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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

県民ホール『オルガン・コンサート』

 表記のコンサートは、国内公立ホールで最も歴史ある神奈川県民ホールのパイプオルガンを使った演奏会です。

ヨハネス クライス社(ボン)製

 今回の演奏会では、旋律楽器の為に作曲された曲名は有名だが聴いた事のない曲と、パリ在住の日本人作曲家のオルガン曲、それに、西欧の教会歴の順に従う曲をバッハとメシアンから幾つかと、最後に、バッハがケーテンの宮廷楽長に就任した後、古巣のハンブルグに行き、いわば凱旋公演とも言える演奏を自らの手で行った「伝説の公演」とも謂われる中で弾いた自由曲(世俗カンタータ)の演奏、と昼休みの短い時間にしては盛り沢山の演奏があるというので聴きに行きました。演奏は、

【日時】2022.5.27.(金)12:10~13:00

【会場】神奈川県民ホール(小ホール)

【演奏】山本真希(オルガン)

【Profile】

神戸女学院大学音楽学部、同大学専攻科卒業後、渡独。 ドイツ、フライブルク音楽大学大学院、シュトゥットガルト音楽・演劇大学ソリスト科で学ぶ。 2005年、オルガンソロを最優等の成績で修了してドイツ国家演奏家資格を取得。 その後、フランス、ストラスブール音楽院で学ぶ。井上圭子、Z.サットマリー、J.ラウクヴィック、C.マントゥーの各氏に師事。第1回ランドゥスベルク国際オルガンコンクールで第3位。帰国後東京交響楽団、日本センチュリー交響楽団他と共演。現在、新潟りゅーとぴあ文化会館専属オルガニスト。各地大学等で行進の指導を行っている。

【曲目】

①J.クラーク『トランペット・ヴォランタリー』

②J.S.バッハ『目覚めよ、と呼ぶ声が聞こえる』BWV645

③馬場法子『J.S.バッハ「カノン風変奏曲」の為の4つの間奏曲より』

④J.S.バッハ『おお人よ、汝の罪の多いなるを嘆け』BWV622

⑤J.S.バッハ『キリストは死の縄目につながれたり』BWV625

⑥O.メシアン『精霊降臨祭のミサよりⅤ閉祭唱、精霊の風』

⑦J.S.バッハ『幻想曲とフーガ ト短調』BWV542

 

【演奏の模様】

①J.クラーク『トランペット・ヴォランタリー』

この曲の作曲者は、初めて聞く名です。プロフィールを調べて見ると次の様な英国人でした。ジェレマイア・クラーク(JeremiahClarke)は、イングランドの作曲家。鍵盤楽器のために作られた『デンマーク王子の行進』が最も有名です。アン女王の夫カンバーランド公ジョージのために作られた曲で、一般には『トランペット・ヴォランタリー』の名で知られるが、長い間ヘンリー・パーセルの作だとされてきました。

 彼はロンドンで生まれたとされていて、セント・ポール大聖堂でジョン・ブロウに師事した後、王室礼拝堂のオルガン奏者となりました。しかし、身分が上の美しい女性に恋したことから銃で自殺、33歳の若さで亡くなったとそうです。

 曲は、比較的高音のパイプから、トランペットを思わす音で、ファンファーレの様に鳴り出すと、続いてオルガンの和音が、重厚な調べで響き、この二種類の旋律が交互に変化を伴って何回か繰り返して終了する、比較的短い曲でした。パイプの低音はズッシリと腹に響き実に心地よい感じです。

 

②このバッハの曲は、古楽器オーケストラでもたびたび演奏される有名な曲なので、良く慣れ親しんだ曲です。昔一時期テープに入れて、タイマーにセット、目覚まし曲としていた事もあります。

オルガン曲のもととなった曲は、1731年11月25日の三位一体節後第27日曜礼拝で初演したBWV140の第4曲(テノールのアリア)です。原曲では、弦楽器のユニゾンが反復する伴奏主題にテノールの歌うコラールが挿入されます。オルガンでは弦ユニゾンを右手、テノールを左手、通奏低音をペダルに写しています。足で弾くペダルの音は目立たないがズシリ重しを成し、またこれが体をせい一杯ねじったり足を遠くまで伸ばしたり結構忙しく大変に見えました。原曲以上に人気があると言っても良いでしょう。

 

③『J.S.バッハ「カノン風変奏曲の為の4つの間奏曲」よりⅡⅢⅣ.曲』.

この曲は高音の調べが現代曲の響きがあり、バッハの編曲と言ってもその痕跡はほとんど感じられませんでした。こうした類の曲は眠気を誘います。

 

④のバッハの曲は教会歴「キリストの受難の聖節」のコラールです。しめやかな調べがゆっくりと続きました。矢張り暗い気持ちになる曲ですね。

⑤教会歴「復活祭」のための最初のコラールで、かなり派手でにぎにぎしい旋律この曲でも足がペダル鍵盤を弾く動きが活発で大変そう。実際には、BWV626、627、628と復活祭の日にちが進むにつれ演奏曲も進みます。

 

⑥のメシアンは、パリ、サントトリニテ教会の専属オルガニストを60年間も死ぬまで務めました。曲は、聖霊降臨祭のミサ曲です。使うパイプの音色をストッパーを幾つも押し引きして変えました。足の鍵盤もかなり大きい音、それに手の左右で高音の大きい音を重ね、かなりの大音響を立てていました。バッハとはイメージが大きく異なっていました。その後例えれば、群雀が100匹も集まって、チチチチと鳴き叫ぶような調べの後左右の手で、相当姦しく弾いた後、右手で激しく速い旋律を流し、最後は両足で強く、ジャーンと鳴らして終了。

印象は、バッハがそうであった様に、確固とした自分のメシアンスタイルを主張する曲だと感じました。

 

⑦の曲は今回一番聞きたかった曲です。

 文頭にも書いた様にこの曲は、バッハが1727年にハンブルグで演奏したのでしたが、それはハンブルグの教会のオルガニストポストの募集に応じたからだと謂われます。オーディション兼演奏会で、試験官の一人オルガン大家ラインケンは、バッハの曲の素晴らしさと演奏の見事さに感心したそうですが、合格するには多額の寄付金を収める必要があり、バッハは納められなかったため合格しませんでした。しかしその名演奏の模様は後世に広く伝えられ讃えられているのです。

 軽快に繰り返されるフーガの旋律は短調そうに見えて然りにあらず、聴いていて飽きません。演奏する山本さんも相当集中して力の限り演奏している様子、素晴らしかった。

この曲一曲聴いただけでも今回聴きに来た甲斐はあったのですから、さらに他の多くの曲を聴けて、随分得した気持ちでホールを後にしました。

 来るときは雨の日でかなりの降雨だったのですが、外は雲が引き晴れ間も見えていました。すぐ目の前が山下公園で、右手には昔海外航路で活躍した「氷川丸」が記念船として係留陳列されています。

山下公園の花壇も春本番でした。