都響プロムナードコンサートNo.418

【日時】2026.7.25.(土) 14:00〜【会場】サントリーホール
【管弦楽】東京都交響楽団
【指揮】ミカエル・ロポネン
Mikael LOPONEN

〈Profile〉
2003年フィンランド生まれの指揮者&ピアニスト
2015年から2022年まで、フィンランドのユース・ピアノ・アカデミーでアンティ ホッティとアンリ シグフリッドソンにピアノを学び、その後マルク=アンドレ・アムラン、ニコライ・ルガンスキー、マッティ・ラエカリオ、ロバート・レヴィンのピアノマスタークラスに参加する。
タンペレ・ピアノ・コンクール(2021年)ではファイナリストとして残り、2022 年開催の「リーヴィ・マデトーヤ・ピアノ・コンクール」で第1 位、2023 年5 月のハンス・フォン・ビューロー国際ピアノコンクールでは第3 位(「ピアノによる指揮」部門)を受賞。
指揮者としても才能を発揮し、2018 年からヨルマ・パヌラに師事し指揮法を学び、現在はシベリウスアカデミーの指揮クラスでサカリ・オラモ教授のもとで学んでいる。 またマスタークラスでは、ヨハネス・シュラフリ、ディマ・スロボデニウク、アントニー・ヘルムスから指導を受け、すでにフィンランド国内外で多くのオーケストラを指揮し、高く評価されている。
フィンランドのヨエンスー音楽祭で2023 年のヤング・アーティスト・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。フィンランド出身の若手指揮者としてクラウス・マケラ、タルモ・ペルトコスキに続く逸材として指揮者としても注目されている。
【独奏】ヤンネ・メルタネン(Pf.)
Janne MERTANEN
〈Profile〉
北欧を代表するピアニストのヤンネ・メルタネンは、ショパン弾きとして有名である。
13歳でピアノを初め、1990年のワルシャワで開かれた第12回ショパン国際コンクールに参加した。シベリウスアカデミーで学び1992年に卒業後1995年までラザール・ベルマンに学んだ。
1992年にドイツのダルムシュタットで開かれた国際ショパン・コンクールに優勝。その後ロンドンのウイグモアホールにてオール・ショパン・プログラムにてデビューした。日本でもカザルス・ホールでソロ・リサイタルに招かれている。
ソリストとして全てのフィンランドのオーケストラと共演し、北欧諸国をはじめとしてオーストラリア、カナダ、アメリカで演奏活を継続している。2005年にワルシャワのショパン国際コンクールで、開催された第6回「フレデリック・ショパン・グランプリ・ディスク大賞」にてALBAでリリースされたメルタネンのショパンのノクターン全集が見事グランプリを獲得した。
CDのディスコグラフィーは圧巻でFinlandia Recordsのオール・ショパン・アルバムを皮切りにショパンの録音(SONY)、 ワルシャワのショパン・コンクールで賞を獲得した 「Chopin Nocturnes vol. 1-2 (Alba Records)」、2010年より始まったシベリウスのピアノ曲全曲(SONY)、Nino Rota´のピアノ・コンチェルト、2011年にはショパンのピアノピアノ協奏曲、2013年にはグリーグ とシューマンのピアノ協奏曲など多数ある。
フィンランドで唯一の、将来の若手の演奏家を支援する目的で開かれているヨエンスー・フェスティバルの芸術監督を勤めていて、指揮者のクラウス・マケラやタルモ・ペルトコスキなど同国を代表する若手を世に出してきた。注目のピアニスト兼プロデューサーである。
【曲 目】
①ショパン『ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 op.11』
(曲について)
Frédéric Chopin フレデリク・ショパン(1810~49)は、2曲のピアノ協奏曲を残した。2曲ともに、ピアノの名技性を存分に発揮した書法、ロマンティックな感情表現、そしてポーランドの民族的な性格を強く打ち出している点で、いかにもショパンの音楽性が端的に表れている協奏曲で、どちらもロマン派のピアノ協奏曲を代表する名作として広く演奏されている。これら2つの傑作が19歳から20歳にかけての若い時期に、自分の演奏用のために相次いで書かれたことは特筆すべきで、ショパンがいかに早熟の作曲家・ピアニストだったことが窺い知れる。
本日演奏されるのは第1番ですが、これは出版が先になったために第1番の番号が付けられたもので、1829年に初恋の人コンスタンツィア・グワトコフスカ(1810~89)を想って書かれた第2番ヘ短調に引き続いて、1830年(20歳)に作曲された実質的に第2作目の協奏曲です。公開初演は同年10月11日ワルシャワにおいてショパン自身のピアノでなされたが、この演奏会は外国に移って国際的に活動を行おうとするショパンのために開かれた壮行会的なコンサートで、憧れのコンスタンツィアも出演した。彼はこの演奏会の後、11月にポーランドをあとにする。そして以後母国を常に想い、その現状を憂いながらも、ついに生涯帰国する機会を失ってしまう。その意味でこの作品は結果的に彼にとってポーランドへの告別の意味を持つ協奏曲となってしまったのです。
第1楽章 アレグロ・マエストーソ ホ短調 4分の3拍子 力強さのうちにメランコリーをはらんだ第1主題とロマンティックな第2主題を持つ協奏的ソナタ形式。ピアニスティックな技巧が様々に生かされた長大な楽章である。
第2楽章 ロマンス ラルゲット ホ長調 4分の4拍子 この楽章についてショパン自身が友人宛の手紙で「静かで憂鬱なロマンティックなもの……幾多の幸福な追憶を喚起するような、一点を見つめるような印象……春の美しい月光を浴びた瞑想」と説明している。弱音器付きのヴァイオリンの美しい旋律に始まり、ピアノ独奏が夢想的な歌を紡いでいく静謐で夢見るようなロマン的な甘美さを持った緩徐楽章である。
第3楽章 ロンド ヴィヴァーチェ ホ長調 4分の2拍子 ポーランドの民俗舞曲の一種であるクラコヴィアク風の主題を持ったロンド・フィナーレ。軽快で躍動的な運びのうちにピアノの鮮やかな名技が発揮され、華麗な盛り上がりを築いていく。
②シベリウス『交響曲第2番 ニ長調 op.43』
(曲について)
シベリウスは、1901年2月から3月にかけて、アクセル・カルペラン男爵の尽力で家族を連れてイタリアへ長期滞在の旅に出た。ジェノヴァ郊外のリゾート、ラパッロに住まいと作業小屋を借りシベリウスはこの作品の作曲を進めた。厳寒のフィンランドに比べ温暖なこの国を彼は「魔法がかかった国」と評し、スケッチの筆は急速に進んだ。また、この国の様々な伝説や芸術作品も彼の創造力を刺激した。第2楽章の楽想はフィレンツェでの印象やドン・ジョヴァンニ伝説にインスピレーションを得たと言われる。また、ローマ滞在中にパレストリーナの音楽に多く触れ、その対位法技法から多くを学んだ。しかし、シベリウスはこの作品をイタリア滞在中に完成させることはできず、フィンランドに戻ってからも筆を入れており、1901年11月にカルペラン男爵宛に完成が近いと知らせている。この時点で一旦完成とした後、年末に再び大幅な改訂を行った。
【演奏の模様】
①ショパン『ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 op.11』
◯楽器編成:フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、バストロボーン、ティンパニ、二管編成弦楽5部14型、独奏ピアノ
従来の初版楽譜の編成は、
フルート2、オーボエ2、C管クラリネット2、ファゴット2、ホルン4(E管2、C管2)、トランペット2(1楽章C管、3楽章E管)、バストロンボーン、ティンパニ、弦五部。
ヤン・エキエルによる「コンサート・バージョン」では、現代的な楽器変更がなされている。変更点は
クラリネット(C管→B♭管)、ホルン4→F管2、トランペット(C管→B♭管)
第18回(2021年)ショパン国際ピアノコンクールの本選のオーケストラの弦は12型(12.10.8.6.4)、ホルンは初版通り4本であった。
2025年の第19回(2025年)ショパン国際ピアノコンクールでは、ショパン国際研究所版が初めて使用された。
◯全三楽章構成
第1楽章(アレグロ・マエストソ)
第2楽章(ロマンス、ラルゲット)
第3楽章(ロンド、ヴィヴァーチェ)
それにしても、ショパンコンクールの本選のファイナルでの課題曲でもある、これぞショパンと言えるこの曲は、ショパンがまだパリなどの楽壇に姿を表す前の作品です。二十歳そこそこの若さで、かくの如き名曲を作った事は、「一事が万事」、その後のショパンの将来を予知させるものがあります。
ショパンは、1830年(20歳)の10月11日、ウィーンへ出発する直前に行われたワルシャワでの告別演奏会において、この協奏曲をショパン自身のピアノ独奏により初演した。その後、1832年2月26日のパリデビューでの演奏会でも演奏して好評を博しました。パリ時代は、ポーランドで開花した天才性の華を、更に大きく見事に咲かせたのでした。
こうした歴史的名曲を、この日のフィンランド出身のソリスト、ヤンネ・メルタネン(58歳)が如何に弾くのか、に注目していました。都響を指揮したのは、同じくフィンランド出身の若手(23歳)の指揮者、ミカエル・ロポネンです。ロポネンは、シベリウス音楽院で、先日、「青髭公の城」で都響を指揮し好評を博したスザンナ・マルッキにも師事した模様。マケラ、ペロトコフスキーに次ぐフィンランド出身の俊英指揮者たらんとの意気込みが見られるか注目されます。
第一楽章、長い管弦楽の序奏の後、独奏ビアノが、やおら入りました。しかし、高音域のパッセッジや下行音が、少し不鮮明で、速くなるとやや薄っぺらな調べが広がります。緩急強弱の変化音に迫力を感じません。管弦楽との掛け合いもしっくりいっているとはお世辞にも言えません。ピアニストは、自分の定まった型にはまって、指揮者を一度も見ず(逆にロポネンもピアニストを一瞥もせず)、管弦の音も耳には入っても頭をスルーするのか?メルタネンは、自分の世界に没頭している感がしました。従って、ピアノ協奏曲が「競争曲」に化けてしまった。恐らく管弦楽を付けず、ピアノだけで1番の楽譜をソロ演奏すれば、感銘を受ける演奏になるのかも知れませんが。
次の第二楽章は、ショパン自身、友人に宛てた書簡に、
「コンチェルトのアダージョはホ長調だ。これはことさら効果を狙ってのものではなく、むしろロマンツェ風の、静かで、憂いがちな、それでいて懐かしいさまざまな思い出を呼び起こすようなある場所を、心を込めて、じっと見つめているようなイメージを与えようとしたものなのだ。美しい春の夜の、月光を浴びながら瞑想する、そのようなものでもある。」と記しています。
しかし、メルタネンの演奏は、兎に角スロー、スロー、スローの一徹で進行、益々自己陶酔に浸っているかの様な演奏でした。音色はかなり美しいのですが、唯し水琴窟の水の音の様な箇所は、表現出来ておらず、今一つ物足りなさを感じました。
第三楽章の速いパッセッジのピョコタン、ピョコタン、ピョコタンと下行するパッセッジは不明確なテンポで、次のテーマ奏への転換奏の感はしませんでした。最後まで、自分の世界に浸り切り、周りにお構いなく弾いていた様な協奏曲でした。
指揮の ロポネンは、これまでこの曲を何回演奏したのでしょうか?直立不動に近い様子で、単に真面目な指揮者が、余裕がない様相でタクトを振っている様でした。つまらなく感じました。都響もソリストに合わせるのに随分苦労したでしょう。
上記した〈Profile〉によれば、メルタネンは、 ❝国際ショパン・コンクールに優勝❞とありますが、これは、ワルシャワで5年に一回開かれる「ショパンコンクール」ではなく、その前哨戦のヨーロッパ地区のコンクールの模様。ドイツのダルムシュタットで1992年に開催されました。地区予選のコンクールでは、ファイナルでコンチェルト演奏が義務付けられているのでしょうか?分からない。何れにせよワルシャワでのショパンコンクールのファイナリストに仮りにメルタネンが進出出来たとしても、今回の様な管弦楽との調和性のない演奏であれば、100%入賞は無いでしょう、恐らく。
演奏終了後、何回かカーテンコールに挨拶を重ねたメルタネン。声援に応えてアンコール演奏を行いました、それも二曲も。
《ソリスト・アンコール曲》
(1)シベリウス『5つの小品(樹の組曲)Op.75 より 第5番〈樅の木〉』
(2)ショパン『3つの夜想曲 Op.9 より 第2番 変ホ長調』
何れも、「ショパン弾き」を標榜する
メルタネンの面目躍如の演奏で、如何にも心に沁みる穏やかなピアニズムを繰り広げました。こうした、リサイタル向けのピアニストなのでしょう。
〈参考〉
1.力強い第一主題と、とても甘美な第二主題が登場する華やかな楽章。
2.夜想曲のように美しく、静かで深いロマンチックな優しさにあふれる楽章。
3.ポーランドの踊りのリズムを取り入れた、軽快で華やかなフィナーレ。
《20分の休憩》
②シベリウス『交響曲第2番 ニ長調 op.43』
◯楽器編成:フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、二管編成弦五部16型
◯全四楽章構成
・第1楽章 Allegretto
・第2楽章 Tempo andante, ma rubato - Andante sostenuto
・第3楽章 Vivacissimo - Trio. Lento e suave - attacca
・第4楽章 Finale. Allegro moderato - Moderato assai - Molto largamente
この曲は、年にマケラ・オスロフィルが来日演奏会で演奏したのを聴いたことがあります。その時の感想として、次の様に書きました。
- -------------------------------------------
1楽章
この最初の調べを何回聴いても連想するのは、やはり針葉樹林に囲まれた森ですね。針葉樹林帯といっても、下木には、背の低い広葉樹も生い茂っています。Vn.アンサンブルが木の葉のざわめきの様な背景音を立てて、木管楽器の調べにホルンが応じます。Hr.はかなり地味に鳴っています。5台でした。
木管の不協的とも思える不思議な調べは、幻想的何かを暗示するかの様。
終盤のVn.終盤部の弦楽斉奏の何と力強いことよ。
Fl.中心の木管の合の手旋律では、やはり小鳥たちの飛び回る森林風景を想起します。pizzicato奏では小鳥ばかりでなく、小動物たちの動きも感じます。最終部ではpizzicatoのテンポと出音をクレッシェンドし、⇒オケ全奏強奏へと発展⇒テーマの再演で急速に終焉するのでした。
マケラは昨年、日本での演奏を各地で行ったためなのか、はたまた特に東京藝術劇場では昨年パリ管弦楽団の指揮を経験しているためなのか、今日は大変会場慣れしたパフォーマンスの良さを発揮していた。
第2楽章
冒頭Timp.連打音に触発された様にCb.のpizzicato奏。聞こえない位の弱音で。
一楽章が森の目覚めの全体風景だとしたら、二楽章は森のスポット的描写でしょう?何かが起きる予兆を感じます。旋律表現などのpizzicatoは続き、その上にFg.の低音奏があたかも何物かの登場を告げる様に重畳。そう、例えば深い森の泉のほとりにうずくまる「メリザンドか」?それとも春の祭典的な「乙女達の神秘な集い」か?pizzi.奏はVc.奏に拡散、相変わらずFg.は旋律を並べ、次第に音量を上げてクレッシエンドするとpizzi.奏も急激にテンポを速めHrn.の唸り等で何らかのエヴェント(事件)が発生した表現かの様。例えば前者であれば、利己的で強いゴローの登場とか、後者では生け贄連行・供与儀式とか?
それが止む前半の終盤では、オケは穏やかな曲相に代わり、その調べを聴いていると、森に逃げ込んだペリザンドの厳しい身の上話を聞いたゴローが宥めて安心させる場面や、儀式を行った祭司たちの祭典の祈りを捧げる場面を妄想してしまいました。
第3楽章&4楽章
のどかでしみじみとした牧歌的雰囲気にオーボエが印象的な演奏をした三楽章、その終盤でのオーボエによる再現される処はとても美しいものが有りました。そしてアッタカ的に入った四楽章では、弦楽器の力強い誘導にトランペットがいさましくに応じるテーマの演奏で開始、これがアンサンブルが上行する一部不協的響きも交えながら盛り上がった後、木管による経過的響きが次第に静かになり、低弦がうごめくような音型で伴奏する中、木管楽器が第2主題を互いに呼び交わして行き再度盛り上がりを見せ全管弦の強奏へと、そしてこれが発展して、金管が鳴り響き絶頂感を演出、終結部ではオーボエ、トランペットやトロンボーンが華やかに主題を応歌して全曲の幕を閉じました。
この2番の交響曲は、シベリウスの会心の作ではないかと思います。アンサンブルの和声的な動きにも素朴な旋律が何と多く散りばめられているのでしょう。そうしたアンサンブルから抜き出して声楽曲への編曲も可能なのではないでしょうか。
----------------------------------------------
今回の予習として、先週『青髭公』で都響と共演したスザンナ・マルッキが、9年前にフランクフルト放送響を振った映像がネット上で見られたので、前以って聴きました。耳あたりのいい曲の展開が、曲のあちこちで見られ、マルッキらしいきびきびしたものになっていました。今回のミカエル・ロポネンの指揮は、①のショパンの時の様な、(多分)気の乗らない指揮ではなく、如何にも何回も振り慣れた風の生き生きとした、牽引振りで、都響の演奏力を引き出していたと思います。ホントに①の時とは、全く別人の様に、見ただけでも気概が籠もった毅然とした風が分かりました。まるで、マルッキが乗り移ったよう。 弦楽の斉奏アンサンブルも、金管の響きも、堂々の広がり、Pizzicato奏はVc.まで、フガート的に拡散、Fg.やOb.も時を得たりの活躍。相変わらずTimp.の指揮者を代弁するが如きリズムを刻む
動き、ロポネンは、かなりの程度に都響の持てる力を結集出来ていたと思います。
タクトを置くないなや、ほぼ満員の会場からは、拍手喝采か沸き上がりました。
〈参考〉
1.ニ長調 6/4拍子、ソナタ形式。第1主題は弦楽器の葉ずれのようなざわめきを背景に木管楽器で奏でられる印象的な歌にホルンが応答する。また冒頭では、小節線の位置がシベリウスの初稿の自筆譜と異なっている(これは6/4拍子での強拍と弱拍の事情を加味したからである)。拍子が2/2に変わると幻想風のエレジーを弦楽器が奏でる。その後6/4拍子に戻ってピッツィカートに転じたりしながら盛り上がったところで木管楽器が第2主題を提示する。第2主題の提示は短く、直ぐに冒頭の葉ずれのようなざわめきが弦に戻って提示部を閉じる。
展開部は第2主題で開始され第1主題の動機を基盤に発展する。その頂点で第2主題によるクライマックスが築かれる。すると幻想風のエレジーの旋律が金管でファンファーレ風に演奏される。
ホルンに先導されて第1主題が再現される。再現部は型どおりだが、幻想風のエレジーの旋律は再現されない。第2主題は提示部と比べると大きめに膨らむ。コーダは提示部と同じように序奏の動機を奏でながら遠ざかり、穏やかな和音で曲を閉じる。
演奏時間は9分~11分程度。
2.ニ短調 4/4拍子、シベリウスがよく使用したA-B-A-B-コーダの構成。冒頭のティンパニの連打に促されてコントラバス、ついでチェロにかけてピッツィカート音型が続いてゆくとファゴットにより提示される第1主題はドン・ジョヴァンニ伝説から着想されたと言われる幻想的なもの。経過句を交えながら高揚して頂点に達してから、金管がコラール風に締めくくる。曲はアンダンテ・ソステヌートに転じて、ヴァイオリンで提示される安らかな第2主題は、フィレンツェでインスピレーションを受けたキリストのイメージといわれている。ティンパニのロールによるデクレシェンドで静まり、ヴァイオリン・ヴィオラによる穏やかな分散和音で導かれて、第1主題が再現される。今度はトランペットとフルートによる応答で、やはり金管で高揚する。続く第2主題の再現はヴィオラとクラリネットにより淋しく奏でられて始まるが、こちらも金管を交えて幻想的に発展する。コーダは木管による不気味なトリルや金管の厳しい響きが印象的で、荘厳のうちにこの楽章を2つのピッツィカートで結ぶ。
演奏時間は12分~18分程度。
3.変ロ長調 6/8拍子、第2楽章同様のA-B-A-B-コーダの構成。弦の急速な動きからなる荒々しいスケルツォに対してレント・エ・ソアーヴェ(ゆっくり、しなやかに)と指定されたトリオ部分はのどかでしみじみとした牧歌的雰囲気でオーボエによって歌われる。この雰囲気はスケルツォが再帰して荒々しく打ち破られるが、その際に一瞬だけ第4楽章の第1主題の動機も顔を出す。その後再びトリオに戻り、1回目同様に主題がオーボエにより再現される。その応答に独奏チェロに始まる弦楽器が加わり、これが徐々に盛り上がった頂点で第4楽章に休みなく突入する。
演奏時間は6分前後。
4.ニ長調 3/2拍子、ソナタ形式。弦楽器の力強いモチーフにトランペットが勇壮に応える第1主題で開始される。これが壮麗に盛り上がった後、木管による経過句が徐々に静かになり、低弦がうごめくような音型で伴奏する中、木管楽器が第2主題を互いに呼び交わして行く。これが発展して、金管による頂点を作ると、ピッツィカートによる短い小結尾をへて、モデラート・アッサイの展開部へ入る。第1主題のモチーフの変形から始まり第2主題も巻き込みながら次第に高揚してゆき、やはり同様に第1主題の再現に入る。第1主題はほぼ型どおりの再現である。第2主題部は提示部に比べて遥かに長大で大きなクライマックスを形成する。終結部ではオーボエ、トランペットやトロンボーンが朗々と第1主題による讃歌を奏で、全曲の幕を閉じる。
演奏時間は12.5分~16分程度。
演奏が終わると、前半の時よりも大きな拍手と歓声が沸き上がりました。時間も押していたせいかアンコール演奏はありませんでした。

