HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

N響第1982回定演「ヤルヴィ+グッチ(Pf.)」を聴く

 

【日時】2023.4.27.19:00~

【会場】サントリーホール

【管弦楽】NHK交響楽団

【指揮】パーヴォ・ヤルヴィ

【出演】マリー・アンジュ・グッチ(Pf.ソロ)

<Profile>

1997年、アルバニア生まれ。13歳でパリ国立高等音楽院ピアノ科に入学し、ニコラ・アンゲリッシュに師事。その後、同音楽院の音楽学と分析の分野の博士課程で、またソルボンヌ大学の修士課程でも学んだ。2015年ニューヨークのIKIF国際ピアノコンクール、2018年スイス・ジュネーヴ芸術協会主催のコンクールなどで優勝。7か国語を使いこなし、『ヴァニティ・フェア』誌フランス版に「世界を変える若者」のひとりとして紹介されている。2017年に初のアルバム『鏡 EN MIROIR』をリリースし、フランスの各誌で絶賛された。最近ではパリ管弦楽団、BBC交響楽団、デンマーク国立交響楽団などと共演、2022–23シーズンにはシドニー交響楽団、RAI国立交響楽団、バーゼル室内管弦楽団、ベルギー国立管弦楽団などと共演する。知性と伸びやかさの共存する音楽性の持ち主で、レパートリーもバロックから演奏機会の少ない現代作品まで幅広い。
2018年ラ・フォル・ジュルネ東京のため初来日。N響とは今回が初共演となる。

 

【曲目】

①シベリウス/交響曲 第4番 イ短調 作品63

(曲について)都響H.P.より

 フィンランドの作曲家ジャン・シベリウス(1865~1957)の《交響曲第4番》は、彼が人生上の困難を抱えた時期に取り組まれた大作。第1次世界大戦前夜の1911年4月3日に初演された。
当時のシベリウスを悩ませていたのは、天文学的な額に達した借金と咽喉腫瘍の疾病に伴う健康の悪化だった。幸いなことに、借金は友人カルペランの尽力もあって1910年頃を境に少しずつ減りはじめ、病気の方も手術で回復に転じてはいる。それでもシベリウスは手術後、好物の酒とタバコを一切断たなければならず、数年間に渡り苦しい禁欲生活を送ることになる。内省的な《第4番》は、そうした彼の心境を反映しているのだろう。しかし、この作品におけるシベリウスの潜在意識は「作曲家の個人的な苦悩」よりも、「悲劇的な宿命を帯びた人間存在」そのものに向けられているように見える。
《第4番》の表現主義的な曲調は、後期マーラーや初期シェーンベルクのそれを思わせる。とはいえシベリウスの場合、たとえ自己の内面世界を強烈にえぐり出すような主観的表現であっても、決して端正な筆致を失わない。逆に、ぎりぎりまで研ぎ澄まされたその厳しいフォルム(形式)は、無限の空間に向けて力強く広がる巨大な造形美を生み出しているのである。
交響曲は伝統的な4楽章制に基づく一方、各楽章は従来の図式を下敷きにしながらも独自の構成を示している。不気味なリディア旋法(「ハ─嬰ヘ」のように、増4度の音程が特徴)が曲全体の統一要素となっており、そのため部分的に調性感が希薄である。

②ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲 作品43*

(曲について)同上

 1914年に勃発した第1次世界大戦(1914~1918)は、作曲家として円熟期を迎えていたセルゲイ・ラフマニノフ(1873~1943)のキャリアを一変させることになる。大戦の最中にロシア革命が起こると、300年あまり続いたロマノフ朝が瞬く間に崩壊。その政治的混乱を機にラフマニノフは祖国を離れ、新天地アメリカに活動拠点を移すのである。以後、彼がロシアを訪れることは二度となかった。
アメリカに渡ったラフマニノフはコンサート・ピアニストの仕事に忙しく追われたため、作曲活動に支障をきたすようになる。創作意欲も衰えを見せ始め、望郷の念に駆られた彼は「もう何年もの間、ライ麦や白樺(しらかば)のささやきを聞いていない」と友人で作曲家のニコライ・メトネル(1880~1951)に伝えたという。そうした事情から、1934年にスイスの別荘で手掛けた《パガニーニの主題による狂詩曲》は、ラフマニノフがアメリカ移住後に完成させた数少ない大作のひとつとなった。ピアノ協奏曲風のこの狂詩曲はソリストの超絶技巧が随所に散りばめられた難曲で知られ、ロマンティックな曲調と相まって、ラフマニノフの代表作に位置づけられている。
曲はリズミカルな主題と24の変奏からなる。リストやブラームスの作品でも馴染(なじ)み深いこの有名な主題(旋律)は、イタリアの奇才ニコロ・パガニーニ(1782~1840)の無伴奏ヴァイオリン曲《24の奇想曲》第24番に基づくものである。
短い序奏に続いて、まず第1変奏を配置するという異例の処理が施されているが、これは主題の登場を予示する役目を果たしている。その後オーケストラがイ短調の主題を提示し、第2変奏でピアノが再び主題を奏する。第3変奏以降は、オーケストラとピアノが掛け合いながら主題を多彩に変化させていく。特筆すべきは、第7変奏でグレゴリオ聖歌の《怒りの日》が突然引用されることだ。デモーニッシュな「死」をイメージさせるこの旋律は、第10変奏や最後の第24変奏でも姿を見せる。第12変奏からは主調のイ短調を離れていき、第18変奏で遂に変ニ長調に達すると、ラフマニノフらしい甘美な旋律(主題の転回形)が朗々と奏でられる。第19変奏以降はイ短調に戻り、少しずつエネルギーを増幅させながら壮麗な終結へと導かれていく。

尚、各変奏曲は 文末添付(抜粋)を参照。

 

③チャイコフスキー/幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」作品32

(曲について)同上

 ダンテの『神曲』より「地獄篇(へん)」第5歌を題材とした《フランチェスカ・ダ・リミニ》は、1876年にピョートル・チャイコフスキー(1840~1893)が作曲したオーケストラのための幻想曲。当初チャイコフスキーは同題材に基づくオペラを構想したが、「それは全く不可能」と判断し、幻想曲の創作に踏み切った。
「地獄篇」第5歌は、フランチェスカとパオロの悲恋を描いたもの。宿敵との和解のため、ポレンタ家の美しい娘フランチェスカは、マラテスカ家の醜い長男ジョヴァンニと政略結婚させられることになる。しかし彼女を迎えに来たのは、ジョヴァンニの弟で美青年のパウロだった。結婚式のあと、フランチェスカは騙(だま)されたことを知るものの、夫ジョヴァンニを愛することができず、パオロとの密会を続ける。それに激しく嫉妬したジョヴァンニは、怒りに任せて2人を刺し殺してしまう。色情の罪を犯したフランチェスカとパオロの魂は、地獄の嵐の中を永遠にさまようことになる……。
チャイコフスキーは幻想曲の自筆譜冒頭に上のプログラム(物語)を掲載したが、出版の際にそれを全て削除し、文章数行とダンテの詩文からの短い引用に改めている。チャイコフスキーがこの幻想曲で真に向き合おうとしたのは「悲恋の物語」ではなく、「愛欲と嫉妬、苦悩、罪」という全ての人間が抱える宿命的問題であることを聴き手に示したかったからだろう。

【演奏の模様】

順番は前後しますが、②のピアノ協奏曲から先に記します。

②ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲 作品43

 コンチェルトシフトで、楽器編成に変化が有りました。二管編成(Ft.2+Picc.1)(Hr.4)(En-Hrn.1) (Trmb.3)(Tuba.1) 弦楽五部12型(12-10-10-9-6)

 独奏者のグッチさんは、若干26歳の俊英。両手を左頬の近くで合わせ喝采しながら登場しました。N響へのオマージュ或いは観客へかな?演奏会チラシの写真と違って、眼鏡を掛けていました。近眼で楽譜が見えないためかな? 彼女がこのラフマニノフの技巧的な曲を、どう弾くのか注目して聴き始めました。

 いきなりオケの前奏が強奏で入り、短く合いの手を入れるグッチさん。続いて、まず第1変奏を配置されていますが、これは主題の登場を暗示したものです。Vn.アンサンブルが第1変奏を奏で、Pf.が合いの手を入れている、その後オーケストラが主題の変奏を提示、第2変奏でPf.が再び主題を奏でました。第3変奏以降は、オーケストラとPf.が掛け合いながら主題を様々に変化させていくのですが、第7変奏でグレゴリアン・チャントの《怒りの日》の和声が突然と組み込まれたゆっくりした変奏が出てきました。このグレゴリアン・チャントに由来する「死」を連想する和声旋律は様々な曲でたびたび引用されたり組み込まれたりします。最近では4月に聴いた『ドイツ・レクイエム』で、その五週間ほど前に聴いたイザイの『無伴奏ヴァイオリン・ソナタ』で、また3月のマーラー『2番《復活》』等にも取り入れられている。今回の「怒りの日」は次の変奏や10変奏にも取り込まれ、Pf.の鐘の音的表現があったり、鉄琴とFf.の音が重なって、ポンポンポンと終結したり、面白いパッセッジが出て来ました。グッチさんのPf.演奏は、この辺りまでは、オケの音に消されることも無く結構大きな音でホールに響いていました。次の第11変奏では、(Vn.+Va)アンサンブルのトレモロ下グッチさんは、ゆっくりとした旋律を弾き、Hp.はクリッサンドで締めます。続いてPf.の合いの手はCl.⇒Hrn.と変わり、全弦にHrn,が加わった変奏テーマの強奏になるとグッチさんは強奏に負けまいとして、力を込めてff音を繰り出していましたが、合いの手に既に鳴っているHrn.に加えてTrmb.+Trmp.が加わると、もういけません管弦の大音の前に屈するが如くPf音は隠れて聞こえなくなった瞬間となりました。第12変奏からは主調のイ短調を離れ、第18変奏で遂に変ニ長調に達すると、ここはこの曲最大の山場、ラフマニノフらしい甘美なPf.旋律(主題の転回形)が滔々と奏でられ、オケがこれ又素晴らしいアンサンブルで繰り返すのでした。この12変奏は、どうしてこの様な甘―い旋律が発想出来たのでしょう?逆転の発想だと言ってもある種天の啓示か奇蹟的心境の変化でもないと不可能な気がします。

 この変奏以降はグッチさんの演奏には益々力が漲り、第19変奏から少しずつエネルギーを増幅させながら壮麗な終結へと突っ走って行ったのでした。最終24変奏にも「怒りの日」は顔を覗かせました。

 尚この曲の演奏は、昨年ヴァイグレ読響のオーケストラで、英国のPavel Kolesnikovというピアニストが弾いたのを聴きましたので、その時の記録(抜粋)を文末に再掲しました。(24の全変奏曲の詳細に関しては、その中の(曲について)を参照)

 何時までも続く大きな拍手と歓声に答えて、何回も袖⇒ステージを往復したグッチさんは、思いを決した様にピアノの前に座り、ソロアンコール曲を弾き始めました。

《アンコール曲》 ラヴェル『左手のためのピアノ協奏曲からカデンツァ』

でした。この演奏がまた力強くて素晴らしいもので、本演よりもいい出来と思える相当感動を与えるものでした。当然会場はやんやの喝采と声援が飛び交い、自分もこの時は手を大きく前に出し痛い程強く叩いていたのでした。

 

③チャイコフスキー『幻想曲<フランチェスカ・ダ・リミニ>』

 最後の演奏曲です。②のコンチェルトシフトから楽器群は元の編成に戻った筈ですが、1Vn.は何回か数えても16人に戻らなくて15人でした。一人出れなくなった?それとも数え違いかな?他(Fl.3.Picc.持替え1)(Cort.2)(タムタム)

このテーマ(13世紀の出来事?物語)は古来多くの戯曲や音楽や絵画等の題材となって来ました。オペラも作られています。今回の曲はチャイコフスキーが1876年夏、弟モデストと共に南フランスへ旅行した時に、リヨンからパリへと向かう鉄道の中で以前からオペラの題材として興味を持っていた「神曲」中の「地獄篇」第5歌《フランチェスカ・ダ・リミニ》を読んで、この詩に「宿命に逆らいながらも真実の愛を求め続ける」という彼自身の理想を見出し、この詩を題材にした交響詩を作曲することを決意したのです。そして帰国後、『スラブ行進曲』を完成するとすぐに交響詩の作曲に取り掛かったのでした。

 その内容は兎に角、悲劇です。悲劇の最たるもの。2019-03-27に昭和音大のホールで本邦初演されたオペラ『フランチェスカ・ダ・リミニ』を観た筈なのですが、当時の記録が見当たらない。記憶でもかなりの歌唱力を持ったベルカント歌手が演じた内容はとても悲惨なものとしか思い出せません。このチャイコフスキーの曲でも冒頭から低音弦で奏される第一声は、金管(Hrn.+Trmb.+Trmp.)の如何にも暗い旋律の響きに伴われ、戦慄を覚える程。その様な旋律が延々と続いたのでした。ヤルヴィーN響は、Cb.アンサンブルがVc.とVa.に伴われて深く重い低音バイアスを掛け、金管群との競奏・強奏を演じ、それが弱音から強音に変化する弦楽アンサンブルの脹らみもまた大きなうねりと化して、見事にこのダンテの「地獄篇」に由来するという物語を白日に晒すのに成功していました。こうしたテーマは、ヤルヴィーの得意な分野の一つかも知れません。彼はこれまでベルリン・フィルとも度々共演しその足跡を残しています。「ベルリンフィル・デジタルコンサートホール」に記されている説明によると、❝パーヴォ・ヤルヴィが早くからセンセーションを巻き起こしたのは、スタンダードなレパートリーに型破りな視点で取り組み、特にベートーヴェンやブラームスの解釈において、高揚したエネルギーと息を呑まんばかりの鮮烈さに満ちた印象を残したからだ。このエストニア生まれの指揮者は2000年2月、ベルリン・フィルでデビューしたのだが、実は、もっと以前からこのオーケストラの音に親しんでいたのだという。「私はベルリン・フィルの録音を聴いて育ちました。それこそ、ほぼ毎日、聴いていましたね」。❞とのことです。今回のチャイコフスキーの尋常ならぬ(彼自身作曲後にこの曲に嫌気を抱いたという)作品の演奏は、そうした背景によりヤルヴィをしてN響を駆り立てて、もの凄い迫力を弾き出した原動力なのかも知れません。この演奏後は、(1階のS席の前方席を除いて)満員に近い観客の沸き立つ様な大歓声とブラボーの掛け声に暫し呆然として拍手を重ねるだけでした。今日はヤルヴィーにとってこのシリーズ最後の演奏会だった様でして、花束の贈呈を受け、多くのシャッターを浴びていました。

       手前はマロさんこと篠崎コンマス

 

①シベリウス/交響曲 第4番 イ短調 作品63

 さてこの曲は最初に演奏された曲なのですが、最後に記したのには理由があります。

実はこの曲は(録音も含めて)これまで聴いたことが無かった。初めて聴いた曲だったのです。一般にこの曲の演奏の特徴は付き詰めれば以下の<参考>に記したものの様なのですが、どうも自分にとっては聴後感があまり芳しくなかったのです。念のため言っておきますと、それはN響の演奏、ヤルヴィーの指揮指導に原因があるのでなくて、曲自体、シベリウスの作ったこの曲の構造自体がそうした気持ちを抱かせる原因ではないかと思ったのです。又今回の演奏会を聴きに来た大きな動機として、今年の10月にマケラ指揮オスロ・フィルが来日し、この4番も演奏するので、どんな曲なのかな?前もって聞いておこうと考えた次第です(録音を聴く前に生の印象を持ちたかったのです)。今回の指揮者はこの分野のスペシャリストとも言えるパーヴォ・ヤルヴィーさんですし、管弦楽は天下のN響ですし。それに昨年来シベリウスのシンフフォニーは(録音も含めて)結構聴くことが多く、シベリウス好きになりかけていた矢先なのでした。 一度聴いただけであれこれ言う資格は無いので、10月まで出来る限りシベリウスを聴いて、10月には天才の呼び声高いマケラが、どの様な4番を聞かせてくれるか、今から楽しみを大事にとっておこうと思ったのです。従ってノーコメントとなりました。

 

<参考>

第1楽章 テンポ・モルト・モデラート、クワジ・アダージョ、イ短調、4/4拍子。緩徐なテンポのソナタ形式で、再現部が大幅に圧縮されている。作曲者によると、曲の冒頭は「運命のように過酷に」響かなければならない。
第2楽章 アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ、ヘ長調、3/4拍子。フィンランドの清々しい風になびくようなオーボエの楽想が印象的なスケルツォ。最後は謎めいたコーダで唐突に終結する。
第3楽章 イル・テンポ・ラルゴ、嬰ハ短調、4/4拍子。2つの微細なモティーフが少しずつ成長しながら、次第に壮大な音空間を形成していく緩徐楽章。
第4楽章 アレグロ、イ長調、2/2拍子。ロンド・ソナタ形式風の快活なフィナーレ。軽やかなグロッケンシュピールの導入が斬新だが、全体の音調はいぶし銀のように深い。なお演奏によっては、グロッケンシュピールの代わりにテューブラー・ベルが用いられるケースもある。これは出版譜に「グロッケン」と記されたために生じた誤解であり、作曲者はテューブラー・ベルの響きを「あまりにも東洋的過ぎる」として忌避した。


//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////2022-09-26 HUKKATS Roc (抜粋再掲) ヴァイグレ指揮読売響/土曜マチネ演奏会

【日時】2022.9.24.(土)14.00~

【会場】東京藝術劇場コンサートホール

【管弦楽】読売日本交響楽団

【指揮】セバスティアン・ヴァイグレ   

【独奏】パヴェル・コレスニコフ(Pavel Kolesnikov)ピアノ演奏                

〈Profile〉

 カナダのホーネンス国際コンクールで優勝。ロンドンを拠点とし、BBC響、バーミンガム市響、ロンドン・フィル、ロシア・ナショナル管、トロント響などと共演。ハイペリオン・レーベルからCDをリリースし、高い評価を得ている。2020年のウィーン芸術週間などで、ダンスのアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルとJ.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲」で共演し、大きな話題を呼んだ。

 

【曲目】

①グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲

 ≪割愛≫

 

②ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 作品43

(曲について)

パガニーニ『24の奇想曲』第24曲の主題提示部分。この主題を用いて当楽曲を作曲した。
主題と24の変奏から成る。一般の変奏曲と異なり、第1変奏のあと、第2変奏の前に主題を置いている。

主題は、パガニーニのヴァイオリン曲『24の奇想曲』第24番「主題と変奏」の「主題」を用いている。すなわち、パガニーニと同じ主題を使って別の変奏を試みているのである。イ短調。

序奏:Allegro vivace イ短調 2/4
主題の部分の動機が3回繰り返される。
・第1変奏:Allegro vivace イ短調 2/4
オーケストラによって主題が間欠的に演奏される。主題:L'istesso tempo イ短調 2/4
ピアノが主題を間欠的に演奏する中、ヴァイオリンが主題を演奏する。第1変奏が主題を間欠的に演奏しているため、この主題が、あたかもこの第1変奏の変奏であるかのように聞こえる

・第2変奏:L'istesso tempo イ短調 2/4
ピアノとオーケストラが役割を交代する。後半になって変奏曲らしい装飾が十分に聞かれるようになる。
・第3変奏:L'istesso tempo イ短調 2/4
オーケストラが細かく動く中、ピアノがゆったりとオブリガードを演奏する。
・第4変奏:Più vivo イ短調 2/4
いくらか急にテンポを増す。動機を2つのパートが素早く掛け合いを行う。
・第5変奏:Tempo precedente イ短調 2/4
歯切れの良いリズムになる。
・第6変奏:L'istesso tempo イ短調 2/4
同一のテンポながら、オーケストラの動きが止まり、ピアノもひとフレーズごとに動きが緩やかになる。                  

・第7変奏:Meno mosso, a tempo  mederato イ短調 2/4
いよいよテンポが遅くなり、グレゴリオ聖歌の『レクイエム』の「怒りの日」のテーマをピアノが演奏する。ラフマニノフが生涯にわたってこだわり続けたこのテーマは、この曲にあっては前述のパガニーニの伝説に登場する悪魔を示していると言われる。
・第8変奏:Tempo I イ短調 2/4
最初のテンポに戻り、下から突き上げるようなリズムがあがってくる。
・第9変奏:L'istesso tempo イ短調 2/4
逆付点リズムのような3連符の鋭いリズムで「怒りの日」を変奏する。
・第10変奏:Poco marcato イ短調 4/4
「怒りの日」の変奏。クライマックスで3/4拍子と4/4拍子が交代する変拍子となる。静まって次の変奏を迎える。
・第11変奏:Moderato イ短調 3/4
ヴァイオリンとヴィオラが静かに同音を細かく反復する(トレモロ)中、ピアノが動機を幻想的に繰り返す。後半は拍子を失い、カデンツァ的に演奏される。そのピアノをハープのグリッサンドが飾る。
・第12変奏:Tempo di minuetto ニ短調 3/4
はじめてイ短調以外の調で奏される。「メヌエットのテンポ」とはいうもののあまりメヌエットらしさはない。後半のホルンのオブリガードが印象的。
・第13変奏:Allegro ニ短調 3/4
3拍子に変えられはするものの、主題がヴァイオリンなどにより比較的はっきりと現れる。
・第14変奏:L'istesso tempo ヘ長調 3/4
初めて長調が現れる。主題は鋭く角張って変奏される。
・第15変奏:Più vivo scherzando ヘ長調 3/4
前半はピアノだけで演奏される。ピアニスティック(ピアノ技巧的)な演奏が聞かれる。
・第16変奏:Allegretto 変ロ短調 2/4
一転して陰鬱に動機を繰り返す。
・第17変奏:Allegretto 変ロ短調 4/4(12/8)
ピアノが低音でもぞもぞと動く中、オーケストラが動機のあとの部分を繰り返す。

・第18変奏:Andante cantabile 変ニ長調 3/4
主題は別として、この曲の中で特に有名な部分である。しばしば単独で演奏される。パガニーニの主題の反行形(上下を反対にした形)[註 1]を、最初はピアノが独奏で演奏し、オーケストラが受け継ぐ。
・第19変奏:A tempo vivace イ短調 4/4
最初の調に戻り、夢が覚めたような印象を与える。ピアノがすばしこく上下へ動き回る。手の大きいラフマニノフならではの奇抜な演奏手法である。
・第20変奏:Un poco più vivo イ短調 4/4
ヴァイオリンがもぞもぞも動き回る中、ピアノが歯切れ良く鋭い音を出す。
・第21変奏:Un poco più vivo イ短調 4/4
ピアノが低音を蠢きながらときどきおどかすように高音に現れる。
・第22変奏:Un poco più vivo (Alla breve) イ短調 (4/4)
ピアノが重く鋭く和音を刻む。最後はピアノのカデンツァとなって、動機を繰り返す。
・第23変奏:L'istesso tempo イ短調 2/4
主題が明確に現れた後で、ピアノとオーケストラの掛け合いとなり、最後にはカデンツァ風となる。
・第24変奏:A tempo un poco meno mosso イ短調〜イ長調
ピアノが弱奏ですばやく動き回る。10度を超える難しい跳躍をスケルツァンド風に演奏する。金管楽器が「怒りの日」を短く奏した後、トゥッティ で盛り上がるが、最後はピアノが主題の断片を極めて弱く演奏して曲を閉じる。 

 

③リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」作品35

 (物語について)

 

《割愛》

 

   (曲について)

第1曲:海とシンドバッドの船

第2曲:カランダール王子の物語

第3曲:若い王子と王女

第4曲:バグダッドの祭り。海。船は青銅の騎士のある岩で難破。終曲

 

【演奏の模様】

①グリンカの曲。楽器編成は、全曲演奏の場合は、Fl.2、Pic.Hr.4,Timp.Vn.1,Ob.2(E.Hr),Trp.2 他Vn.2,Cl.2,Trb.3,Va.Fg.2, C.Fg.1 他 Vc.他Cb.その他Hp.Pf.

 

《割愛》

 

②ラフマニノフ

楽器編成は管が①より幾つか減り、2管編成弦楽五部14型。

かなり前6月にはチケットを買っていた演奏会です。シェエラザードが聴きたかったので。従ってピアノ独奏者が代わったことは演奏会直前まで知りませんでした。来れなくなったピアニストも後任も知らない演奏者なので、別にそれ程期待はしていませんでした。

登壇したピアノ独奏者のコレスニコフはおっとりした学生の様な感じの中背の若者で、ピアノに向かって広げた手は結構大きく見えました。最初はポンポンポンと軽く鍵盤を押し、暫くはオケに対抗出来るのか懸念した位小さな音で弾いていました。それが第三変奏辺りからかかなり力を入れて速いパッセッジでピアノ強打し始めたのです。

七変奏の緩やかな旋律的な箇所はゆったりとオケに合わせていましたが、突然脱兎の如くスピードを上げテーマのこれは半音階ずらして作曲しているのでしょうか?非常に面白い近代的響き(この辺はロシア的では全くなくアメリカ風の響きですね)の第八変奏を相当の荒々しさで弾きその後も、次第に強奏場面を多く見せました。ゆっくりな箇所も結構あって、11変奏では、Vn.のトレモロに合わせ、12変奏ではCl.の調べに合わせ(後にHr.に)てスローに弾いていた。第18変奏はとても有名でキレイな素晴らしい旋律です。変奏というよりも変奏の花群に突然咲いた奇跡の大輪とも言えるかも知れません。色々な分野で利用されている曲ですね。ここは独奏者は体を少し揺すりながらオケともども優美なメロディに酔い痴れて演奏しているかの様でした。

 こうした様子で最終24変奏を弾き切ったコレニスコフは、ややはにかんでいる様にして、ヴァイグレの手引きで挨拶しました。

 それにしても第一変奏から二十四変奏までラフマニノフは、ヴァイオリン曲の一テーマをよくもこんなに沢山、ヴァライエティに富んで変奏させたものだと感心したり少し呆れたり。ピアニストの練習曲としても重要な曲でしょう。確かに聴いていて技巧がものすごい箇所も多く、面白く感じるかも知れませんが、ピアノ本来の持ち味を、情緒を十二分に出せる曲ではないと思います。袖と舞台を何回か行ききし、大きな拍手に挨拶したコレスニコフは、やおらピアノに座るとアンコール曲を弾き始めました。

ショパン『ワルツOp.19遺作』

別名では『ワルツイ短調KK.IVb-11遺作』との作品名で呼ばれる曲でした。

 とてもしっとりしたいい演奏でした。本演奏より良かったくらい。

 彼にはこうした曲が似合っているかも知れない。恐らく技術はあってもラフマニノフの2番コンチェルトの演奏は向いていないかも知れません。(聴いていないのであくまで推測に過ぎませんが) 

 

③交響組曲「シェエラザード」

 全4楽章編成。

 

《割愛》


 

【演奏の模様】

①楽器編成は、全曲演奏の場合は、Fl.2、Pic.Hr.4,Timp.Vn.1,Ob.2(E.Hr),
Trp.2 他Vn.2,Cl.2,Trb.3,Va.Fg.2, C.Fg.1 他 Vc.他Cb.その他Hp.Pf.

 

《割愛》

 

②ラフマニノフ

楽器編成は管が①より幾つか減り、2管編成弦楽五部14型。

かなり前6月にはチケットを買っていた演奏会です。シェエラザードが聴きたかったので。従ってピアノ独奏者が代わったことは演奏会直前まで知りませんでした。来れなくなったピアニストも後任も知らない演奏者なので、別にそれ程期待はしていませんでした。

    登壇したピアノ独奏者のコレスニコフはおっとりした学生の様な感じの中背の若者で、ピアノに向かって広げた手は結構大きく見えました。最初はポンポンポンと軽く鍵盤を押し、暫くはオケに対抗出来るのか懸念した位小さな音で弾いていました。それが第三変奏辺りからかかなり力を入れて速いパッセッジでピアノ強打し始めたのです。

七変奏の緩やかな旋律的な箇所はゆったりとオケに合わせていましたが、突然脱兎の如くスピードを上げテーマのこれは半音階ずらして作曲しているのでしょうか?非常に面白い近代的響き(この辺はロシア的では全くなくアメリカ風の響きですね)の第八変奏を相当の荒々しさで弾きその後も、次第に強奏場面を多く見せました。ゆっくりな箇所も結構あって、11変奏では、Vn.のトレモロに合わせ、12変奏ではCl.の調べに合わせ(後にHr.に)てスローに弾いていた。第18変奏はとても有名でキレイな素晴らしい旋律です。変奏というよりも変奏の花群に突然咲いた奇跡の大輪とも言えるかも知れません。色々な分野で利用されている曲ですね。ここは独奏者は体を少し揺すりながらオケともども優美なメロディに酔い痴れて演奏しているかの様でした。

 こうした様子で最終24変奏を弾き切ったコレニスコフは、ややはにかんでいる様にして、ヴァイグレの手引きで挨拶しました。

 それにしても第一変奏から二十四変奏までラフマニノフは、ヴァイオリン曲の一テーマをよくもこんなに沢山、ヴァライエティに富んで変奏させたものだと感心したり少し呆れたり。ピアニストの練習曲としても重要な曲でしょう。確かに聴いていて技巧がものすごい箇所も多く、面白く感じるかも知れませんが、ピアノ本来の持ち味を、情緒を十二分に出せる曲ではないと思います。袖と舞台を何回か行ききし、大きな拍手に挨拶したコレスニコフは、やおらピアノに座るとアンコール曲を弾き始めました。

ショパン『ワルツOp.19遺作』

別名では『ワルツイ短調KK.IVb-11遺作』との作品名で呼ばれる曲でした。

 とてもしっとりしたいい演奏でした。本演奏より良かったくらい。

 彼にはこうした曲が似合っているかも知れない。恐らく技術はあってもラフマニノフの2番コンチェルトの演奏は向いていないかも知れません。(聴いていないのであくまで推測に過ぎませんが) 

 

③<割愛>