HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『エルサレム弦楽四重奏団』演奏会

   6月6日に開始した《サントリーホ-ㇽ/Chamber Music Garden》音楽祭の一環として、世界的に人気が高い「エルサレム弦楽四重奏団」の演奏会を聴きました。

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このカルテットに関しての紹介文は当日配布された冊子に記載がありました。

【プロフィール】
1993年に結成、96年にデビューしたイスラエル出身の弦楽四重奏団。2021年で活動25周年を迎える。世界中のコンサートホールで公演を行い、アメリカでは、ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、フィラデルフィア、ワシントン、クリーヴランドなど、ヨーロッパでは、ロンドン、チューリヒ、ミュンヘン、パリで定期公演を開催。また、ザルツブルク、ヴェルビエをはじめ、多くの音楽祭においても特別公演を行う。イッサーリス、レオンスカヤ、メルニコフ、シフ、バレンボイム、内田光子といった名だたるアーティストと数多く共演。

【日時】2021.6.6.19:00~

【会場】サントリーホール小ホール「ブルーローズ」

【出演】エルサレム弦楽四重奏団
ヴァイオリン:アレクサンダー・パヴロフスキー
ヴァイオリン:セルゲイ・ブレスラー
ヴィオラ:オリ・カム
チェロ:キリル・ズロトニコフ

【略歴】

ヴァイオリン:アレクサンダー・パヴロフスキー
エルサレム弦楽四重奏団創設メンバー。室内楽奏者、ソリスト、指導者としての名声を確立している。プレスラー、A. オッテンザマー、V. ハーゲン、今井信子など多岐にわたる著名なアーティストと共演。またソリストとして、エルサレム響、キエフ室内管などの公演に出演。欧州、米国、オーストラリアで定期的にマスタークラスを開講、メルボルン国際室内楽コンクールでは審査員も務めた。2008年よりザイスト音楽祭(オランダ)の芸術監督に就任。

ヴァイオリン:セルゲイ・ブレスラー
1978年ウクライナ生まれ。12歳で最初のリサイタルを開催。91年イスラエルに移住し、エルサレム音楽舞踏アカデミーで学ぶ。スターン、T. ツィンマーマンらのマスタークラスを受講。クレアモント・コンクールで部門別第2位を受賞するほか、いくつかの入賞歴がある。ソリストとしてエルサレム響などと共演。英国王立音楽院、シドニー音楽院、クリーヴランド音楽院、ザイスト音楽祭、エルサレム音楽センターなどで室内楽の指導にあたる。

ヴィオラ:オリ・カム
1975年カリフォルニア生まれ、イスラエル育ち。16歳でメータ指揮イスラエル・フィルとの共演でデビュー。マンハッタン音楽院、ベルリン芸術大学で学ぶ。ワシントン・ナショナル響をはじめとする各地のオーケストラとソリストとして共演するほか、米国、欧州、イスラエルの各地で精力的にリサイタルも開催。2004年から06年までベルリン・フィルに所属。イスラエル室内楽協会の設立や、ジュネーヴ大学で教授を務めるなど、多岐にわたる活動を行う。

チェロ:キリル・ズロトニコフ
エルサレム弦楽四重奏団創設メンバー。ベラルーシ国立音楽院、エルサレム音楽舞踏アカデミーで学ぶ。シュレースヴィヒホルシュタイン、シュヴェツィンゲンなどの音楽祭にゲストとして定期的に参加。バレンボイム、ブーレーズ らの指揮でソリストを務めるほか、内田光子、ラン・ランらとも共演。2003年から12年まで、ウェスト゠イースタン・ディヴァン管首席チェロ奏者。また、シュターツカペレ・ベルリンの首席チェロ奏者としても活動している。

 

演奏曲目は、オールベートーヴェンです。

【曲目】ベートーヴェン『弦楽四重奏曲』
①第1番 ヘ長調 作品18-1

②第7番 ヘ長調 作品59-1「ラズモフスキー第1番」

③第12番 変ホ長調 作品127

 

曲目解説も冊子から引用しておきます。

①弦楽四重奏曲第1番 ヘ長調 作品18-1  作品18の6曲の弦楽四重奏曲は、30歳のルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770 ~ 1827)が満を持して世に問うた作品群である。弦楽四重奏は当時、ヨーゼフ・ハイドン (1732~1809)やヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~91)の偉大な遺産へ の挑戦を迫るジャンルだったからだ。パトロンのロプコヴィッツ侯爵から委嘱を受け、 ベートーヴェンは1798年の秋から中断を挟んで1800年にかけて作曲した。大量に残さ れたスケッチは、彼の試行錯誤の証だ。とくに第1番は「私はいまや弦楽四重奏曲をど う作曲すればよいのかがわかった」 (友人カール・アメンダへの手紙)ため、大幅に改訂 された。  着手されたのは第3 番に続き2番目だが、6曲中もっともインパクトが強いがゆえ、 ベートーヴェンはこの曲を1曲目に置いたのだろう。冒頭にユニゾンで提示されるター ン音型が重要なモティーフとして展開される第1楽章や、シェイクスピアの『ロメオと ジュリエット』の墓場のシーンとの関連が指摘される第2楽章はとくに印象的である。

 

② 弦楽四重奏曲第7番 ヘ長調 作品59-1「ラズモフスキー第1番」  弦楽四重奏曲の歴史における画期的な一歩と言えるのが、1806年に作曲された3曲 からなる作品59の弦楽四重奏曲である。これらは先例を見ないほどの規模と壮大さを 誇る。この野心的な作品が献呈されたのはロシア人貴族のラズモフスキー伯爵。その 関係であろう、フィナーレの主題は1790年にサンクトペテルブルクで出版されたロシ ア民謡集から採られている。4つの声部はほぼ対等に扱われるようになり── たとえば 第1楽章の冒頭のように、主題をチェロが提示し徐々に音域が広がるという声部書法は 実に斬新 、ときに独立して、ときに組み合わされて旋律を奏で、明快な和声を響 かせながらひとつの世界を創り上げている。

 

③弦楽四重奏曲第12番 変ホ長調 作品127  最後の3つのピアノ・ソナタ、『ミサ・ソレムニス』、そして「第九」を仕上げた後、ベー トーヴェンは集中的に弦楽四重奏曲に取り組んだ。このジャンルを15年ぶりに作曲す るきっかけは、ガリツィン侯爵からの委嘱であった(作品127、130、132の3曲を彼に献 呈)。「後期作品」における崇高で孤高な世界は、これらの作品群にも共通した特徴であ る。ベートーヴェンはヴァイオリニストで晩年を親しく過ごしたカール・ホルツ(1798~ 1858)に、「君はここに新しい種類の声部書法を見るだろう」と語ったことが伝えられて おり、この作品127も冒頭から、独創的な各楽器の動きが聴こえてくる。     プログラム・ノート 越懸澤麻衣 (こしかけざわ まい・音楽学)

 

【演奏の模様】

 ①第1番

 小ホールですが、開演ぎりぎりに駆けつけた人も座わり席は殆ど満席状態、四人のメンバーが登壇しあいさつして着席、一呼吸おくなり引き出した、ジャーンジャラジャッチャチャ、ジャーンジャラジャッチャチャという音のインパクトの強さには驚きました。例えれば、ソファーで鼻提灯をふくらませて、居眠りをしていたら、突然地震がおそい目が覚めたようなもの。四人ともみな力がみなぎり、息がピッタリ合い、緩急、強弱、一分の隙もありません。まるで、「弦楽四重奏人」という一人の演奏者がいて、一人で音を出しているみたいです。第1のヴァイオリン(1Vn)が叫び声を上げて声がスーッと消えると、第2のヴァイオリン(2Vn)がそれに続き、今度は、一斉にビオラ(Va)とチェロ(Vc)が鳴り出し、瞬間的にオケの弦楽アンサンブルに紛う程の咆哮となり、またスート消え入る。四人の呼吸が一つとなっている。すごい四重奏団だと一瞬で気がつきました。   第一楽章ではVcは大きく腕を振り思いっきり良い運弓をしていたし、1Vnは強弱の変わり目や曲の変わり目には大きく体を揺すり、弓の糸が数本切れてしまう程力を込めて弾いていました。同じ調べをVn⇒Va⇒Vcとメドレーと言うかカノン的に移動して行く場合も多いのですが、全体としてのまとまりは非常に良い。勿論斉奏の場合もそうですが。二楽章のゆっくりとした主題はベートーヴェンとしてはかなり変わった旋律に聞こえました。

②第7番「ラズモフスキー1番」

全体約40分もかかる大曲でした。低音弦のトレモロ上を高音弦が綺麗な旋律をSolo奏し、ソロの主役は、Vc⇒1Vn ⇔  2Vn再び1Vn⇒Vcと次々に入れ代わり立ち代わり交代しながら進行しました。

それにしても1Vnパヴロフスキーの音色は何て素敵なのでしょう。演奏技術・感も抜群といった印象。

 第二楽章のピッツィカートと調べのやり取りは面白い、これが基本的に低音弦と高音弦のやり取りに引き継がれ、調べとしては、ロシアの民族音楽的色彩があり、同様に四楽章でも軽快で面白いリズムの民族音楽的調べが出て来ました。

 各パートとも間の取り方、息の付き処、空白の長さ等絶妙なバランス感覚を持って演奏していたのはさすがだと思いました。

 三楽章の1Vn等ゆったりした憂鬱な旋律は、様々な変化の下で続き、Vcのピッツィカート伴奏で1Vが弾いた旋律はこの上なく哀愁を帯びたものでした。それにしても三楽章は長すぎる感じ、同じパターンで4楽器がくねくねくねくねといつまでも演奏を続けていました。

 アッタカ的に四楽章に移動した冒頭の速いテンポの1Vnの旋律は綺麗だし、一種勇壮感もあるメロディで、何回も繰り返されましたが、この楽章も今にも曲が終了かな?と思うと、また息を吹き返して演奏が続き、またまた何回かベートーヴェンらしい「終了惜しみ」を繰返して最後はやっと終わったのはやはり40分間を過ぎていました(腕時計で測った)

 

《20分の休憩》

 

③第12番

 実はこの曲を数日前から一番注目していました。ただ時間が取れなくて事前に録音を聴けなかったこともあり、一時も早く聴いてみたい感があった。何故なら最近ピアノリサイタルを聴く機会が多くてショパンを聞いたり、ベートーヴェンの「最後の三大ピアノソナタ」とも謂われる30番、31番、32番を、バレンボイムが弾く演奏会に行って二回も聴くことがあって、自分としての結論は、 

❝この曲(=ソナタ32番)程、この作曲家(=ベートヴェン)の生涯の卒業論文とも言える作品は他に無いのではないでしょう。第九も荘厳ミサ曲もその他いろいろあるとしても、音楽としてのその構成力、迫力、精神力、見事な美的表現、ダントツだと思います。ソナタの中では少ない二楽章構成ですが、曲としては長大な大曲です。❞ と勝手に結論付けてしまったのでした。その時は「弦楽四重奏曲第12番」の存在は知らなかったのです。まして最後の一連の弦楽四重奏曲は上記「荘厳ミサ曲」「交響曲第九番」「32番ピアノソナタ」と同じ頃のしかも死の直前の作品だと知っていたら、この様な性急な結論は出さなかったでしょう。それで気になって仕方が無かった。若し12番を聴いてみて、上記ミサ曲や交響曲、ピアノソナタを超えるものであったら、考えを訂正せねばならない、と。詳細は時間の関係で後日補遺しますが、自分なりの結論としては、やはりピアノソナタ32番の方が総合力で優勢勝ちでした。勿論、12番の四重奏も前半聴いた1番やラズモフスキー1番と比べると多くの点で異なっており、素晴らしい曲の一言に尽きますけれど。