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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

ミユーザサマーフェスタ『フィナーレコンサート』

      •  

【日時】2022.8.11.15:00~

【会場】ミューザ川崎シンフォニーホール

【管弦楽】東京交響楽団

【指揮】原田慶太楼(東京交響楽団正指揮者)

【独奏】岡本誠司

<独奏者Profile>

1994年6月生まれ。2017年に東京藝術大学を卒業後、ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学の修士課程で研鑽を積みながら、日本およびヨーロッパで精力的にソロや室内楽の演奏活動を行っている。2019年秋よりクロンベルク・アカデミーに在籍。

2014年、第19回J.S.バッハ国際コンクール(ドイツ・ライプツィヒ)のヴァイオリン部門にてアジア人で初めて優勝、併せて聴衆賞を受賞。2016年、第15回ヴィエニャフスキ国際コンクール(ポーランド)第2位。

2021年9月の「ミュンヘン国際音楽コンクール」において日本人三人目となる優勝を果たす。

これまでに国内では、読売日本交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、仙台フィルハーモニー交響楽団、オーケストラ・アンサンブル金沢、群馬交響楽団、千葉交響楽団、藝大フィルハーモニア管弦楽団などと共演。海外では、ベルギー国立管弦楽団、サンクトペテルブルク交響楽団や、NFMヴロツワフ・フィルハーモニー管弦楽団、オポーレ・フィルハーモニー管弦楽団などポーランド各地のオーケストラとも多く共演を重ねている。

これまでに富川歓、中澤きみ子、ジェラール・プーレ、澤和樹、アンティエ・ヴァイトハースの各氏に師事。

2022年 文化庁長官より表彰。第31回出光音楽賞を受賞。NPO法人イエロー・エンジェルより、M.ゴフリラー(1702年)の貸与を受けた。

【曲目】

    • ①コルンゴルト:組曲「から騒ぎ」から     
      1.序曲                     
      2.花嫁の部屋の乙女               
      3.ドグベリーとヴァ―ジェス、
      4.間奏曲                                        
      5.仮面舞踏会(ホーンパイプ)

      ②コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 *

      ③武満徹:3つの映画音楽
       1.映画「ホゼー・トレス」から 訓練と休息の音楽
       2.映画「黒い雨」から 葬送の音楽
       3.映画「他人の顔」から ワルツ

      ④プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」組曲から
       1.情景(第1組曲)
       2.少女ジュリエット(第2組曲)
       3.モンタギュー家とキャピュレット家 (第2組曲)
       5.仮面(第1組曲)
       6ロメオとジュリエット (第1組曲)
       7.タイボルトの死 (第1組曲)
       8.ジュリエットの死 (第3組曲)

【曲目解説】

 

【演奏の模様】

 開演40分前にプレトークが20分間あり、原田さん、岡本さん、水谷さん(コンマス)の三者が登壇し、話し合われました。その要旨は次の様です。

a.ミュンヘンコンクールでの優勝の報を聞き、原田さんがすぐ岡本さんとコンタクトをとった。その時今回のフェスタフィナーレへの出演のアポを取り、独奏曲を「コルンゴルドの協奏曲」に決めた(原田)。  

b.この協奏曲は47歳で作曲され、ハイフェッツが初演し、彼はコルンゴルドに、さらにハイテクニックを駆使できる様編曲を要請、現在の形になった(岡本)。

c.耳に聴きやすい協奏曲だが、オケのパートを頭に入れた上で弾く必要がある難しい曲(水谷)

d.今日の演奏曲のあちこちで「ハーモニウム(※注)」という楽器が鳴らされ、演奏者は木村(理佐?)さん。その奥ゆかしい音に注目して欲しい。(原田)

e.コルンゴルドは①の曲を23歳で作曲、②の協奏曲は48歳で作った。この時間の経過と曲の変化を見較べて欲しい(原田)

f.今回の選曲のポリシーは、先ず④の曲「ロミオとジュリエット」を演奏したいというベースがあって、その上に組み立てた。シエイクスピア作の同名喜劇がもととなった曲「から騒ぎ」を作曲したコルンゴルドを最初に演奏、しかも彼が1945年にヴァイオリン協奏曲を作曲した時、47歳、プロコフフィエフが④の曲を作曲したのも47歳だった。又二人共戦争により外国に亡命したという符合があったので選曲。こうした符合(テーマ)の他にも隠れたテーマがある(原田)

g.日本人作曲家の曲も演奏するというポリシーを持っているので、今回は自分が好きな映画音楽から武満徹も選曲。彼の曲の演奏は日本では初めてなので嬉しい(原田)

h.隠れテーマを聴衆に探して貰ってアンケートに回答し、全答回答者にはTシャツプレゼントでも付ける企画を次回やってはどうでしょう。(水谷)

(※注)

この楽器は、パーラーオルガン(parlor organ)、パンプオルガン(pump organ)、キャビネットオルガン(cabinet organ)などさまざまな名称で呼ばれたが、フリーリードを用いて足で空気を送って発音するタイプのオルガンであることには変わりはない。通常は一段鍵盤だが、需要が増えるにつれ二段の鍵盤、チェレスタつき二段鍵盤、最盛期には電気モーターを備えたペダル鍵盤つきの商品も売り出された。


ハーモニウム

パイプオルガンの設備投資が余りにも高額なため、アコーディオンのようなリードを用いてオルガンの代用を図って生み出されたのがこの楽器である。20世紀初頭にはKunstharmonium(芸術的ハーモニウム)とまで呼称され、オルガンを模したさまざまなストップが備え付けられた。特徴的なのが、鍵盤を一回押しただけであとは自動で持続されるProlongement(プロロンジュマン)と呼ばれる特殊装置であり、この持続音に乗ってカンティレーナが歌われる形式の作品も生み出された。

本物のオルガンの音色にはやはり及ばず、この楽器も衰退するのに時間はかからなかった。1980年代以後、シンセサイザーで音色を模倣するのも容易であったことも、追い討ちを掛けた。マックス・レーガージークフリート・カルク=エーレルトの作品を演奏するためには、過去に製作された楽器を修理するしか方法がない。それでも、この楽器に対する情熱は世界中で根強く、各種財団等が楽器の保存に努めている。

 開演直前の会場の大ホールには一階二階が7~8割方入っていましたが(コロナ対策の空席も相当数あり)、それより上の階は多くみても5割方でしょうか?(終演時には、もっと増えていました。)

 

①コルンゴルトの組曲「から騒ぎ」は小さな楽器群、一管編成弦楽五部1Vn.(2) 2Vn.(2) Va(2) Vc(2) Cb(0)、Timp他の打楽器(大太鼓、タンブリン、トライアングル他)鍵盤楽器(ハーモニウム、ピアノ等)です。

 2曲目でのヴァイオリンのソロやFl.ソロが綺麗で心地良い。4曲目のPf.とVc.のソロの旋律も美しい。

 5曲目のHr.のソロは勢いが有り、Hr.が中心となりTimp.も入って、結構活発な演奏を原田さんは、元気一杯の振りでオケを引っ張り、このコルンゴルトの曲全体としては中々面白みのある曲でした。綺麗な旋律の片鱗も窺えた。

 

②のコルンゴルトの協奏曲では管弦の増強があり、2管編成(サックス入る)弦楽五部1Vn.(12)2Vn(10?)Va(8?) Vc(6) Cb(6) 

第一楽章

岡本さんの弾くヴァイオリンは甘美なメロディを繰り出し、カデンツァ部は相当速いテンポで、重音も綺麗に出ていました。

この曲、緩(部分急)ー緩ー急のテンポです。

第二楽章

最初から余りに甘美、美しすぎる旋律のソロヴァイオリンです。特に高音の細い調べ(時にはハーモニック的高音もあり)、あたかも絹糸か蜘蛛の糸が風に揺られてたなびいているが如き繊細な演奏でした。岡本さんは低音のソロでもそれ程太い音色ではないですが、美しく演奏していた。Vc.の伴奏的アンサンブルも効果的でした。

第三楽章

 冒頭打楽器がバーンと打ち鳴らし、Vn.ソロは速いテンポでpizzicatoもまじえながらながら進み、それを速くてかなりの強奏で弦楽アンサンが裏打ちし、Hrn.とTimp.も伴奏的に並走しています。ソロVn.はその後物凄く速いテンポで疾走しました。

 次の主題もVn.ソロが美しく奏で、弦楽アンサンブルが力強く軽快な旋律を醸し出している。背景ではTimp.が一定間隔でバン、バン、バンと拍子を取っています。この辺りも甘美な風潮で、続いてFl.の速いメロディが流れ、ソロVn.が主題の変奏を奏でる。この辺りのhrn.群の大きな音は見事に揃っていて◎でした。

 岡本さんはハーモニック的高音を立てると、鐘が鳴り、さらに速いテンポで最後のパッセージを弾きHrn.は高々と鳴り響き、大太鼓とTimp.が最後を〆たのでした。

 この曲は初めて生で聴きましたが、岡本さんのヴァイオリンから紡ぎ出される音は、総じて繊細で綺麗、絹糸という例えがピッタリな音質で、テクニック的にも完全無欠特に重音演奏は見事でした。ただ欲を言えば、処により荒削りの音の強さが欲しい箇所も散見された。やや弱いかなという感じを受けました。

 大きな拍手に答えて、ソリストアンコール演奏がありました。アンコール曲は、

クライスラー『レシタティーヴォトスケルツオ・カプリーズ』。

 かなり低音の調べで入り、すぐ低い音で重奏。見事な弓裁き、相当高度なテクニックです。これまで多くのヴァイオリニストの演奏を聴いて来ましたが、世界には上手なヴァイオリン弾きは多くいるのですね。しかも日本人で。相当な高度なレヴェルだと思いました。

《20分の休憩》

 休憩後は武満徹の作品『三つの映画音楽』でした。楽器構成は弦楽のみで管・打は入りません。弦楽五部は、14型、14-12-12-8-6.

 第1曲は映画『ホゼー・トレスから訓練と休息の音楽>』第2曲『黒い雨から<葬送の音楽>』第3曲『他人の顔から<ワルツ>』。いずれも武満が作曲した曲を組合せて自ら編曲した組曲です。

 この一月に笠智衆主演の映画『波の盆』からの曲を神奈フィルの演奏で聴きましたが仲々いい響きを持った曲で彼の映画音楽は秀れていると思いました。今回の曲も同感でしたね。第1曲ではCb.の低音が心地良く土台を固め、そのピツィカートはややジャズ風味も交え、1Vn.のアンサンブルは綺麗でした。

2曲目はCb.の嘆き悲しむ様な低音の不気味なアンサンブルが効果的なニュアンスを出し、盛り上がる箇所ではメリハリもついているうねる様な調べの後静かに曲を閉じました。

第3曲は1Vn.の洒落た旋律が耳に届き、繰り返される主題の変奏、Vc.主体のテーマソング演奏はりリズム感も良いワルツを踊る人々が目に浮かぶ様。

 

 最後の曲はバレエ音楽『ロミオとジュリエット』。楽器編成はさらに増強、三管編成です。再度サックスも入りました。原田さんがこの曲を原点に選曲したという位ですから余程演奏したかったのでしょう。原田さん特有の張り切った指揮指導で、この筋道のある多くの組曲から筋道の無い(と思われる)選曲された7曲を元気に演奏しました。オケも皆張り切り、特に第5曲「ロメオとジュリエットの逢瀬」の曲は綺麗な旋律ではないですが、独特の個性の強い印象深い曲で、今回の演奏ではやはり一番卓越していた感が有ります。

 原田さんの指揮は時々見ますが、いつも若々しさと緻密に計算された知的かつ体力的な演奏指揮に共感を覚えます。はっきりしていますね。人によっては好き嫌いが分かれるかも知れませんが、自分としては好みのタイプですね。今回も共感しました。

 このプロコフィエフの曲の演奏は、以前(2020年11月)に、この同じミューザ大ホールでウィーンフィルの来日公演があった時に演奏されました。その時の指揮者は、今のロシアのウクライナ侵略戦争下では、世界の楽壇から排除されているゲルギエフでした。当時と現下の状況を考えると、❝つわものどもの夢の後❞ の感がしますね。その時の記録を参考まで文末に再掲(抜粋)しました。

 尚、原田さんは予定曲の演奏が終わって、一度袖に戻ってから再度ステージに現れると、指揮台に飛び上がり、いきなりアンコール曲を演奏し出しました。この辺りももったいぶらず直截的で気風が良い。曲名は、同じく『ロミオとジュリエット』より<朝の踊り>でした。

 

//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////再掲(抜粋)

2020-11-08

《速報1》『ウィーンフィルハーモニー管弦楽団来日公演(2020.11.8.atミューザ川崎』を聴きました。

 待ちに待ったウィーンフィルの公演が、サントリーホールに先駆けて、ミューザ川崎で行なわれました。指揮のゲルギエフは、今や世界的な伝説的大指揮者とも言えるでしょう。15年振りの来日です。この指揮者とウィーンフィルの組み合わせで生演奏を聴けることは、、コロナ禍の世界状況にあって夢の様な大事件です。音楽を愛する人々だけでなく、コロナに苦しめられているすべての人々に夢と希望を与えることでしょう。世界的な大ニュースです。

演奏会の概要は以下の通りです。

 

【日 時 】

2020年11月8日(日) 17:00開演

 【会 場 】

ミューザ川崎シンフォニーホール

 【演 奏】

ウィーンフィルハーモニー管弦楽団

 【指 揮】

   ワレリー・ゲルギエフ

 *ゲルギエフは生まれ(1953年)はモスクワですが、長くレニングラード(サンクトペテルブルグ)との関わり合いが深いものがあります。20歳台前半でマリエンスキー劇場の指揮者となり、現在まで同劇場の総裁を務めロシアのオペラ等の発展に大きな貢献をしてきました。ロンドン交響楽団をはじめウィーンフィル他多数の世界的交響楽団を指揮し、今や世界的指揮者とされています。プロコフィエフの曲を得意とする。

【楽器構成(曲で入れ替え有)】 

基本、拡張された2管編成。

木管楽器:フルート3(1人はピッコロ持ち替)、オーボエ2、コーラングレ、クラリネット2(第2奏者は小クラリネットを兼ねる)、バス・クラリネット、テナー・サクソフォーン、ファゴット2、コントラファゴット 
金管楽器:コルネット、トランペット3、ホルン4、トロンボーン3、チューバ 
打楽器:ティンパニ、トライアングル、ウッド・ブロック、マラカス、タンブリン、小太鼓、シンバル、大太鼓、鐘、
(1名のティンパニ奏者と5名の打楽器奏者)

鍵盤楽器:オルガン、ピアノ、チェレスタ 
撥弦楽器:ハープ2、
擦弦楽器:独奏ヴィオラ・ダモーレ(もしくはヴィオラ)、弦楽5部 基本10型
弦楽器の人数は特に指定されていないが、コントラバス(8)が5声に分割される部分がある。

【演奏曲目】

①プロコフィエフ:バレエ音楽『ロメオとジュリ エット:作品64 』

 (第2組曲より)

 1.モンタギュー家とキャ ピュレット家、

 2.少女ジュリエット、

(5.仮面、第1組曲)

 7.ジュリエットの墓の前のロメオ 

 

②プロコフィエフ『ピアノ協奏曲第2番ト短調 作品16』  

 

③チャイコフスキー『交響曲第6番口短調作品74「悲愴」』

 

【演奏速報】

    今回はプロコフィエフの曲が中心でしたが、これはゲルギエフが最も得意とするところです。

①『ロミオとジュリエット』

バレエはほとんど観ないのですが、これらの曲は組曲として結構演奏されるので聴いたことがありました

①ー1は、冒頭クラリネットのジャジャッチャジャッチャジャッチャジャジャッチャジャという上下にうねる音にテューバの伴奏音が重なり、弦のアンサンブルも寄り添ってスタートしました。何と厚みのある、迫力ある金管群の音でしょう。 

 ゲルギエフは非常に細い耳掻きの様な指揮棒を持ち他の指を広げ、時々指をひらひらとあたかもピアノの鍵盤をなぞっている様な仕草で、譜面台に楽譜を置いて静かに指揮していました。これは、おそらく、ウイーンフィルとのリハーサルの時間が少なくて、また今回の演奏曲は組曲からの選抜なので、やはり楽譜を置いておいた方が間違いないでしょう。各曲の特徴、演奏の一般的特徴は、以下の曲目解説を参考とするとして、一番印象的なのは、弦と金管の迫力ある響きでした。

①ー2

 Ft や Cl のソロなどの活躍と弦(Vc+Vn)とのつながり、pizzicatoとの掛け合いが印象的

①ー5

 曲の軽快さが弾ける様

①ー7

ゆったりとしたしめやかな曲を楽団は 悲劇性を将にはらんでいるようにドラマティックに表現したのが印象的

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参考曲目解説《千葉フィル指揮者金子建志氏の曲目解説より抜粋》】

 

⚪モンタギュー家とキャピュレット家(第2組曲の1)

 クレッシェンドして威嚇するようなトゥッティの不協和音に達する2回の大波は、ヴェローナの大公エスカラスの主題。街頭での両家の小競り合いが決闘も交えた騒乱になりかかったとき警鐘と共に現れ、「今後、平和を乱す者は死刑に処す」と宣言する。

 プロコフィエフは不協和音を絶壁的に断ち切った後、ロ短調の和音がpppで身をすくませたように残る絶妙なオーケストレーションを施している。この領主の描き方は、原作よりも遥かに威圧的で、帰国した祖国ソヴィエトでプロコフィエフを待っていたスターリンの恐怖政治を投影しているという見方は的を射ているだろう。

 弦による「騎士たちの踊り」とホルンが居丈高に咆哮する「決闘」の間に、フルートによる楚々とした「ジュリエットの踊り」が象徴的な対比をみせる。

 

⚪少女ジュリエット(第2組曲-2)
  十代前半の娘らしく活発に飛び跳ねる様子「少女ジュリエット」で始まり、女性的な優雅さ。フルートによる「恋への憧れと不安」から、曲はより内面へと入り、チェロとサクソフォーンのソロが、その予感を繊細に歌い上げる。

 ジュリエットは12歳。当時は早婚で、原作では母キャピュレット夫人がジュリエットに「私がお前の年頃には、お前という子を生んでおりました」という台詞があり、年頃だから、といって夜会に招待してあるパリスとの婚姻を勧める。

 

⚪仮面(第1組曲-5)
  ロメオ、マーキュシオ、ベンヴォーリオの親友3人組は、仮面を付けて敵方の屋敷の舞踏会に客として紛れ込む。陽気で冗談好きなマーキュシオの性格は、〈真夏の夜の夢〉の悪戯好きの妖精パックと瓜二つの、マブの女王を絡めた台詞をシェイクスピアが語らせていることからも明らかで、プロコフィエフはそれを描く。

 他にも仮面の者は大勢いるので敵方とは気付かれないが、独り、タイボルトは声からロメオだと特定。決闘を始めようとするがキャピュレットにたしなめられ、騒ぎには至らない。

 一方、ジュリエットに一目惚れしたロメオは、巡礼と名乗って近づき、接吻を交わす。その直後、ロメオは、乳母の言葉からキャピュレットの娘だと知るが、恋の炎を消すことはできない。一方のジュリエットも恋に落ち、乳母から、敵方モンタギューの息子と聞かされて愕然とするが、もはや手遅れだ。

 

⚪ジュリエットの墓の前のロメオ(第2組曲-7)
  ローレンスは、「親にパリスとの結婚を迫られているジュリエットに、42時間、仮死状態に陥る薬を飲ませる」→「葬儀が行われ、遺体は納骨堂に安置される」→「目覚めた頃、ロメオが納骨堂に入り、二人してヴェローナを去る」という策をジュリエットに言い聞かせ、薬を飲んでもらう。ところが、この策を伝える手紙が手違いでロメオに届かなかったために、「ジュリエット死す」の伝聞だけを聞いて納骨堂に忍び込んだロメオは、遺骸として横たわるジュリエットの姿に愕然とする。

 曲は「死」を変奏的に繰り返す悲痛なエレジー。打楽器の強奏を伴う最後の頂点は、絶望のあまり服毒自殺するロメオを表す。静かなコーダで「ロメオへの呼びかけ」の背景で第2ヴァイオリンがリズミックな「ジュリエットの幻影」が奏されるが、これは次第に意識のもどるジュリエットの脳裏に浮かぶ、生への憧れともとれるし、死の刹那にロメオの脳裏を過る、生き生きとしたジュリエットの姿とも考えられる。

 この曲は、第2組曲の最後に置かれているため、ジュリエットの死を暗示する5小節のコーダが加えられているが、内容は、次曲と重複するため、カットしてアタッカで続けられる。

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