
【日時】2025.12.6.(土)19:00〜
【会場】サントリーホール
【出演】スタニスラフ・ブーニン
【曲目】
〇ショパン
①プレリュード第13番 嬰ヘ長調op.28-13
②プレリュード第14番変ホ短調op.28-14
③プレリュード 第15番 変ニ長調 op.28-15「雨だれ」
④ノクターン第20番嬰ハ短調「遺作」
⑤マズルカ第11番ホ短調op.17-2
⑥マズルカ第20番変ニ長調op.30-3
⑦マズルカ第41番嬰ハ短調op.63-3
⑧ノクターン第10番 変イ長調op.32-2
⑨ワルツ第9番変イ長調op.69-1「告別」
《休憩》
⑩シューマン『色とりどりの小品 作品 99より』
・第1曲 3つの小品その1 急速でなく、親しみをもって
・第2曲 3つの小品 その2 きわめて急速に
・第3曲 3つの小品 その3 新鮮に
・第4曲 5つの音楽帳 その1 かなりゆるやかに
・第6曲 5つの音楽帳 その3 かなりゆるやかに
・第7曲 5つの音楽帳 その4 きわめてゆるやかに
・第8曲 5つの音楽帳 その5 ゆるやかに
・第11曲 行進曲 きわめて持続的に
⑪シューマン『アラベスク』ハ長調op.18
⑫メンデルスゾーン『無言歌集第1巻より<甘い思い出>
作品19-1」
【演奏の模様】
ほぼ1年振りで聴くブーニンのピアノ演奏。ブーニンが1985年にショパンコンクールに優勝した後、来日公演すると大人気を博し日本では、「ブーニン現象」と言われる状況も発生して、国技館を借り切っての演奏会まで行われたのでした。それから幾星霜が経つのでしょう?何年間か世界各地での活躍の報を聞いている内に、パタリと演奏会が途絶え、風の便りには、体調不良、病気、怪我、入院といった健康上の問題の単語が聞こえてきました。それが、2022年6月25日に「八ヶ岳」で9年振りの復活公演をすると、7月には東京人見講堂で演奏会を開く等、復活の兆しがみられる様になりました。そうした動きは2024年の元旦に「スタニスラフ・ブーニン復活への奇跡」と題してNHKテレビで放送され、大きな話題となりました。その後は毎年の様に全国ツアー演奏会が催され、復活への足取りが地道に進行したのです。昨年は、川口、東京の二公演を聴きましたが、病気の後遺症は一歩一歩克服に向かって努力されている様子が伺えました。例えばステージに立つ足取り。義足となってしまった片方の足取りは年々、軽やかで素早い脚運びとなっている様に見えました。又ピアニストの命とも言える手、腕、指の動きも徐々に着実に回復の方向に向かっていることが、その演奏を聴いて感じられました。勿論何ら事件に巻き込まれなかった、ショパンコンクールの他の覇者の様に、優勝後何十年ものキャリアを積んだピアニストと比較出来る段階には至っていませんが、ブーニンの天才性の片鱗は、体の一部が不自由になった現在の演奏でも感じ取ることが出来、それは、超高速で速い超絶技巧を弄する演奏でなく、しっとりとした、曲の本質を鋭い感性で理解し咀嚼し、(自分としても)音楽にとって一番大事だと思っている、心で表現する才能なのです。
今回の演奏会でも、ブーニンは、ショパンの多くの曲を心を込めて、一音一音確かめるが様子で弾き進み、シューマン、メンデルスゾーンに至ると、将にその天才性の片鱗が現われた演奏だと思いました。もともと、自分としても、シューマンやメンデルスゾーン、更にはブラームスなど、ピアノの大曲を書いた大作曲家の作品の中にも、彼らの「小曲集」に、きらりと光るダイヤモンドが散りばめられている曲があることを常々感じていました。ブーニンはそのことを良く認識して選曲しているのも、広い意味での❛状況認識力に優れた才能❜を有しているからなのでしょう。
今回は、予定されたプログラムは粛々と演奏が進み、会場の聴衆の大きな拍手と歓声に応えて、アンコール演奏が三曲演奏されました。



《アンコール演奏曲》
①ショパン『マズルカイ短調Op.67-4』
②プーランク『ノクターン第8番ト短調』
③J.S.バッハ『主よ、人の望みの喜びよ』
それぞれ、心の籠った素晴らしい演奏でした。
特に③の曲を聴くと、(自分なぞ機会ある毎に告白しているのですが、) ❝キリスト教徒でないので、 主やキリストや精霊や天国や地獄や最後の審判等々諸々の事は頭で理解しているだけで、その本質は理解出来ていない、自分事になっていない❞、そんな自分でも、若くして頂点を極めたブーニンのその後の苦悩、苦労、そしてそれを克服しようとしている努力、関係者の助力・援助は痛い程理解出来ますし、そうした向上心の望みに、人として生きる喜びがあるのだろうなとアンコールを聴いて共感が持てました。
こうしたブーニンの堅忍不抜の姿は、
きっと多くの艱難辛苦に苦しむ人びとに勇気と希望を与えて呉れる事でしょう。
《今後の予定》
〇ブーニン日本デビュー40週年記念コンサート
【日時】2026.1.8.(木)19:00~
【会場】東京藝術劇場(池袋)
【出演】スタニスラフ・ブーニン
室内楽合奏団(N響メンバー)
【曲目】
①J.S.バッハ『ブランデンブルグ協奏曲3番BVW1048』
② 〃 『ピアノ(チェンバロ)協奏曲第4番』
③その他ブーニンによるソロ演奏

この日は別な予定が以前から有り、残念ながら聴きに行けませんが、チケットは既に販売中の様です。
〇その他
映画『ブーニン天才ピアニストの沈黙と再生』
【配給】KADOKAWA
【公開】2026年2月より全国ロードショー
【詳細】