【日時】2024.9.16.(月・祝)13:30〜
【会場】カルッツ川崎大ホール
【管弦楽】コンセール21管弦楽団
(楽団概要)
コンセール21管弦楽団は、今から33年前の1991年に桂冠名誉指揮者・玉置勝彦先生の元に参集したメンバーによって設立されました。特に固定した母体を持たない自主運営のアマチュア・オーケストラとして、学生・社会人・主婦等、様々な背景を持つメンバーによって構成されています。
年に2回(春・秋)定期演奏会を活動の中心に据え、ハイドン・モーツァルトからストヴィンスキー・ヒンデミットに至るまで、幅広いレパートリーを持っています。
音楽監督の玉置勝彦をはじめ、指揮者・藤崎凡、弦楽器・管楽器トレーナーの指導のもと、団員一同より一層の向上を目指して毎週の練習に励んでいます。第22回定期演奏会より後援会が発足し、多数の会員様のご支援を賜っています。
【指 揮】藤崎 凡
<Profile>
1986年:桐朋学園大学音楽学部オーケストラ研究生指揮専攻を卒業。
同年に宮城フィルハーモニー管弦楽団の指揮者オーディションに合格し、演奏活動を開始。
2012年:洗足学園大学講師を退職。同年に 警視庁音楽隊隊長に就任。
【曲目】
①シューマン 序曲「ヘルマンとドロテア」
(曲について)
『ヘルマンとドロテーア』作品136は、ロベルト・シューマンが作曲した演奏会用序曲。ゲーテの恋愛叙事詩ヘルマンとドロテーアに基づいている。
②シューマン 交響曲第4番
(曲について)
ロベルト・シューマンの交響曲第4番ニ短調作品120は、妻クララの22歳の誕生日1841年9月13日に、誕生日プレゼントとして彼女に贈られた。作曲はその直前3か月間で行われた。
2人の結婚は1840年9月12日(ロベルト30歳・クララ20歳)なので、クララにとっては結婚してから2回目の誕生日になる。初演は、そのクララの誕生日から3か月後の1841年12月6日に行われ、10年後1851年に改訂され、現在は改訂版が多く演奏されている。全体構成、楽想、規模ともシューベルトの交響曲第4番ハ短調『悲劇的』の影響が見られる。
作曲年次としては、第1番『春』に次ぐ2番目の交響曲であるが、改訂後の出版年次(1854年)により第4番とされた。作品番号は120が与えられたが、これは改訂版に対してであり、初稿の作品番号は存在しない。
改訂稿
初稿の10年後、1851年に交響曲第3番『ライン』を完成したシューマンは、ニ短調交響曲の改訂に取りかかり、数日で完成させた。オーケストレーションもかなり書き換えられたが、本人がヨーゼフ・ヨアヒムへの手紙に「それが主目的じゃなかった」と書いているように、元の構成はほぼそのまま活かしながらも全体としての統一性をより高める変更を取り入れ、楽章毎の区分をなくして全曲休みなく続けて演奏されるようになったことが最大の相違点である(ただし、2003年にブライトコプフ社から出版されたジョン・フィンソン校訂版においては、第1楽章と第2楽章の終止線がいずれも複縦線に置き換えられており、アタッカの扱いとなっている)。改訂後のこの作品をシューマンは「交響的幻想曲」と呼んだこともあり、後述する自筆譜にはそのタイトルをつけようとしたが、それを消して結局現在のタイトルにしたことが残されている。
改訂版は1853年12月30日にデュッセルドルフにおいてシューマン自身の指揮によって初演され、翌1854年に出版された。シューマンは初演について、「以前の作品より充実していて、効果十分だった」と書いている。この曲の楽譜には正式な献辞はないが、シューマンは自筆譜をヨアヒムに贈っている。
シューマンの死後、その楽譜の編集に当たったヨハネス・ブラームスは初稿の優位性を主張して、クララと意見が対立したといわれる。結局ブラームスの尽力で初稿版は1889年10月22日にケルンでフランツ・ヴュルナーの指揮で再演され、ブラームスとヴュルナーの校訂版として1891年には出版されるのだが、ヴュルナーは自筆に従った校訂を、ブラームスはシューマンによる最終稿の要素を取り入れた校訂を主張し、最終的には部分的に最終稿を採用する形でまとめられたため、厳密な意味での初稿版ではない。現在では改訂稿が一般的に演奏されるが、このヴュルナー版(1891年版と表記されることもある)や後に出版された1841年の初演版による演奏や録音もある。
この曲の日本初演は1926年12月11日、福岡市記念館にて、佐野伴治・荒川文六指揮、九大フィルハーモニー・オーケストラによって行われた。
今回は、シューマンによる改訂版が演奏される。
③ブルックナー 交響曲第1番
(曲について)
1865年に着手、1866年に完成、1868年に初演された(第1稿)。
その後、1877年・1884年に、細部の改訂を行ったことが判明している(ロベルト・ハース、レオポルト・ノヴァークによって「リンツ稿」とされたものは、活動の拠点を既にリンツからウィーンに移した1877年時点での改訂が含まれている)。
さらに、最初の作曲から24年を経過した1890年から1891年にかけ、約1年を費やし、この曲は全面的に改訂された。時期的には、交響曲第8番の改訂を終えた直後から、改訂作業に着手している。同じ主題と曲の進行をもちながらも、曲の様式がかなり違ったものとなった。こちらの方は、この当時のブルックナーの活動地域から「ウィーン稿」、「ウィーン版」などと称される。この稿は、ウィーン大学に捧げられた。
今回は、ノヴァーク版リンツ稿に基づいて演奏。
【演奏の模様】
①シューマン 序曲『ヘルマンとドロテア』
楽器編成:ピッコロ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、小太鼓、二管編成弦五部12型(12-8-8-6-5)
冒頭、第二パッセッジから早速Fl.が「ラ・マルセーズ(以下、L.M.と略記」のメロディーを鳴らし、以後ズート様々な変奏や合の手に挟まれてオケの中心にL.M.が戻って来て、中心的旋律になりました。特にPicc.のL.M.演奏がピリッと効いて良かった。 そもそもこのL.M.はフランス革命に於いて、パリ市民の蜂起が国王軍と対峙した時、その劣勢を応援するために、マルセーユからパリ目指して義勇兵が行進しながら軍楽隊(鼓笛隊)の音で勇ましく隊列を組んだ事に由来する訳ですから、Picc.の一番高い音で、義勇兵の隅々まで鼓舞されたことは確かでしょう。(因みにシューマンはこの曲でTrmb.やTimp.を使っていないのも行進演奏を前提にしているためでしょう)シューマンはゲーテの恋愛叙事詩「ヘルマンとドロテーア」に題材してジングシュピールに仕立てたかったのかも知れませんが、10分足らずの序曲のみが残ってたまに演奏されるのです。このオーケストラは、歴史は古いですが、若い奏者がかなり中心になっている様子で、それが原因では無いでしょうけれど、金管特にHrn.が曲のあちこちで不調だった様です。バンダ演奏のHrn.やスネアの演奏はOKでした。「ラ・マルセイエーズ」の使用については、シューマン自身がスコアの最初のページにおおよそ以下のようなことを書いています。
❝この序曲に『ラ・マルセイエーズ』を引用した理由は、ゲーテの叙事詩をジングシュピール化し、その最初の場面でフランス軍の退却を描くつもりだったからである❞
②シューマン 交響曲第4番
楽器編成:フルート2、オーボエ2、クラリネット2(初稿:C管→改訂版:B♭管)、ファゴット2、ホルン4、トランペット2(D管→F管)、トロンボーン3、ティンパニ、弦五部
全四楽章構成
第1楽章 かなり緩やかに (Ziemlich langsam) - 生き生きと (Lebhaft)
第2楽章 ロマンツェ かなり緩やかに (Ziemlich langsam)
第3楽章 スケルツォ 生き生きと (Lebhaft)
第4楽章 フィナーレ 緩やかに (Langsam) - 生き生きと (Lebhaft)
冒頭Timp.とオケのかなり強い発音で開始、弦楽奏中心、殊にVn.アンサンブルの緩やかだが芯は強い演奏が牽引、管も入っていて時々Timp.が拍子を取るのが聞こえました。突如弦楽はテンポを速め、力も入った強い弓奏ですがやや締まりが無い感じ。続くCb.→Va.+Vc.の低音弦の重々しい調べはテンポ変化もシックで恰好良く◎です。管の掛け合いはHrn.が少し不足な演奏、Fl.はかなりうまい。その後の金管(Trmp.、Trmb.も含む)のアンサンブルが弦楽奏としっくりしない感じが有りました。弦楽、特にVn.アンサンブルの流麗な動きはかなり美しかった。
第2楽章は弦のPizzicato上でCl.がソロ演奏の音をゆったりと立てました。指揮進行が少し速い過ぎる気もしないでない。続く弦楽奏は、Vn.のソロ音、くねくねと上下行し風采もかなりの経験ありそうな年配コンマス、全弦楽奏の前にHrn.が入るも又違和感が有りました。Hrn.は余程難しい楽器なのでしょう。再度Vn.のソロ演奏にオケの伴奏も付き木管がPizzicato上、Cl.がまるでバロック音楽の様な調べを放ち、それを弦が穏やかに引き取って了となりました。短い楽章です。
アタッカ的にTimp.の囃子に合わせて短いボウイングの強奏で入った第3楽章、テーマは特徴あるジャンジャンジャン、ジャンジャジャジャンと強いボウイング音が続く、旋律としては民族舞曲的色彩も混じった軽快な響き、いききした感じは出ていました。続く弦楽章のくねくね奏は繰り返され、木管楽器中心のくねくね旋律奏、Vn.アンサンの上行で引き取りました再度テーマの強奏→弦くねくね奏→管演奏と繰り返し静かに閉じました。
次楽章もアタッカ的にすぐ金管群が猛烈な強斉奏で始まり、今回のオケは金管奏がいま一つの感が有ったので、統一した分厚さは感じませんでした。矢張り弦楽アンサンブルと較べるとかなりの差がある模様でした。
③ブルックナー『 交響曲第1番』
楽器編成:フルート3、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2・ホルン4、トランペット2、トロンボーン3・ティンパニ(3個),弦5部 リンツ稿の演奏時間は約48分
全四楽章構成
第1楽章Allegro
第2楽章Adagio
第3楽章Scherzo.Schenell
第4楽章Finale.Bewegt feurig
今回はこの曲のリンツ稿を演奏するというので聴きに来たのですが、結論を先に記しますと、殆ど収穫を多く感じる事の出来ない演奏でした。一般にブルックナーは各パートの揃ったアンサンブルを組み立てた総合芸術の様なものですから、金管部門のアンサンブルは特に重要で、若干の技術的問題(キズ)であれば修復可能なのでしょうけれど、その一体性、融合性、安定性は殊に求められる必要欠くべからずの要素でしょう。従ってオケの皆さん元気一杯に楽譜と指揮者の指示に食らい付いている、努力の表情は見て取れたのですが、やはり結論は全体としてブルックナーらしからぬ演奏だったと思いました。
それでも、印象に残るいい演奏と思ったのは幾つかあって、第2楽章AdagioでHrn.奏が中心となって入る冒頭、バックにいた弦楽奏がFl.ソロ音→Cl.音の後、前面に出て来て奏されるVc.+Va.アンサンブルが良かったし、また同楽章中盤、Hrn.→Fl.の後から相当長く綿々と続くVn.アンサンブルの弱音奏は柔らかく繊細で美しかった。ここで出番の多いHrn.の演奏がもっとしっかりしていたらとても美しい場面なのにと考えながら聴いていました。
それでも最終楽章、指揮者の渾身のタクト振りに応じて管楽器が全力で吹き鳴らし、弦もそれに応じて力一杯の推進力で応じて最後の大団円を迎えた処は迫力が有りました。
実はこの管弦楽団の演奏は初めて聴きましたが、年に二回演奏会を開くそうで、楽器も立派な管楽器他を沢山揃えている様ですし、楽団員も若い人がかなりいるので、これからの発展が期待出来ます。また機会が有って聴きたい曲が有れば都合がつく限り聴きに行きたいと思いました。
(参考)
1.ハ短調、4分の4拍子。ソナタ形式。低弦に刻まれた行進曲風のリズムの上に第1ヴァイオリンが第1主題を奏してゆく。この最初の低弦の刻みはウィーン版では1小節足されて2小節分になっている。ここはブルックナー習作期の作品「行進曲ニ短調」を彷彿させる。またその後のホルンの合いの手は、やはり習作期の「序曲ト短調」に似ている。第1主題を確保した後、木管による経過を経て第1ヴァイオリンに変ホ長調の第2主題が現れ、第2ヴァイオリンも絡む。チェロとホルン、クラリネットへ受け継がれ、強烈な経過部が来る(この時、弦が奏する旋律は再現部で効果的な役割を果たすことになる)。その頂点で「全力をもって、速度をいくらか遅くして」と指定された第3主題がトロンボーンで提示される。これが落ち着いていき、その断片が木管へ受け継がれると、気分が一時鎮まり提示部が終わる。そのまま再び強烈になって管が第3主題を繰り返すところからが展開部。フルート、ヴィオラへ移り、速度を落とすとクラリネットが力を弱めて第1主題を奏でる。力を強め、弦とともにクライマックスを形成するがまた力が弱まる。こうして何度も盛り上がったり鎮まったりするうちに展開部が終わる。冒頭の行進曲風のリズムが現れると再現部が始まる。第1主題が第1ヴァイオリンで再現され、経過句はなく続いて第2主題が再現される。その後の経過部はさらに劇的になり、第3主題もかなり変形して再現され、この楽章のクライマックスを形成していく。フルート、チェロの順に第1主題の断片が出るとコーダとなり、第1主題を扱いながら情熱的に曲を閉じる。
2.
変イ長調、4分の4拍子。このころのブルックナーがよく用いたA-B-C-A-Bの3部形式である。低弦音から始まる主要主題は叙情性に富む穏やかなもので、ホルンが加わり、弦によって対位法的に進行する。3本のフルートによる経過句の後、ヴィオラのアルペジオに導かれて副主題が第1,2ヴァイオリンにより変ロ長調で奏でられる。副主題を簡単に扱った後、曲は中間部へ入る。中間部はAndante 変ホ長調 3/4拍子で第1ヴァイオリンにより中間主題が愛らしく出る。この主題を変奏的に取り扱う。その後、主部の再現となり、主要主題がヴァイオリンの細かい動きの中で低弦によって再現される。副主題はクラリネットとファゴットにより再現され、ヴァイオリンも加わる。力を徐々に増していき、コーダでは頂点で金管が荘厳に響き、弦に副主題が現れる。まもなく力を落とし、消え入るように曲が終わる。
この楽章のみ、フルートが3本使われる。3本のフルートで作られる和音がちりばめられる。このほか、ファゴットに「旋律らしい旋律」が現れるのが、他の交響曲では見られない特徴である(概して彼の交響曲では、ファゴットは短く経過的な旋律を奏する役目が多い)。また、この楽章には上記の通り初稿が2種類(1865年稿と1866年稿)ある。
3.ト短調、3分の4拍子。3部形式。同じ調・拍子であるモーツァルトの交響曲第40番の第3楽章や、シューベルトの交響曲第5番の第3楽章に類似してると指摘される。粗野で原始的なスケルツォである。トリオはト長調で速度を落とし、ヴァイオリンのスタッカートの動きを伴ってホルンにより主題が出る。 「ウィーン稿」は完全にダカーポしなくても良い指定がなされており、この指定を実行した場合には途中からスケルツォが再起する。スケルツォ主部の提示部、再現部及び、トリオにはそれぞれ反復が指定されている。 これにも全楽章完成されなかった全く違ったスケルツォの初稿がある。コーダはスケルツォの素材に基づく力強いものである。ウィーン稿への改定の際にもコーダはそのまま残された。
4.
ハ短調、4分の4拍子。ソナタ形式。16分音符を用いた細かい動きが多用される他、金管楽器やティンパニも重要な活躍を見せる楽章である。極めて速い音楽であるが、「ウィーン版」はオーケストレーションやアーティキュレーションなどが相当書き換えられている。
「運動的に、火のように」と指定され、冒頭から激烈な性格の第1主題がいきなり提示されて始まる。確保されたのちに、第1ヴァイオリンとチェロに第2主題が変ホ長調で提示される。木管へ受け継がれた後、ハ短調に戻って弦に第1主題の動機が現れ、コラール風の第3主題が現れる。フェルマータで跡切れると、経過風の部分が続いて展開部へ入る。 展開部は前半は第1主題を扱い、大きく膨らむと余韻を残すように静かになり、後半部分へと移る。後半は第2主題を中心に扱う。初めは木管と弦だが金管が加わり、やがて新たな旋律が登場すると曲はしばらくこの旋律を扱う。すると徐々に激しさを増し、ファンファーレ風の移行句をへて再現部へ移る。 再現部の第1主題は変形されており、提示部のように確保されることもなく短縮されている。第1ヴァイオリンによる第2主題がハ長調で続くが、より対位法的に短縮されている、第3主題もハ長調で変形されて再現され、高揚が鎮まると曲はコーダへ入る。木管中心に第1主題の動機を扱い、やがて金管が第1主題の変形を奏する。弦が急速に活動し激烈に盛り上がって頂点をつくる。第1主題の断片が力強く奏される中、曲はハ長調に転調し全曲を締めくくる。