HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

ミューザ夏祭『超絶技巧のロシアン・ピアニズム〈2台ピアノ〉』

◆フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2022「超絶技巧のロシアン・ピアニズム」◆
オーケストラのあの人気曲を2台ピアノで!

Tweets with replies by 竹平晃子|フリーアナウンサー (@akiko_takehira) / Twitter

【日時】2022年7月31日(日) 17:00~

【会場】ミューザ川崎シンフォニーホール
【出演】ピアノ:

〇イリヤ・ラシュコフスキー、

   

<Profile>

ロシア出身。5歳よりピアノを始め、8歳でイルクーツク室内オーケストラと共演。95年イタリア・マルサラ市の国際コンクールで優勝。98年ウラジミール・クライネフ国際コンクールに優勝し、本格的な演奏活動を開始。同年にロストロポーヴィチ財団の奨学金を授与される。
これまでにウラジミール・クライネフ、M.リビツキらに師事。
01年ロン=ティボー国際音楽コンクール第2位、05年アシュケナージが審査員長を務めた香港国際ピアノコンクール優勝、07年エリザベート王妃国際音楽コンクール第4位、11年ルービンシュタイン国際ピアノコンクール第3位受賞などを経て、第8回浜松国際ピアノコンクールで見事優勝。
これまでに、マリインスキー劇場管弦楽団、都響、東響、新日本フィル、神奈川フィル、名古屋フィル、京都市響等のオーケストラと、また、ゲルギエフ、井上道義、T.フィッシャーらと共演。
室内楽にも積極的で、クララ=ジュミ・カン、ボムソリ、庄司紗矢香、須川展也などと共演している。
「チャイコフスキー:四季、ピアノ・ソナタ」、「ショパン:練習曲集全曲」、「ムソルグスキー:展覧会の絵」「スクリャービン:ピアノ・ソナタ全集」等、録音も多く、いずれも高く評価されている。

〇小川典子

 

<Profile>

リーズ国際ピアノコンクール入賞以来30年以上、英国と日本を拠点に国際的で多彩な活動を展開中。BISより40枚近いCDを発売。2021年には世界初録音のR.ドゥヴニオン「クライスレリアーナ」、「サティ:ピアノ独奏曲全曲集Vol.4″ルラーシュ・シネマ″」が次々と発売された。2013、14年にBBCプロムスに連続出演。ポーランド放送響、モスクワ放送響、サンクトペテルブルグ響、BBC響などと共演、また世界各国の音楽祭でリサイタルやマスタークラスを行う。リーズ国際、グリーグ国際、クリーブランド国際コンクール審査員。浜松国際ピアノアカデミー音楽監督。浜松国際ピアノコンクール審査委員長。国際音楽コンクール世界連盟役員。英国ギルドホール音楽院教授。東京音楽大学特任教授。ミューザ川崎シンフォニーホールアドバイザー。ジェイミーのコンサート主宰。文化庁芸術選奨新人賞受賞。


【曲目】
   ①ボロディン:歌劇「イーゴリ公」から だったん人の踊り

  

   ②ストラヴィンスキー:バレエ音楽〈春の祭典〉

 

《20分の休憩》

 

   ③ラフマニノフ『交響的舞曲』

 

【曲目説明】 

①『韃靼人の踊り』(だったんじんのおどり)は『ポロヴェツ人の踊り』(ポロヴェツじんのおどり、露: Половецкие пляски、英: Polovtsian Dances)とも呼ばれ、ロシアの作曲家アレクサンドル・ボロディンが作曲したオペラ『イーゴリ公』の第2幕に含まれる曲で、ボロディンの最も有名な曲のひとつであり、またクラシック音楽でも有数の人気曲である。日本語の題名は『ダッタン人の踊り』『だったん人の踊り』『ポロヴェッツ人の踊り』などとも記される。しばしばオーケストラのコンサートなどで、オペラとは独立に演奏される。ただし、オペラでは合唱を伴うが、演奏会では合唱のパートを省略することが多い。序曲や「ポロヴェツ人の行進」などと併せて『イーゴリ公組曲』とすることもある。

オペラの第1幕の終わりでイーゴリ公と息子のヴラヂーミルはコンチャーク・ハーンが率いるポロヴェツ人の捕虜となり、第2幕はポロヴェツ軍の野営地で展開する。第2幕の冒頭ではポロヴェツ人の娘たちが登場し、合唱に続いて第8曲「韃靼人の娘の踊り」を踊る。第2幕の終盤、イーゴリ公を懐柔しようとするが拒まれたコンチャーク・ハーンは奴隷たちに余興の踊りを命じ、第17曲の「韃靼人の踊り」が第2幕を締めくくる。

今回は日本人作曲家による二台のピアノ演奏用の編曲版です。

 

【演奏の模様】

 

ホールに入って客席を見渡すと、いつものミューザの大ホールとは何か違った感じがしました。良く見ると二階三階の席の全面にボードの様なものが貼られて、座席が隠されている様なのです。何となくホールが小さく見ました、小ホールが無いミューザでは、リサイタルも大ホール一杯に観客を入れて催行しましたが、今回の曲目と奏者では、大ホール一杯の集客力は無いでしょうから(これは失礼!)小ホール的な雰囲気を醸し出したのでしょうか?さらに舞台に目をやると、ピアノ二台は舞台中央正面に横に接して配置され、右方鍵盤のピアノが手前に、そして左方鍵盤ノピアノがその奥に横付けされていました。これ等のピアノを見てアレッと思ったのは、手前のピアノの蓋(響板)が開けられ、奥のピアノの蓋は外されていたことです。という事は、手前のピアノの音は客席に反射されますが、奥のピアノ(左肩鍵盤)の音は手前の別のピアノの蓋(響板)に遮られ、大部分は天井目掛けて上昇し、客席側に来る音は、もう一つのピアノよりは少なく(弱く)なるのでは?と思ったのです。通常この逆に蓋を空けたり外したりすることが多いと思いますが。しかし実際二人の演奏を聴くとそういうことは余り感じませんでした。全体的には、バランスがとれていた。最初の①ボロディン原曲の演奏は舞台に向かって右手鍵盤のピアノは小川さん、左方鍵盤にはイリヤ・ラシュコフスキー(以下I.R.と略記)が座って演奏しました。という事は、I.R.の演奏音はかなり強くて大きい音なので、小川さんの演奏音とのバランスをとるためなのでしょうか?

 ①のボロディン『歌劇イーゴリ公から だったん人の踊り』は、元々ボロディンが、オペラ制作を目指した『イーゴリ公』の中の有場面を切り出したもので、しかも今回はそれを二つのピアノの為の演奏曲に編曲したものです。編曲者は中原竜彦。ネット情報によれば、彼は1968年長崎市生まれ、福岡教育大及び同大学院で学び、東京芸術大学別科作曲専修を修了した人です。作曲を内山信、川崎絵都夫。尾高淳忠に、ピアノを福田信光に師事。管弦楽、吹奏楽、室内楽、器楽曲、合唱曲などの作曲や編曲を手掛けている、そうです。

 ボロディンは管弦楽曲の中で弦楽五部の他にフルートやクラリネット等の管楽器それから太鼓、シンバル等の打楽器をうまく振り分けて韃靼人の踊るバレエの雰囲気を醸し出し、この曲を不朽の名作にまで押し上げました。(勿論同時進行する合唱の歌声も大きな役割を果たしていますが)。

 今回の二つのピアノによる演奏は、テクニカル面では高度な申し分ない素晴らしいインパクトのあるDUO演奏でしたが、曲の背景、歴史的物語の場面性、踊りの場の雰囲気を考えると、こう言っては何ですが、曲表現が少し違うかな?と感じた次第です。参考まで「だったん人の踊りの曲」に合わせて歌われる合唱の歌詞の大要を記します。

<奴隷女たち>

風の翼に乗って飛べ
故郷へ、我らの愛する歌よ
かの地では我らは自由に歌い、
歌いながら自由を感じたところへ
熱い空の下、
大気は喜びに満ち、
さざ波を聞きながら
山々は雲居にまどろむ
太陽が燦然と輝き
故郷の山々を光に包む
谷間には華麗な薔薇の花々が咲き乱れ
蒼い森には黒歌鳥が鳴き
甘い葡萄が繁る。
お前はそこでは自由、歌よ
故郷へ飛べ

お前はそこでは自由、歌よ
故郷へ飛べ

<だったん人>

ハーンを称える歌を歌え!歌え!
ハーンの勇気の力を称えよ!
栄光あるハーンを称えよ!
栄光ある我らのハーン!
栄光の輝かしさのうちに
ハーンは太陽に等しい!
栄光あるハーンに並ぶものはいない!いない!
女奴隷たちがハーンを称える
彼女らのハーン

 

<コンチャック・ハーン>

遠い海からの虜を見たか、
わが美女たちを見たか、
カスピ海の向こうから来た美女たちを?
友よ朕に
朕に一言申せば
欲しいと申せば このうち一人をとらせようぞ。

<だったん人>

ハーンを称える歌を歌え!歌え!
ハーンの寛大さを称えよ、ハーンの慈悲を称えよ!
ハーンを称えよ!
敵にはハーンは無慈悲なり
彼は、我らのハーン
栄光あるハーンに誰が匹敵しようか?誰が?
栄光の輝かしさのうちに
ハーンは太陽に等しい!
我らのハーン、コンチャック・ハーンは
祖先の栄光に比肩する!
恐るべきハーン、コンチャック・ハーンは、
祖先の栄光の比肩する!
栄光ある者、それは我らがコンチャック・ハーン!
万歳!万歳!

奴隷全員

(冒頭の節を繰り返す)

<だったん人>

我らがハーン、コンチャック・ハーンは
祖先の栄光に比肩する!
恐るべきコンチャック・ハーンは
祖先の栄光に比肩する!
万歳、万歳、コンチャック・ハーン!
コンチャック・ハーン!
踊りで汝がハーンを楽しませよ
奴隷ども、ハーンを踊りで楽しませよ!
汝がハーンを!
奴隷ども、ハーンを踊りで楽しませよ! 汝がハーンを!
踊りで汝がハーンを楽しませよ!
踊って楽しませよ!
我らがコンチャック・ハーンを!
我らがコンチャック・ハーンを!

 Duo演奏者の演奏の各処には管弦楽の慣れ親しんだメロディが、それと分かる様に差し込まれていて出てきますが、何せかなりの編曲と変奏がされていて、ピアノ演奏に没頭するお二人はあたかもピアノソナタの難曲を、超絶技巧で以てねじ伏せるが如く演奏に没頭、この傾向は次の春の祭典でも交響的舞曲でも同様でしたが、ピアノが壊れるのでは?と思う程の打楽器化したピアノ演奏は、作曲家の意図した曲想に沿ったものでは無いのでは?と少し?に思いました。勿論楽譜にはそう書いてあるのでしょけれど。  

 聴き終わって大変疲れました。

②の春の祭典の方が、ストラヴィンスキーのオーケストラ曲(これも度々演奏されますね。2019年来日時のウィーンフィル、今度来日演奏予定のパリ管弦楽団などなど)の曲想に近い演奏だったと思います。尚春の祭典のピアノ演奏ではDUOでなく、一つのピアノを使った連弾が行われました。その方が作曲家の意図する音を出せると踏んだからでしょう。二人のピアノの息はぴったり合った演奏でした。①の冒頭の後近くでは、スタート時のDUO発音がほんの少しずれたと感じたこともあり、二つの鍵盤が遠く離れた位置にあり指揮者もいないので、ズレないのかな?と心配になって来ました。その後は、そうしたことは杞憂だったですけれど。きっと互いに相手が見えるのでしょう。目で以て合図してタイミングを取っていた様です。

 休憩は20分ありました。①と②の間は時間が短いので出来ないと思いますが、休憩時間には調律されたのでしょうね。ホールの外に出ていて見ていませんでしたけれど。強く鍵盤をたたく演奏が多かったので、相当弦が疲れたり、ズレたりしたかも知れない。ケースによっては金属弦でも切れることがある様ですよ。それから今回は浜松ピアノコンクールについて小川さんのトークでも触れられ、そこでの覇者とやっと共演できたこと、浜松にはヤマハの工場があってピアノとは縁の深いこと、「蜜蜂と遠雷」のこと等話されていましたが、今回の使用ピアノは二台とも「スタンウェイ」ですか?

 予定の曲の演奏後にアンコール演奏が一曲ありました。

ラフマニノフ『二台のピアノのための組曲第1番』から第三楽章

穏やかな優しいメロディがずーと続き、疲れが少し癒された感じがしました。

尚、今回の予定演奏の中では③のラフマニノフの交響的舞曲は、激しい演奏の中にも全体を通して音楽性の統合を感じ、さすがピアノ演奏家で作曲家の作品だなという事を再認識しました。自分としては、この曲を聴いた後、一番の大きな拍手をしました。