〇ピアノ部門本選
【日時】2023.8.27.(日)16:00〜
【会場】東京文化会館
【管弦楽】東京交響楽団
【指揮】梅田俊明
【本選出場者(出場順)】
①佐川和冴 SAGAWA Kazusa
L.v.ベートーヴェン『ピアノ協奏曲第4番 ト長調 Op.5』
<Profile>
東京音楽大学を首席で卒業し、現在東京音楽大学大学院修士課程1年に奨学生として在学中。 第90回日本音楽コンクールピアノ部門第2位。 第15回東京音楽大学コンクールにおいて史上最年少で第1位。 第31回宝塚ベガ音楽コンクール第1位
②角野未来 SUMINO Mirai
S.ラフマニノフ『パガニーニの主題による狂詩曲 Op.43』
<Profile>
1998年生まれ。第20回東京音楽コンクール入選。第17回ちば音楽コンクール 全部門最優秀賞。第17回ショパンコンクールinAsia コンチェルト部門 全国大会及びアジア大会 金賞 併せてコンチェルト賞受賞。第19回ショパンコンクールinAsia プロフェッショナル部門 アジア大会銅賞。NY カーネギーホールでの演奏会「The Passion of Music 」に出演。2020年度 公益財団法人青山音楽財団奨学生。
大学卒業に際して、アカンサス音楽賞、同声会賞、藝大クラヴィーア賞を受賞。また、藝大フィルハーモニア管弦楽団、千葉交響楽団、千葉県少年少女オーケストラと共演。これまでに金子勝子、有森博、吉田友昭の各氏に師事。
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校、東京藝術大学を経て東京藝術大学院音楽研究科2年在学中。
③島多璃音 SHIMATA Riito
S.ラフマニノフ『ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 Op.18』
<Profile>
ドイツ、デュッセルドルフ市生まれ。兵庫県宝塚市にて育つ。4歳からヤマハ音楽教室に入室、ジュニア専門コース研究クラスを修了。その後、兵庫県立西宮高等学校音楽科を経て、現在東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻在籍。ヤマハ音楽支援奨学生。これまでにピアノを福尾文子、池田寿美子、故木村綾子、坂井千春、室内楽を伊藤恵、渡邊健二、野平一郎、フィンガートレーニングを加藤真弓、作曲を長谷川京子の各氏に師事。主な賞歴はショパン国際ピアノコンクールin ASIAアジア大会、全日本学生音楽コンクール、ベートーヴェン国際ピアノコンクールアジア、スペイン国際音楽コンクールにて優勝。
④渡邊晟人 WATANABE Masato
F.リスト『ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調 S124』
<Profile>
2000年生まれピティナ・ピアノコンペティションF級金賞。18年同G全国決勝大会入選。14年全日本学生音楽コンクール中学校の部東京大会第3位。15年同コンクール中学校の部東京大会第2位。17年同コンクール高校の部東京大会第2位。全国大会入選。第20回秋田県青少年音楽コンクール記念大会ピアノ部門グランプリ。第61回全東北ピアノコンクール第2位。第3回ソナタコンクールソナタ全楽章コース銅賞。これまでに 若松マキ、喜多村和子、伊藤恵各氏に師事。現在、東京藝術大学在学中。
【感想】
これを書いている頃には、審査結果が出ている筈ですが、表彰式には出ないで演奏が終了次第すぐに駅に向かったので分かりません。また電車の中で文化会館のH.P.などを二三、調べても結果は出ていませんでした。まー結果はさて置き、感じたことを(電車の中で)書きますと、先ず、全体的に演奏者のレベルが年々高くなっていることを痛感しました。皆さん今回の演奏曲に関しては、もう立派なピアニストです。日本のどの様なオーケストラとも共演し、どの様なホールででも演奏し、きっと聴衆に感動を与えることが出来るでしょう。
①佐川さんは、トップバッターとして登場する姿も堂々としていて自信満々の様子。ベートーヴェンの4番コンチェルトを弾きました。この曲は、一番有名な5番よりも、自分としても一番好きなベトコンです。よくぞ弾いてくれました。暫く振りで、生きのいい若さ溢れる演奏を生で聴いて、この曲の良さを再確認しました。
②角野さんは、昨年の東京音楽コンクールでも本選に出て、ショパンの1番を弾いたのをロビーのテレビモニターで見ていました。恥ずかしながらその時は遅刻してしまったのです。今回は、(勿論曲が異なりますが)昨年よりも一回りも二回りも大きくなった感じの演奏でした。特に第18変奏Andante cantabileでは、それまでの男勝りの強打鍵からは想像出来ない程の可憐な指使いで、ラフマの大発明である優美で麗しい旋律を会場一杯にしっとりと響かせ、自分なぞこれを聴いただけで、もう十分と思った程です。四人のコンテスタントの中で、紅一点。角野さんが一番華やいで輝いた瞬間でした。まだお若いですしホントに花の様!
≪20分の休憩室≫
③島多さんは、姓も名も大変珍しいのですね。演奏曲は、大変珍しくないラフマの2番でした。この曲は、多くのピアニストが演奏会で弾くので、聴く人の耳がこえているので、差別化するのが難しいかもしれません。でも島多さんは、それを見事にやってのけました。二楽章前半の丹念な旋律進行部でさらにメリハリが付けたら?と思っていたら、カデンツァの箇所でFl.が合いの手をいれた後の丹念に指使いをして弾いた時には見事な弾き振りでした。この辺りから三楽章までの後半は、さらに尻上がりに好調となり、一層心をこめて弾いている様子でした。演奏後の拍手喝采も大きく歓声も上がっていました。
④ラストバッター渡邊さんは、リストのコンチェルトを弾きました。今日の演奏者全員が二十代前半、皆さん春秋に富む若い世代です。渡邊さんは東京藝大の院生です。でも登壇した様子は、冷静沈着落ち着いた雰囲気の青年でした。演奏も落ち着いたショパン的な美しい旋律を表現豊かに発出、勿論リストの曲ですから、ショパンに影響を与えた以上のリストらしい超絶技巧の箇所もあり、そうした箇所も渡邊さんは、難なくサラッと弾きこなし、全体的にには、随分成熟したピアニスト風に表現する若者だなと思って聴いていました。今後順調に成長すれば、玄人好みのピアニストになるかも知れません。
こうして全演奏を聴き終わって振り返ると、冒頭に書いた、”年々演奏者のレベルが高くなっている”という実感が強まります。日本の若者の実力が向上していることは、近年の海外のコンクールでの活躍ぶりを見ても分かることですが、首都東京のコンクールですから、その参加者の実力が、国際レベルに近づくには、コンクールに海外の若者の参加者が、もっともっと増える必要があると考えるのです。これは、一朝一夕には叶わないことかもしれません。中国やロシア、東南アジア諸国からの参加は、戦争や紛争や国家対立が激化している現下の情勢では、夢物語なのでしょう。しかし、夢は夢でも、心に抱き続けていれば、いつの日か実現しないとも限りません。若者よ大いに夢を抱こうではありませんか。
≪追記≫
翌朝、文化会館のH.P.を見たら審査結果が発表になっていました。次の通りです。
〇第21回東京音楽コンクール
ピアノ部門 本選結果
第1位
佐川和冴 SAGAWA Kazusa
第2位
島多璃音 SHIMATA Riito
第3位
角野未来 SUMINO Mirai
入選
渡邊晟人 WATANABE Masato
聴衆賞
島多璃音 SHIMATA Riito
佐川さんは、日本音楽コンクール2位を今回の東京音楽コンクールで挽回しましたね。
二位に付けた島多さんの、心を込めた演奏は印象的でした。国際的活躍が期待されます。
角野さんは見事三位を射止め、昨年よりもさらに成長したことを証明しました。これからショパンコンクールを目指すのも一方法かも知れません。
渡邊さんは入選ということですが、多くの参加者の中での四位ですから大したものです。聴いていて、非常にいい音楽性を感じました。今後ますますの発展が期待できます。