HUKKATS hyoro Roc

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キュッヒル・クァルテット『ハイドン四重奏曲Ⅲ』演奏会

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キュッヒル四重奏団(左からVnライナー・キュッヒル、(奥)Vcシュテファン・ガルトマイヤー 、(前)Vnダニエル・フロシャウアー、Vaハインリヒ・コル)

 キュッヒル四重奏団の演奏会Ⅲを、6月26日(土)サントリーホールで聴きました。翌、日曜日(6/27)で約一ヶ月に渡ったサントリーホールでの室内楽音楽祭は終了です。最終日の日曜日は、用事があってフィーナーレ演奏会は聴きに行けませんでした。今回の演奏もハイドン・ツィクルスとして、38番、63番、82番が演奏されました。概要は次の通りです。

【日時】2021.6.26.(土)19:00~

【会場】サントリーホール、ブルーローズ

【演奏】キュッヒル四重奏団

【曲目】ハイドン・ツィクルスⅢ

①弦楽四重奏曲第38番変ホ長調 Hob.Ⅲ:38                           

「冗談」

②弦楽四重奏曲第67番ニ長調Hob. Ⅲ: 63                     「ひばり」

《休憩》

③弦楽四重奏曲第82番ヘ長調Hob.Ⅲ:82                                

「雲がゆくまで待とう」

上記の三曲については「プログラムノート」掲載の奥田佳通氏の解説を参考まで転載しておきます。

 第三夜は愛称をもつ3曲。まず、フェルマータやゲネラルパウゼ(全休止)を駆使した 第4楽章のエンディングから「冗談」と呼ばれる第38番 変ホ長調 Hob. III:38。ハイド ンはこのプレストの終楽章にアダージョも添えた。遊び心満点だ。1781年に書かれ、ロ シア大公パーヴェル1世に献呈と記された作品33 全6曲。いわゆる「ロシア四重奏曲」 のひとつ。モーツァルトに感銘を与えた曲集である。  ここで第67番 ニ長調 Hob. III:63「ひばり」。愛称の名づけ親は誰だろうか。前述 のトーストゆかり、とされる名曲で作曲は1790年。イ長調の第2楽章アダージョ・カン タービレ、それに短調の調べをさりげなく織り込んだ後半楽章も胸をうつ。  最後は熟達のソナタ楽章(第1、第4楽章)はもちろん、スケルツォと記したいメヌエッ ト楽章、装飾音も鮮やかな変奏楽章が聴き手を捉えて離さない第82番 ヘ長調 Hob. III:82「雲がゆくまで待とう」。完成作としては最後の弦楽四重奏曲である。愛称は第1 楽章の主題が同名のイギリス民謡に似ていることに由来する。曲は1799年、若き日の ベートーヴェンにも手を差し伸べていたロプコヴィッツ侯爵の依頼で書かれた。ハイド ンこのとき67歳。28歳のベートーヴェンも奇しくもヘ長調の弦楽四重奏曲(作品18-1) を書いていた。 (おくだ よしみち・音楽評論家)

【演奏の模様】

①1781年に作られたこの38番の「冗談」では、最終楽章がユーモラスな終わり方の曲なので「冗談」と呼ばれました。                              ①-1 Allegro moderato cantabile                    昨日聴いたばかりのこのクァルテットの音の余韻が頭に残っている処に、低めの音程の調べを比較的太い音で、1Vn が演奏し出しました。何かこのキュッヒルさんの音が懐かしく思えるぐらい。音楽の本場の響きとはこういうものだという確信を持たせる演奏です。途中からは速い修飾音を交えながら何回か繰り返えし弾いています。それにしてもハイドンのメロディは耳当たりが良いですね。                ①-2 Scherzo Allegro                                            重厚な舞曲風のアンサンブルが強弱をつけて強奏される部分がありましたが、この章でも、前楽章同様1Vnが優勢に旋律を重ねていました。

①-3 Largo e sostenuto                                      冒頭、VaとVcがデュオ的に主題をゆったりと弾き始め、継いでこの歌う様な調べをキュッヒルさんは揺るぎのない運弓で滔々と弾いています。自信に満ちた演奏。後半は低音弦も音量を上げズッシリしたアンサンブルが響き繰返しが続きました。                                   ①-4 Presto                                  最初からややとぎれとぎれに聴こえる非常に速いパッセージが続き、最後キュッヒルさんは、短いメロディを弾き終わった後、まじめな顔で3~4秒位間隔を開けて弾き、再びそれを繰り返しました。ふざけた調子の曲の様子である上に、にこりともしないで弾くキュッヒル顔が輪をかけて冗談ぽく見えました。

②67番「ひばり」は 1790年に作曲された弦楽四重奏曲で、ハイドンを代表するクァルテットです。この曲を久し振りに直かに聴きたくて、プログラムの演奏曲目に入っているこの日のチケットヲを真っ先に取りましたが、実は昨日のアンコールでキュッヒルさん達が弾いてくれたので大興奮しました。従って今日の演奏は二回目の「ひばり」で、しかも間を置かないで聴いたので、昨日とは違って冷静に聴くことが出来ました。

 でも感想は同じ、ハイドンもすごいですが、キュッヒルさん達の演奏とりわけ1Vnの演奏は素晴らしいの一言に尽きます。唯アンコールの時は、最初の「ひばり」の二楽章(Adagio(cantabile))のアンコールで終わるものと思ったら、二曲目が演奏され、それは「ひばり」の四楽章(Finale(Vivace))でした。そして次は一楽章(Allegro Moderato)、三楽章(Allegretto Trio))と結局全曲のアンコールとなったもので、各楽章はそれぞれ立派なものですが、ばらばらに聴いたので、曲全体としての流れはやや分かりにくい所も有りました。今日の演奏で最初から最後まで一貫して聴くことが出来て、ハイドンの曲の流れと組み立ての絶妙さを感じることが出来ました。            

 何回聴いても一楽章のひばりの声は飽きません。一楽章の演奏でも何回繰り替えされるのでしょう。ハイドンも我ながら気に入っていたに違いありません。    

 

《休憩》

 

③82番「雲がゆくまで待とう」の曲は1799年、ハイドン67歳の頃の作曲です。丁度この年に若かりしベートーヴェンが、第一番の弦楽四重奏曲を書いたというのも、何か因縁めいたものを感じます。ベートーヴェンとしてはすごいプレッシャーだったことでしょう。これ程の弦楽四重奏曲の山を築き上げたハイドンとそれ以外にもモーツアルトも沢山書いていますから、それらを意識しない訳にはいきませんから。      ③-1Allegro moderato                                最初の主題曲「たーらららっらたーらら」とういう旋律が、英国民謡に似ているのでしょうか?いろいろ調べても、民謡は見つかりませんでした。1Vnの旋律にVcが弓で弦を叩く様に伴奏していたところが印象的。                     ③-2 Menuet Presto                              強弱リズムに特徴あるメロディを比較的速いテンポで演奏、少し激しさも交えているメヌエットでした。それにしてもキュッヒルさんの音は、何か遠い古都の香りのする枯れたというか(艶はありますが)単に綺麗にとどまらないおんしょくですね。 

③-3 Andante 

冒頭から1VnとVcがしっとりと重奏、暫し進行後に2VnとVaも加わり幅のある変奏を繰り広げました。1Vnのキュッヒルさんは主題の分散和音変奏をリズムを微妙に調節しながら匠の技と思える演奏をしました。再度冒頭の演奏に戻り静かに終了です。 

③-4 Vivace assai 

1Vnは最初から最後までとても速い曲を弾きっぱし、忙しない曲で、余り精神性や深味は感じ取れない楽章でした。バロックのヴィヴァルディの曲を思い起こしました。最後は1Vnが口笛の様な非常に高い音を立てていました。

尚、アンコール演奏がありました。

①ハイドン『弦楽四重奏曲第79番ニ長調Hob.III79「ラルゴ」』より第2楽章、

②         同                   第4楽章

③ハイドン『弦楽四重奏曲第60番イ長調Hob.III:60』より第3楽章、

④           同            第4楽章、

⑤           同            第2楽章

 

 以上五回に渡るアンコール演奏が続き、聴衆は興奮の渦の様子で最後はスタンディングオーベ―ションとなり、いつまでも大きな拍手が鳴り止みませんでした。