
【主催者言】
お弟子様こと、佐伯正則さん指揮によるオーケストラの第2弾。
今回の目玉は二つ!前半には師弟共演によるバッハの協奏曲があります。大阪フィルハーモニー交響楽団の1stヴァイオリン奏者であった天野克子先生に、子供の頃師事されていた今や日本を代表するヴァイオリニストのお二人、矢部達哉氏、宇根京子氏、この3人によるバッハの協奏曲は大変楽しみなプログラムです!
そして後半、大編成の「アルプス交響曲」、今やアマチュア楽団が取り上げることも珍しくなくなってきましたが、2年前にマーラーの交響曲第3番で腕を振るった皆さんが、このシュトラウスの大曲をどのように奏でるのか楽しみです!
プログラミングにこだわりを持つ佐伯さん、全体も大変に練られた内容になっています。皆様是非ご来場ください!
【日時】2026.7.4.(土) 17:45〜
【会場】ミューザ川崎シンフォニーホール
【管弦楽】ESMT祝祭管弦楽団
〈Profile〉
2024年4月27日にマーラー交響曲第3番を演奏するために指揮者佐伯正則の呼びかけにより結成。
名前のESMTはマーラーが交響曲第3番を作曲中に構想していた標題 “Ein Sommer Morgen Traum” (夏の朝の夢)からとっています。 佐伯正則の指揮のもと繰り広げたその熱い演奏に、メンバーからも聴衆からも、活動の継続を求める声が寄せられました。 その期待に応え、年1回程度のペースで活動を開始しました。
指揮者:佐伯 正則
祝辞 (ピアニスト :ゲルハルト・オピッツ)
【指揮】佐伯正則
〈Profile〉
国立音楽大学卒業。大学卒業後指揮活動をはじめる。
1999年~2000年仙台フィルハーモニー管弦楽団副指揮者を勤め、外山雄三、梅田俊明両氏のもとで研鑚を積み、いままでに東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、愛知室内オーケストラ等を指揮するほか、長生淳作曲三室戸学園創立70周年記念作品『トリトン』の初演指揮や、ヨウコ・ハルヤンネ、ローベルト・オーバーアイグナー、ティボール・ギエンゲ、マルティン・オンドラーチェク、ヤン・リスカ、川田知子、宇根京子、金木博幸、鈴木一志、日高剛、阿部麿、近藤嘉宏、小田裕之各氏等国内外の演奏家と共演するなど幅広く活動している。
オペラにおいては八ヶ岳音楽祭 in Yamanashiで『愛の妙薬』『こうもり』を指揮するほか、大田区民オペラ協議会、東京シティ・フィル『ヴァルキューレ』、新国立劇場小劇場オペラシリーズ、読売日響『パルジファル』等の公演において、G・アルブレヒト、飯守泰次郎、新田ユリ、宮松重紀各氏のもと副指揮者を務める。
また第74回JMJジュネス青少年音楽祭で円光寺雅彦氏のアシスタントを務めるほか全国各地のアマチュアオーケストラの指揮をする。
ナズドラヴィ・フィルハーモニーと交響曲第1番の日本初演を皮切りにスタートしたドヴォジャーク全交響曲演奏を達成するなど、チェコの作曲家の作品の演奏に力を入れてきた。近年はワーグナー、ブルックナーの演奏・研究も精力的に行なっている。
指揮を新田ユリ氏に、トロンボーンを佐藤菊夫、新立憲一、箱山芳樹各氏に、室内楽を北村源三、伊藤清両氏に、ピアノを石川喜美子、都筑慶子両氏に師事。またトロンボーンをウォルフガング・ハーゲン、山本雅章両氏にも学ぶ。
現在、ナズドラヴィ・フィルハーモニー常任指揮者、厚木カンマーオーケストラ常任指揮者、自由学園非常勤講師。日本ワーグナー協会会員
【出演】ヴァイオリン奏者三名
◯矢部達哉
〈Profile〉
東京生まれ。5歳より鈴木鎮一才能教育でヴァイオリンを始め、1978年より江藤俊哉に師事。1989年桐朋学園大学ディプロマコースを修了。同年、東京国際音楽コンクール室内楽部門優勝、齋藤秀雄賞、アサヒビール賞を受賞し、サイトウ・キネン・オーケストラに初参加。1990年、22歳で東京都交響楽団のソロ・コンサートマスターに就任する。
1993年、ジャパン・チェンバー・オーケストラのコンサートマスターに就任。1995年、第5回出光音楽賞を受賞。1996年5月、デビューCD「ソット・ヴォーチェ」をリリース。1996年、村松賞、第1回ホテルオークラ賞を受賞した[1]。2004年4月、上野学園大学音楽・文化学部教授に就任。
◯宇根京子
〈Profile〉
3歳からヴァイオリンを始める。桐朋女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学卒業。同大学研究科を修了後、2002年、スイス政府給費留学生として国立チューリヒヴィンタートゥーア音楽大学ソリストディプロマコースに入学。2004年、同音楽大学を卒業。 これまでに天野克子、中村静香、小林健次、ジョルジュ・パウクにヴァイオリンを、店村眞積、毛利伯朗、原田幸一郎、原田禎夫、カルミナクァルテット等に室内楽演奏について師事した。
ソリスト、室内楽などの演奏活動とともに、2006年4月、NHK交響楽団に入団してオーケストラ団員としての活動も開始した。
2026年4月時点で同楽団第1ヴァイオリンの次席奏者。
◯天野克子
〈Profile〉
オーケストラの第一バイオリンのトップ奏者を指す”コンサートミストレス”。厚木交響楽団で30年以上トップを走り続ける。それでも「もっとバイオリンを極めたい。まだまだ足りない」と探究心は尽きない。「迷わずまっすぐ」がモットーというように、音楽の世界へただ一筋に。今年40周年イヤーを迎えた厚響。その最後を締めくくる記念演奏会を12月に控え、練習にも熱が入る。
兵庫県西宮市生まれ。小5のときバイオリンと出会う。習い始めて3日目には『ちょうちょ』をマスター。中2で全国2位になるなど、すぐに才能を開花させる。「練習は大っ嫌いで、練習しなくてもすぐ弾けた」といたずら顔。東京藝術大学へ進学し、ライバルを見て初めて「明けても暮れても練習した」。卒業後、大阪フィルハーモニー交響楽団へ入団。指揮者・朝比奈隆氏に出会い、音楽の楽しみを深める。
29歳で結婚を機にご主人の赴任先ドイツへ。「ドイツに行くからにはバイオリンは辞めよう」と決意。押し入れにバイオリンをしまったものの、1年で帰国。長女が3歳のとき、ふと気づいたらバイオリンを手にしていた。それからは自宅で教室を開き、音大で講師を務めるなど、指導者としての才能も発揮。お弟子さんから「厚木の母」として慕われている。
【曲⽬】
①R.シュトラウス『ウィーン・フィルハーモニーのためのファンファーレ AV109/TrV 248』
(曲について)
この曲は1924年に作曲された、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が開催した初の「舞踏会(年金基金のためのベネフィット・ボール)」で、主賓を迎えるために書かれた金管楽器とティンパニのための短い(演奏時間約2〜3分)祝典曲です。
原曲は、総勢22名の金管楽器奏者とティンパニ奏者(計24名)で演奏される、極めて壮大で華やかな大編成の金管アンサンブル曲です。
トランペット:6本
ホルン:8本
トロンボーン:6本
テューバ:2本
ティンパニ:2対(奏者2 名)
響きと配置の特徴
立体的な音響:6本のトランペットは「3本ずつの2グループ」に分かれ、左右から掛け合う(対向配置の)ステレオ効果を生むように書かれています。
一般的な金管アンサンブルに比べてホルン(8本)とトロンボーン(6本)の人数が非常に多く、リヒャルト・シュトラウス特有の分厚く重厚な中低音の輝かしいサウンドを生み出します。 ウィーン・フィルの名手たちのために書かれたため、ホルンやトロンボーンには普段あまり使われないような非常に高い音域が要求される難曲としても知られています。
なお、一般的な演奏では、人数を減らした「金管10重奏」や「金管12重奏」などの様々なアレンジ(編曲)版も広く普及しています。
②R.シュトラウス『13管楽器のためのセレナード 変ホ長調 作品7』
(曲について)
この曲は、彼が1881〜1882年に17〜18歳の若さで作曲した初期の代表作です。モーツァルトの『グラン・パルティータ』に影響を受けつつ、豊かな和声感と管楽器の美しい響きが際立つ単一楽章の小品です。
シュトラウスの父親が名ホルン奏者であったこともあり、管楽器の扱いに長けていた若きR.シュトラウスが書いた瑞々しい楽曲です。
作曲年: 1881年または1882年
初演: 1882年11月、ドレスデンにて(フランツ・ヴィルナー指揮)
編成: フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、コントラファゴット1の計13本の管楽器
③R.シュトラウス『歌劇《カプリッチョ》作品85より前奏曲(弦楽合奏版)』
(曲について)
R.シュトラウスの『歌劇《カプリッチョ》作品85より前奏曲(弦楽合奏版)』は、彼の最後のオペラ作品の幕開けを飾る優美で繊細な音楽です。元々は弦楽六重奏として書かれたこの曲は、オペラの序曲として、また単独の弦楽合奏曲として世界中のオーケストラや室内楽団に愛奏されています。
作品の背景と特徴
1942年に初演された歌劇《カプリッチョ》は、「音楽か、それとも言葉か」という芸術の優先順位をテーマにした「最後のオペラ」です。その冒頭を飾る前奏曲は、舞台の幕が上がる前に観客を18世紀パリ近郊のサロンの優雅で内省的な雰囲気へと誘います。
弦楽合奏版の魅力
オペラ本編のオーケストラ版とは異なり、弦楽合奏版ではチェロとヴィオラの深い響きが際立ちます。モーツァルトを思わせるような古典的な気品と、リヒャルト・シュトラウスならではの甘美な和声が絡み合い、極めて洗練された美しい響きを生み出すのが特徴です。
④J.S.バッハ『3つのヴァイオリンのための協奏曲 二長調 BWV1064』
(曲について)
『BWV1064』の曲は、現在では3台の独奏チェンバロ(若しくはピアノ)と弦楽合奏が華麗に掛けあう協奏曲ですが、元々は失われた「3台のヴァイオリンのための協奏曲」ご元となっていると考えられており、各楽器が対等に火花を散らすスリリングな音楽が魅力です。従ってチェンバロ(ピアノ)のみならず、3台のヴァイオリンで演奏される事もあり、今回は、そのケースに当たります。
⑤R.シュトラウス『アルプス交響曲 作品64』
(曲について)
この曲はR.シュトラウスが14歳の時のドイツアルプスの最高峰ツークシュピッツェ山(2962m)に向かった時の体験をもとに作曲されたと謂われます。交響曲と言っても一楽章構成で、楽章単位ではなく一種の標題音楽とみなせます。標題は次ぎの通り。
◯夜 Nacht
◯日の出 Sonnenaufgang
◯登り道 Der Anstieg
◯森への立ち入り Eintritt in den Wald
◯小川に沿っての歩み Wanderung neben dem Bache (ピッコロのパート譜に記載あり))
◯滝 Am Wasserfall
◯幻影 Erscheinung
◯花咲く草原 Auf blumigen Wiesen
◯山の牧場 Auf der Alm
◯林で道に迷う Durch Dickicht und Gestrüpp auf Irrwegen
◯氷河 Auf dem Gletscher
◯危険な瞬間 Gefahrvolle Augenblicke
◯遠くからの雷鳴
◯頂上にて Auf dem Gipfel
◯見えるもの Vision
◯霧が立ちのぼる Nebel steigen auf
◯しだいに日がかげる Die Sonne verdüstert sich allmählich
◯哀歌 Elegie
◯嵐の前の静けさ Stille vor dem Sturm
◯遠くから雷(バスドラムとサスペンデッドシンバル)
◯雷雨と嵐、下山 Gewitter und Sturm, Abstieg
◯日没 Sonnenuntergang
◯終末 Ausklang
◯夜 Nacht
【演奏の模様】
今回の演奏会は、聴いた事がない管弦楽団と指揮者だったのですが、ソリストに都響のコンマスである矢部さんと、N響の次席ヴァイオリン奏者の宇根さんがソリストに名を連ね、また管弦楽の第1回演奏会は、マーラーの3番を演奏したこと、そのために集まった演奏家集団であり恐らくそれなりの演奏家の集団であろうと推察され、その名称も、マーラーが3番作曲中に構想していたという、標題❝ Ein Sommer Morgen Traum(夏の朝の夢)❞ の頭文字を取ったらしいこと、そして今回が、第2回目の演奏会で、様々なR.シュトラウスを中心とした魅力的な選曲をしていること、また何よりも会場が、近場のミューザ川崎で行なわれること等に鑑みて聴きに行くことにしました。
只、開演時間が、ネットのH.P.では休日の土曜日であるのに、17:45 開演と中途半端な時間となっていて、少し??でした。処が、開演ベルが鳴っても、演奏者が登壇せず、各階の扉は開いたまま、50分近くになっても、観客がぞろぞろ入場する人が多く、演奏者が登壇(第1曲目は、20人程の演奏)して、入口扉が閉められたのは、予定時間が過ぎてからでした。改めて当日配布されたプログラムを見ると。開演時間は書いてありませんでした。こうした些細なことですが、通常の管弦楽団の演奏会ではあり得ない状況は、何故だろうと考えてしまい、演奏は果たして大丈夫なのかな?一時が万事でなければいいが、と少し心配になって来ました。
演奏は、最初はTimp.と管のみ、次は木管アンサンプル、弦のみ、そして弦ソリストと管弦楽との協奏と続きました。休憩の後は大曲アルプスです。
①R.シュトラウス『ウィーン・フィルハーモニーのためのファンファーレ AV109/TrV 248』
この曲は、上記した(曲について)にある様に、ウィーンフィルが主賓を迎える祝典のための曲であって、各金管がリズムを取るTimp.と過不足なく、進行しましたり。それ程派手な演奏では有りませんでしたが、そこはやはりファンファーレですから、賑やかに会場の雰囲気を盛り上げる一助になったと思います。
②R.シュトラウス『13管楽器のためのセレナード 変ホ長調 作品7』
上記(曲について)を見れば、ほとんど二管編成の木管アンサンブルと言って良いかも知れませんが、どういう訳かHrn.が入っています。これは、シュトラウスの父がHrn.の名手だったことも関係しているのかと想像されます。
スタートのOb.は、ゆったりした、大らかな調べを繰り出し、Fl.がテーマをfollowしました。Hrn.が割りこ
み、Cl.が少し剽軽な調子に変ると、Fl.も参画、層の厚いアンサンブルを繰り出していました。シュトラウスの初期の作品らしい、素朴な古典的色彩感が、伝わって来ました。セレナーデですから、眠りを妨げない静寂に響くロマンティシィズムさえ感じます。10分程の曲でした。
③R.シュトラウス『歌劇《カプリッチョ》作品85より前奏曲(弦楽合奏版)』
この歌劇の冒頭を飾る「前奏曲」は、劇中の登場人物である作曲家フラマンが書いたという設定の弦楽六重奏曲です。ワーグナーを思わせる豊かで情緒的な旋律が、美しく織り込まれる名曲です。シュトラウス最晩年(1940年頃)の作品にも関わらず、擬古典主義的香りも漂う曲でした。
◯曲の構成:静寂の中からヴァイオリンが繊細な旋律を紡ぎ出し、徐々に各パートが絡み合って豊かなポリフォニー(多声部)を形成します。まるで登場人物たちが繰り広げる知的な会話や恋の駆け引きを予感させるような、内省的でありながら華やかな情感に満ちています。
只弦楽アンサンブルの演奏としては、むしろ管弦楽アンサンブルよりも、より各弦楽部門のバランスを要する処で、その意味では、低音弦部門が、少し弱いと思われました。最も自席が中央より、やや左手(下手)だったせいで、Vn.部門の音が優勢に聞こえたのかも知れませんが。
④J.S.バッハ『3つのヴァイオリンのための協奏曲 二長調 BWV1064』
◯全三楽章構成
1楽章Allegro
2楽章Adagio
3楽章Allegro
前もってJulia Fischer(独)さんを中心とした三ソリストが、チェンバロと、小規模弦楽奏団(8-4-3-2-1)をバックに弾く映像を観ました。(ついでながら、コロナ禍で中止となったJulia Fischer来日公演はいつ実現するのでしょうか?何処か招聘事務所が呼んでくるといいなー。是非実演を聴きたい演奏家の一人です。)
上記(曲について)にある様に、この三重協奏曲の、ヴァイオリンソリスト三人は、師弟、兄弟弟子の関係があるとのことですから、その音色のレインジ、発音傾向に類似性があり、従って聴いた感じが似ていると思いました。師に当たる天野さんは、指揮者がタクトを将に振り上げんばかりの時に、指揮者を停めて他の二ソリストに音合わせを求めました。恐らく暫く振りの顔合わせで、練習時間は、そう多くは取れなかっただろうし、元弟子達との息を合わせるタイミングを掴みたかったのでしょう、きっと。会場からは、笑い声と拍手が湧き起こりました。弟子達の緊張をほぐす結果にもなりました。
◯全三楽章構成
第1楽章 Allegro
第2楽章 Adagio
第3楽章 Allegro
第1楽章では、三者一斉に斉奏で開始、矢部さんが1Vnを担当して、同テンポで主題を鳴らすと、次は、宇根さん⇒天野さんと、テーマ奏をリレー、フーガの大家バッハらしいカノンの連なりが、曲のそこかしこにはめ込められた旋律の掛け合いを、息があった演奏で、次々にこなして行きました。只背景の管弦楽のアンサンブルの伴奏的な部分、掛け合い的部分何れでも、ソロ演奏に対抗できなく、引っ張られた感がぬぐえませんでした。これは、休憩後の後半の演奏と考え合わせれば、これは、まだオケの奏者の調子が出ないというか、本番に際して、ソリストの様な百戦錬磨の経験者の如く、如何なる状況下でも実力を発揮出来る状態ではなかったからなのでしょう。それは、その後の演奏が、徐々に良くなって行く様子は、以下の⑤の曲の演奏で実証されたのです。
《20分の休憩》
休憩から座席に戻ると、舞台には、この曲恒例の数多くの楽器と椅子が並べ立てられていました。

⑤R.シュトラウス『アルプス交響曲 作品64』
◯楽器編成:基本四管編成弦楽五部16型の他に多くの打楽器や表現楽器、パイプオルガンも。尚バンダ部隊も金管中心で結成。
◯標題音楽として、アルプス登山に向かう夜明け前から、山登りする途中の情景から。下山して日が沈むまでの事象を、見事に曲で表現したR.シュトラウスの技倆が目立つ曲です。
①夜 Nacht
B mollの下降音階が順番に重なっていく不協和音(夜の動機)により開始される。金管楽器による山の動機が静かに登場する。何重にも分かれた弦楽器により音が厚くなっていく。
②日の出 Sonnenaufgang
A dur の太陽の動機がffで出てくる。調性を変えながらメロディーは引き継がれたあと、ゲネラルパウゼとなる。
③登り道 Der Anstieg
低音弦楽器による山登りの動機から始まる。流れるような旋律になった後、岩壁の動機が現れ、舞台裏でホルンを中心とした金管楽器のファンファーレが奏される。
森への立ち入り Eintritt in den Wald
弦楽器の 16分音符の中、トロンボーンとホルンによる旋律が奏され、それに山の動機が絡んでくる。
小川に沿っての歩み Wanderung neben dem Bache (ピッコロのパート譜に記載あり))
小川のせせらぎの音が聞こえるが、登りであるので山の動機も重ねられる。
④滝 Am Wasserfall
岩壁の動機に、弦楽器と木管楽器・ハープ・チェレスタによる滝の流れが重ねられる。
幻影 Erscheinung
水の中にオーボエの旋律による幻影が見えてくる。最後にホルンの旋律が出てくる。
⑤花咲く草原 Auf blumigen Wiesen
山登りの動機が静かに聞こえてきたあと、曲は快活になる。
⑥山の牧場 Auf der Alm
カウベルによる牛の擬音が鳴る中、牛の鳴き声とアルプホルンを模したホルンの音が聞こえてくる。その後、ホルンの旋律とともに登山者は道に迷う。
⑦林で道に迷う Durch Dickicht und Gestrüpp auf Irrwegen
山登りの動機と岩壁の動機が出てくる。そして山の動機が現れ、次へとつながる。
⑧氷河 Auf dem Gletscher
明るくなり、山登りの動機が現れる。
⑨危険な瞬間 Gefahrvolle Augenblicke
⑩遠くから雷鳴(ティンパニのロール)が聞こえてくる。
⑪頂上にて Auf dem Gipfel
和音が響いた後、トロンボーンが頂上の動機を鳴らし、オーボエが訥々と旋律を奏でる。そして幻影で出てきたホルンの旋律が再び現れる。山の動機と太陽の動機が一体となる。
⑫見えるもの Vision
頂上の動機が和音の下から現れたあと、太陽の動機が管を追加してまた登場する。
⑬霧が立ちのぼる Nebel steigen auf
ファゴットとヘッケルフォーンが不安げな旋律を奏でる。
⑭しだいに日がかげる Die Sonne verdüstert sich allmählich
太陽の動機が短調で登場し、太陽が翳ってきていることを表している。
⑮哀歌 Elegie
弦楽器により、登山者は悲しげな歌を口ずさむ。
⑯嵐の前の静けさ Stille vor dem Sturm
⑰遠くから雷(バスドラムとサスペンデッドシンバル)が聞こえてきて、だんだん暗くなってくる。ぽつぽつと降り出した雨(ヴァイオリン・フルート・オーボエ)は、次第に激しくなってくる。そして、風が吹き出してくる(ウィンドマシーン)。
⑱雷雨と嵐、下山 Gewitter und Sturm, Abstieg
オルガンの和音とウィンドマシーンによる風の吹く中、登山者は下山する。これは山登りの動機を転回し、逆の順序で用いることで表されている。強烈な稲妻が光り、最後にはシュトラウス特注のサンダーマシーンにより落雷が起こる。その後はだんだん静かになってくる。
⑲日没 Sonnenuntergang
太陽の動機が転回され、日没を表している。登山者は哀歌を口ずさむ。
⑳終末 Ausklang
オルガンにより太陽の動機が奏され、山登りの動機も回想的に使われ、あたりは暗くなってくる。
㉑夜 Nacht
冒頭部の夜の動機がまた現れ、山の動機とともに静かに終わる。
以上の情景を「ESMT祝祭管弦楽楽団」は、各パートとも力も気持ちも一杯込めて演奏している様子が伺えました。しかし、(祝祭管弦楽楽団という、一時のオーケストラで練習時間が十分取れない宿命なのかも知れませんが)、管と弦楽奏アンサンブルの溶融塩梅が、特に強奏部分で今一つ溶け込まない(噛み合わない)様な気がしました。これは前半の最後の曲(バッハの三重協奏曲)でも感じたことです。勿論、部分部分に於いては、素晴らしい響きを轟かせる箇所も多々有りました、特に弱奏部で。例えば、(下山)での「嵐」の物凄い、管弦打の爆音、滅多に見られないウィンドマシーンやサンダーシートの演奏の後、静まりかえった中での木管・金管の滔々とした調べに弦楽奏が後追い、また最後の日没から終末にかけてのパイプオルガンや管、弦のスローテンポで進行するしっかりした各パートの調べの連なりなど、有終の美を飾るのに相応しい演奏でした。当然ながら、指揮者がタクトをおろすと同時に会場は、興奮の渦と化し、拍手喝采歓声が、長ーく続いたのです。バンダ部隊は、パイプオルガンの下のP席に横一列に並び、指揮者は、部門、部門ごとに立たせ健闘を労いました。


演奏を終えた指揮者・佐伯正則
オルガニスト
石川=マンジョル優歌

バンダ演奏の15名の金管奏者
尚、アンコール演奏が有りました。
《アンコール曲》
J.スーク『組曲おとぎ話』より第1曲〈ラドゥーフとマフレナの不滅の愛と彼らの試練〉
J.スーク:Josef Suk(1874年 〜 1935年) は、チェコの作曲家・ヴァイオリニスト。アントニン・ドヴォルザークの娘婿。同名の孫は世界的なヴァイオリニストの一人です。
アンコール開始前に、④で出演した矢部さんと宇根京子さんが舞台に呼び戻されVn.の首席、次席に着きました。
初めて聴いた曲でしたが、 コンマス他のソロ演奏が頻繁に成されて、仲々いい曲でした。
この演奏会は、急遽聴きに行った割りには、選り取り見取り、びっくり箱的なところもあって、聴きに行った甲斐があったと思いました。