HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

ロシアの新星コンサートat関内ホール

表記の演奏会は、8月29日(月)に東京・紀尾井ホールにてオープニングコンサートが開催され、その一環として幾つかの関東地方の都市でのコンサートが企画され、その第二陣として横浜公演が行われました。(昨日はさいたま市で行われた模様)但しオープニングの時とは異なり、日本人演奏家は参加していません。 モスクワ音楽院、及びサンクトペテルブルグ音楽院の新星たちによる演奏とのことです。

【日時】2022.8.31.(水)19:00~

【会場】横浜関内ホール

【出演】

〇ラヴィリ・イスリャモフ(以下Iと略記)21才(ヴァイオリン)

・2016年全ロシア音楽コンクール優勝(モスクワ)

・第12回ベートーヴェン記念ヴァイオリンコンクール グランプリ受賞(オーストリア)

・国立モスクワ音楽院在学中

・A.ヴェニツキー教授に師事

〇アレクセイ・ロビコフ(以下Rと略記)35才(トロンボーン)

・国立サンクトペテルブルグ音楽院卒

・2015年同音楽院にて教鞭を執る

・2019年チャイコフスキー国際コンクール・金管部門で優勝

〇アンドレイ・チェルコフ(以下Cと略記)31才(ピアノ)

・2008年タリン国際コンクール2位(エストニア)

・2012年シューマン国際コンクール・ディプロマ受賞

・2013年ヴィトル国際ピアノコンクール優勝(リガ)

 

【曲目】

オープニング・コンサートの時とは違って演奏者変更があり、オーボエのアルクセイ・サヴィンコフの代わりにトロンボーンのアレクセイ・ロビコフが入りました。

演奏曲目の事前発表はなく、当日配布のプログラムによると、次の様なものでした。

①ベートーヴェン『ピアノソナタ第5番』(C)

②-1チャイコフスキー『懐かしい土地の思い出Op.42/1』(I、C)

②-2チャイコフスキー『ワルツ・スケルツォOp,34』(I. C.)

 

③アッペルモント

③-1『トロンボーンとフォルテピアノのための協奏曲』(R.C.)

③-2 『黄ー赤ー青ー緑 』 (R.C.)

 

《20分の休憩》

 

④S.フェルヘスト(佐藤誠一編)

④-1『A Song For JAPAN〈トロンボーンとピアノのための編曲〉』(R.C.)

 ④-2A.ギルマン『交響的小品Op.88トロンボーンとピアノ』(R、C)

 ⑤チャイコフスキー『ドゥムカ ロシアの農村風景ハ短調Op.59』(C.)

⑥M・ヴァインベルグ『ヴァイオリンとピアノのための〈モルドワ・ラプソディー〉』(I.C.)

 

【演奏の模様】

チラシ記載の経歴に一部不明の箇所があったのですが、当日配布されたプログラムでは、訂正、修正された様です。

 日本の演奏会用の資料では、演奏者のプロフィールは(一部誤記を除き)正確に記載されたものを掲載するのが慣習です。

 さて最初の演奏者は、ピアノのCです。ベートーベンの5番のソナタを弾きました。ナンバーの低いソナタは、20番、30番代のソナタなどに比べ軽く見られがちですが、ベートーベンがまだ耳も聞こえ、登り坂の生き生きとした、当時の世に認められ、名声を高めつつあった時の作品で、ベートーベンを解釈する上で重要なソナタだと思います。昨年来日公演したバレンボイムは、二日間連続で同じ最後のソナタ群を弾きました。それを聴きましたが、何で二日間同じソナタを聴かなくちゃならないんだろうと疑問を抱きました。かなり後になってそれらの重要さは分りましたが、彼がコロン劇場で最初のソナタ群を演奏した映像配信を見た限りでは、最初のソナタを決して軽視していないことは明らかです。

 Cの演奏は、ピアノ大国ロシアのピアニストだけあって、音色も綺麗な処から荒々しい力強いものまで、表現豊かで、テクニック的にも完璧に近いものでした。流石「新星」と謳っているだけのことはありました。と言っても日本では知られていないと言う意味なのでしょう。彼は結構な年に見えます。30歳代後半でしょうか?様々な演奏経歴もある様ですし。

 次のヴァイオリンの I がまた素晴らしい演奏を見せてくれました。彼はモスクワ音楽院の学徒だそうです。

②の曲は、チャイコフスキー、きっと得意中の得意なのでしょう。ピアノの短い導入演奏の後、ヴァイオリンが低音でしめやかに入ります。粗野とも思える程のかなり太い音、高音部も、良く聴く日本の若手のような細い華奢な美音でなく、弱そうな小さい高音なのですが、力が籠もった強さを感じる。次第にその強さが表に出始め、低音部に移動すると、最初より良く鳴る低音を響かせ始めました。

 次第に重音やハーモニック音を駆使しだし、最後の下降旋律は、見事斜面を滑り落ちるが如き響きでした。このチャイコフスキーの演奏は、やや荒削りの感じがしないでもないですが、テクニック的にもしっかりしたものを身につけているし、日本ではまだ知られていない「新星」というか、新たなタイプの「大型新人」と言えると思います。このまま進めば将来、恐るべき存在になるかも知れません。

 このヴァイオリニストは、後半の最後で、ヴァインベルグの曲をピアノと一緒に弾きました。ヴァインベルグは、日本でも、最近演奏機会が増えて来ている様に思われる作曲家です。演奏者はそれまで見せなかったPizzicartを交えながら、うねる重音を駆使し、バルトーク的旋律やロマ的響きが混在した曲を見事に弾き切りました。最後の辺では、弓の毛が何本か切れて垂れ下がる程、力の入った演奏でした。すぐにアンコール演奏があり、フメレニスカヤ『メロディア』でした。綺麗な旋律的曲を静かに演奏しました。こうした弾き方も出来る自在性も有する若者なのだなと思った次第です。

 次に前後しますが、今回の「新星」演奏会で、先に記した様に、オーボエ奏者からトロンボーン奏者に変更になった、そのトロンボーン奏者、アレクセイ・ロビコフの演奏には、脱帽しました。その金管を操る技は自由自在、正確無比、トロンボーンでこの様な、これ程までの表現が出きるんだと驚く巧みの技でした。先だって、名トロンボーン奏者、ジョセフ・アレッシーが来日演奏したのを聴きましたが、それに勝るとも劣らぬ演奏に、ロシアには、恐るべき若手奏者がいるものだとあきれる程でした。もっと彼は、チャイコフスキーコンクール金管部門で、優勝したことがあるのですね。アレッシーが火を付けた日本のトロンボーンブームにさらに火を注ぐかも知れないと思いました。