HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『カルテットα』演奏会を聴く

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【日時】2023.7.6.(木)19:00~

【会場】旧奏楽堂

【出演】カルテットα

〈メンバー〉

 ヴァイオリン   ヴァイオリン       ヴィオラ       チェロ

  猶井悠樹       大和加奈               村田恵子             清水詩織



【曲目】

①モーツァルト:弦楽四重奏曲第4番 ハ長調 K.157

 (曲について)

 この曲は、オペラ『ルーチョ・シッラ(英語版)』(K. 135)の初演のためにミラノへ旅に出た1772年末から1773年の初頭にミラノで作曲された。本作は形も内容も全体的に「イタリア風」の構成で、ソナタ形式の2つの楽章を軽快なロンドの終楽章が結んでいる。

第3番(K. 156)、第5番(K. 158)、第6番(K. 159)と同様に、第2楽章が短調で書かれており、多感な感情の表出がみられる。


②モーツァルト:弦楽四重奏曲第16番 変ホ長調 K.428

 (曲について)

 この第16番 は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが1783年に作曲した弦楽四重奏曲であり、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンに捧げられた全6曲ある『ハイドン・セット』のうちの3曲目である。


③ブラームス:弦楽四重奏曲第2番 イ短調 op.51-2

(曲について)

 弦楽四重奏曲第2番イ短調 作品51-2は、ヨハネス・ブラームスが第1番ハ短調 作品51-1と同時に、1873年に発表した。これらの2曲は著名な外科医でありアマチュアの音楽家であった親友テオドール・ビルロートに捧げられている。 しかし音楽上の助言はブラームスの友人のヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒムから多くを受けており、弦楽四重奏曲第2番の初演はヨアヒムの率いる弦楽四重奏団によって行われている。ブラームスの残した全3曲の弦楽四重奏曲中、最も柔和な表情を持った曲風である。くつろいだ抒情的な雰囲気は、同時に出版された、劇的で力強い第1番とは対照的に作曲されている

 第一楽章で、第1ヴァイオリンによって奏される第1主題は、F-A-Eの音列から始まっており、ヨアヒムの有名なモットー「Frei Aber Einsam(自由だが孤独に)」にちなんでいると言われる。

 

【演奏の模様】

 久し振りで旧奏楽堂に行って来ました。いつ見ても入口の門構えから玄関までのアプローチもノスタルジックを感じさせる建物です。中に入るとさらに昔風の雰囲気を漂わせています。

 

①モーツァルト『弦楽四重奏曲第4番 』

全3楽章、演奏時間は約11分

第1楽章 アレグロハ長調、
第2楽章 アンダンテハ短調
第3楽章 プレストハ長調、

1Vnが一貫して主導的な役割を果たしていました。モーツアルトの若さ溢れる口ずさみたさみたくなる様なテーマを中心に何回も繰り返される親しみ易い旋律。1Vn.の大和加奈さんが良く鳴らす中音域を中心とした軽妙な調べで他を引っ張っていました。アンサンブル的にも突出する程ではなく、いい塩梅の加減を心得ている様子でした。ダウ2楽章は短調でややモーツァルトの稚拙さを感じる曲。(1Vn.+2Vn.)に  (Va.+Vc.)の合いの手がやり取りしていました。最終楽章は速いテンポのシンコペーションを含む旋律、ジャジャジャジャ、ジャジャジャジャ、ジャジャーンジャジャージャという調べを1Vn.主導で進められ(2Vn.は弱い)、何回も何回も面白そうに繰り返すのでした。聴いている方も面白い旋律だと思いました、モーツァルトの遊び心、遊び能の発揮か?


②モーツァルト『弦楽四重奏曲第16番 』

全4楽章、演奏時間約25~28分。

第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ変ホ長調
第2楽章 アンダンテ・コン・モート変イ調、
第3楽章 メヌエット:アレグレット - トリオ変ホ長調、
第4楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ変ホ長調、

矢張り①の曲と比べると成熟度がかなり高い曲だと思いました。①から10年経っています。ドッグイアーではないですが、密度の高い『モーツァルトイアー』だと1年が3年にも相当するかも知れませんから、30年も後になる訳です。冒頭の調べ等ベートーヴェンでも使いそうな調べ、掛け合いも1Vn.の大和さんと2Vn.の猶井さんの第一楽章におけるやり取りなど、厚みを帯びたアンサンブルが繰り出されました。第二楽章の最初のゆっくりとした穏やかな調べも、分厚い低音の響きが心地良く感じられます。①には無い滔々とした重厚さ。まるで大河の流れの様。この二楽章終盤にみられるような2Vn.⇒Va.⇒Vc.といった風に掛け合いもより高度化して、アンサンブルの響きが多様性を有するように感じます。

3楽章では1Vn.が ンジャ-ジャーン、ンジャ-ジャーンと短前打音擬きのリズム旋律の後、小刻みな調べを奏でましたが、この特徴あるテンポはこの楽章全体で繰り返されました。その後1Vn.のソロ的高音演奏がありますが、大和さんの演奏はやや細見を感じましたが、美しい音を立てていました。

最終楽章は4者に依る斉奏からスタート、速いパッセジを入れて何回か繰り返すと、その後は1Vn.主導の速い修飾を多用した旋律の繰返し、変奏の繰り返しでした。1Vn.の大和加奈さんは、清楚で華やかさもあるドレスを纏いまるでコンチェルト奏のソリストと紛う程の活躍でした。

 

ここで、《20分の休憩》です。

トイレに立った時ザーと見渡しても300程の座席の8割方は埋っている様に思えました。

 さて後半はブラームス、1Vn.の大和さんと2Vn.の猶井さんが入れ替わて弾きました。

 

③ブラームス『弦楽四重奏曲第2番』 全4楽章構成、演奏時間は35分程。

第1楽章 Allegro non troppo イ短調
第2楽章 Andante moderato イ長調
第3楽章 Quasi Menuetto, moderato イ短調
第4楽章 Finale. Allegro non assai イ短調、

 感想の結論から言いますと、他の多くの曲の中に感じられるブラームスらしさは十分顕在化された演奏だったのですが、より複雑なアンサンブルの響きを有しており、それが何なのか?かといってブラームスの独自の観点というのは、プログラムノートに記載の様な、❝ブラームスのこの作品も、正にストレートには行けない彼の性格を如実に表している❞と単純に割り切れない物がある様に感じました。若しかして、第一楽章の

ヨアヒムのモットー「Frei Aber Einsam(自由だが孤独に)」が象徴するように、アドヴァイスを受けたヨアヒムの影響がかなり入り込んでしまっているのではなかろうか?といった疑念を抱きました。

 各楽章の演奏で特に記憶に残った箇所をピックアップしますと、第1楽章の終盤、四者がpizzicato音を一斉に立てた後の1Vn.中心の切ない旋律の演奏では1Vn.は、もっと泣かせる程の切なさを表現してもいいのでは?と思ったり。どうもいま一つといった1Vn.の調子が、第2楽章終盤に至ると上向いて来て、四者が高音部での斉奏のあと、一瞬の(固唾を飲む様な)空白が、ぴったり息が合った箇所、それからその後の      1Vn.⇒2Vn.⇒Va. へと変遷する箇所等が見事でした。

 また3楽章の終盤で、1Vn.が素晴らしく細い高音を鳴らした箇所や四者が分厚い斉奏アンサンブルを響かせ、(1Vn.+2Vn.)とVc.が掛け合ってやり取りする箇所が印象的だったし、最後の美しい(Vc.pizzicato下)1Vn.の旋律もいいと思いました。

 最終楽章でも1Vn.は美しい音色を立てて弾いていましたし、フーガ的変遷も上手く演奏したカルテットα、演奏終了後は会場から大きな拍手で迎えられました。

尚、その後アンコール演奏があり、『ブラームスの子守歌』からでした。