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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

第20回東京音楽コンクールWINNERS Concert

【日時】2022.1.9.(月・祝)15:00~

【会場】東京文化会館

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【指揮】高関健

【司会】朝岡聡

【出演】

①トランペット:河内桂海 *金管部門第1位

バリトン:池内響 *声楽部門第1位及び聴衆賞

ホルン:吉田智就 *金管部門第1位

ピアノ:中島英寿 *ピアノ部門第1位及び聴衆賞

東コンWinner+指揮者+司会者

【曲目】

トマジ『トランペット協奏曲』

<作曲者>

アンリ・トマジはコルシカ島出身の両親のもと、マルセイユで生まれる。パリ国立高等音楽・舞踊学校で、ヴァンサン・ダンディジョルジュ・コサードらに師事。1927年にはカンタータ「コリオラン」でローマ賞作曲部門2位、指揮部門の1位を獲得した。1946年から1947年までの1年間モンテカルロ管弦楽団の音楽監督を務めた。

 作品は交響曲、劇場音楽、歌曲など100曲を超える。特に、管楽器を用いた作品は、この分野の重要なレパートリーとして、演奏頻度の多いものがいくつかある

(曲について)

トマジの代表作、トランペット協奏曲は、20世紀のトランペット協奏曲を代表する名曲として多くのトランペット奏者が演奏する曲です。コンクールの課題曲としてもしばしばとりあげられています。
曲は3つの楽章からなり、現代音楽のもつトリッキーな緊張感と、トランペットの職人芸が駆使されています。演奏時間は約15分。

 

②-1 プッチーニ:オペラ『ジャンニ・スキッキ』より <声は瓜二つだったか

②-2 モーツァルト:オペラ『フィガロの結婚』より <訴訟に勝っただと>

②-3 ヴェルディ:オペラ『ドン・カルロ』より <私の最後の日がきました>

 

R.シュトラウス:ホルン協奏曲第1番 変ホ長調 Op.11

(曲について)

R.シュトラウスが作曲したホルン協奏曲には2曲あり、作曲年代が大きく離れている。

原題は『ヴァルトホルンと管弦楽のための協奏曲変ホ長調』(Konzert für Waldhorn und Orchester Es-Dur )である。作品番号は11。1882年から1883年にかけて作曲された。当時作曲者は18歳であった。

シュトラウスの作品としては保守的な作品であり、交響詩などに着手する以前の時期のものである。モーツァルトメンデルスゾーンシューマンからの影響を指摘する研究者は多い。父フランツが作曲したホルン協奏曲ハ短調(作品8)が下敷きになっているとの見方もあり、相似点も指摘される。

独奏ホルンとしてはE♭管のナチュラルホルンでの演奏を意図して書かれたという見解もあるが、ナチュラルホルンのストップ奏法で演奏の難しい音が全曲を通して多数使われていることから、近代的なバルブホルンを想定して作曲されたという見解が有力である。また独奏ホルンの譜面もin E♭ではなく、バルブホルンの記譜法として一般的なin Fで書かれている。この曲がナチュラルホルンの独奏で演奏される実例はほとんどない。

古今のホルン協奏曲の中でも、モーツァルトに次いで演奏頻度の高い曲の一つである。

60年後に「第2協奏曲」が作曲されたため、この曲は「協奏曲第1番」と通称されるようになり、CDや演奏会では「第1番」と呼ばれることが多い。ただし出版されている楽譜での曲名は、一部の再版楽譜を除いて現在でも原題通りである。

 

④グリーグ『ピアノ協奏曲 イ短調 Op.16』

 

【演奏の模様】

①トマジ『トランペット協奏曲』
 河内さんは、手元に二種類の弱音器を用意し、何回となく付け外しして演奏しました。一つは、「ストレートミュート」、銅色をした比較的細長い弱音器、もう一つは、ラッパの出口に相応しい口径を有した銀色のもの。前者は、付けると金属音が強まり、後者は付けるとくぐもった音になった様に思われます。
 確かに速いパッセージもスムーズに吹き、様々な曲想の旋律を、ミュートを取り替え引っ返えして滞る事なく吹くのは、かなりの技術と熟練がいるでしょう。河内さんはそうした技術を身につけ発展させつつあることが、今日の演奏で分かりました。ただこの様な曲目は、演奏する側の人にとっては、面白くやり甲斐のある曲なのでしょうが、聞き手側の自分としては、タイプの曲でなかったので、少し退屈しました。
 朝岡さんの自分の長所は?と訊かれて、河内さんは、高音が出るということと、バテに強いことを挙げていました。今後は、ピッコロトランペットも吹いて行きたいとも言っていた。

 次の奏者は、声楽の池内さんです。朝岡さんの話しにもありましたが、東京音楽コンクール以前に、国内外の様々な賞を取っている池内さんは、将に旬の声楽家に脱皮せんとする人の様に拝察しました。姓名の名が「響」といい、プログラムの自己紹介にも、”「池内響」の音楽の世界と可能性を皆様に感じていただけましたら幸いです。” と「池内節」を実名に引っかけて述べているユーモアのセンスのある歌手だと思いました。朝岡さんが、今後オペラを歌っていくには、演技力も必要ですね。との問いに ” バリトンは、王様といった役が多いので、堂々と演技する必要はあると思います”との趣旨のことを言って笑いを誘っていましたが、確かにその威風堂々とした体躯は、そうした役をこなす条件の一つですので、今後益々精進し、活躍されんことを祈ります。池内さんは、以下の三つのオペラから有名なアリアを歌いましたが、②-3のヴェルディが一番素晴らしかった。会場には割れんばかりの拍手が鳴り響きました。

②-1 プッチーニ:オペラ『ジャンニ・スキッキ』より 〈声は瓜二つだったか〉

②-2 モーツァルト:オペラ『フィガロの結婚』より <訴訟に勝っただと>

②-3 ヴェルディ:オペラ『ドン・カルロ』より <私の最後の日がきました>

 

③R.シュトラウス:ホルン協奏曲第1番 変ホ長調 Op.11
 今回は、金管部門が何年振りかでエントリーされ、二人のWINNERが出たとのことです。一人は、冒頭のトランペットの河内さん、もう一人はホルンの吉田さんです。休憩の後、吉田さんの演奏がありました。
 リヒャルトシュトラウスの若い時(18才) の作品で、古典派の影響が色濃い曲です。作曲の動機は、父親が、高名なホルン奏者だったこと。三楽章構成。
 冒頭、朝岡さんの曲紹介のトークの中で、”この曲を聴くと、宛もアルプスを目の前にして、あー爽快、気分がいいといった事を想う”
と語っていましたが、アルプスはいいとして、自分としては、朝もやの中に薄っすらと見えるマッターホルンをイメージしました。特に第1楽章前半部で、オーケストラが全奏でリヒャルトシュトラウスらしい美しい調べを奏でた後デクレッシェンドして、小休止していたホルンが入る辺りでは。
 演奏後のトークで、 朝岡さんが、吉田さんにどういう目標を持っていますかと訊くと、とりあえずオーケストラに入りたいと答えていました。

 

 最後は、ピアノ部門の中島さんです。確か昨年8月の本選では、F.リストのピアノ協奏曲第1番 変ホ長調 S124を弾いたと記憶します。随分難しい曲を力一杯弾いているなと思いました。今回は、かの有名なグリーグの曲です。演奏後の朝岡さんの質問に対し、オーケストラを背景に弾いたのは、今回が初めてとのことでした。
④グリーグ『ピアノ協奏曲 イ短調 Op.16』

 演奏の様子は、最初の楽章から、相当力一杯弾いて、オケにも力負けしていなかったにもかかわらず、これまで、聴いた数々のピアニストに比し、やや迫力不足かな?と思って聴いていたら、二楽章辺りから急速に調子を上げ、終楽章に至ると名だたるビアニスト並みの力演で、この名曲を弾き切りました。力強さだけでなく、緩やかな楽章のソフトなタッチの鍵盤捌きなど見事なもので、あたかも羽毛の指でそっとなぞる様な運指で、強中弱ありのメリハリの効いた演奏をしていました。かくの如く後半の演奏は素晴らしかったのですが、流石に一番最後のオケの大咆哮に合わせてフィナーレを迎える処では、ピアノの音は、かき消されていました。1階正面前方の席で聞こえなかったのですから、ホール全体でも同じでしょう。
 総じて言えば、1万回の旋律発出の内、9,990回は発出に成功していた様なものと例えられる出来でしたから、些細なことではあります。


 今日は、新年早々、フレッシュで、活力溢れる若者達の演奏を聴くことが出来て大満足でした。今後も若い演奏者の事には、常に気に掛けながら、様々な演奏者のコンサートに出来る限り足を運びたいと思っています。