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CMG『フィナーレ2022・コンサート』at サントリーH

フィナーレ演奏後堤氏傘寿祝う花束贈呈

【日時】2022.6.19.(日)14:00~

【会場】サントリーホール・ブルーローズ

【概要】主宰者発表

CMG 2022を煌びやかに彩ってきたアーティストたちが大集合。瑞々しいアンサンブルが表情豊かに花咲きます。国際色豊かで世代を超えた室内楽の饗宴にご期待ください。

各出演者が躍動するプログラムの全容が決定しました。(4月14日公開)
サントリーホール室内楽アカデミーの選抜フェローとして、成長著しいドヌムーザ弦楽四重奏団とレグルス・クァルテットを選出。「ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番 第3楽章」や、「バルトーク:弦楽四重奏曲第2番 第2・3楽章」で、2年間の研修期間の集大成を飾ります。
また、アカデミーのファカルティ(講師陣)たちが演奏するのは、今年生誕200周年を迎えるフランクの名作、劇的な「ピアノ五重奏曲 第1楽章」。公演の白眉は、ラデク・バボラーク、吉野直子、アトリウム弦楽四重奏団による「マーラー:アダージェット(室内楽版)」。交響曲版とは一味違う、凝縮された魅力が詰まっています。
そしてCMG2022を締めくくるのは、ブルッフのチェロ曲「コル・ニドライ」。ソロは堤剛、そして室内楽アカデミーの弦楽合奏に吉野直子も加わる特別な編曲版です。その他、渡辺玲子・辻󠄀本玲・吉野直子による初共演トリオや、バボラークが室内楽アカデミーを指揮する、バルトークの「弦楽のためのディヴェルティメント」など、多様なアンサンブルの響きを1つの公演に盛り込んだ、約3時間弱の室内楽ガラ・コンサートです。

【出演】
〇ヴァイオリン:池田菊衛/原田幸一郎/渡辺玲子
〇ヴィオラ:磯村和英
〇チェロ:辻本玲/堤剛/毛利伯郎
〇ピアノ:練木繁夫
〇ホルン:ラデク・バボラーク
〇ハープ:吉野直子
〇弦楽四重奏:
・アトリウム弦楽四重奏団(ヴァイオリン:ニキータ・ボリソグレブスキー/アントン・イリューニン、ヴィオラ:ドミトリー・ピツルコ、チェロ:アンナ・ゴレロヴァ)
・ドヌムーザ弦楽四重奏団(ヴァイオリン:木ノ村茉衣/入江真歩、ヴィオラ:森野開、チェロ:山梨浩子)*

・レグルス・クァルテット(ヴァイオリン:吉江美桜/東條太河、ヴィオラ:山本周、チェロ:矢部優典)*
・CMAアンサンブル

*サントリーホール室内楽アカデミー選抜フェロー 
【曲目】
①イベール:ヴァイオリン、チェロ、ハープのための三重奏曲
②ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番 イ短調 作品132 より 第3楽章
③フランク:ピアノ五重奏曲 へ短調 より 第1楽章
④チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第2番 へ長調 作品22 より 第3・4楽章
⑤バルトーク:弦楽四重奏曲第2番 より 第2・3楽章
⑥マーラー(バボラーク 編曲):交響曲第5番 嬰ハ短調 より 第4楽章「アダージェット」(ホルン、ハープ、弦楽四重奏用編曲)
⑦バルトーク:弦楽のためのディヴェルティメント より 第1・3楽章
⑧ブルッフ(ベン゠アリ 編曲):『コル・ニドライ』作品47(ソロ・チェロ、ハープ、弦楽アンサンブル用編曲)

 

【演奏の模様】

 今日は、フィナーレということもあって、14日間のフルメンバーと言う訳にはいかないですが、そのかなりの主要なメンバーが演奏する祝祭的色彩の強いコンサートということで聴きに行きました。最初は、

①現代フランスの作曲家イベールの『ヴァイオリン、チェロ、ハープのための三重奏曲』

 チェロは辻本玲、ハープ吉野直子、ヴァイオリン渡邊玲子のこれまでの実績も実力もある三人の演奏者です。イベールの三楽章構成のこの曲は現代的な響き、弦同志の低音の響きはずっしり、渡辺さんの低音はヴィオラの音にまごう程、勿論ヴァイオリの高音も綺麗に出ていた。特に1楽章のソロ部、2楽章のかなり高音部の響きなどで。辻本さんの最近の活躍は目を見張る程です。太いいい音だけれど、さらに音の輝きが増せばさらに素晴らしくなるでしょう。ハープは1楽章のソロ部、他を除いて弦に埋もれていました。そもそもこの曲、Hpでなくピアノ三重奏の方が合う気もしないでもないです。

 ②のベートーヴェン15番は三日前にアトリウムの最終演奏を聴いたばかり。レグルス・カルテットの今日の演奏を聴くと皆さん個々の技量はしっかり、いい音を出しアンサンブルも響いてきて、この演奏だけを聴けば欠けるところ少なく、とても素晴らしい演奏と言えるのでしょう。でも何か物足りなさを感じました。言葉ではどこがどうというのは難しいのですが、謂わば小じんまりとした感じ。アトリウムの音が頭に残っていて、どうしても比較してしまう。スケールが違うというかダイナミックさが異なっていました。

 ③のフランクの曲は第一楽章の演奏。出演者は若者から打って変わって、白髪交じりのご老体ばかり、いわばこの道のヴィルトゥオーソ(virtuoso)達です。さすが腕は確か、冒頭から大上段に振りかざした名刀は切れ味良く大時代的旋律をめった切り。アンサンブルの息は五人で一緒の人工呼吸器を使っているが如く一つになっています。フランクらしい恰好良さをダンディーに出していました。出来ればピアノの音が一層の繊細さが欲しい気もしましたが。ピアノ五重奏は過去のCMGでもたびたび演奏されました。堤さんが加わる場合もありましたが、今回は堤さんは「いち抜ーけた」で最後にフランクのとっておきの曲を弾くことになったのでしょう。

 ④のチャイコフスキーはアトリウムの謂わば産地直送のフレッシュな香りを一杯に漂わせていた。でも香水は強すぎると悪臭に近く感じる時もあります。音楽を聴く時は効く人の精神状態、心理によって同じ録音を聴いても受けた感じが真逆の時もあり得る。弦楽四重奏曲は、ロシアにはチャイコフスキー、ショスターコヴィッチもあるでしょうに、ベートーヴェン・サイクルとは。何年も前からの主催者との話で決まってはいたのでしょうが。あれこれ考えながら複雑な気持ちで聴き入りました。1Vn.のニキータは最初少し抑制気味に弾いていたかな?Vc.のアンナは面目躍如の活躍でした。

 

休憩後の最初は

 ⑤バルトークの四重奏曲、演奏はドヌムーザという若手カルテットです。今回は「室内楽アカデミー・フェロー演奏会」に出たグループの様です。今回は聴きに行かず、配信で聞こうと思っていたのですが、まだ聴いていませんでした。 2楽章から弾きだし、速いリズムの弓捌きとピッツィカートでせわしない調べで、バルトークの特徴の一つ民族的雰囲気を醸し出していましたが、面白さは感じても音楽としてはいま一つ、第1楽章のゆったりした流れも聴きたかった気がしました。3楽章はゆっくりとした不気味さもあるメロディ、時間の関係で2と3の楽章になったのでしょうけれど。アンサンブルは非常に速いテンポでしたが、かなり一致団結している様です。良く練習しているのでしょう。大きな拍手が湧いていました。

 ⑥のマーラー/アダージェントは今回の目玉、ホルン奏者ラデク・バボラークが出演しました。ホルンとアトリウム四重奏団そしてハープの吉野さんでの珍しい組み合わせのアダージェントでした。バボラークはその道では知らない人は無い位の元ベルリンフィルの名手だそうです。これまで単独演奏は聴いたことが無いので、前日に配信ででも予習出来ていれば良かったのですが、時間が取れませんでした。ぶっつけ本番で聞いた感想は、この様に安定したホルンの音を、しかも様々にこわ色を変えて吹き出せる技は、天賦の才なのか努力の賜物なのか、恐らくその二つが合わさって到達出来た高みなのでしょうね。アトリウムもホルンの音を良く聞きながら合わせて演奏し、滅多にない機会を大事にしている感じでした。

 ⑦そして次のバルトークの曲は、CMAアンサンブル(1Vn.6人、2Vn.6人、Va.4人、Vc.4人、Cb.2人から成る弦楽合奏団)をバボラークが指揮して演奏しました。このバルトークの曲は又いい曲ですね。リズムも旋律も流れも。皆さんカルテットのメンバーの集合ですから技術は確か音を合わせるオーケストレーションも確実な腕でした。また指揮をするバボラークも曲を良く理解、表現している様子でチェンバー・ミュージック奏者達を導いていました。何回練習したのでしょうか?一糸とも乱れない息の合った両者でした。バボラークは体をくねらせ傾け、気持ち良さそうに表現していて、まるで金管が弦楽アンサンブル奏に加わっている様な錯覚に陥りそう。このホルン奏者は演奏、指揮だけでなく、作曲、編曲もするらしく今後の活躍が期待されます。

 ついに最終日の最後の曲となりました。

 ⑧CMAアンサンブルの下、ハープの吉野さんも加わって、チェロの堤さんが

ブルッフの『コル・ニドライ』作品47を弾きました。

 これが又何とも素晴らしい曲で、堤さんのチェロ演奏は素晴らしいと言った言葉では言い表せないくらい最上等の響きを持ったものでした。堤さんの演奏はこれまで何回も聴いていますが、こんなに心に滲みわたる調べは聴いた事が無い。最高でした。演奏者は勿論の事、ブルッフも、またその曲を編曲したというベン=アリという人も、天才ですね。我々が21世紀の様々な環境の中で、この様な極上の音楽を観賞出来ることは、多くの人々の才能と努力の上に成り立っていることを痛感させられました。

 演奏後、アンサンブルの女性がマイクを取り、❝堤さんが八十歳になる❞こと、それを祝して花束を贈呈することを告げました。凄いことですね。人間の可能性は計り知れません。そんなに高齢になっても現役で活躍、どころか益々上達の足跡を見せて呉れるとは。益々のご健勝とご活躍を祈念します。