【主催者言】
伝説は48年前に始まった!ニューヨークでも、パリ、ロンドンでも観られない、3年に一度の豪奢な祭典!
今日のバレエシーンをけん引するトップダンサーたちが3年に一度、東京に集う〈世界バレエフェスティバル〉。伝統と実績において名実ともに世界最高のガラ・パフォーマンスとして国際的に名を馳せていますが、その歴史は1976年にまでさかのぼります。
英国のマーゴ・フォンテイン、ロシアのマイヤ・プリセツカヤ、キューバのアリシア・アロンソ。世界が東西で対立し、移動手段や情報伝達においても今日ほどの自由が与えられていない世の中で、当時の三大プリマが同じ舞台に立つ。その事実は世界に衝撃を与えたとともに、芸術こそが文化や政治の違い、そして国境を越え人と人とをつなぐ架け橋になれるのだということを証明しました。その後この舞台に時代の寵児たちが次々と続きます。ジョルジュ・ドン、パトリック・デュポン、シルヴィ・ギエム、アレッサンドラ・フェリ、マニュエル・ルグリ、ウラジーミル・マラーホフ。“バレエフェス”に招かれることはダンサーにおいてもステータスとなり、最高峰のスターたちが誇りと意地をかけて至芸を競う〈世界バレエフェスティバル〉は、開催のたびに大いなる熱狂と興奮を生んできました。近年では仲間同士が集まった催しは珍しくありませんが、それらとは全く異なるのであり、〈ガラ〉という言葉はこの “バレエフェス”から広まったのです。
各国トップ・カンパニーを代表し選ばれた出演者たちは、さまざまな芸術的背景をもちます。彼らが披露するバラエティに富んだ作品やスタイルは、そのまま国際的なバレエの縮図として見える、つまり〈世界バレエフェスティバル 〉を観れば、バレエ界の“いま”を体感できるのです。
今この瞬間に、最も輝きを放っている旬のスターのみが一堂に会する〈世界バレエフェスティバル〉は、クオリティとボルテージの高さにおいて他の追随を許さない、まさに唯一無二の祭典です。極限まで鍛え抜かれた肉体と精神が、高い表現力をともなうことで感動をもたらすバレエの真骨頂を、ぜひ劇場でご堪能ください!
前回世界バレエフェスティバル カーテンコール
【日時】2024.7.31.(水)18:00~
【会場】東京文化会館
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【指揮】ワレリー・オブジャニコフ
【独奏】菊池洋子(ピアノ) 長明康郎(チェロ)
【上演演目(予定)】
Aプログラ厶
◯「スペードの女王」(ローラン・プティ振付)
マリーヤ・アレクサンドロワ
ヴラディスラフ・ラントラートフ
◯「マーキュリアル・マヌーヴァーズ」(クリストファー・ウィールドン振付)
シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ
◯「椿姫」より第1幕のパ・ド・ドゥ(ジョン・ノイマイヤー振付)
エリサ・バデネス
フリーデマン・フォーゲル
◯「白鳥の湖」より 黒鳥のパ・ド・ドゥ(ジョン・クランコ振付)
マッケンジー・ブラウン
ガブリエル・フィゲレド
◯「アフター・ザ・レイン」(クリストファー・ウィールドン振付)
アレッサンドラ・フェリ
ロベルト・ボッレ
◯「アン・ソル」(ジェローム・ロビンズ振付)
ドロテ・ジルベール
ユーゴ・マルシャン
「アウル・フォールズ」(セバスチャン・クロボーグ振付)
マリア・コチェトコワ
ダニール・シムキン
◯「マノン」より第1幕の出会いのパ・ド・ドゥ(ケネス・マクミラン振付)
サラ・ラム
ウィリアム・ブレイスウェル
◯「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」(ジョージ・バランシン振付)
永久メイ
キム・キミン
◯「クオリア」(ウェイン・マクレガー振付)
ヤスミン・ナグディ
リース・クラーク
◯「ドン・キホーテ」(マリウス・プティパ振付)
マリアネラ・ヌニュス
ワディム・ムンタギロフ
◯「ル・パルク」(アンジュラン・プレルジョカージュ振付)
オニール八菜
ジェルマン・ルーヴェ
◯世界初演 「空に浮かぶクジラの影」(ヨースト・フルーエンレイツ振付)
ジル・ロマン
小林十市
◯「くるみ割り人形」(ジャン=クリストフ・マイヨー振付)
オリガ・スミルノワ
ヴィクター・カイシェタ
◯「3つのグノシエンヌ」(ハンス・ファン・マーネン振付)
オリガ・スミルノワ
ユーゴ・マルシャン
◯「ハロー」(ジョン・ノイマイヤー振付)
菅井円加
アレクサンドル・トルーシュ
◯「シナトラ組曲」(トワイラ・サープ振付)
ディアナ・ヴィシニョーワ
マルセロ・ゴメス
●上演順不同
【出演】
今回の出演者一覧を見ると、これまでの「世界バレエフェス」に参加したことのある顔ぶれが多いですが、今回初出場のダンサーも8名 居 り、何れも世界的に有名なブリンシバル(エトワール)であるか、であった大ベテランも含みます。以下氏名、所属団、を顔入り写真とともに示します。
◯マリーヤ・アレクサンドロワ
Maria Alexandrova
(ボリショイ・バレエ)
◯シルヴィア・アッツォーニ
Silvia Azzoni
(ハンブルク・バレエ団)
◯エリサ・バデネス
Elisa Badenes
(シュツットガルト・バレエ団)
◯マッケンジー・ブラウン 初登場!
Mackenzie Brown
(シュツットガルト・バレエ団)
◯アレッサンドラ・フェリ
Alessandra Ferri
◯ドロテ・ジルベール
Dorothée Gilbert
(パリ・オペラ座バレエ団)
◯マリア・コチェトワ
Maria Kochetkova
◯サラ・ラム
Sarah Lamb
(英国ロイヤル・バレエ団)
◯永久メイ 初登場!
May Nagahisa
(マリインスキー・バレエ)
◯ヤスミン・ナグディ 初登場!
Yasmine Naghdi
(英国ロイヤル・バレエ団)
◯マリアネラ・ヌニェス
Marianela Nuñez
(英国ロイヤル・バレエ団)
◯オニール八菜
Hannah O’Neill
(パリ・オペラ座バレエ団)
◯オリガ・スミルノワ ※Aプロのみ
Olga Smirnova
(オランダ国立バレエ)
◯菅井円加
Madoka Sugai
(ハンブルク・バレエ団)
◯ディアナ・ヴィシニョーワ
Diana Vishneva
(マリインスキー・バレエ)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〇ロベルト・ボッレ
Roberto Bolle
(ミラノ・スカラ座バレエ団)
〇ウィリアム・ブレイスウェル 初登場!
William Bracewell
(英国ロイヤル・バレエ団)
〇ヴィクター・カイシェタ 初登場!
Victor Caixeta
(オランダ国立バレエ)
〇リース・クラーク 初登場!
Reece Clarke
(英国ロイヤル・バレエ団)
〇ガブリエル・フィゲレド 初登場!
Gabriel Figueredo
(シュツットガルト・バレエ団)
〇マルセロ・ゴメス
Marcelo Gomes
(ドレスデン・バレエ)
〇キム・キミン
Kimin Kim
(マリインスキー・バレエ)
〇小林十市 ※Aプロ・ガラのみ
Juichi Kobayashi
(モーリス・ベジャール・バレエ団)
〇ヴラディスラフ・ラントラートフ
Vladislav Lantratov
(ボリショイ・バレエ)
〇ジェルマン・ルーヴェ
Germain Louvet
(パリ・オペラ座バレエ団)
〇ユーゴ・マルシャン
Hugo Marchand
(パリ・オペラ座バレエ団)
〇ワディム・ムンタギロフ
Vadim Muntagirov
(英国ロイヤル・バレエ団)
〇アレクサンドル・リアブコ
Alexandre Riabko
(ハンブルク・バレエ団)
〇ジル・ロマン
Gil Roman
〇ダニール・シムキン
Daniil Simkin
〇アレクサンドル・トルーシュ
Alexandr Trusch
(ハンブルク・バレエ団)
〇フリーデマン・フォーゲル
Friedemann Vogel
(シュツットガルト・バレエ団)
【上演の模様】
いつもの事ながら、バレエ上演日の客層は、オーケストラの場合よりも、若い人それも女性の観客が非常に多く、ホワイエは、色んな飾り立て、臨時販売所等々もあわせて賑わい混雑していました。
上演は第一部~第三部に分けられ、事前に発表された上記【上演演目(予定)】の全ての演目が全て上演されましたが、その上演順は全く異なった順で行われました(演目の字幕が出たのでこれまでに無く分かり易かった)。
実際には、以下の順に上演されました。主にクラシック音楽の付いたバレエを中心に観た概要を記します。
《第1部》
◯序曲「戴冠式行進曲」 (ジャコモマイヤベーア)
時間となって、ピットに指揮者が位置につき、リズミカルな調べが流れ出すと、王子と黒鳥が現れ、とても有名なパ・ド・ドゥを踊りました。チャイコフスキーの曲にのって優雅に舞い踊る二人でした。
①白鳥の湖より黒鳥のパ・ド・ドゥ
マッケンジー・ブラウン
ガブリエル・フィグレド
(振付:ジョン・クランコ 音楽:ピョートル・チャイコフスキー)
[演者の単独写真例]
この今回初出場の二人の「シュツットガルト・バレエ団」のプリンシパルは、チャイコフスキーの素晴らしいメロディにのって、この上ない美しい、まさにバレエの見本の様な舞踊を、初っ端から観客に披露してくれました。会場は早速大きな拍手と興奮の渦に巻き込まれました。
黒鳥と王子のパ・ド・ドゥの他例
②クオリア
ヤスミン・ナグディ
リース・クラーク
(振付:ウェイン・マクレガー 音楽:スキャナー録音)
③アウル・フォールズ
マリア・コチェトコワ
ダニール・シムキン
(振付:セバスチャン・クロボーグ 音楽:アンナ・メレディス)
④くるみ割り人形
オリガ・スミルノワ
ヴィクター・カイシェタ
(振付:ジャン=クリストフ・マイヨー 音楽:ピョートル・チャイコフスキー)
今回は、出演の二人(スミルノワ、カイシュタ)が、オランダ国立バレエ所属ということもあって、物語を現代的に読み替えた、マイヨー版(当該バレエ団芸術監督)に基づく主役のパ・ド・ドゥでした。
【演者の単独写真例】
パ・ド・ドゥの例(他版)
兎に角音楽が良く、聞き慣れた調べで、Hp.や Fl. Ob.の調べが物語性を暗示し、また弦楽奏が美しい。生演奏だからこそ味わえる舞と奏の相乗効果でした。
⑤アン・ソル
ドロテ・ジルベール
ユーゴ・マルシャン
(振付:ジェローム・ロビンズ 音楽:モーリス・ラヴェル)
【単独写真例】
パ・ド・ドウの他例
『アン・ソル』はラヴェルの『ピアノとオーケストラのためのト長調協奏曲』を使っています。
真夏の太陽が輝き、打ち寄せる波と空の雲のもと、カップルがラヴェルが構想した曲にのって、軽々と舞うのを見ていると浜辺の潮風を身に受ける気分になりそう。オーケストラもさることながら、ピアノの調べが、踊りにもオケにもぴったりと寄り添い、流石、菊池洋子さん(人昔前はモーツアルト弾きで名を馳せましたが)という、最近とみに素晴らしい演奏技術の飛躍と、世界的活躍を見せるピアニストの調べは違うなと思いました。ラヴェル作品群の中でしっとり分野に分類出来る曲です。
《第2部》
⑥ハロー
菅井円加
アレクサンドル・トルーシュ
(振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:ジョルジュ・クルポス)
⑦マノンより第一幕、出会いのパ・ド・ドゥ
サラ・ラム
ウィリアム・ブレイス・ウェル
(振付:ケネス・マクミラン 音楽:ジュール・マスネ)
⑧ル・パルク
オニール・八菜
ジェルマン・ルーヴェ
(振付:アンジュラン。プレルジョカー 音楽:W.A.モーツァルト)
⑨チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ
永久メイ
キム・キミン
(振付:ジョージ・バランシン 音楽:ピョートル・チャイコフスキー)
【単独写真例】
パ・ド・ドゥの他例
キム・キミンは、マリインスキーバレエの韓国系のプリンシパル。欧米でも大人気のバレエダンサーです。永久メイも日系、この二人の東洋人によるチャイコフスキーの素晴らしい音楽に乗ったバレエでした。
振付家マリウス・プティパとレフ・イワーノフが 1895年に『白鳥の湖』をつくったとき、チャイコフス キーが作曲したなかの一部が、ふたりの作品イメー ジに合わなかったことから、使用されなかったらしい。その 楽譜が1953年に再発見されたことを知ったバランシ ンは興味を惹かれ、独立した作品として振付けました。 初演は1960年、ニューヨーク・シティ・バレエでの上演。クラシック・バレエのグラン・パ・ド・ドゥの形式を とりながら、細やかな足さばきや身のこなしが要求 されており、バランシン独特のボキャブラリーが、踊リ手の高度な技術によって披露される魅力的な作品です。
最初にパ・ド・ドゥを踊った二人は、次にそれぞれがソロを、次いで再び二人で、パ・ド・ドゥを踊るというグラン・パ・ド・ドゥの大回転あり、何回転ものフェッテありの舞踊に、観衆はその度大きな拍手で二人を讃え、何十分にも及ぶ興奮の嵐は、前半最後の大舞台でした。
兎に角キム・キミンの跳躍の高さ、舞台一杯のスピードある大回転には驚きました。
《第3部》
⑩3つのグノシエンヌ
オリガ・スミルノワ
ユーゴ・マルシャン
(振付:ハンス・ファン・マーネン 音楽:エリック・サティ)
⑪スペードの女王
マリーヤ・アレクサンドロワ
ヴラディスラフ・ラントラートフ
(振付、ローラン・プティ 音楽:ピョートル・チャイコフスキー)
チャイコフスキーの音楽と言っても、ここでは6番のシンフォニー《悲愴》のメロディーが使われました。大雑把にいて物語の筋道は、
❝主人公の青年仕官ゲルマンは、ある時「スペードの女王」と呼ばれる伯爵夫人に出会います。彼女は賭け事に絶対負けない秘密の手を知っています。そのカードの秘密を聞き出そうとゲルマンは深夜に屋敷に忍び込み、ピストルで伯爵夫人を脅します。しかし夫人は驚いて死んでしまいます。
ある夜、ゲルマンの夢に現れた伯爵夫人はカードの秘密「3、7、1の順に賭けること」を告げます。その通り3、7を掛けて勝ったゲルマンは富を得ますが、最後エースを賭けると、予想に反し「スペードの女王」のカードを引き当てて負けてしまいました。伯爵夫人の幻影にゲルマンは息絶え、夫人の復讐が実ったのでした。❞
【単独写真例】
パ・ド・ドゥの他例
悲壮感溢れる曲を背景に、激しい動き、乱暴とも思えるやり取りなど、賭けに負けた主人公の破滅をボリショイ・バレエの二人は流石と思える手振り身振りで、素晴らしくうまく表現していました。
⑫マーキュリアル・マヌーヴァーズ
シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアプコ
(振付:クリストファー・ウィールデン 音楽:ドミートリイ・ショスタコーヴ)
⑬空に浮かぶクジラの影
ジル・ロマン
小林十都市
(振付:ヨースト・ブルーエンレイツ 音楽:レナード・コーエン、ルー・リード、アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズ)
《第4部》
⑭アフター・ザ・レイン
アレッサンドラ・フェリ
ロベルト・ボッレ
(振付:クリストファー・ウィールドコ 音楽:アルヴォ・ベルト)
⑮シナトラ組曲
ディアナ・ヴィシニョーワ
マルセロ・ゴメス
(振付:トワイラ・サーブ 音楽:フランク・シナトラ)
⑯椿姫より第1幕のパ・ド・ドゥ
エリサ・バデネス
フリーデマン・フォーゲル
(振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:フレデリック・ショパン)
⑰ドン・キホーテ
マリアネラ・ヌニェス
ワディム・ムンタギロフ
(振付:マリウス・プティバ 音楽:レオン・ミンクス)
マリアネラ・ヌニェス
ワディム・ムンタギロフ
(2022年来日公演)
これも古典的な名作のバレエです。見ていて面白い、楽しい、美しい。今回の上演は割りとモダン・ダンスが多かったのですが、最後に古典の代表的な演目を演じた、英国ロイヤルバレエのマリアネラ・ヌニエェスとワデ・ムンタギロフのパ・ド・ドゥは観客から一番の喝采を受けていました。多くの観客にとってこれまで見たことのあるなじみ深い演目であることも大きかったと思います。二人とも完璧な見事な踊りでした。
〇フィナーレ 「眠れる森の美女」よりアポテオーズ(ピョートル・チャイコフスキー作曲)
の調べに乗って、各出演者が次々と舞台に登場、最後は、指揮者その他のソリスト他も集合、最後は無事初日を成功裡に終えた演者の安心な表情と、感動した観客の大声援の大団円で幕は閉じたのでした。
終演となって文化会館を出たのは、22時30分頃でした。実に4時間半の鑑賞でした。