第2046回 定期公演Aプログラム1日目(土)

【日時】2025年10月18日(土)18:00〜
【会場】NHKホール
【管弦楽】NHK交響楽団
【指揮】ヘルベルト・ブロムシュテット
【出演】クリスティーナ・ランツハマー(ソプラノ)/マリー・ヘンリエッテ・ラインホルト(メゾ・ソプラノ)/ティルマン・リヒディ(テノール)/スウェーデン放送合唱団(合唱)
【ソリストProfile】
◯ソプラノ:クリスティーナ・ランツハマー
ドイツの歌手。レパートリーは広いが、モーツァルトやワーグナーの他やミサ曲、その他コンサートでも大活躍。温かく伸びやかな声と豊かな表現力には、定評がある。
◯メゾソプラノ:マリー・ヘンリエッテ・ラインホルト
ライプツィヒ生れ。深く瑞々しく、厚みがあって輝かしい歌声。 ブロム翁やティーレマンを始めとする世界的指揮者と共演を重ねている。バロック音楽からワーグナーまでリパートリーは広い。更なる成長が期待されている大器。
◯テノール:ティルマン・リビディ
シュヴァイゲルン生れのドイツのリリックテノール。柔らかで品のある美声。レパートリーは広いが、特に宗教音楽の分野では、定評がある。2005年から8年間ニュルンベルク州立歌劇場の専属歌手を努めた。N響との共演は。2019年以来6年ぶり。
[曲目]
①ストラヴィンスキー:詩篇交響曲
(曲について)
「詩篇交響曲」(しへんこうきょうきょく、仏題:Symphonie de Psaumes、英題:Symphony of Psalms)は、イーゴリ・ストラヴィンスキーが1930年に作曲した合唱つきの交響曲である。歌詞はラテン語の詩篇によっている。彼の作風が新古典主義に傾倒していた頃の作品である。
セルゲイ・クーセヴィツキーの委嘱により、ボストン交響楽団の設立50周年を記念して作曲された。しかし世界初演は1930年12月13日にブリュッセルにおいて、エルネスト・アンセルメ指揮のブリュッセル・フィルハーモニック協会(Société Philharmonique de Bruxelles)によって行われた。直後の12月19日にクーゼヴィツキーとボストン交響楽団がアメリカ初演を行っている。
この作品のスタイルは、きわめて新古典主義的で、かつ宗教的である。この作品における「交響曲」という語は、古典派の意味でいう「交響曲」ではなく、より"Symphony"の語源の意味に近い「アンサンブル」という意味で解釈する方が近い。ストラヴィンスキーは、「これは、詩篇の歌唱を組み込んだ交響曲ではない。反対に、私が交響化(symphonize)した詩篇の歌唱なのだ」と語っている。
②メンデルスゾーン:交響曲 第2番 変ロ長調 作品52 「讃歌」
(曲について)
メンデルスゾーンが1840年に作曲した独唱と合唱を伴う交響曲。
歌詞はドイツ語で、マルティン・ルターが1534年に完成させた旧約聖書のドイツ語版の文言を、メンデルスゾーンが順序も含め改定したもので、神への賛美を歌い上げている。(歌詞参照)
1840年6月、ライプツィヒで開催されたヨハネス・グーテンベルクの印刷技術完成400周年記念祝典に際し、メンデルスゾーンがライプツィヒ市から委嘱されて作曲した2作品の内の一つがこの交響曲で、同年6月25日に作曲者自身の指揮でライプツィヒの聖トーマス教会で初演された。その後、楽譜を一部改定し、同年12月3日に作曲者自身の指揮でライプツィヒのゲヴァントハウスで演奏された。よって現在、初演版(première version)と、改訂版(revised version)の2つの版がある。(主要録音参照)
作曲順ではメンデルスゾーンの交響曲全5曲で4番目であるが、出版順では2番目であるため第2番と表記される。ベートーヴェンの交響曲第9番を彷彿とさせる独唱と合唱の付いたこの交響曲は、初演当初人気を博したが、それ以降は注目を集めることも少なくなった。しかし、1958年、ライプツィヒに国際メンデルスゾーン協会設立後は再評価され、再び脚光を浴び知られるようになった。
【演奏の模様】
今回のN響の演奏会は、スウェーデンから来日した合唱団と、N響の楽器群及びえりすぐりの来日ソロ歌手達が、あの広いNHKホールのステージに揃い踏みする、壮観の布陣でした。その中を白寿に近いブロム翁が自力で手押し車を押しながら登場したのです。昨年より元気な様子、それを見た満員の観衆は、どよめきと惜しみない歓待の拍手で迎えたのでした。
また今回の演奏曲は、①、②とも交響曲と名付けられてはいるものの、その実体は、合唱(ソロ歌唱を含む)を中心に備えたキリスト教の宗教音楽であり、使われた「詩篇」の歌詞の内容からして、神への畏敬、礼賛、賛美等々、人々の叫び、いやブロム翁の心からの祈り・願いが現れているのではなかろうか?とさえ思われました。今回の来日演奏会で、ブロム翁が一番演奏したかったのはこれ等の曲だったのではないでしょうか。
①ストラヴィンスキー:詩篇交響曲
◯楽器編成:
管弦楽は極めて大きく、只しクラリネット群、ヴァイオリン群、ヴィオラ群が無い。
木管楽器―フルート 5(ピッコロ 1持ち替え)、オーボエ 4、コーラングレ 1、ファゴット 3、コントラファゴット 1
金管楽器―ホルン 4、トランペット 5(ピッコロトランペット 1、C管 4)、トロンボーン 3、チューバ 1
弦楽器―チェロ、コントラバス
その他―ティンパニ、バスドラム、ハープ、ピアノ 2
合唱 ー児童合唱または女声合唱のソプラノとアルト、テノール、バス
◯全三楽章構成
第1楽章 Prelude: 「Exaudi orationem meam, Domine」
第2楽章 Double Fugue:「 Expectans expectavi, Dominum」
第3楽章 Allegro symphonique: 「Alleluia. Laudate Dominum」
演奏時間は約21分。各楽章の題名は初演のプログラムに記されていたもので、スコアの各楽章冒頭にはテンポ指示だけが書かれている。
第1楽章 四分音符=92。
歌詞は詩篇38番(39番)から。第2楽章への前奏曲の役割を持つ。全体をオスティナートが支配し、ホ短調の三和音によって区切りがつけられる。
Exaudi orationem meam, Domine, et deprecationem meam;
auribus percipe lacrimas meas. ne sileas.
Quoniam advena ego sum apud te,
et peregrinus sicut omnes patres mei.
Remitte mihi, ut refrigerer
priusquam abeam et amplius non ero.
Psalmi 38, 13.14
主よ、わたしの祈りを聞き、わたしの叫びに耳を傾け、
わたしの涙を見てもださないでください。
わたしはあなたに身を寄せる旅びと、
わがすべての先祖たちのように寄留者です。
わたしが去って、うせない前に、
み顔をそむけて、わたしを喜ばせてください。
詩篇 39:12-13
第2楽章八分音符=60。
歌詞は詩篇39番(40番)から。管弦楽と合唱による二重フーガ。終盤の"Et immisit in os meum canticum novum"からは合唱がホモフォニックに変わり、クライマックスを形作る。
Expectans expectavi Dominum, et intendit mihi.
Et exaudivit preces meas; et eduxit me de lacu miseriae, et de luto fæcis.
Et statuit super petram pedes meos: et direxit gressus meos.
Et immisit in os meum canticum novum, carmen Deo nostro.
Videbunt multi, videbunt et timebunt: et sperabunt in Domino.
Psalmi 39, 2-4
わたしは耐え忍んで主を待ち望んだ。主は耳を傾けて、
わたしの叫びを聞かれた。主はわたしを滅びの穴から、泥の沼から引きあげて、
わたしの足を岩の上におき、わたしの歩みをたしかにされた。
主は新しい歌をわたしの口に授け、われらの神にささげるさんびの歌をわたしの口に授けられた。
多くの人はこれを見て恐れ、かつ主に信頼するであろう。
詩篇 40:1-3
第3楽章 二分音符=48 - 二分音符=80。
歌詞は詩篇150番から。ゆったりした両端部分とテンポを上げる中央の部分からなり、複調的な管弦楽の間奏をもつ。声楽のパートでは広範にカデンツが扱われる。
Alleluia. Laudate Dominum in sanctis Ejus.
Laudate Eum in firmamento virtutis Ejus.
Laudate Eum in virtutibus Ejus.
Laudate Eum secundum multitudinem magnitudinis Ejus.
Laudate Eum in sono tubae,
[ Laudate Eum in psalterio et cithara. ]
Laudate Eum in timpano et choro,
Laudate Eum in cordis et organo.
Laudate Eum in cymbalis benesonantibus,
Laudate Eum in cymbalis jubilationibus.
Omnis spiritus laudet Dominum. Alleluia.
Psalmi 150, 1-6
主をほめたたえよ。その聖所で神をほめたたえよ。
その力のあらわれる大空で主をほめたたえよ。
その大能のはたらきのゆえに主をほめたたえよ。
そのすぐれて大いなることのゆえに主をほめたたえよ。
ラッパの声をもって主をほめたたえよ。
(立琴と琴とをもって主をほめたたえよ。)
鼓と踊りとをもって主をほめたたえよ。
緒琴と笛とをもって主をほめたたえよ。
音の高いシンバルをもって主をほめたたえよ。
鳴りひびくシンバルをもって主をほめたたえよ。
息のあるすべてのものに主をほめたたえさせよ。主をほめたたえよ。
詩篇 150:1-6
②メンデルスゾーン:交響曲 第2番 変ロ長調 作品52 「讃歌」
〇楽器編成
・声楽:ソプラノ独唱2 テノール独唱、混声合唱
・管弦楽:木管楽器フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2
金管楽器:ホルン4、トランペット2、トロンボーン3
・その他:弦五部、ティンパニ、オルガン(第2部のみ)
〇演奏時間:初演版は約60分、改訂版は約65分
〇曲構成
作品は全2部10曲から構成される。第1部は3楽章のシンフォニア、第2部はカンタータ楽章となっている。なお改訂版では第6曲・第8曲・第10曲が書き足されており、原典版とはテクストが異なる。
〈第1部〉
第1曲 シンフォニア(Sinfonia)
第1楽章 マエストーソ・コン・モート-アレグロ(Maestoso con moto - Allegro)序奏部のマエストーソ・コン・モート(変ロ長調、4分の4拍子)は3本のトロンボーンによって厳かに奏され始める。この序奏は全曲の基本主題であり、祝典的な役目も果たす。また第10曲の終結部でもこの主題が登場する。主部のアレグロ(変ロ長調、4分の4拍子)はソナタ形式による。展開部は前半が第1主題と基本主題、比較的落ち着いた後半が第2主題を主に取り扱う。再現部の第1主題は提示部に比べてかなり圧縮され、すぐに第2主題につながっている。コデッタの再現の後、コーダに入り、クラリネットのカデンツァののち、アタッカで次の楽章へ切れ目なく移行する。
第2楽章 アレグレット・ウン・ポコ・アジタート(Allegretto un poco agitato)ト短調、8分の6拍子。自由な三部形式による。明記こそされていないもののスケルツォに相当する楽章である。トリオはト長調で、コラール風の旋律の間にも主要主題と基本主題が断片的に挿入されており、第3部はピッツィカートで主題が導入されて第1部の自由な再現となっている。
第3楽章 アダージョ・レリジオーソ(Adagio religioso)ニ長調、4分の2拍子。三部形式による。中間部はニ短調だが比較的短めである。第3楽章の動機は第2部でも活用される。
〈第2部〉
第2曲 合唱「すべて息づく者は主を称えよ!」(Alles, was Odem hat, lobe den Herrn)アレグロ・モデラート・マエストーソ-アニマート、ニ短調。管弦楽による序奏(16小節まで)が置かれている。この序奏は第3楽章の中間部のリズムを活用している。17小節から合唱が歌い、モルト・ピウ・モデラート(139小節以降)からはソプラノ独唱と女声合唱が「主を称えよ、我が魂よ」を歌う。詞は詩篇150:6、33:2(主を讃えよ、弦を奏で、歌え、というこの曲のコンセプトと重なる歌詞が登場する)、145:21、103:1-2による。
第3曲 アリア「汝ら主に贖われし者は言え」(Saget es, die ihr erlöst seid )アレグロ・モデラート、ト短調。テノール独唱によるレチタティーヴォとアリア。詞は詩篇107、56:8/119:50による。
第4曲 合唱「汝ら主に贖われし者は言え」(Saget es, die ihr erlöset seid)ア・テンポ・モデラート、ト短調。詞は詩篇107/56による。
第5曲 ソプラノと合唱「我は主を待ち焦がれ」(Ich harrete des Herrn)アンダンテ、変ホ長調。ソプラノ二重唱と合唱。第5曲はシューマンがとくに絶賛した部分であり、批評も残している。詞は詩篇40:2/5による。
第6曲 アリア「死の絆は我らを囲み」(Stricke des Todes hatten uns umfangen)アレグロ・ウン・ポコ・アジタート、ハ短調。テノール独唱とソプラノのレチタティーヴォによる。詞は詩篇116:3、エフェソ5:14、イザヤ21:11-12による。
第7曲 合唱「夜は過ぎ去れり」(Die Nacht ist vergangen)アレグロ・マエスト-ソ・エ・モルト・ヴィヴァーチェ、ニ長調。詞はローマ書13:12による。
第8曲 合唱「いまこそ皆、神に感謝せよ」(Nun danket alle Gott)コラール.アンダンテ・コン・モート-ウン・ポコ・ピウ・アニマート、ト長調。ルター派の有名なコラール「いざやともに」(日基版『讃美歌』2番、『聖歌』291番「いざもろとも」)が用いられ、前半は8声部の無伴奏で、後半は伴奏が入ったユニゾンで歌われる。歌詞はマルティン・リンカルト(ドイツ語版)が1636年に作詞したものである。
第9曲 アリア「我ゆえに我が歌をもて」(Drum sing ich mit meinem Liede)アンダンテ・ソステヌート・アッサイ、ト短調。ソプラノとテノールの二重唱による。詞は由来不明だが、詩篇の詩句をメンデルスゾーンが自由に編纂したとも考えられる(外部リンクに詳細な解説あり)。
第10曲 終末合唱「汝ら民よ、主に栄光と権力とを帰せよ!」(Ihr Völker! bringet her dem Herrn Ehre und Macht!)アレグロ・ノン・トロッポ、ト短調-変ロ長調。終末合唱はフーガの手法によって展開する。第1部の基本主題が登場し、「息あるものはすべて主を称えよ」が歌われて全合奏によって輝かしく終える。詞は詩篇96、歴代誌上16、詩篇150:6による。
〇第2曲から第10曲の歌詞
第2曲
Alles, was Odem hat, lobe den Herrn!
Halleluja, lobe den Herrn! Ps 156,6
Lobt den Herrn mit Saitenspiel,
Lobt ihn mit eurem Liede! Ps 33,2
Und alles Fleisch lobe seinen heiligen Namen.
Ps 145,21
Alles was Odem hat, lobe den Herrn!
Lobe den Herrn, meine Seele,
Und was in mir ist, seinen heiligen Namen!
Und vergiß es nicht, was er dir Gutes getan. Ps 103,1
息づく者はすべて、主を称えよ!
ハレルヤ、主を称えよ! 詩篇150:6
弦の調べにて主を称え、
汝らの歌をもて主を称えよ! 詩篇33:2
すべての生ける者は主の聖なる御名を称えよ。 詩篇145:21
息づく者はすべて、主を称えよ!
主を称えよ、我が魂よ、
我が内なるものよ、聖なる御名を!
忘るることなかれ、良き御業を。 詩篇103:1
第3曲
Saget es, die ihr erlöst seid durch den Herrn,
Die er aus der Not errettet hat,
Aus schwerer Trübsal, aus Schmach und Banden,
Die ihr gefangen im Dunkeln waret,
Alle, die er erlöst hat aus der Not.
Saget es! Danket ihm und rühmet seine Güte! Ps 107,17
Er zählet unsre Tränen in der Zeit der Not.
Er tröstet die Betrübten mit seinem Wort. Ps 56,9
Saget es! Danket ihm und rühmet seine Güte!
Saget es! Danket ihm und rühmet seine Güte!
Ps107,17
汝ら主に贖われし者は言え、
苦難より解き放たれし者よ、
深き苦悩より、恥辱と呪縛より、
闇に閉ざされし者のごとく、
すべて、主により苦難より贖われし者よ。
言え! 主に感謝しその良き御業を称えよ! 詩篇107:17
主は苦しき時に我らの涙を数える。
主は御言葉にて悲しみを慰める。 詩篇56:9
言え! 主に感謝しその良き御業を称えよ!
言え! 主に感謝しその良き御業を称えよ!
詩篇107:17
第4曲
Sagt es, die ihr erlöset seid
Von dem Herrn aus aller Trübsal.
Er zählet unsere Tränen in der Zeit der Not.
汝ら主に贖われし者は言え、
苦難より解き放たれし者よ。
主は苦難の時に我らの涙を数える。
第5曲
Ich harrete des Herrn, und er neigte sich zu mir
Und hörte mein Flehn.
Wohl dem, der seine Hoffnung setzt auf den Herrn!
Wohl dem, der seine Hoffnung setzt auf ihn! Ps 40:2,4
我は主を待ち焦がれ、主は我に耳を傾け、
我が懇願を聞く。
幸いなるかな、主にその願いを託す者!
幸いなるかな、主にその願いを託す者! 詩篇40:2,4
第6曲
Stricke des Todes hatten uns umfangen,
Und Angst der Hölle hatte uns getroffen,
Wir wandelten in Finsternis. Ps 116,3
Er aber spricht: Wache auf!
Wache auf, der du schläfst,
Stehe auf von den Toten,
Ich will dich erleuchten! Eph 5, 14
Wir riefen in der Finsternis:
Hüter, ist die Nacht bald hin?
Der Hüter aber sprach:
Wenn der Morgen schon kommt,
So wird es doch Nacht sein;
Wenn ihr schon fraget,
So werdet ihr doch wiederkommen
Und wieder fragen:
Hüter, ist die Nacht bald hin? Jes 21,12
Die Nacht ist vergangen!
死の絆は我らを囲み、
地獄の恐怖が我らを襲い、
我らは暗闇をさまよえり。 詩篇116:3
しかし主は言われる:
目覚めよ、汝、眠れる者よ、
死者の中より立ち上がれ。
我は汝に光をもたらさん。 エフェソの信徒への手紙5:14
暗闇の中、我らは叫ぶ:
見張り人よ、夜は間もなく明けるか?
見張り人はしかし語る:
朝は間もなく来るが、
それでもまた夜は来たらん。
汝らは今尋ねるが、
それでもまた来たりて
再び尋ねん。
見張り人よ、夜は間もなく明けるか?と。 イザヤ書21:12
夜は過ぎ去れり!
第7曲
Die Nacht ist vergangen,
Der Tag aber herbeigekommen.
So laßt uns ablegen die Werke der Finsternis,
Und anlegen die Waffen des Lichts,
Und ergreifen die Waffen des Lichts. Röm 13,12
Die Nacht ist vergangen!
Der Tag ist gekommen!
夜は過ぎ去れり、
昼は手の届くところに来たれり。
されば闇の業を捨て去らん、
そして光の鎧を身に着けん、
そして光の武器を手に取らん。ローマの信徒への手紙13:12
夜は過ぎ去れり!
昼は来たれり!
第8曲
Nun danket alle Gott
Mit Herzen, Mund und Händen,
Der sich in aller Not
Will gnädig zu uns wenden,
Der so viel Gutes tut;
Von Kindesbeinen an
Uns hielt in seiner Hut,
Und allen wohlgetan.
Lob, Ehr' und Preis sei Gott,
Dem Vater und dem Sohne,
Und seinem heil'gen Geist
Im höchsten Himmelsthrone.
Lob dem dreieinen Gott,
Der Nacht und Dunkel schied
Von Licht und Morgenrot,
Ihm danket unser Lied.
いまこそ皆、神に感謝せよ、
心と口と手をもちて。
あらゆる苦難の時にも神は
我らにその慈悲をくださるがゆえに。
神は大いなる恵みをくださる、
子供の頃より、
我らをその庇護に置き、
恵みを与える。シラ書50:22
賛美と栄光と称賛が神にあらんことを、
父と子に、
そして聖霊に、
いと高き天の玉座において。
賛美が三位一体の神にあらんことを、
夜と闇を、
光と曙より分かたれた神に、
我らの歌で感謝せよ。
第9曲
Drum sing' ich mit meinem Liede
Ewig dein Lob, du treuer Gott!
Und danke dir für alles Gute, das du an mir getan!
Und wandl' ich in der Nacht und tiefem Dunkel,
Und die Feinde umher stellen mir nach:
So rufe ich an den Namen des Herrn,
Und er errettet mich nach seiner Güte.
Und wandl' ich in Nacht, so ruf' ich deinen Namen an,
Ewig, du treuer Gott! Ps138,7
我ゆえに我が歌をもて
永遠に御身を賛美する、真なる神よ!
そして我に示されしすべての良き御業のために御身を称える!
そして我は夜と暗き闇の中をさまよい、
敵は我の周りに忍び寄る。
そして我は主の名前を呼び、
主は良き御業をもって我を救う。
我は夜をさまよい、御身の名を呼ばわる。
永遠に、真なる神よ!詩篇138:7
第10曲
Ihr Völker, bringet her dem Herrn Ehre und Macht!
Ihr Könige, bringet her dem Herrn Ehre und Macht!
Der Himmel bringe her dem Herrn Ehre und Macht!
Die Erde bringe her dem Herrn Ehre und Macht!Ps 96,7
Alles danke dem Herrn!
Danket dem Herrn und rühmt seinen Namen
Und preiset seine Herrlichkeit.1 Chr 16,8-10
Alles, was Odem hat, lobe den Herrn,
Halleluja, lobe den Herrn!Ps 150,6
汝ら民よ、主に栄光と権力とを帰せよ!
汝ら王よ、主に栄光と力とを帰せよ!
天よ、主に栄光と力とを帰せよ!
地よ、主に栄光と力とを帰せよ!詩篇96:7
すべての者は主に感謝せよ!
主に感謝し、御名を称え、
主の誉れを賛美せよ。歴代誌上16:8-10
息づく者はすべて、主を称えよ!
ハレルヤ! 主を称えよ!詩篇150:6
今回、メンデルスゾーンのこの曲の生演奏は、初めて聴きましたが、これだけの大曲があったとは驚きを禁じ得ません。ベートーヴェンの荘厳ミサ曲や第九、マーラーの交響曲8番に先駆ける音楽の金字塔だと思います。 しかもこの曲が、100歳に近い指揮者が恰も神を前にして、心から発する祈りを高らかに謳い上げるが如き 神聖な息吹を聴く者に与えたことは、一種の奇跡に近いことだと思いました。
特に印象深かかった箇所は、
・ストラビン詩篇交響曲の第2楽章、木管のソロ⇒掛け合いから合唱が入り、女声⇒男声⇒フーガに発展した箇所。
・同3楽章の「ハレルヤ」賛歌の中の穏やかなな男声・女声の合唱が次第にクレッシェンドした箇所。
・全体的に各所に現れる不協的響きがかえって神聖さを増すストラビのオーケストレーションの巧みさ。
・メンデルス2番の各所に於けるOb.の伸びやかな調べ。神懸かりの雰囲気をいや増していました。
・同2部第2曲、ソプラノの美声と女声合唱との掛け合いと斉唱。
・第3曲でのテノールソロの神聖な歌声。
・第5曲でのソプラノとメゾソプラノ、合唱のやり取り及び、弱音で寄り添ったHrn.の安定した伴奏。
・第10、終曲における、合唱の華々しいフーガの展開。
そして、
全体を通して、冒頭のTrmb.に依るテーマの調べは、各処で変奏され、またはそのままの形で何回も出没し、演奏会が終わっても、残響となって耳に残るのでした。

しかし何と言っても一番感動したのは、ブロム翁の一貫して、安定的な棒さばき(実際は手と指に依る指揮でしたが)と、譜めくりも最初から最後までスムーズに進めたこと、とても百歳近くの人とは、思えない奇跡的指揮・牽引です。
カーテンコールにも、何回も自力で登場して歓呼に応えていた姿は、神がかっていました。
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