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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

上野 de クラシック Vol.69 小川響子(ヴァイオリン)リサイタル

 本リサイタルは、東京都が、過去の「東京音楽コンクール」優勝者を主として招聘し東京文化会館が主催する形のリサイタルで、国の補助も入っており今回がVol69だそうです。演奏は2012年、第10回「東京音楽コンクール・ヴァイオリンの部」で優勝した小川響子さんです。ピアノ伴奏は、秋元孝介さんです。小川さんは秋元さんと、チェロの伊藤裕さんと共に「葵トリオ」を2016年に結成、2018年に開催された「第67回ミュンヘン国際音楽コンクール」のピアノ三重奏部門で、日本人として初の優勝を決めました。東京文化会館では10年振りのリサイタルだそうです。

【日時】2022.5.25.(水)19:00~

【会場】東京文化会館小ホール

【出演】小川響子(Vn.)秋元孝介(Pf.)

<Profile>

第10回東京音楽コンクール弦楽部門第1位および聴衆賞、ザルツブルク=モーツァルト国際室内楽コンクール2015第1位ほか、受賞多数。東京都交響楽団、東京交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団などと共演。東京芸術大学、同大学院修士課程を首席で修了。2018年にベルリン・フィルハーモニー・カラヤン・アカデミー派遣第一期生として合格した。現在、ベルリン・フィルハーモニー・カラヤン・アカデミーにてベルリンフィルコンマスの樫本大進氏に師事。葵トリオを結成してそちらでも活躍中。

【曲目】

①クライスラー 『 ベートーヴェンの主題によるロンディーノ』

②ベートーヴェン『ヴァイオリン・ソナタ第7番 ハ短調 Op.30, No.2』

 

③R.シュトラウス『ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18 TrV151』

 

 

【演奏の模様】

①クライスラー 『 ベートーヴェンの主題によるロンディーノ』

 比較的低音の旋律が続き、クライスラーらしさを感じることの出来る数分の短い曲でした。ベートーヴェンの何処から取ったかは不明瞭ですが、彼は過去の大作曲家、バッハやクープランやルクレールなどの作品をまねた作品を色々書き、タイトルに有名作曲の名を利用しています。でもほとんどでクライスラー化した曲となっており、独自のものとみなして良いでしょう。全体的に演奏は問題ないのですが、時々出て来る高音の跳躍音がやや金属的な響きが強いことが気になりました。

 

②ベートーヴェン『ヴァイオリン・ソナタ第7番 ハ短調 Op.30, No.2』

 1802年頃に作曲され、6番、8番と共にロシア皇帝に献呈。「アレキサンダーソナタ」とも呼ばれます。ハ短調で書かれており、同じ時期に書かれた「英雄」と同じ調性です。四楽章構成。

②-1 Allegro con brio

②-2 Adagio cantabile

②-3 Scherzo:Allegro

②-4 Allegro presto

 小川さんは、演奏前にマイクを持ちショート・トークで「第二楽章が特に好き」と言った趣旨のことを説明、各章それぞれPf.伴奏との息使いもピッタリ合っていて良かった。特に第二楽章では、低音は力が漲っていたし、高音の弱音も綺麗に出ていて、この楽章のゆっくりした旋律の美しさがピアノ共々十分表現で来ていたと思いました。

 

③R.シュトラウス『ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18 TrV151』

 三楽章構成です。

③-1 Allegro ma non troppo

③-2 Improvisation: Andante cantabile

③-3 Finale: Andante - Allegro

 R.シュトラウスの作品は、先月初め『ばらの騎士』を見て来たばかりで、素晴らしいアリアがふんだんに盛り込まれているのを堪能しました。でもこの作曲家にヴァイオリン・ソナタ曲があるとは知りませんでした。初めて聴きました。1880年代終盤に書かれた唯一のヴァイオリン・ソナタだそうです。            

 R.シュトラウスはロマン派と言っても第二次大戦終了時にはまだ存命だったので、現代作曲家の様に思いがちですが、このソナタの様にクラシカルな響きを存分に取り入れた素晴らしい古典的香りの残る曲を作っていたのですね。旋律が非常に繊細かつ大胆で、綺麗に響かせる個所がふんだんにあって、小川さん、秋元さんともに、この日最大の力を込めた、入魂の演奏でした。この曲では小川さんのヴァイオリンの音は、一流のヴァイオリニストの演奏を聴いた時と同類の響きが出ていて、特に高音の響きでは楽器を良く鳴らしていた(と言うか楽器が答えていた)素晴らしい演奏でした。小川さんの話でも、これまた特に第二楽章を弾きたいので選曲したそうですが、その言葉通り、滔々とゆったり流れる旋律、後半の力を込めた演奏は、まるでオペラの美しいアリアを歌うプリマドンナの洗練された香り高い歌声と、ドラマティックな展開の舞台を見ているが如き錯覚を抱く程の響きを有していました。

 

 尚、大きな拍手に答えてアンコール演奏がありました。

 

《アンコール曲》

ベートーヴェン『ヴァイオリン・ソナタ第9番 イ長調 Op.47<クロイツェル>』より 第3楽章

 

 最後のシュトラウスの曲の力演の余勢を駆った勢いのある聴きごたえのある演奏でした。ピアノの秋元さんも小川さんと呼吸がピッタリあった力強い演奏で、③の時と同様、伴奏の域を超えていました。❛ヴァイオリンとピアノのためのソナタ❜若しくは❛ピアノ三重奏❜からぬ❝ピアノ二重奏❞と思える程でした。