

【日時】2026.2.17.(火)19:00~
【会場】東京文化会館
【管弦楽】東京都交響楽団
【指揮】エリアフ・インバル
【出演】ソプラノⅠ/ファン・スミ
<Profile>
2014年エリザベート王妃国際コンクール第1位。これまでにボン劇場、ウィーン室内オペラ、ジュネーヴ大劇場、ミュンヘン・プリンツレゲンテン劇場、韓国国立オペラ、ヴィースバーデン・ヘッセン国立劇場、大邱オペラなどに登場。ミュンヘン響、BBC響、オランダ放送フィル、KBS響、ソウル・フィル、スタヴァンゲル響、ヘルシンキ・フィル、コペンハーゲン・フィルなどと共演。2022年9月より、慶熙大学(ソウル)で独唱の教授を務めている。
*ソプラノⅡ/エレノア・ライオンズ
<Profile>
シドニー音楽院、王立ノーザン音楽大学(英国)、マリインスキー若手歌手アカデミーで学んだ。第9回国際オブラスツォワ・コンクールなどに入賞。これまでにクイーンズランド・オペラ(オーストラリア)、ゼンパーオーパー・ドレスデン、ハンガリー国立歌劇場、フランドル・オペラ(ベルギー)などに登場。シャンゼリゼ管、ベルリン放送響、バーミンガム市響、ブダペスト祝祭管、メルボルン響などと共演した。
*ソプラノⅢ/隠岐彩夏
*メゾソプラノⅠ/藤村実穂子
*メゾソプラノⅡ/山下裕賀
*テノール/マグヌス・ヴィギリウス
<Profile>
デンマーク出身。王立デンマーク音楽アカデミーで学び、2014年ラウリッツ・メルヒオール国際声楽コンクール第2位。2021/22シーズンにバイロイト音楽祭へ出演、ワーグナー作品を中心に、これまでにライプツィヒ歌劇場、チューリッヒ歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラ、ゼンパーオーパー・ドレスデン、デンマーク王立歌劇場、モネ劇場などに登場。イタリアやチェコの作品でも評価が高く、ヤナーチェクのオペラで成功を収めている。
*バリトン/ビルガー・ラッデ
<Profile>
北ドイツ出身。ドレスデン音楽院、ライプツィヒ音楽院、イェール大学で学ぶ。2020年に雑誌『オペルンヴェルト』の「年間最優秀歌手」にノミネートされた。これまでにウィーン国立歌劇場、カールスルーエ・バーデン国立劇場、ボローニャ市立劇場、モンテカルロ歌劇場、バイロイト音楽祭、フィレンツェ五月音楽祭などに登場。ウィーン・フィル、ゲヴァントハウス管、シュターツカペレ・ドレスデン、アンサンブル・モデルンなどと共演した。
*バス/妻屋秀和
合唱/新国立劇場合唱団
児童合唱/東京少年少女合唱隊
【主催者言】
1996年、2008年、2014年に続く、12年ぶり4度目のインバル都響のマーラー交響曲第8番は、都響創立60周年とインバル90歳を記念してのプログラムです。ますます意気軒高な驚くべきマエストロと、内外で活躍著しい優れた歌手たち、そして日本が誇る合唱団とともに、都響60年の歴史と実績を感じていただけるような演奏を目指します。
【曲目】
マーラー作曲交響曲第8番<千人の交響曲>
(曲について)
この8番の交響曲は、1906年夏にヴェルター湖畔マイアーニックで作曲されました。大規模な交響曲ですが作曲に要した期間は短く、ひと夏でスケッチされ。翌年の1907年夏にオーケストレーションが行われ完成しました。
交響曲第4番以来の声楽付き交響曲であり、4声部の独唱と大規模な合唱、バンダのソプラノなど、これまでにない大編成の交響曲となりました。最初から最後まで声楽が活躍するため、カンタータやオラトリオに近い、と言われています。第1部は「来たれ、創造主たる聖霊よ」となっています。しかし、第2部はゲーテの戯曲『ファウスト』を歌詞としています。物語を表現するためにソリストを割り当てたという意味ではオラトリオに近いです。
しかし特に宗教色が強いという訳でもなく、ヘンデルのオラトリオ『メサイア』などとは大分違います。マーラーはユダヤ教からカトリックに改宗していますが、純粋な信仰心というより、当時台頭し始めた反ユダヤ主義の影響が大きく、便宜的にそうした、という意見もありますし。ただ『ファウスト』から抜粋した個所は、マグダラのマリアなど、キリスト教色の強い箇所かも知れません。
【第1部】
Veni, creator spiritus,
来たれ、創造主たる聖霊よ
Mentes tuorum visita;
私たちの魂に訪れ
Imple superna gratia,
いと高き恵みにて満たしたまえ
quae tu creasti pectora.
あなたの作られたこの心を
Qui tu Paraclitus diceris,
慈しみ深き主とよばれる方よ
Donum Dei altissimi,
いと高き神よりの贈り物!
Fons vivus, ignis, caritas,
それは命の泉、炎、慈しみの愛
et spiritalis unctio.
聖霊よりの油をほどこす者と呼ばれるかたよ
Infirma nostri corporis,
私たちの弱き肉体を
Virtute firmans perpeti.
絶えざる力のよりて強めたまえ
Accende lumen sensibus.
その光によりて、われらの五感を高めたまえ
Infunde amorem cordibus.
われらの心に愛を注ぎ込みたまえ
Hostem repellas longius,
敵を退け、
Pacemque dones protinus;
われらに平安を与えたまえ
Ductore sic te praevio
導き手なる方よ、あなたにならい
vitemus omne pessimum.
われらより全ての悪を退けたまえ
Tu septiformis munere,
7つのたまもの(知恵、理解、賢明さ、強い意志、知識、慈しみ、敬う心)をわれらに与えたまえ
dexterae paternae digitus.
おん父なる神の、右の指なる方よ
Per te sciamus da Patrem,
おん父より約束された尊き方よ
noscamus atque Filium,
豊かなことばでもって語ってくださる
Te utriusque Spiritum
聖霊なるあなたを知らしめたまえ
credamus omni tempore.
いかなる時にもあなたを信じます
Da gratiarum munera,
天の喜びを授けたまえ
da gaudiorum praemia;
大いなる幸福を与えたまえ
Dissolve litis vincula,
争いの縛りを解き放ち
adstringe pacis foedera.
幸福の誓いを結びたまえ
Gloria Patri Domino,
父なる神に栄光あれ
Natoque, qui a mortuis
死よりよみがえりし、聖なる子に
surrexit, ac Paraclito
なぐさめの主なる聖霊に栄光あれ
in saeculorum saecula.
いついつまでも永遠に
【第2部の概要】
2部は切れ目のないオラトリオのような音楽です。独唱や合唱は役回りを持っています。
独唱、合唱
合唱は、男声合唱、女声合唱、少年合唱から成り立っています。このうち、少年合唱は天使役です。
独唱は、以下のような配役になっています。
第1ソプラノ:罪深き女(マグダラのマリア)
第2ソプラノ:贖罪の女のひとり(グレートヒェン)
第3ソプラノ:栄光の聖母
第1メゾ・ソプラノ:サマリアの女
第2メゾ・ソプラノ:エジプトのマリア
テノール:マリア崇拝の博士
バリトン:法悦の教父
バス:瞑想の教父
【第2部の構成】
1.ポーコ・アダージョ
2.ピウ・モッソ(アレグロ・モデラート)
3.森は揺らいでなびき (合唱とこだま)
4.永遠の法悦の炎 (法悦の教父)
5.私の足もとで断崖絶壁が (瞑想の教父)
6.霊界の気高い一員が (天使)
7.地上の残り滓を運ぶのは (天使になりきったものたち)
8.岩の頂のまわりを霧のように (なりたての天使たち)
9.世を支配する最高の女王よ (マリアをたたえる博士)
10.触れることのできぬあなたにも (合唱)
11.その愛にかけてお願い申し上げます (罪深き女(マグダラのマリア))
12.たぐいない御方、光り輝く御方 (贖罪の女のひとり(グレートヒェン))
13.この人は手足も逞しくなり (昇天した子供たち)
14.来たれ、もっと高い天へ昇れ! (栄光の聖母&合唱)
15.すべて懺悔の気のある情け深い人々よ (マリアをたたえる博士&合唱)
16.はかなきものはすべて (神秘の合唱)
〈注〉
※『ファウスト』の主人公ファウストは悪魔の力を借りて若返り、村娘のグレートヒェンを誘惑しますが、生まれた子供と共にグレートヒェンを捨ててしまう(悪魔の誘いか?)。グレートヒェンは子供殺しの罪でファウストの名を叫びながら死刑に処せられるが、悔悟によって地獄からは救われます。
※マグダラのマリアは聖書に出てくる罪深い女性、つまり娼婦であった。イエスの足に香油を塗り懺悔(ざんげ)して許されます。その後、イエスが磔(はりつけ)にされ、復活するまでを見届けたとされ、復活したイエスに触れようとして「我に触るな」と言われた。その後イエスは布教する生活に入り、マグダラのマリアは隠遁して生涯を終えたという説やイエスの身の周りの世話をしたという説も有ります。
【第2部合唱&独唱歌詞】
第2部 ゲーテ《ファウスト》「山あい」から終幕の場面
《CHOR und ECHO》
合唱とこだま
Waldung, sie schwankt heran,
森の木立はこちらになびき
Felsen, sie lasten dran,
岩場は連なりのしかかる
Wurzeln, sie klammern an,
木と木、根っこと根っこは絡み合う
Stamm dicht an Stamm hinan,
樹木の幹、そびえて寄り添いしがみつく
Woge nach Woge spritzt,
谷あいの波はぶつかり合い、しぶきをあげてほとばしる
Höhle, die tiefste, schützt,
洞窟はその深淵でわれらを守る
Löwen, sie schleichen stumm,
獅子たちも言葉少なに親しげに
Freundlich um uns herum,
われらの周りを巡りつつ
Ehren geweihten Ort,
清められたる聖なる愛の隠れ家に
Heiligen Liebeshort.
敬意を払うふりをする
PATER ECSTATICUS (Baritone)
《法悦の教父(バリトン)》
(auf und abschwebend)
(舞うように漂いながら)
Ewiger Wonnebrand,
永遠なる法悦の炎
Glühendes Liebesband,
焼け付くような愛のきずな
Siedender Schmerz der Brust,
煮えたぎる胸の痛み
Schäumende Gotteslust.
高まる神への悦び
Pfeile, durchdringet mich,
矢よ、私をつらぬけ
Lanzen, bezwinget mich,
槍よ、私を突き刺せ
Keulen, zerschmettert mich,
棒きれよ、私を打ち砕け
Blitze, durchwettert mich,
稲妻よ、私をつらぬけ
Dass ja das Nichtige
虚(むな)しいものを
Alles verflüchtige,
この地より追い払え
Glänze der Dauerstern,
永劫なる星よ、輝け
Ewiger Liebe Kern!
永遠の愛の核心よ!
PATER PROFUNDUS (Bass)
瞑想する教父(バス)
(tiefe Region)
(深い谷あいにて)
Wie Felsenabgrund mir zu Füßen
岩場の連なり私の足もと
Auf tiefem Abgrund lastend ruht,
奈落に座れるごとく
Wie tausend Bäche strahlend fließen
いく千もの小川がきらめきながら流れゆく
Zum grausen Sturz des Schaums der Flut,
しぶきを上げる滝のように
Wie strack, mit eignem kräftgen Triebe,
おのれの力で樹木は
Der Stamm sich in die Lüfte trägt;
伸びて空めざす
So ist es die allmächtge Liebe,
森も岩石の大地も波打つように
Die alles bildet, alles hegt.
万物を創り、全てを育む
Ist um mich her ein wildes Brausen,
森と岩の大地を揺るがせて
Als wogte Wald und Felsengrund,
私を取り巻く荒ぶる水音
Und doch stürzt, liebevoll im Sausen,
豊かに満ちる水は
Die Wasserfülle sich zum Schlund,
とどろくざわめき優しさ込めて
Berufen, gleich das Tal zu wässern;
谷あい、水を送り出す
Der Blitz, der flammend niederschlug,
炎を帯び、大地を打つは稲光
Die Atmosphäre zu verbessern,
毒と霧とを含んだ大気を
Die Gift und Dunst im Busen trug;
浄化せんがため
Sind Liebesboten, sie verkünden,
全て愛の御使いならば我らを覆い
Was ewig schaffend uns umwallt.
永遠の創造主の力を告げ知らす
Mein Inn'res mög' es auch entzünden,
わが胸のうちにも火を灯してほしい
Wo sich der Geist, verworren, kalt,
私の心は錯乱しながら冷えている
Verquält in stumpfer Sinne Schranken,
にごりきった官能の鎖で縛られつつうめき
Scharf angeschloss'nem Kettenschmerz.
囚われの身となって苦悩する
O Gott! beschwichtige die Gedanken,
おお、神よ、われを和らげたまえ
Erleuchte mein bedürftig Herz!
わが貧しき心にも光を灯したまえ!
Chor der ENGEL
《天使の合唱》
(schwebend in der höhern Atmosphäre,
Faustens Unsterbliches tragend)
(ファウストが空を目指し不死の魂として舞い上がる)
Gerettet ist das edle Glied
霊界の手足なる気品を帯びた存在が
Der Geisterwelt vom Bösen:
悪の手から救い出され
“Wer immer strebend sich bemüht,
「絶えず努め励んでいた者は
Den können wir erlösen.”
私たちはお救いできるのです」
Und hat an ihm die Liebe gar
この人には天上からの
Von oben teilgenommen,
愛が降り注いだのですから
Begegnet ihm die sel'ge Schar
幸福な世界の人々が迎えるのです
Mit herzlichem Willkommen.
心からの祝福の思いを持って
CHOR SELIGER KNABEN
《祝福された少年たちの合唱》
(um die höchsten Gipfel kreisend)
(山の頂をめぐりながら)
Hände verschlinget
手に手をとって、飛び回ろ
Freudig zum Ringverein!
楽しく輪になり踊ろうよ!
Regt euch und singet
さあ、立ち上がって歌おう
Heil'ge Gefühle drein!
聖なる心を秘めながら
Göttlich belehret,
神さまのみ教え守り
Dürft ihr vertrauen:
ゆだねていれば
Den ihr verehret,
みんな敬うそのお方
Werdet ihr schauen.
きっと仰ぎ見ることができるでしょう
JÜNGEREN ENGEL
《若い天使たち》
Jene Rosen aus den Handen
豊かな愛の聖なる悔い改めの女性たち
Liebend-heiliger Buserinnen
手から授けられたバラの花のおかげで
Halfen uns den Sieg gewinnen
私たちを救い、勝利をお与えくださった
Und das hohe Werk vollenden,
かしこくも気高き仕事を成し遂げさせ
Diesen Seelenschatz erbeuten.
心の宝を得ることが出来たのです
Bose wichen, als wir streuten,
そのバラを撒くと悪魔は散らばり
Teufel flohen, als wir trafen.
バラで打ちつけると逃げ去った
Statt gewohnter Hollenstrafen
慣れきった地獄の責め苦の代わり
Fuhlten Liebesqual die Geister;
悪魔は愛の思いによる悔恨という苦しみに覆われた
Selbst der alte Satansmeister
老いさらばえた悪魔の頭でさえも
War von spitzer Peindurch drungen.
刺されるような痛みに襲われた
Jauchzet auf! Es ist gelungen.
さあ、歓喜の声をあげよう!成し遂げられた
DIE VOLLENDETEREN ENGEL (+Alto solo)
《成熟した天使たち》
Uns bleibt ein Erdenrest
地上に遺した痕跡を運ぶのは
Zu tragen peinlich,
とても苦しいことす
Und wär er von Asbest,
たとえそれが石綿であったとしても
Er ist nicht reinlich.
清らかなものではありません
Wenn starke Geisteskraft
たくましい聖霊の力が
Die Elemente
地上にあるもろもろの要素を
An sich herangerafft,
集めてくれば
Kein Engel trennte
霊魂と肉体の結びついた
Geeinte Zwienatur
合わさった体を引き離すことは
Der innigen beiden;
いかなる天使にも切り離すことは出来ません
Die ewige Liebe nur
分かつことが出来るのは
Vermag's zu scheiden.
ただ永遠の愛のみ
DIE JÜNGEREN ENGEL
《いまだ未熟な天使たち》
Ich spür' soeben,
岩山のまわりを
Nebelnd um Felsenhöh',
霧のように覆う
Ein Geisterleben,
霊たちの活きている
Regend sich in der Näh'.
動きが感じられる!
Seliger Knaben
天から招かれた
Seh'ich bewegte Schar,
祝福を受けた少年たちが
Los von der Erde Druck.
地上の縛りから解き放たれ
Im Kreis gesellt,
輪になってより集まり
Die sich erlaben
舞っているのが見える
Am neuen Lenz und Schmuck
天上の新しい春に装いに
Der obern Welt.
元気づけられている
Sei er zum Anbeginn,
この方もまずはじめに
Steigendem Vollgewinn
あの子たちに混ざって
Diesen gesellt!
完成へと向かってほしい
DIE SELIGEN KNABEN
《祝福された少年たちの合唱》
Freudig empfangen wir
僕たちは悦んでお迎えします
Diesen im Puppenstand;
いまださなぎの段階のその方を
Also erlangen wir
そうすれば僕たちも成長し
Englisches Unterpfand.
いつの日か、天使になれるのだと
Löset die Flocken los,
この方を覆っている繭を
Die ihn umgeben!
取り去りましょう!
Schon ist er schön und groß
聖なる霊性を授けられ
Von heiligem Leben.
大きく美しくなられました
DOCTOR MARIANUS (Tenor)
《マリアを敬う博士(テノール)》
Hier ist die Aussicht frei,
ここは見晴らしがよく
Der Geist erhoben.
霊性はもっと高められる
Dort ziehen Fraun vorbei,
あそこを女たちが通り過ぎてゆく
Schwebend nach oben.
天を目指して漂い登ってゆく
Die Herrliche mittenin
その中心に星の冠をいただいた
Im Sternenkranze,
気高い方のお姿があり
Die Himmelskönigin,
あのお方こそ天の女王様
Ich seh’s am Glanze.
その光を仰ぐだけで、そうであるとわかるのです
Höchste Herrscherin der Welt!
世を統べるいと美しき乙女
Lasse mich im blauen,
蒼い天幕のうちに
Ausgespannten Himmelszelt
あなたの霊性をこの眼に触れさせてくだい
Dein Geheimnis schauen.
男の胸を真摯にも動かすもの
Billige, was des Mannes Brust
神聖なる愛の悦びをもって
Ernst und zart beweget
あなたのおそばへと
Und mit heiliger Liebeslust
向かうことを
Dir entgegenträget.
どうかお受け入れください
Unbezwinglich unser Mut,
あなたが高貴なるお申し付けをくださると
Wenn du hehr gebietest;
私たちの勇気は堅固なものとなります
Plötzlich mildert sich die Glut,
あなたが乾きを癒してくださる時に
Wie du uns befriedest.
熱を帯びた感情も和らぐのです
DOCTOR MARIANUS und CHOR:
《マリアを敬う博士との合唱》
Mutter, Ehren würdig,
この上もなく美しく意味を持った聖なる乙女
Jungfrau, rein im schönsten Sinne,
栄光に輝くみ母よ
Uns erwählte Königin,
私たちのために選ばれた女王
Göttern ebenbürtig.
神々と等しく尊いお方
CHOR
《合唱》
Dir, der Unberührbaren,
手を触れることも叶わないあなたですが
Ist es nicht benommen,
誘惑に弱い私たちが
Dass die leicht Verführbaren
お近づきになり、おすがりするのは
Traulich zu dir kommen.
禁じられてはおりません
In die Schwachheit hingerafft,
弱さゆえに罪を犯した女たちを
Sind sie schwer zu retten.
救うことは、やさしいことではありません
Wer zerreißt aus eig'ner Kraft
されど自らの力のみで
Der Gelüste Ketten?
情欲の縛りを断ち切れましょうか?
Wie entgleitet schnell der Fuß
なめらかな床の上では
Schiefem, glattem Boden?
つい足を滑らせてしまうものです
贖罪の女たちと告白する女ひとりの合唱
CHOR DER BÜSSERINNEN
《贖罪の女たちと告白する女ひとりの合唱》
Du schwebst zu Höhen
永遠のみ国の高みを天駆ける
Der ewigen Reiche;
天駆けるお方
Vernimm das Flehen,
私たちの願いをお聞き届けください
Du Ohnegleiche!
慈しみ深き恵みなるお方
MAGNA PECCATRIX (Soprano)
《罪深き女》
Bei der Liebe, die den Füßen
パリサイ人たちに罵(ののし)られながらも
Deines gottverklärten Sohnes
清められし光の満てるみ子の足
Tränen ließ zum Balsam fließen,
香油という名の涙に変えて
Trotz des Pharisäer Hohnes;
愛の思いを注ぎます
Beim Gefäße, das so reichlich
この器にかけて
Tropfte Wohlgeruch hernieder;
豊かに香るしずくを落とした
Bei den Locken, die so weichlich
高貴なるそのみ足をやわらかく
Trockneten die heil'gen Glieder -
拭って差し上げたこの髪にかけて
MULIER SAMARITANA (Alto)
《サマリアの女(アルト)》
Bei dem Bronn, zu dem schon weiland
その昔、アブラハムが羊の群れを
Abram liess die Herde führen;
連れて行った泉にかけて願います
Bei dem Eimer, der dem Heiland
救い主のお口に冷たく触るお水を
Kühl die Lippe durft' berühren;
注いだ水桶にかけて願います
Bei der reinen, reichen Quelle,
この清泉から湧き出て
Die nun dorther sich ergießet,
永遠に澄みきり清らかで
Überflüssig, ewig helle,
世をうるおしつづけてやまない
Rings durch alle Welten fließt -
豊かな水にかけて願います
MARIA AEGYPTIACA (Alto)
《エジプトのマリア(アルト)》
Bei dem hochgeweihten Orte,
主を横たえ憩われた
Wo den Herrn man niederließ;
聖なるところにかけて願います
Bei dem Arm, der Von der Pforte,
私を諌めるために会堂の外へと
Warnend mich zurücke stieß;
突き出されたそのみ手にかけて
Bei der vierzigjähr'gen Buße,
ただただひたすら誠実に
Der ich treu in Wüsten blieb;
祈り続けた40年にかけてす
Bei dem sel'gen Scheidegruße,
砂の上に書きとめたこの世からのお別れの言葉にかけて
Den im Sand ich niederschrieb –
これら全てにかけて願います
ZU DREI
《3人ともに》
Die du großen Sünderinnen
大きな罪を犯した女たちも
Deine Nähe nicht verweigerst.
おそばによることも拒まれず
Und ein büßendes Gewinnen
悔い改めをもって得た美しい徳を
In die Ewigkeiten steigerst,
永遠なるものへと成すお方
Gönn' auch dieser guten Seele.
この良き魂たちにも
Die sich einmal nur vergessen.
ただ一度、我を見失い
Die nicht ahnte, dass sie fehle,
過ちに気づかずにいた者も
Dein Verzeihen angemessen!
慈しみ深き許しを与えたまえ
UNA POENITENTIUM (Soprano)
《懺悔する女(ソプラノ)》
(Gretchen)
(かつてはグレートヒエンと呼ばれた女性、聖母マリアおすがりしながら)
Neige, neige,
たとえようもないお方
Du Ohnegleiche,
光、満ち満ちて、あまねく照らされる方
Du Strahlenreiche,
どうか私の幸福に
Dein Antlitz gnädig meinem Glück!
そのお顔をお向けください
Der früh Geliebte,
かつてお慕いし
Nicht mehr Getrübte,
今はもうわずかな濁りすらもない
Er kommt zurück.
そのお方が帰ってこおいでになりました
CHOR SELIGER KNABEN
《祝福された少年たち》
(in Kreisbewegung sich nähernd)
(輪になって近づいて来ながら)
Er überwächst uns schon
あの方は僕らよりも大きくなって
An mächt'gen Gliedern.
手足もたくましくなりました
Wird treuer Pflege Lohn
僕らの施してきたことが忠実に
Reichlich erwidern.
報われる時が来たようだよ
Wir wurden früh entfernt
僕らはずっと前に
Von Lebechören.
人の世から離れてしまったの
Doch dieser hat gelernt:
でもこの方はたくさんのことを学んで来られたの
Er wird uns lehren.
僕らにも教えてくださることと思うよ
UNA POENITENTIUM (Soprano)
《懺悔する女(ソプラノ)》
(Gretchen)
(グレートヒエン)
Vom edlen Geisterchor umgeben,
高貴なる霊たちに囲まれて
Wird sich der Neue kaum gewahr,
生まれ変わられたあのお方は戸惑い気味
Er ahnet kaum das frische Leben,
あの方は新たに生まれたことをご理解されていない様子
So gleicht er schon der heil'gen Schar.
新たなる生まれ変わりに気づかれていません
Sieh, wie er jedem Erdenbande
でもすでに神聖なかたたちと面持ちが同化されています
Der alten Hülle sich entrafft,
ご覧くださいあらゆる地上のしがらみを
Und aus ätherischem Gewande
断ち切って古い衣を脱ぎ捨てられました
Hervortritt erste Jugendkraft!
新しい青春の力が漏れ出してきているようです
Vergönne mir, ihn zu belehren,
あの方に教えることをお許しください
Noch blendet ihn der neue Tag.
あの方はいまだ新しい光を眩しがっておられます
MATER GLORIOSA (Soprano)
《栄光の聖母(ソプラノ)》
Komm! Hebe dich zu höhern Sphären!
さあ、来たれ!あなたはさらなる高みへとお昇りください
Wenn er dich ahnet, folgt er nach.
あなたに気づけば彼もそれに従います
DOCTOR MARIANUS (Tenor), Chorus
《マリア崇拝の博士(テノール)、合唱》
(深くうつむき礼拝しながら)
Blicket auf zum Retterblick,
すべての悔い改めを知る心優しきものよ目をあげよ
Alle reuig Zarten,
感謝とともに
Euch zu sel'gem Glück
従う身となるならば
Dankend umzuarten!
救い主の眼差しを仰ぎ見よ
Werde jeder bess're Sinn
全ての良きこころの持ち主たちは
Dir zum Dienst erbötig;
あなたにお仕えさせてください
Jungfrau, Mutter, Königin,
清きみ母よ、女王なる方よ
Jungfrau, Mutter, Königin,
女神なる方よ、永遠に恵みを与えたまえ
CHORUS MYSTICUS
《神秘の合唱》
Alles Vergängliche
移ろい儚いものは全て
Ist nur ein Gleichnis;
もののたとえとでも言えるもの
Das Unzulängliche,
不足し到達できない
Hier wird's Ereignis;
たとえようもなく
Das Unbeschreibliche.
気高い現実が
Hier ist's getan;
ここに成し遂げられた
Das Ewig Weibliche
永遠の女性的なるもの母性的なるものこそが
Zieht uns hinan.
わたしたちを高みへと誘う
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【演奏の模様】
この曲の演奏は以前にも実演で聴いていて、その時調べた曲構成や演奏の器は殆ど同じ記載になりますが、今回発生された音(管弦楽、合唱、ソロ歌手)について感じた特徴をピックアップして記録したいと思います。
〇楽器編成:フルート×4、ピッコロ複数、オーボエ×4、コーラングレ×1、クラリネット(B♭管)×3、小クラリネット(E♭管)複数、バスクラリネット×1、ファゴット×4、コントラファゴット×1、ホルン×8、トランペット×4、トロンボーン×4、チューバ×1、ティンパニ×3台、バスドラム×1、シンバル×3人、タムタム、トライアングル、鐘(低音)×2、グロッケンシュピール×1、弦第1vn×18、第2vn×14、va×12、vc×10、cb×8(C弦つき)、チェレスタ×1、ピアノ×1、オルガン ×1、ハルモニウム ×1、ハープ ×2、マンドリン複数、 四管編成弦楽五部16型
会場に入りステージ上を見ると、思っていた通りかなりの数の椅子が並んでいます。開演となりオケ団員が入場しました。1Vn.(16)2Vn.(14) Va.(14)Vc.(10)Cb.(8)と、弦楽五部16型構成は珍しくはありません。管は、通常並の四管編成、さらにこの曲の根幹となるべき合唱団は、女声70人程度、男声50人程の計120人程。児童合唱団70人程度を合わせても200人弱の陣容でししょうか。「千人の交響曲」はマーラーの初演の時だけでしたか?(他にも例があるかも知れない)。何せマーラーは張り切っていましたからね。この曲の初演が1910年、そしてそれから1年弱で亡くなった訳ですから、きっと燃え尽きたのでしょう。でも心は満ちたりていたことでしょうね。
第1部冒頭の
❝Veni, creator spiritus,
来たれ、創造主たる聖霊よ
Mentes tuorum visita;
私たちの魂に訪れ
Imple superna gratia,
いと高き恵みにて満たしたまえ
quae tu creasti pectora.
あなたの作られたこの心を
Qui tu Paraclitus diceris,
慈しみ深き主とよばれる方よ
Donum Dei altissimi,
いと高き神よりの贈り物!
Fons vivus, ignis, caritas,
それは命の泉、炎、慈しみの愛
et spiritalis unctio.
聖霊よりの油をほどこす者と呼ばれるかたよ
Infirma nostri corporis,
私たちの弱き肉体を
Virtute firmans perpeti.
絶えざる力のよりて強めたまえ❞
の箇所の最初の一句は、ある日マーラーに突然ひらめいたといわれます。将に天(神)の啓示だったのでしょう。意識するしないに関わらず、マーラーの内なる声は、「精油をほどこす方(即ち神)よりの贈り物」だと叫んだのでしょう。マーラー自身意識せずとも、天に召される準備をしていたのかも知れません。
この冒頭部分は、第2部最後の
《神秘の合唱》
「Alles Vergängliche
移ろい儚いものは全て
Ist nur ein Gleichnis;
もののたとえとでも言えるもの」
以下と密接に関係していて、マーラーはこの辺りは、第1部の聖言とは全く関係ないゲーテの「ファウスト」の中の言葉を思い付いたというのです。マーラーはグノーの歌劇『ファウスト』は当然知っていたでしょう。またドイツの文豪ゲーテの原典も読んだことがあったでしょう。ですが、第1部の宗教性と2部の物語(勿論宗教的ではありますが)を矛盾なくドッキングさせる技は並みの物ではありません。
2部最後の「神秘の合唱」
❝Alles Vergängliche Ist nur ein Gleichnis;(移ろい儚いものは全てもののたとえとでも言えるもの)❞ 以下の合唱部分は、とても心に滲み入りました。
最初はアカペラで囁く様に歌声が響き、次第に管弦が入り、ソロも入る箇所では、Sop.Ⅰのファン・スミは第1部の最初から美しい声で歌いましたが、この最後に合唱と一緒に歌った時は、さらに伸びやかな声で、管弦や合唱の大音響をも突き抜ける強さがあり最高の出来でした。
今日のソリスト達の歌い振りは女声パートは総じて素晴らしく、Sop.Ⅰのファン・スミは最初の第一声を聴いた時から、これは本物と思いましたし、最後は素晴らしい本領を発揮しました。もう一人のSop.Ⅱ、グレーテヒェン役のエレノア・ライアンズはファン・スミとは違った声質ですが、聴きやすい如何にもソプラノ歌手という魅力的な歌声を張り上げていましたし、Sop.Ⅲの隠岐彩夏さんは少ない出番を有効に活用、三階左翼席のバンダから天使の歌声を神々しく張り上げていました。完璧な歌声でした(それはそうですね。この1回ポッキリのチャンスに失敗は許されませんから)
アルトの二人とも、出番はそう多くはないのですが、AltoⅠの藤村美穂子さんは、第1部のソリスト重唱箇所での歌声や第2部の《サマリアの女(アルト)》のソロ箇所 ❝Bei dem Bronn, zu dem schon weiland・・・❞や SopⅢ+Alt.Ⅱとの重唱箇所でも、いつもの安定したやや低めの魅力ある声を響かせていました。
またAlt.Ⅱの山下裕賀さんは、昨年国内で大活躍でしたが、藤村さん同様、第1部のソリスト重唱箇所や第2部の《MARIA AEGYPTIACA (Alto)エジプトのマリア》のソロ箇所 ❝Bei dem hochgeweiten Orte・・・❞ や次の女声三重唱の箇所で瑞々しいメッゾ(と言ってもきっとSop.の歌も歌えるでしょう)の歌声を披露していました。
一方男性ソリスト陣の三人の歌手についてです。
前後しますが、第1部の冒頭からは、オルガンの音につられた全合唱が❝Veni creator supiritus・・・❞と歌いだし、Timp.と金管の強い鳴り響きが広い文化会館ホールを埋め尽くしました。マエストロ・インバルは歌詞を口ずさみながら、90歳を超えたとはとても思えない矍鑠たる腕の振りでタクトを動かし、都響を歌に合わせた演奏に誘っています。時々左手も上げて合図し、管弦楽と合唱を混然一体化させ、神への感謝と賛歌の気持ちを大轟音で以て表したのでした。合唱団は管弦楽団の後ろに設営された雛壇に、200人には届かないでしょうか?東京少年・少女合唱隊、新国立合唱団の大陣営が陣取り、歌う時は椅子から起立して歌う光景は、管弦楽の各種楽器演奏の発音をなぞって奏者を順に見る目の動きと、声部毎の合唱団の発音を見定める目の動きにさらにマエストロの動きを見る目が重なって、目まぐるしく動かさなければならない忙しさがありました。それでも耳に届く荘厳とも言える音楽のシャワーの風圧には、体全体が至福の時を感じる心地良さがありました。
合唱は引き続き男声に時間差で女声が加わり⇒全合唱⇒女声に時間差で男声が加わり、❝Veny ,veni creator・・・❞ から ❝Vista mentes❞までで一旦止みました。
するとSop.Ⅰのファン・スミが立ち上がり❝imple superna gratia,gratia
quae tu creasti❞と歌ったのですが、第一声からして一流のソプラノといった感じの発声でした。記し遅れましたが、ソリスト五人の位置に関してです。マエストロの指揮台の舞台前面左右に、下手からメゾソプラノⅡ/山下裕賀、メゾソプラノⅠ/藤村実穂子、ソプラノⅡ/エレノア・ライオンズ、ソプラノⅠ/ファン・スミの四人の女声陣、そして指揮台前面上手に、テノール/マグヌス・ヴィギリウス、バリトン/ビルガー・ラッデ、バス妻屋 秀和之の三人の男声ソリストが椅子に座って位置しました。尚、ソプラノⅢの隠岐彩夏はバンダでの栄光の聖母役で、上記した様に三階左翼席にスタン・バイしました。ついでにバンダの管弦楽演奏についてですが、三階右翼席後方にTrmp.(8)とTrmb.(6)が位置して音を立てていました。
さてソプラノⅠが歌うとそれにアルトの藤村さんが加わり重唱、今度はバリトンのビルガー・ラッデが❝gratia superna❞と歌うとテノールのマグヌス・ヴィギリウスが❝imple superna gratia❞と合の手を入れました。その後ソリストは合唱と一緒又は合唱に合の手のソロや女声ソリスト達との重唱を入れて歌ったのですが、テノールのヴィギリウスは全くと言っていい程精彩に欠けていました。はっきり言って下手くそと思いました。一方ラッジの歌い振りは聞いていて耳に慣れた成熟バリトンの声でした。しかし先を急ぎますと、絶不調と思われた、テノールのヴィギリウスは第2部になると徐々に喉が潤ってきたのか、次第に調子を上げ、後半2部ではこれぞテノールと言った歌声が出る様になり、終盤 「栄光の聖母」の後に合唱と歌い合わせる最後の独唱❝Blicket auf zum Retterblick, Alle reuig Zarten, Euch zu sel'gem Glück Dankend umzuarten! Werde jeder bess're SinnDir zum Dienst erbötig; Jungfrau, Mutter, Königin, Göttin,bleibe gnädig!❞は、ヴィギリウス渾身のテノール声を朗々と張り上げていて将にこの場に相応しい歌唱だと思いました。そして合唱は最後の「神秘の合唱」、オーケストラは最後の大同団結の轟音を立てて、バンダの金管も力奏、ソリスト共々大合唱の渦に負けじと加わり、文化会館大ホールを揺るがした(恐らく数年間は)最後と思われる「千人の交響曲」は、斯くして成功裡に終わったのでした。それにしてもTimp.のダンダンダンと打ち下ろす強打が見ていても恰好良かった。
演奏が完結し、インバルが暫し間を置いてタクトを降ろすと、ホール内は拍手喝采と歓声が渦巻く暴風圏内と化したのでした。合唱団、管弦楽奏者、バンダ奏者、ソリストをそれぞれ立たせて勞をねぎらうマエストロ、90代の指揮者としてはN響を指揮したブロムシュテットに感動したことを昨日の様に思い出しましたが、今回のインバルはその上を行く驚異的な超人ぶりを天下に知ろ示したのでした。今後の文化会館の長期修復閉鎖、マエストロ・インバルの年齢、それよりも自分たち聴衆の高齢化、日本の置かれた厳しい世界情勢下でのあれこれを考えると、この様な一世を画する演奏会は、日本ではもう何年も無理なのかも知れない等と感動した後の悲観さえ感じたのでした。



そうした複雑な心境で東京文化会館の外に出て岐路に着いたのですが、ふと楽屋口を見たら、かなりの人だかりが出来ていました。アー出待ちか!19時開演で1時間半もかからなかったからまだ21時前ということもあって、少し覗いてみるかなと思って近づいたら、皆さんペンを片手に、パンフレットや現像写真やカタログ等思い思いの物にサインしてもらおうとしている様です。文化会館では過去には自分も出待ちでサインをゲットした事も有り、カバンからペンと「月間都響」の冊子を取り出し、演奏関係者が出て来るのを待ちました。15分もすると、まず外人のソリスト達が出て来ました。写真をバチバチ撮り、サインをして貰いましたが、ソプラノのファン・スミとエレノア・ライオンズ、バリトンのビルガー・ラッデのサインは混雑の中、やっとゲットしたのですが、テノールのマグヌス・ヴィギリウスはタイミングが悪くサインが貰えませんでした。次いで日本人ソリスト達も帰路に着くため出て来ましたが、日本人歌手は今後も何かの機会にサインを貰えると思い人垣をかき分けることはしませんでした。




肝心のマエストロはその終了後、楽団関係者と懇談していたのでしょうしばらく時間を置いて出て来ましたが、係の人が「マエストロはサインをしません。写真撮影だけにして下さい」と言ったらすぐにインバルさんが現れ、元気な姿を写真に収めることが出来ました。
