【指揮者言】
「私はいつもオペラを通してモーツァルトに向き合うことにしています」とキリル・ペトレンコは述べます。ヨーロッパ・コンサート2023は、モーツァルトを中心としたプログラムで開催されます。17歳のときに作曲した交響曲第25番では、脈打つような劇的緊張感が生み出されます。また、宗教作品から陽気なモテット《エクスルターテ・ユビラーテ》、オペラ的な表現を備えた《戴冠式ミサ》が演目に選ばれました。著名な独唱の4人に加え、バルセロナを拠点とするカタルーニャ聖歌隊が合唱を務めます。
【日時】2023.5.1.18:00~ライヴ(時間差再配信2023年5月2日02:00~)
【会場】カタルーニア大聖堂(サクラダ・ファミリア)
【鑑賞場】ベルリンフィル・デジタルコンサート・ホール
【管弦楽】ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
【指揮】キリル・ペトレンコ
【出演】カタルーニャ聖歌隊
ルイーズ・オルダー
ヴィープケ・レームクール
リナード・フリーリンク
クレシミル・ストラジャナッツ
【曲目】
①ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト『交響曲第25番ト短調 K. 183』
②ヴァレンティン・シルヴェストロフ『
混声合唱とアカペラのための《ウクライナへの祈り》』カタルーニャ聖歌隊
③武満徹『弦楽のためのレクイエム』
④ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト『モテット《アヴェ・ヴェルム・コルプス》K.618』 カタルーニャ聖歌隊
⑤ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト『モテット《エクスルターテ・ユビラーテ》K. 165』独唱ルイーズ・オルダー(ソプラノ)
⑥ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト『ミサ曲ハ長調《戴冠式ミサ》K. 317』
ルイーズ・オルダー(ソプラノ) ヴィープケ・レームクール(アルト)
リナード・フリーリンク(テノール) クレシミル・ストラジャナッツ(バスバリトン)
カタルーニャ聖歌隊(合唱)
【感想】
ペトレンコ率いるベルリンフィルが欧州ツアの第1陣として、スペイン・バルセロナを訪れ、世界一の大聖堂との呼び声が高い、彼の『サクラダ・ファミリア』内において、演奏会を行い、その模様を「ベルリンフィル/デジタル・コンサートホール」に於いて、ライヴ配信を実施したものです。前回のライヴ配信は「マケラ指揮ベルリンフィル」でしたがその映像も音声もU-Tubeなぞよりも、クリアで迫力あるものでした(インターネット関連会社と組んで独自の配信回線を構築している様です)。今回は首席指揮者のキリル・ペトレンコ指揮で、主としてモーツァルトの曲を演奏し、もう一つは我が日本が世界に誇るべき作曲家、武満徹の「弦楽のためのレクイエム」でした。合唱団は地元バルセロナの「カタルーニュ聖歌隊」、ソリストも実力者を揃え、ソプラノは英国生まれの若手リリック・ソプラノのルイーズ・オルダー、アルトには安定した歌唱と評判が高いヴィープケ・レームクール、テノールにはベルリン国立歌劇場のリナード・フリーリンク、バス・バリトンにクロアチア出身で幾多のコンクールで活躍をし、今世界的注目となっているクレシミル・ストラジャナッツの四者を配しました。感想を一言記しますと、①はペトレンコ・ベルリンフィルの一分の隙もない完璧なモーツァルト演奏で、この17歳に時の作品の持つ或る種暗い雰囲気を、宗教的レヴェルにまで昇華出来ていたと思います。一種のレクイエムか?②は短くタイトルの文字通り死者のための鎮魂歌、大混声合唱団の迫力(アカペラ)は驚く程のエネルギーが発散されていました。
③の武満「弦楽のためレクイエム」は素晴らしかった。以前、武満の『波の盆』という作品を国内オケの演奏で聴いたことがあるのですが、心安らかな祈りと言った感じの曲でした。今回のベルリンフィルの武満演奏は日本的情緒に素晴らしい親和力をたたえたもので、耳にすーと入って来る演奏でした。
④は堂々とした合唱団の迫力は並々ならぬものが有りました。⑤は若い時、アーリン・オジェーがバーンスタイン指揮バイエルン放送交響楽団で、どこだったか忘れましたが大聖堂内で歌うCDを持っていて、よく聴いていたので懐かしい曲でした。ソリストのルイーズ・オルダーは完璧とまでは言えませんが、力強い綺麗なソプラノで喜々とした様子で歌い、特に細かい変化の旋律が見事でした。
⑥は合唱隊、ソリストが三管編成のベルリンフィルをバックに歌う大同団結のモーツァルトで、恐らく他の作曲家の同規模の演奏構成団の演ずる曲と比べても、その迫力たるや半端なものでないもの凄い音の大建造物でした。あと3年で完成予定というサクラダ・ファミリアに相応しい一大エヴェントだったと言えるでしょう。