【主催者言】
後半の冒頭は、原田幸一郎、毛利伯郎、練木繁夫らも加わった室内楽アカデミー・ファカルティによるシューマンのピアノ五重奏曲より第1・2・4楽章。円熟の演奏で、その熱量と説得力に圧倒されます。そしてクロンベルク・アカデミーを卒業した大江馨・毛利文香や、世界が注目する在校生の弦楽器3名と、ヴァイオリンの渡辺玲子をリーダーに迎えて演奏するのが、メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲第3・4楽章。滾々とした音楽の泉が湧き立ちます。そしてフィナーレ公演のクライマックスは、クロンベルク・アカデミーと室内楽アカデミー講師たちによるCMGならではの競演です。世界を舞台に活躍しているミハエラ・マルティン、池田菊衛、今井信子、磯村和英、フランス・ヘルメルソン、堤剛による、ブラームス:弦楽六重奏曲第1番より第2・4楽章は、重厚で抒情性にあふれ、正しく「室内楽中の室内楽」で締め括ります。
有料オンライン(ライブ&リピート)配信あり、公演から1週間の限定で、何度でも繰り返し、お好きな時間にお楽しみいただけます。
【演奏日時】2023.6.18.(日)14:00~
【鑑賞日時】2023.6.20.(火) 6.21.(水)6.22. 適宜時
(on line リピート配信)
今回は残念ながらオペラの方を優先したので聴きに行けませんでした。on line でリピート配信があったので、都合のいい時時間を取って聴きました。(LFJ-ラフォルジュルネの時はライヴ配信のみだったので大分聴けない演奏会も有りました)
【出演】
〇サントリーホール室内楽アカデミー選抜フェロー(ヴァイオリン:原田幸一郎/池田菊衛、ヴィオラ:磯村和英 チェロ:堤 剛/毛利伯郎 ピアノ:練木繁夫)
〇カルテット・プリマヴェーラ
〇ほのカルテット(室内楽アカデミー選抜フェロー)
〇クロンベルク・アカデミー(ヴァイオリン:ミハエラ・マルティン/大江 馨/毛利文香、 ヴィオラ:今井信子/ハヤン・パク/サラ・フェランデス、チェロ:フランス・ヘルメルソン/アレクサンダー・ヴァレンベルク、ピアノ:ユリアス・アザル)〇ヴァイオリン:渡辺玲子、
〇ファゴット:ミハエラ・シュパチュコヴァー、
〇ハープ:吉野直子、
〇ピアノ三重奏:葵トリオ
【曲目】
《休憩》
(後半)
⑤シューマン『ピアノ五重奏曲変ホ長調Op.44』より第1, 2, 4 楽章
⑥メンデルスゾーン『弦楽八重奏曲変ホ長調Op.20』より第3, 4楽章
⑦ブラームス『弦楽六重奏曲第1番変ロ長調Op.18』より第2, 4楽章
【曲について】以下プログラムノート参考
【演奏の模様】
《20分の休憩》
⑤シューマン『ピアノ五重奏曲変ホ長調Op.44』より第1, 2, 4 楽章
<原田幸一郎、池田菊衛、磯村和英、毛利伯郎、練木繁夫>
ピアノのテーマ演奏が美しく先導すると、各弦楽が合の手をいれたり、フォローしたり、矢張り根底はピアニストのシューマンらしさを強く感じる第一楽章の演奏でした。この弦楽とピアノのやり取りのタイミングは、後にブラームスも身につけて取り入れたのでしょう。それにしても第二楽章の暗さは何なのでしょう?同楽章後半の激しさからシューマンの心の鬱積した澱(おり)から湧き出る陰鬱だと思います。長年のクララへの愛の屈折でしょうか。それが最終楽章の喜々とした賑々しい演奏で払しょくされます。結婚出来た喜びの声でしょうか。 弦楽は流石老練な名手たちばかり、文句無い素晴らしさでした。四楽章最後のフーガがバッハも研究していた証しです。
⑥メンデルスゾーン『弦楽八重奏曲変ホ長調Op.20』より第3, 4楽章
<渡辺玲子、小川響子、大江馨、毛利文香、ハヤン・パク、サラ・フェランデス、アレクサンダー・ヴァレンベルク、伊東佑>
カルテット二組が合わさった八重奏で弾きました。メンデルスゾーンの幾つかのピアノ協奏曲もそうなのですが、聴いていて心地よさは微塵も感じない、将にそうした感じの曲でした。何故あの素敵な旋律美に満ちたヴァイオリン協奏曲や無言歌の様な繊細さが無いのでしょう?悪い言葉だと〈せわしなさと騒々しさ>満杯。第2楽章のしめやかな演奏があれば、全体の印象は変わったでしょう。。矢張り曲の一部の切り取り演奏は、(アンコール演奏ならともかく)本演奏では余り良くないと思います。最終楽章冒頭の低音弦(2Vc.)から1Vc.⇒2Va.⇒1Va.⇒2Vn.⇒1Vn. ⇒全弦アンサンブル へとカノン的に次々にリレーするのは面白し。
⑦ブラームス『弦楽六重奏曲第1番変ロ長調Op.18』より第2, 4楽章
<ミハエラ・マルティン、池田菊衛、今井信子、磯村和英、フランス・フェルメルソン、堤剛>
堤さんが元気な姿をみせ、初日の演奏キャンセルから復帰されたのは喜ばしいことでした。
第二楽章冒頭の今井信子さんの弾く1Va.の調べの深い深い淵の様な調べは聴いたことない、何と重い音なのでしょう。普通のビオラより大きな楽器に見えました。
この二楽章は、ルイ・マル監督の映画『恋人たち』に用いられました。またブラームスはこの楽章をピアノ版に編曲し、『主題と変奏(弦楽六重奏曲第1番より) ニ短調 Op.18b』としてクララに献呈したそうです。この弦楽六重筝曲の演奏もそうでしたが、抑えようとしてもあふれ出る情熱を押さえようがない様な苦悩まで、感じるピアノ曲です。クララの誕生日祝いという事ですから、きっと❝ハピー・バースデー❞の乾杯の後に、クララがピアノに向かって弾いたでしょう。それを聴いているブラームスの胸中や如何に(シューマン亡き後4年目の事です)。