HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

ヨーン・ストルゴーズ・都響『タルキアイネン極北の眞珠&ショスタコ11番』を聴く

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〜東京都交響楽団第1027回定期演奏会〜

【日時】2025.10.1.(水) 19:00〜
【会場】サントリーホール

【管弦楽】東京都交響楽団
【指揮】ヨーン・ストルゴーズ 

〈Profile〉  

    ヘルシンキの生まれ。シベリウス音楽院でエステル・ラウティオとヨウコ・イグナティウスにヴァイオリンを学び、イスラエルにも留学してカイム・タウプの教えも受けた。また作曲もエイノユハニ・ラウタヴァーラに師事した。1986年からエサ=ペッカ・サロネンの率いていたスウェーデン放送交響楽団のコンサートマスターを務めたが、1993年から1997年まで、母校であるシベリウス音楽院でヨルマ・パヌラとエリ・クラスの下で指揮法を学んだ。1996年からラップランド室内管弦楽団の芸術監督となった。2003年からヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団の首席客演指揮者に迎えられ、2006年から2009年まで、タンペレ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を歴任。2008年から2015年までヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務める。2012年からBBCフィルハーモニックの首席客演指揮者、2022年からは首席指揮者を務める


【曲目】
①O. タルキアイネン『極北の真珠-室内管弦楽のための協奏曲-(2023)ー』[日本初演]

O.タルキアイネンについて

  オウティ・タルキアイネンはフィンランドのロヴァニエミ出身の作曲家です。シベリウス音楽院(シベリウス・アカデミー)、ギルドホール・スクール、マイアミ大学で作曲を学び、ビックバンドの作曲などジャズの分野でも活躍しています。彼の作品は北極圏のラップランド地方の風景やサーミ民族の文化に影響を受けているとされています。 
〈主な経歴〉
出身地:フィンランドのロヴァニエミ。 
教育:シベリウス音楽院、ギルドホール・スクール、マイアミ大学で作曲を学ぶ。 
専門分野:作曲、ジャズ(ビックバンドの作曲など)。 
影響:北極圏のラップランドの風景やサーミ民族の文化からインスピレーションを得ている。 
 

(曲について)

 北極圏は、気候変動の進行により、世界のどの地域よりもはるかに速く温暖化が進んでいる。淡水真珠貝やシロフクロウなど、北極圏の多くの希少種が絶滅の危機に瀕している。サーミ人(北極圏の先住民)の詩人ニルス=アスラク・ヴァルケアパー (1943~2001)は、自分たちを環境と不可分なものとして描き、人間と自然との境界は存在しないものと捉えていた。気候変動により環境破壊が進むにつれ、彼らのような先住民族への注目はますます高まっている。私たちは本能的に、 彼らの生き方に新しいモデルを求めているのかもしれない。なぜなら、私たち自身のライフスタイルや過剰消費が、自然を破壊するだけでなく、私たち自身をも滅ぼしつつあると気付き始めているからだ。

室内管弦楽のための協奏曲《極北の真珠》は、小さな性格的楽章をブレスレットのように連ねた作品であり、唯一無二の北極圏の自然とその繊細なバランスへの賛辞である。この協奏曲は、ヨーン・ストルゴーズとラップランド室内管弦楽団に捧げ、楽員一人ひとりが輝きを放てるように作曲した。(作曲者言)


②ショスタコーヴィチ『交響曲第11番ト短調 Op. 103〈1905年〉 』

(曲について)

    作曲者が時代的にも社会的にも激動期を生き抜いた51歳の時の1957年に作曲された標題交響曲である。

各楽章には表題が付けられており、交響曲と言うよりは交響詩的な印象を与える。栄華を極めたロマノフ王朝に請願するためペテルブルク宮殿に向かって行進する無防備の民衆に対して軍隊が発砲し、千人以上を射殺した、いわゆる「血の日曜日事件」(1905年)を題材としているが、作曲当時のハンガリー動乱との関連も指摘される。この交響曲は、映画音楽を数多く手がけたショスタコーヴィチの得意とする標題音楽で、革命歌や自作合唱曲の引用が多い。西側では長らくプロパガンダ音楽であるとして評価されていなかったが、ソビエト連邦の崩壊後は歴史を描写した作品として扱われるようになり、演奏回数が増加している。

1958年、ショスタコーヴィチはこの曲でレーニン賞を受賞している。

 

【演奏の模様】
①O. タルキアイネン『極北の真珠-室内管弦楽のための協奏曲-(2023)』[日本初演]

楽器編成:フルート(アルトフルート持替)、オーボエ、クラリネット(バスクラリネット持替)、ファゴット、ホルン、大太鼓、アンティークシンバル、グロッケンシュピール、ゴング、マリンバ、サスペンデッドシンバル、タムタム、テンプルブロック、チャイム、ヴィブラフォン、ウッドブロック、弦楽5部(最小で第1ヴァイオリン4、第2ヴァイオリン3、ヴィオラ3、チェロ2、コントラバス1と指定されている)

〇以下の全八曲から成ります。

Ⅰ 生成…
Ⅱ アメジスト
Ⅲ 淡水真珠貝
Ⅳ クロセセリ
Ⅴ シロフクロウ
Ⅵ キンバイソウ
Ⅶ ハロ・スカイ
Ⅷ 大地

 

   此等の曲は、比較的小編成のオーケストラで、どちらかと言うと室内楽的纏まりを見せたストルゴール・都響の演奏で行われました。作曲の経緯からみると、一見超現代音楽なのかと錯覚してしまいますが、さにあらず、聴き心地のいい響きを有したアンサンブルが発散されたのでした。中でも弦楽奏は、細やかなトレモロ奏、刻み奏が多くの場合主流を占め、マリンバの速い上下行奏が、その中をきらめく様に走り抜けました。各種鐘の音がキンコンカンと打ち鳴らされて、乾いた極北の空氣と清明な凍てつく環境下に生きる生命の、力強いたくましさを感じる様子が明確に表現されたのでした。

尚、ストルゴールは各曲をアタッカ的に演奏はせず、各曲間に一呼間合いを置いてから指揮したので、曲の区切りがハッキリとしました。


②ショスタコーヴィチ『交響曲第11番ト短調 Op. 103〈1905年〉 』

〇楽器編成

〈木管楽器〉
フルート3(うちピッコロ持ち替え1)、オーボエ3(うちイングリッシュホルン持ち替え1)、クラリネット3(うちバスクラリネット持ち替え1)、ファゴット3(うちコントラファゴット持ち替え1)
〈金管楽器〉
ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ1
〈打楽器〉
ティンパニ、トライアングル、小太鼓、大太鼓、シンバル、タムタム、シロフォン、チューブラーベル
〈その他〉ハープ2-4、チェレスタ

三管編成弦楽五部 16型

〇全四楽章構成

第1楽章 Adagio 「宮殿前広場」

第2楽章 Allegro 「1月9日」 

第3楽章Adagio「永遠の記憶」

第4楽章Allegro non tropo「警鐘」

    この曲は、(曲について)にある様に、初演の翌年(1958年)にレーニン賞を受賞しました。何故なら、前年のソ連政府による「十月革命40周年記念式典」に初演され、大いに評価されたからでした。

    確かにこの曲は、多くの(と言っても15曲に過ぎないのですが)ショスタコの交響曲の中でも、特に優れた作品の一つと言って良いでしょう。第一楽章冒頭からして、低音域の弦楽奏の心に響いて入って来る何とも言えない気持ち、わずかづつ魂が揺さぶられつつある快感、多くのロシア帝国の圧政に抑圧されて来た人々が自覚し目覚める前兆を感じます。そして、高校の歴史の授業で初めて習った「血の日曜日事件」。これが、人民を立ち上がらせたきっかけになったとはよく謂われますが、既に1905年の日露戦争敗北で、ロシア帝国の屋台骨が傾きつつあった背景が大きいでしょう。ストルゴーズ・都響は、エネルギッシュな指揮者が誘う、弾圧や革命の爆発的戦いと大混乱の極みを、都響弦楽、木・金管、打楽器群の力の限りと思われる強奏で、臨場感を出すのに成功していたと思います。混乱の場を乗り切り成すべき事を為した管弦楽の、安堵した伸びやかな調べは、消え入る様に終焉するのかと思いきやもう一度の興奮状態を経てから、タクトが降ろされるのでした。

   演奏が終わると会場からは、待ってましたとばかり大きな拍手が沸き起こりました。

 

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