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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

NNTTバレエ『シェイクスピア・ダブルビル』初日鑑賞


【主催者Introduction】

 シェイクスピアの戯曲二作品を、バレエで堪能するシェイクスピアの戯曲をもとにした作品を新制作にて、二本立てでお届けします。国際的に目覚ましく活躍しているウィル・タケットが新国立劇場のために創る『マクベス』、そしてアシュトンの英国の雰囲気漂う『夏の夜の夢』のダブルビル。伝統と革新の二作品をぜひお楽しみください

【公演日程】

2023年4月29日(土・祝)14:00 
2023年4月30日(日)  14:00
2023年5月2日  (火)       19:00
2023年5月3日  (水・祝)14:00 
2023年5月4日  (木・祝)14:00
2023年5月5日  (金・祝)14:00
2023年5月6日  (土 )      14:00
 
【上演時間】約2時間30分(マクベス60分 休憩30分 夏の夜の夢60分)
【鑑賞日時】初日2023.4.29(土・祝)14:00~
【会 場】NNTT.オペラパレス

【芸術監督】吉田 都

 

【プログラム】

A.前半《マクベス》

【振付】ウィル・タケット
【音楽】ジェラルディン・ミュシャ
【編曲】マーティン・イェーツ

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【指揮】マーティン・イェーツ

【美術・衣裳】コリン・リッチモンド
【照明】佐藤 啓
【キャスト】
 マクベス: 福岡雄大、
 マクベス夫人: 米沢 唯
 ダンカン王:趙 載範

 マルカム:原 健太

 バンクォー: 井澤 駿
 フリーアンス:小野寺 雄

 3人の魔女:奥田花純、五月女遥、廣川みくり

 マクダフ:中家正博

 マクダフ夫人:飯野萌子

 夫人の子供:谷口奈津 塩田弦大

 他、新国立バレエ団

 

【物語概要】

スコットランドの将軍マクベスとバンクォーは荒野で3人の魔女たちから、マクベスは王になる、バンクォーはその子孫が王位に就くと予言される。野心に燃える妻にそそのかされ、王を刺殺したマクベスは王位を手にするが、バンクォーへの予言が疑心を呼び起こし、バンクォー親子の殺害も企む。死者の幻影に苛まれ錯乱するマクベスはさらに殺人を重ねていく。

 

***************************************《休憩》*********************************************

 

B.後半《夏の夜の夢》

【振付】フレデリック・アシュトン

【音楽】メンデルスゾーン『劇付随音楽・夏の夜の夢』

【編曲】ジョン・ランチベリー

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【指揮】マーティン・イェーツ
【合唱】東京少年少女合唱隊

【合唱指揮】長谷川久恵

【美術・衣裳】デヴィッド・ウォーカー
【照明】ジョン・B・リード

【キャスト】

 ティターニア:柴山紗帆

 オーベロン:渡邊峻郁

 取替え子:雪吉晴敬
 パック:山田悠貴
 ボトム:木下嘉人
 ヘレナ:寺田亜沙子

 ディミートリアス:渡邊拓朗

 ハーミア:渡辺与市

 ライサンダー:中島駿野

 豆の花精:広瀬碧

   蜘蛛の巣聖:朝枝尚子

 峨の精:赤井綾乃

   芥子の種精:直塚美穂

   他 新国立劇場バレエ団

 

<参考>

メンデルスゾーン 劇付随音楽《夏の夜の夢》

序曲 アレグロ・ディ・モルト

第1曲 スケルツォ 

第2曲 メロドラマと妖精の行進 

第3曲 合唱付き歌曲 

第4曲 メロドラマ

第5曲 間奏曲 

第6曲 メロドラマ

第7曲 夜想曲 

第8曲 メロドラマ

第9曲 結婚行進曲

第10曲 情景と葬送行進曲

第11曲 道化師たちの踊り

第12曲 情景とフィナーレ 

アレグロ・ディ・モルト

 

【物語概要】

 ある夏至の夜。妖精の住むアテネの森では、妖精の王オーベロンと女王ティターニアが可愛い小姓をとりあって喧嘩の真っ最中。そこにいたずら好きの妖精パックが登場し、王の命令で「惚れ薬」を手に女王にいたずらを仕掛けようとする。一方、貴族の娘ハーミアは許婚ディミートリアスとの結婚を拒絶し、相愛のライサンダーと共に森へと駆け落ちする。ハーミアを追いかけるディミートリアスと彼に片想いするヘレナも森の中へ2人の後を追いかけて・・・・。

 

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【上演の模様】

 今回はシェイクスピア作品から二つ、非常に有名な物語『マクベス』と『(真)夏の夜の夢』の二作品です。何れも一時間程のバレエ作品に仕上げられています。特に前者は演劇、オペラ等で余りに有名なのですが、これまで一度もバレエ化されたことは無く、世界初演だということです。シェイクスピアの本家本元の英国でも、素晴らしいバレエ団があるにもかかわらず、バレエ化されていません。恐らくこの作品の内容がバレエで表現されることを自ずから拒む様な困難性があったためかも知れません。それを新国立バレエ団(吉田都 藝術監督)は、世界で活躍するウィル・タケットという振付師の協力を得て、またバレエを踊る音楽曲もジェラルディン・ミュシャが作曲したものをマーティン・イェーツがバレエ用に編曲し、ドラマティックな曲に仕上げられました。

 一方、後者の「夏の夜の夢」はギリシャ神話を題材とした今では古典的バレエ作品といっても良いかも知れません。「(真)夏の夜の夢」の真が取れたのは、英文原題のMidsummeが本来は「夏至」の意味なのに「真夏」と誤訳して長らく使用されていたのを、最近になって正しく訂正したためと謂われます。その音楽はメンデレスゾーンが音楽付随劇としての同名の作品に、場面進行に合わせた12曲の作品を作曲していて、それをバレエ様に編曲(大筋で原曲に近い)したものを使っています。後半には有名な「結婚行進曲」も出てきます。前半の「マクベス」が大悲劇なのに対し、後半のこの作品は、大いに笑いを誘う「喜劇」であり、それを後半に持ってきた作品配置にも工夫が感じられました。

 

A.前半《マクベス》

 今回の配布プログラムはとても良く出来ていたと思います。詳細に渡っての記述がある他、登場人物の相関図が掲載されていて、いわば無言劇のバレエを理解するのに大いに役立っていました。


 初日の主役は、NNTTバレエ団の顔とも言える福岡雄大さん(マクベス)と米沢唯さん(マクベス夫人)でした。お二人の舞踊はこれまで何度も観ましたが、国内では最高レヴェルのバレエを披露出来るプリンシパルだと思っています。今回のバレエでは美しさ脇に置いても、先ず「マクベス」のストーリーを如何に表現出来るかが大きなポイントの一つだったと思いますが、それが見事に成功裡に終始していました。バレエの踊りを見ているだけで、どの様な意味か良く理解出来ました。また福岡ソロも米沢ソロもまた二人のパ・ド・ドゥもその表現力は意味性以上の美しさに溢れるものでした。流石だと思う。特に一番感心したのは、終盤、マクベス夫人が自死して、駆けつけたマクベスが、夫人の亡きがらを抱き起して、パ・ド・ドゥを踊る場面。米沢さんはもう死んでいるので、ぐったりしているのですが、福岡さんが体を抱きしめ、手を取り、回転し踊る時の米沢さんの素晴らしい死体としてのぐんなりさとパ・ド・ドゥの踊りとして成り立っている技には驚きでした。単なる人形が魂が入った人間の様になって男性ダンサーとパ・ド・ドゥを踊る演目が有りましたね。あれは物に魂を吹き込んで足の動き、体の動きなどを生きた様に見せるのですが、今回はその逆で、生きた人間を如何に死んだ物として一緒に踊るかという難題をお二方見事に表現されていました。脱帽です。

 以下に公開リハーサルの様子や報道された画像を若干添付します。

画像

 

 

A.後半《夏の夜の夢》


 初日、主演したのはティータニア役柴山紗帆さんとオーベロン役渡邊峻郁さん。柴山さんは最近メキメキと力をつけて来ているバレリーナーとみえて、スピード感もあり、型も見事に決まるし2月に見た『コッペリア』の時の代役を無事演じきった時より、さらに磨きがかかって来ている様に思えます。渡辺さんは、NNTTバレエ団の枢軸を成す重要なダンサーで、一挙一動に自信あふれた踊りが見事でした。

 この演目はもともと喜劇的要素がふんだんに組み込まれているのですが、今回、それを演じるダンサー達もそれぞれ個性を上手に演技で表現して、観客の笑いを誘っていました。ボトム役の木下さんはロバから魔法が解けて人間に戻ってからのティ-タニアに言い寄られた甘い思い出を面白おかしく演技し会場を沸かせていたし、ほれ薬を間違って掛けられたライサンダー達恋人四人も正気に返ってからの演技が笑いを誘っていました。ダンスと演技の相乗効果で兎に角楽しいバレエでした。

 

 前半後半ともに、上演終了後、満員の会場内は溢れるばかりの大拍手と大きな歓声が飛び交い、ブラボー、ブラビー、ブラバー等の大きな声も沢山彼方此方で叫んでいました。

 今日は休日・祝日のためか、想像より多くの観客が詰めかけました。いつものバレエ公演ですと、親子連れや若い女性ファンを多く見かけるのですが、今日はその両者は多くなく、その分高齢観客の姿が目立ちました。しかも友人連れやご夫婦連れが目立って多かった。近くの座席でもかなりの年配客が何回も何回も力一杯大声で「ブラボー」を叫んでいました。あれだけ叫べば、きっとスカーっとして健康にもいいのかも知れません。