魔笛』は、本格オペラでもなく、演奏会形式でもなく、どちらかというと、簡易型セミステージ方式を取り入れ「朗読劇」に近いものでした。オペラのハイライトを登場人物がソロor 重唱で歌いました。

 メモを読みながらの司会進行役は、歌手の宮本益光さん。あちこちで色々と活躍、子供でも参加出来そうなやさしいオペラのプロモーターも務めている人です。

 宮本さんは ❝指揮者の川瀬さんはきっとスキップして登場しますよ❞と予言したらその通りでした。本人は示し合わせてないと言い訳していましたが、??

 若い川瀬さんは楽しそうに速足でスキップして登場、喝采を浴びすぐ指揮台に上り演奏を始めました。

楽器編成は、良く見えない処が有りましたが、多分二管編成弦楽五部8型(8-8-6-3-3)

 今日の魔笛は、先ず川瀬指揮神奈フィルによる序曲の演奏から開始です。

①の有名な序曲を聴くと❝ああ魔笛だな❞と何か懐かしい気がしてきました。

舞台には「魔法の鈴役」のダンサー作本さんが鈴が付いている帽子をかぶり、舞台上にけだるそうに出て来て立っています。

②はパパゲーノが鳥の羽根様の緑っぽい衣を着て、少しひょうきんそうに歌います。パパゲーノ役のバリトンの近藤さんは、本格バリトンの片鱗を感じます。

③王子・タミーノ役の澤原さんは、上半は白い服を黒ベルトで止め、下は白いパンツに黒いブーツ姿で登場、美しいテノールの声を張り上げていました。高音が綺麗。ややくぐもった声質の感がしないでもないですが、気にする程のものでは無いでしょう。

④嘉目真木子さんは最近とみに彼方此方の演奏会で名を見掛ける売れっ子の歌手です。今日はパミーナの歌をパパゲーノと二重唱です。互いに別に思う人を頭に描いていて、恋人同士でない二人を組み合わせた二重唱とは、モーツァルトの皮肉とも思えます。

 近藤さんは調子が上向きの様です、②より良くなっている。

嘉目さんは水色のガウン風の服を着て、綺麗なソプラノの声を張り上げました。声量はそれ程大きく感じられませんでしたが、整った歌い振りを見せました。

⑤澤原タミーノのソロアリアです。岡本さんのフルートの音も重ねます。中々良く鳴っている笛、高くなるとやや上ずるテノールかな?

⑥ここも④と同じ歌手組合せの二重唱。オケのHrn.の調べが印象的に歌に被りました。

⑦有名な夜の女王のアリア。針生美智子さんは、女王の衣装でしかも黒っぽいコスチューム姿。高音を張り上げてコロラテュールを上手に表現出来ましたが、残念なことに最高音が出ませんでした。もう一歩半音だけですから訓練すれば十分出る様になるでしょうと思った。ただ調子が悪かっただけかも知れませんが。

⑧ソプラノの嘉目さん、ここも魅力的な声で歌いきりましたが、冒頭やや声の乱れがあったかな?

⑨パパゲーノ役近藤さんが快調にバリトンを響かせ、今日ダントツの歌い振りを披露。心地良い歌声。このオペラは王子よりパパゲーノが主役を張っている様に思えるのでしたっけ?

⑩思い人同志の二重唱。壇上に二人の子役も登場し、脇役を果たす。嘉目さんここでの歌は頭の天辺から声が出ていました。OK

⑪ここはパパゲーノがパパゲーナと歌う箇所で非常に有名です。ここで本格的に歌うパパゲーナ役の鵜木さんは、もう少し前の場面で、ふらふら腰の曲がった年寄り風の様子で舞台に登場、最初老婆を装っていましたが、遂にはパパゲーノの気持ちを読み切って、ばば服を脱ぎ棄て、若い正体を表したので、パパゲーノは喜び勇んで、結婚相手に選んだのでした。

 鵜木さんは数年前、大和市のシリュウス・サブホールと言う処で、乳幼児連れの観客を前に、男性歌手と二人で優しい歌のお姉さんと言った風に歌っていたのを聴いた事が有ります。そうした活動を地味にやって来た歌手ですから、今日の様なコンサートにはもってこいの人材だと思いました。

 今日の演奏会はザルツブルグ市に敬意を表して、市の看板役者であるモーツアルトの人気曲目を、ハイライトでは有りますが、東響をバックにオペラ歌手陣が常に楽しい舞台を心掛けている、という気持ちが伝わって来る歌と演技を披露して呉れたので、大変楽しく、面白く、これならば子供連れでも子供共々楽しめる演目だなと思いました。

 東響の指揮者も演奏者(特にVa.トップ?)もアドリブ的な演技で、客席の笑いを誘い、又ダンサーもチェレスター奏者も演出の効果を上げるに功績大でした。

 司会の宮本さん達は、こうしたオペラの方式を多分独自で開発されたのだと思います。初めて見ました。中々興味深いものでした。(実は先週末から二日間、美空ひばりで有名な横浜杉田劇場で『朗読歌劇《椿姫》』というものがあって、池澤春菜さんがヴィオレッタ役を演ずるというのが分かり、チケットを訊いたのですが、既に完売だったので観れませんでした)。

 本格オペラ、セミステージ方式、演奏会方式、朗読劇的オペラ、と歌劇のすそ野が広がれば、それだけ観客の選択肢も広がり理解度も進むので、互いを啓発する事間違いなしでしょう。今後大いに期待出来ます。 


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