HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『N響・新生みなとみらいホール演奏会』を聴く

【主催者言】

横浜みなとみらいホール第1回バースデイ・コンサートや開館20周年記念演奏会など、折に触れて大きなプロジェクトをお願いしてきた井上道義をマエストロに、長年横浜定期演奏会を実施し、ホールとの所縁も深いオーケストラNHK交響楽団が登場します。また、ソリストには、東洋人のカウンターテナーとして初めてウィーン国立 歌劇場にデビュー、また2021年からは当ホールのプロデューサーを務めるなど、国際的な活躍が光る藤木大地。ホール所縁あるトップアーティストとともに、 ホールの新たな門出を祝います。

【日時】2022.11.3(木・文化の日)

【会場】みなとみらいホール大ホール

【管弦楽】NHK交響楽団

【指揮】井上道義

<Profile>

 ニュージーランド国立交響楽団首席客演指揮者、新日本フィルハーモニー交響楽団音楽監督、京都市交響楽団音楽監督、大阪フィルフィルハーモニー交響楽団首席指揮者、オーケストラ・アンサンブル金沢音楽監督を歴任。2017年大阪国際フェスティバル「バーンスタイン:ミサ」を、2019年オペラ「ドン・ジョヴァンニ(森山開次演出)」を、2020年オペラ「フィガロの結婚(野田秀樹演出)」を、いずれも総監督として率い既成概念にとらわれない唯一無二の舞台を作り上げている。2016年「渡邊暁雄基金特別賞」、「東燃ゼネラル音楽賞」、2018年「大阪文化賞」「大阪文化祭賞」「音楽クリティック・クラブ賞」、2019年「有馬賞」を受賞。オーケストラ・アンサンブル金沢桂冠指揮者。

【出演】

藤木大地(カウンターテナー)、

<Profile>

 2017年、ウィーン国立歌劇場に鮮烈にデビュー。東洋人のカウンターテナーとして初めての快挙で、大きなニュースとなる。2012年、第31回国際ハンス・ガボア・ベルヴェデーレ声楽コンクールにてハンス・ガボア賞を受賞。同年、日本音楽コンクール第1位。2013年5月、ボローニャ歌劇場にてグルック『クレーリアの勝利』マンニオ役でヨーロッパデビュー。国際的に高い評価を得る。 国内では、主要オーケストラとの公演や各地でのリサイタルがいずれも絶賛を博している。 2021年8月に新国立劇場で世界初演された子どもたちとアンドロイドが創る新しいオペラ『Super Angels スーパーエンジェル』では15歳の少年アキラ役で主演。ゴーレム3役のアンドロイド「オルタ3」との共演は画期的なオペラのかたちを世界へ提示した。バロックからコンテンポラリーまで幅広いレパートリーで活動を展開し、デビューから現在まで絶えず 話題の中心に存在する、日本が世界に誇る国際的なアーティストのひとりである。洗足学園音楽大学客員教授。 

近藤岳(パイプオルガン)

<Profile>

 東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。同大学別科オルガン科修了。同大学大学院修士課程音楽研究科(オルガン)修了。これまでに作曲を野田暉行、川井学、永冨正之、尾高惇忠の各氏に、オルガンを廣野嗣雄、今井奈緒子の各氏に師事。
現在、みなとみらいホール専属オルガニスト。作・編曲家としても、国内各地のコンサートホールを中心にオルガンリサイタル、コンサート、レクチャーコンサートなどのソロ演奏活動のほか、アンサンブルやオーケストラとの共演も多数行っている。また、2002年6月には「千年の響き」〜正倉院復元楽器とヨーロッパ伝統楽器が創造する現代音楽〜ヨーロッパ公演(ドイツ、イタリア、フランス、ポーランド)に、権代敦彦作品のソリストとして出演し好評を博した。2004年7月~2006年までミューザ川崎シンフォニーホールのオルガニストを務めた。2006年11月から、文化庁派遣芸術家在外研修員としてフランス(パリ)に留学。パリ・ノートルダム寺院の正オルガニスト、フィリップ・ルフェーブル氏に、オルガンおよび即興演奏を師事。

 

【曲目】

 

①J. シュトラウスⅡ世『ワルツ《南国のバラ》 Op. 388』

(曲について)

《南国のバラ》(なんごくのばら、独語:Rosen aus dem Süden)作品388は、1880年にヨハン・シュトラウス2世が作曲したメドレー形式のワルツ。ハインリヒ・ボーアマン=リーゲンの小説を原作とする自作のオペレッタ《女王陛下のハンカチーフ》を素材としている。 1880年10月1日にアン・デア・ウィーン劇場で初演されたこのオペレッタをイタリア王ウンベルト1世が大変気に入ったと耳にしたシュトラウスが、即座に編曲して王に献上したのがこのワルツである。
1880年11月7日に弟エドゥアルト・シュトラウスの指揮するシュトラウス管弦楽団によって、ウィーン楽友協会において初演された。ワルツの主題は、第1幕の「Trüffel-Couplet」("Stets kommt mir wieder in den Sinn")、第2幕の三重唱「野ばらが花開くところ」(Wo die wilde Rose erblüht)やロマンス("Lichter Glanz erfüllt sein Gemüt")(この2曲は同じメロディが使われている)、第2幕フィナーレの"Hell wie ein Strahl"、第3幕フィナーレの"Eine Königin liebt dich"などから取られており、ワルツの題名は第2幕の三重唱に触発されている。
このワルツは、「ワルツ王」の偉大な作品の中でも上位に立っており、今なおウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートで定期的に演奏されている。

 

②マーラー『リュッケルトの詩による5つの歌曲』

曲について)

『リュッケルト歌曲集』(独語Rückert-Lieder)は、グスタフ・マーラーが1901年から翌1902年にかけて完成させた連作歌曲集の呼称。より正しくは『フリードリヒ・リュッケルトによる5つの歌曲』(Fünf Lieder nach Rückert)という。ピアノ伴奏版とオーケストラ伴奏版の2種類が存在するが、マーラー自身がオーケストレーションしたのは5曲中4曲のみで、「美しさゆえに愛するのなら」のオーケストレーションはマーラーによるものではない。

初版は1905年。初版では、後に連作歌曲集『少年の魔法の角笛』

に挿入された「少年鼓手」(Der Tamboursg'sell)と「死んだ少年鼓手」(Revelge)の2曲を含み、『7つの最後の歌』(Sieben Lieder aus letzter Zeit)と呼ばれていたが、実際には「最後の歌」でもなく現在の演奏会では完全に切り離して「リュッケルト歌曲集」だけ演奏されることの方が圧倒的に多い。

 

 

③サン₌サーンス『交響曲第3番 ハ短調 「オルガン付き」 Op. 78』

(曲について)

カミーユ・サン=サーンスが1886年に作曲した交響曲。サン=サーンスの交響曲の中でも最も有名な作品であり、『オルガン付き』(avec orgue)の愛称で知られる。

ロンドン・フィルハーモニックック協会の委嘱で作曲され、1886年5月19日の初演も作曲者自身の指揮によりロンドンのセント・ジェームズ・ホール(英語版)で行われている。

この作品の作曲について、サン=サーンスは「この曲には私が注ぎ込める全てを注ぎ込んだ」と述べ、彼自身の名人芸的なピアノ

の楽句や、華麗な管弦楽書法、教会のパイプオルガンの響きが盛り込まれている。初演や、翌1887年1月9日のパリ音楽院演奏協会によるパリ初演はどちらも成功を収め、サン=サーンスは「フランスのベートーベン」と称えられた。

 

 

【演奏の模様】

 例の金網の件は、10月29日のオープニングコンサートの時は、全然気が付きませんでした。翌日はオペラを観に行くための予習などもあり、まったく知らなかった。その日家に帰って色々ネット情報を見ていて、大きく騒がれていることを知りました。その後新聞でも報道されていて、一体どんなものなのか、N響の演奏会の時、見てみようと思っていたのです。演奏が始まる前に、話題となっている金網を見に二階の左翼席に行ってみました。見ると一列目の座席の真ん前に金網が張ってありました。以下の写真の通りです。f:id:hukkats:20221103233421j:image

確かに音楽だけを耳で聞く分には関係無いようですが、観客は目で演奏者を見ながら聴く人が多い(目を瞑って聴く人はそうはいない)でしょうから、確かに気にすれば邪魔ッ気に感じるでしょう。あまり気にしない人で安全確保を優先する観客であれば、楽器も良く見えるし騒ぎ立てないかも知れません。オペラやバレエの時は鑑賞を遮る非常に邪魔なものでしょう。しかし係員に尋ねたら、これまでバレエやオペラはやったことが無いとのこと。緞帳や設備が舞台に備わっていないからだそうです。いずれにせよ苦情が多いので、設備管理者としては、「ボストン交響楽団の演奏会(11/9)」までには、金網を撤去するそうです。又次の様な張り紙がありました。要するに一番前の席で希望者には、席替えを実施するとの趣旨です。

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結局我々音楽愛好家にとっても、ホール管理者にとっても、無駄な時間を浪費した小事件でした。これを「他山の石」(と言うか「災い転じて福となす」)とし、無駄に終わらせない心掛けが重要でしょう。

 

①J. シュトラウスⅡ世『ワルツ《南国のバラ》 Op. 388

 さて演奏の方ですが、この曲は、これまで何回となく聴いて良く知っている旋律なので、何か懐かしい人に会った様な嬉しい気分で聴いていました。ウィンナーワルツの陽気な側面と、どこか哀愁を帯びた曲想を井上N響は、上手に使い分けて表現していました。終盤井上さんは右手でタクトを振り、左手を見ると何とビールのジョッキを片手に振っているではありませんか。

MünchenならともかくWienの曲ですから、自分だったらやはりワインですね。

井上さんの意図は、何か言っていましたが聞こえず、多分ホワイエのバーカウンターでビールも販売再開したことをアピ-ルしたかったのかな?いやそんなことは言わないでしょう。井上さん一流の聴衆を和ませ喜ばせるパーフォーマンスだったのかも知れません。

 

②マーラー『リュッケルトの詩による5つの歌曲』

1.私の歌を覗き見しないでBlicke mir nicht in die Lieder!(1901年6月14日作曲)

 これまで何回か藤木さんのカウンターテノールは聴いて来ましたが、カウンターテノールの声質自体が自分の趣味にあまり合わないので、素晴らしいと思ったことは有りません。しかし今日の立ち上がりはカウンターテノールの響きの違和感が減殺されて、澄んだ声に聞えました。

 

2.私は仄かな香りを吸い込んだIch atmet' einen linden Duft(1901年7月)

Ob.ソロが鳴るとすぐに藤木さんの歌が入りました。Hp.も。全弦アンサンブルが鳴り響くと、大地さんの声は埋もれがちでした。

 

3.私はこの世に捨てられてIch bin der Welt abhanden gekommen(1901年8月16日)

Fg.のトレモロがあり、大地さんはかなりの高音で歌うのに対し、Va.は、pizzicato 

後Hr.の響き。弦楽奏はかなり控え目でした。短い曲でした。

 

4.真夜中にUm Mitternacht(1901年夏)

オケと歌の強弱バランスの良い曲でした。大地さんは疲れたのか、かなりの高音の声が続かないし、途切れ気味。

 

5.美しさゆえに愛するのならLiebst du um Schönheit(1902年8月)

この曲はマーラー自身の作ではないとのことでしょうか。この曲を歌う前に大地さんは用意していたコップの水を採りました。最終場面では、かなりの轟音をオケは立てたため、藤木さんの声はほとんど聞こえない状態に。

 総じて、藤木さんは体調が良くないのか?疲れが早く出てしまった感がしました。

 

《20分の休憩》

 

 

③サン=サーンス『交響曲第3番 ハ短調 「オルガン付き」』

 今日はこのサンサーンスの曲がお目当てで聴きに来ました。

<楽器編成(通常)>

Picc. 1(3番フルート持ち換え)、Fl.  3、 2、En.Hrn. 1、Cl. 2、Bas Cl. 1、Fg.b 2、C-Fg. 1 Hrn. 4 、Trmp. 3 、Trmb. 3、Tub. 1 Timp.(3個)、Tria. Cym.、Bas Drm. 

パイプオルガン、Pf(奏者2人)。

(弦楽五部)14  型

全2楽章、演奏時間は約35分(各楽章20分、15分)に通常は分類されますが、各楽章とも前半後半の区切りがあるので、4楽章構成と見る人もいます。サン=サーンスはここで、伝統的なスタイルも踏まえつつ、新たな形の交響曲を意図していたとも謂われています。

 またこの交響曲の最も独創的な特徴は、サンサーンスが各所に、ピアノ(2手もしくは4手)及びパイプオルガンを使用して重厚な響きを織り込んだことでしょう。鍵盤楽器を巧妙に利用したのです。勿論、ピアノだけとオーケストラ、オルガンとオーケストラの例は他にもあるでしょう。しかしそうした曲とは比べにならない程大規模に交響曲にパイプオルガンの豪快な響きを組み込んだのでした。これ程までに大々的に組み込んだ例は他に無いでしょう。サンサーンスはマドレーヌ寺院の専属オルガニストを長年務めた経験を生かしたのでした。しかも幼少の頃から神童、天才の呼び声が高かった彼ですから、オルガンとピアノがオーケストラと織りなす天地も揺るがす程の豪快なアンサンブルとオーケストレーションは見事という他有りませんでした。オケの強奏・全奏にのし掛かるオルガンの重戦車、その周りをキラキラと軽い音の煌めき、あれは一体何の楽器と思わす程軽ろやかに聴こえるのはピアノの音でした。この曲最大の山場は、N響を豪快に引っ張る井上マエストロ、それからみなとみらいホール専属オルガニストの近藤岳さん、ピアニストはどなただったのか配布資料には記載がないので分かりませんが、この三部隊の一致団結した作戦が功を奏した瞬間でした。

 もうこれを聞いただけで大満足と思わす(勿論この曲の他の彼方此方でも素晴らしい響きを奏でた)N響の今日の演奏でした。

演奏後、大きな拍手の中、井上さんは、各パート毎に起立させて挨拶、観客共々健闘を讃えていました。その後で、マイクを握って出て来たマエストロは、❝今日のみなとみらいホールの記念演奏会としての演奏は、皆さんに満足して頂けたものと思う。いろいろあったけれども、みんなでみなとみらいホールを今後も支え大きく育てていきましょう❞といった趣旨のことを語っていました。同感の至りです。