HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

中井恒仁&武田美和子&山本薫ジョイントリサイタル

 本演奏会は、フコク生命が定期的に実施している「チャリティコンサート」の一環で、今回は、第306回チャリティコンサートとして、東京・紀尾井ホールで開かれたものです。主催者発表の開催概要は以下の通り。


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        2023年12月26日 富国生命保険相互会社

第306回 フコク生命チャリティコンサート 開催について

富国生命保険相互会社(代表取締役社長 米山好映)は、社会貢献活動の一環と して、1993年より全国各地で開催しているチャリティコンサートの第306回公演 を、東京都千代田区紀尾井ホールにて開催いたします。

1. 開催概要

●公演名

●開催日時

●開催会場

第306回フコク生命チャリティコンサート

2024年2月20日(火)

開場 午後5時30分 開演 午後6時30分

紀尾井ホール

(千代田区紀尾井町6番5号)

●出演者

   中井恒仁   武田美和子     山本薰

●入場料無料(自由席,要入場券)

●応募方法

入場券申込先:csr@fm.fukoku-life.co.jp

※郵便番号・住所・代表者の方の氏名・電話番号・希望枚数 を記入のうえ 2024年1月31日(水)までにメールにてお 申込みください。

※先着200名様、入場券は応募締切後、順次発送します。 ※6歳未満のお子さま(未就学児)の入場はご遠慮ください。

●主 催

富国生命保険相互会社 総務部 CSR推進室

タカギクラヴィア株式会社


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2.演奏曲目

バッハ:カンタータBWV208 「羊は安らかに草を食み」

スメタナ:我が祖国より 「モルダウ」

ブラームス:インテルメッツォ Op. 117-1

ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ 第5番 Op.24 「春」第1楽章 ヴィエニャフスキ:グノーの「ファウスト」による華麗なる幻想曲 Op.20 より抜粋

リスト:「ラ・カンパネラ」

クライスラー: レチタティーヴォとスケルツオ Op.6

ガーシュイン: ラプソディーインブルー

ドビュッシー: 月の光

ラフマニノフ:「組曲第2番より〈タランテラ〉」

三善晃:唱歌の四季より「夕焼け小焼け」

 

 

3.「フコク生命チャリティコンサート」の概要について

「フコク生命チャリティコンサート」は、『音楽をとおしたお客さまとのふれ あい』と『若手音楽家の育成』を目的とした文化活動として、1989年より富国 生命本社ビルロビーにて開催していた 「フコク・サロンコンサート」 が前身で す。

1993年、「フコク・サロンコンサート」で培った知識を生かし、創業70周年 の社会貢献事業として「チャリティコンサート」 を開始しました。開催を重ね ていく中で、活動に参画いただける音楽家 (フコク生命パートナー・アーティ スト)も増えています。

2003年、創業80周年の社会貢献事業として「チャリティコンサート」の翌日 に、出演者が近隣の特別支援学校にお伺いし、演奏する「訪問コンサート」を 開催する。2日間のコンサート活動へと発展しました。

なお、本コンサートはクラシック演奏会に初めて来場された方でも楽しんで いただけるよう馴染みのある楽曲を中心に、また出演者自ら曲を解説する「 ーク&コンサート」形式です。

4.その他

●翌2月21日、筑波大学附属桐ヶ丘特別支援学校にて「訪間コンサート」 を開催いたします。

●ご協力いただいたチャリティ募金は、千代田区社会福祉協議会のほか、一 東日本大震災で被災した方たちのために寄付いたします。 

 

【出演者プロフィール】

中井 恒仁&武田 美和子ピアノデュオフコク生命パートナー・アーティスト:

日本で唯一、世界でも大変まれな、それぞれのソロとデュオ共に「国際音楽コンクール世界連盟WFIMC」加盟のコ ンクールで入賞しているピアノデュオ。夫妻で共に東京藝術大学、ミュンヘン音楽大学大学院修了後、ザルツブ ルグ・モーツァルテウム音楽大学にて研鑽を積む。ピアノデュオをAコンタルスキー氏に師事。1999年にデュオ を結成し、同年「マレー・ドラノフ国際2台ピアノコンクール(USA)」入賞後、アメリカでの3日連続リサイタルを皮切 りに本格的なデュオ活動もスタートさせる。日本でも全国各地で多くのビアノデュオリサイタルを行い「日本が誇 る真のデュオであり美験の音楽家である」など高い評価を得ている。6枚のCDをリリース、レコード芸術誌特選、 準特選に選出されている。4枚のCDがANA国際線オーディオ番組で放送される。NHK-BSテレビ「名曲探偵アマ デウス」「ぴあのビア」、FM「名曲リサイタル」に出演、音楽誌「ショパン」の連載やピアノデュオ特集では表紙を 飾る。2014年久留島武彦文化賞受賞。近年では、フランスの音楽祭出演、ドイツやイギリスで多くのリサイタル を行い「ナイトの称号を与えるべき音楽芸術」と最高級の言葉で新聞紙上にて絶賛された。また、フランス、韓国 ・中国の国際音楽祭にて演奏と指導を行う。ともにフコク生命パートナー・アーティスト。

(Website) https://nakai-takeda.com (X) #nakai takeda

 

中井恒仁

 DAADの奨学生としてドイツ留学。日本音楽コンクール第3位、ブラームス国際音楽コンクール第2位・聴衆賞、セニガリア国際ピアノコ

ンクール第1位・室内楽賞・歌曲伴奏賞、ヴィオッティ国際音楽コンクール 97 (ヴェルチェリ) 第3位等で入賞。W・ケンプ生誕100周年記 念・ベートーヴェン・ピアノ協奏曲全曲演奏会(伊) 出演等、内外のオーケストラとの協演も多い。ブラームスのピアノ作品全曲(ソロ・連 弾・2台ピアノ) 演奏会を行った。CD「ブラームス」をリリース。現在、桐朋学園大学教授・学部長、名古屋音楽大学客員教授。

 

武田美和子

 全日本学生音楽コンクール高等学校の部・北海道第1位、東日本第2位、マリア・カナルス国際音楽コンクール第3位・審査員特別賞、 ヴィオッティ国際音楽コンクール'98 (ヴェルチェリ)第3位入賞の他、バルマ・ドーロ、ローマ、マザーラ・デル・バッロ、マヴィ・マルコツ、 エンニオ・ポリーノ、各国際コンクールにて様々な賞を受賞。ライ・イタリア国立放送響、オラデアフィル(ルーマニア)などと協演。CD「武 田美和子ブレイズリスト」、「カンタンド・アンジェリーコ」をリリース。上野学園大学、桐朋学園大学大学院講師。株式会社ミラミュープロ代表取締役。

 

山本 薫(ヴァイオリン ) フコク生命パートナー・アーティスト:

 全日本学生音楽コンクール西日本大会2位。東京藝術大学卒業、在学中福島賞受賞、全日本モーツァルトコンテ スト1位。ミュンヘン音楽大学大学院を経てフライブルグ音大大学院首席最優秀で卒業。同大学ソリストコース 首席最優秀で卒業。メンデルスゾーンコンクール位、ヴィオッティ国際コンクール2位(1位なし)、ラインツクラップコ ンクール2位(1位なし)、ブラームス国際コンクール 「特別ブラームス賞」等受賞、第11回チャイコフスキー国際コン クールセミファイナリスト、元ベルリンフィルハーモニー管弦楽団首席奏者を中心としたヴィラムジカメンバー。シュ トゥットガルト国立管弦楽団(シュトゥットガルト国立歌劇場) 団員を経て、バイエルン国立歌劇場契約団員。ソリス トとしてフランクフルト室内管弦楽団、スロヴァキア国立管弦楽団、ベルリンの室内管弦楽団、シュトゥットガルト: アルカータ管弦楽団等共演、高い評価を受けている。大町陽一郎氏指揮東京フィルハーモニー管弦楽団とベー トーヴェンのヴァイオリン協奏曲を共演、「稀有の名演」と新聞紙で絶賛される。とやま賞、北日本芸術選奨受賞。 ドイツ、フランス、スイス、日本を中心にリサイタル活動。ボスニアヘルツェゴビナでは日本の文化の日にちなん で、ソロリサイタルを開催、ボスニアで初めて出身地の富山の民謡、日本の名曲を披露。ドイツにはない文化の 日を、ミュンヘンを中心にリサイタルを通して広める活動をしている。CD「ラヴェル、シューベルト、グリーグのソナ タ」をリリース。

 

【演奏の模様】

 最初の①バッハ:カンタータBWV208 「羊は安らかに草を食み」と②スメタナ:我が祖国より 「モルダウ」は中井、武田夫妻による四手連弾演奏でした。高音部は武田さん、低音部は中井さん。

 ①のバッハのカンタータ連弾は、誰の編曲なのでしょうか?オルガン曲の譜でも有ってピアノ連弾用に編曲したのでしょうか?

 BWV208は全15曲から成るカンタータで、ヴァイセンフェルス公クリスティアンの誕生日に献呈された世俗カンタータです。謂わば短いストーリ―に沿ったクリスチャン公を讃えるカンタータなのです。その中の第9曲、ソプラノが歌うアリア「羊は憩いて草を食み」のピアノ版でした。

 このカンタータBWV208全体15曲は「Was mir behagt, ist nur muntre Jagd!」と命名されている様に、本来クリスチャン公の趣味である「狩猟」をテーマにしている位ですから、狩の獲物やホルンの響き、狩に夢中な人に対する置き去り人の嫉妬、などを経由して結局公の誕生日を祝い、この第9曲で、安心して草を食める羊の様に、公の治世に平和な民の生活が保障されていることを讃えた歌なのでした。ピアノ演奏は、両者とも我が国ピアノ界のトップとも言えるピアニストの重奏ですから、しかもご夫婦ですから、息がぴったり合っていてそれは見事なものでした。どちらかというと言うと高音部が軽やかに旋律を奏で、中井さんは、それを低音部でしっかり支える場面が多かった様に思います。

 ②の連弾は、演奏前に武田さんのトークがあり、モルダウの源流からプラハに至るまでの流れを標題音楽的に説明していました(若干①と混線した箇所もあった様にも感じましたが)。この曲もオーケストラ曲の変奏だと思います。でも編曲が誰かは?でした。有名過ぎるかの主題は連弾の中で度々顔を出しますが、弦楽奏の流麗な表現を、ピアノのノンーレガート表現にすると、弾む様なリズミカルな表現になり、祖国のイメージが
随分と異なってきこえました。

 ③のブラームスの曲は、中井さんのピアノソロです。トークに寄れば、この間奏曲は、ブラームス自身 ❝私の苦悩の子守歌❞と呼んだそうです。

 詩情豊かな旋律を中井さんは心から滲みだす表現で弾きました。しっとりとしたいい雰囲気が醸し出されていました。最近見たフィンランド映画「枯れ葉」の主人公役が話す「枯れ葉」の意味、即ち枯れ葉が枝から離れ地面に到達する間の時間の永遠性を表すかの如きähnlichkeitを感じた。

 ④ベートーヴェン『ヴァイオリンソナタ第5番Op.24<春>』より第1楽章(ピアノ伴奏中井さん)

この曲の演奏は、ドイツから急遽駆けつけた山本薫さん。中井さん達と藝高時代からの同級生だそうです。トークで山本さんは、ドイツの春先(冬の終わり)は晴れた日でも氷点下になる程の寒さ、先日日本について、春の暖かさには驚きました。と言っていました。尤も19日は最高気温17℃のバカ陽気でしたからね。<春>の演奏は、普通聴くヴァイオリニストの演奏の様な華やかさ派なけれど、重々し寒い春の兆しは感じられる演奏でした。如何にもドイツからのもう一つの春の訪ずれでした。

⑤ヴィエニャフスキー『グノーの<ファウストによる華麗なる幻想曲Op.>より抜粋(Pf.伴奏武田さん)

 暗いゆっくりした旋律の前奏で始まり、暫くしてVn.の高音の調べ(一部ハーモニックス音混じり)が奏でられました。重音混じりの変化に富む力強いボーイング、一貫して山本さんの堂々とした演奏スタイルと発音が目立ちました。随分と技巧的ながら美しい調べを交えたヴィエニャフスキーの曲らしさを十分に発揮した演奏でした。

 ④ベートーヴェンの演奏はまだ不完全燃焼のきらいがありましたが、この曲で完全燃焼し始めた感じ。

 ⑥リスト『ラ・カンパネラ』は完璧な演奏だと思いました。美しい調べ〜速いパッセッジに移ってもかなり優雅で軽やかな演奏、下行音も軽やかで美しい。緩中急ありその逆ありディナミークな表現も◎、速いパッセッジはこれまで聴いたこと無い位のスピード感あり脱兎の如し。非常に個性が強いカンパネラの音でした。願わくば、重々しさをさらに加えれば言うこと無しだと思いました。

 《20分の休憩》

この間、ピアノがステージ上に二台対抗位置に配せられました。

 

⑦クライスラー『レチタティーヴォ』

 感想としては、あらゆる高度なテクニックを繰り出しての目まぐるしく変わる演奏でした。

 低音の調べ→低音部重音奏→繰り返し での基本的には低音部旋律奏(小指のpizzaicato挿入)→上行し最高音部→低音部奏→リズミカルな旋律変化→高音部でテンポアップの力奏→pizzicato 等の流れの中で跳躍音や弓で叩く様な音などなど、山本流奥技を披露。

⑧ガーシュイン『ラプソディ・イン。ブルー』から ⑨  ⑩ まで二台のピアノによる夫妻DUOでした。舞台上手に妻武田さん、下手に夫中井さんが位置に着きました。

中井さんからスタート、少しの間をおいて武田さん、人口に膾炙したテーマソングが二台のピアノから交互に発せられ、かなりの強打健で速いパッセジが多く、上行・下行の鍵盤移動が繰り返され、ジャズ的な雰囲気を成しながらもクラシックピアノ演奏の吸引力を働かせるところは流石だと思いました。終盤の高音鍵盤の強打音が、一瞬、両者ともパウゼとなるタイミングがぴったり合い、「フッ」と息を抜く様な箇所が見事でした。対抗配置の場合、相手の鍵盤が見えないため、音のタイミングを取るのがかなり難しいと思いますが、そこは一番気の合った二人の演奏者ですからぴったりと決まっていました。(二台のDUO演奏でも、アルゲリッチとバレンボイムの場合、横並びの二台での演奏映像を見たこと有ります)

⑨ドビュシー『月の光』は、一台の一人の演奏では、雰囲気が一杯の月の情景が、目に浮かぶような演奏を聴くことが多いですが、今回は二台のDUOですから、どんな月になるか興味津々で聴き始めました。結論的に言えば、素晴らしく明かるい月が、雲間に浮かんでは隠れ明るくなってはくぐもる光の変化を、二台のピアノで見事に表現されていました。特に終盤での武田さんの弱音演奏や裏方に徹して非常に重要な相方振りを発揮していた中井さんの演奏は、他の人には真似の出来ない good  matching な演奏だと思いました。

⑩ラフマニノフ『組曲第2番より<タランテラ>』

 2台のための組曲はラフマニノフの手による作品のいくつかの一つで、4曲で構成、<タランテラ>はその第4曲です。毒蜘蛛という奇妙なタイトルを付けたのも、踊り通すことに依り、独を解毒するという意味を込めた舞曲風作品です。支所から激しく速いテンポで両者とも若干のタイムずれの処、斉奏の箇所を含みながらタラタラタラララと永遠に踊り続けるかの様な調べが続くのでした。ラヴェルの『ラ・ヴァルス』の如し。

⑪三善晃『夕焼け小焼け』

 ここでピアノDUOにヴァイオリンの山本さんが加わり、三者による日本歌曲の演奏でした。

 山本さんのVn.奏でスタート、中井さんが高音で鐘の音を鳴らし、武田さんも参加して来ます。こうした超一流の演奏家による演奏に依れば、そこかしこに転がっている珍しくない日本童謡でも、素晴らしいクラシック曲として、鑑賞に堪える音楽になるのだという事を痛感しました。勿論これは三善晃の高い編曲技術があってこその結果ですが。

 

尚、アンコール演奏が、中井、武田、山本 三氏により行われました。

《アンコール演奏》レハール『メリーウィドウ』ワルツからメドレー演奏。

 アンコール演奏では、山本さんのワルツ旋律の演奏が滔々と響き、この日一番のリラックスしたいい演奏でした。

 

 最後は、「ラデツキー行進曲」を演奏、聴衆も手叩き調子でリズム参加し、大いに盛りあがっていました。