HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

東京バレエ団初演『ロミオとジュリエット(ジョン・クランコ振付)』鑑賞(初日)

このバレエ公演は、東京バレエ団が「オネーギン」に続いて上演するドラマティック・バレエの巨匠クランコの傑作!です。             

     

クランコ版の振付は、先月来日予定だったもののコロナ禍で来日出来なく、日本公演が中止になったドイツの「シュツットガルト・バレエ団」が採用している振り付けです。主催者発表のイントロを以下に記します。

東京バレエ団が「オネーギン」に続いて上演するドラマティック・バレエの巨匠クランコの傑作!

2010年に傑作「オネーギン」全幕の初演に成功した東京バレエ団が、この春、巨匠ジョン・クランコの2作目の物語バレエに挑みます。それが、文豪シェイクスピアの名作を題材としたバレエ「ロミオとジュリエット」。東京バレエ団にとっては2014年に上演したノイマイヤー版に続く2つ目のバージョンとなります。クランコによる「ロミオとジュリエット」は、彼とシュツットガルト・バレエ団の名声を最初に知らしめた作品で、数あるバレエ版の中でも金字塔としての評価を確立しています。あらゆる意味で劇場人であったクランコは、巨匠美術家ユルゲン・ローゼによる2層に構えた壮大な装置をすべての場面で効果的に使い、民衆のざわめきと貴族たちの威勢、対立する二つの家を巧みに対比させる演出で劇的なテーマを浮かび上がらせていきます。その中にあって人間を生き生きと描き出す演技とダンスからは、言葉を発していないのが不思議なくらいキャラクターたちの感情が伝わってきます。ことにロミオとジュリエットのパ・ド・ ドゥは、有名なバルコニーの場面から教会での結婚式、寝室での別れ、そして最後の墓室の場面まで、まるで恋 人たちの語らいが聞こえてくるかのようにどこまでもナチュラルで温かい感情に充ちて、胸をしめつけるような感動が押し寄せてくるのです。バレエ界の“グレイテスト・ストーリーテラー”と呼ばれたクランコの名作を、東京バレエ団の成長著しいダンサーたちの競演でお楽しみください。

【演目】ロミオとジュリエット

【上演】東京バレエ団、初演

【上演期間】2022.4.29.(金・祝)~5.1.(日) 三日間

【会場】東京文化会館 

【鑑賞日時】2022.4.29.初日 

【振付】ジョン・クランコ 

【音楽】セルゲイ・プロコフィエフ 

【管弦楽】東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 

【指揮】ベンジャミン・ポープ  

【装置・衣装】ユルゲン・ローゼ  

【上演時間】約2時間45分(休憩含む)

【出演(4/29)】

ジュリエット:沖 香菜子  ロミオ:柄本 弾 他           

その他 

<キャピュレット家>
キャピュレット公:木村和夫 

キャピュレット夫人:奈良春夏 

ティボルト:安村圭太

パリス:大塚 卓

<モンタギュー家>
モンタギュー公:中嶋智哉
モンタギュー夫人:二瓶加奈子

マキューシオ:宮川新大
ベンヴォーリオ:樋口祐輝

 

【粗筋】

<第一幕>

第1場 市場 

 明け方、モンタギューの息子、ロミオが美しいロザラインに愛の告白をしている。日が昇ると、市場は街の人々でいっぱいになり、そこには、不倶戴天の敵ともいうべきキャピュレット家とモンタギュー家の者たちもいる。怒りがぶつかり合い、争いが始まる。ヴェローナ侯が現われ、両家に対しこれ以上不仲が続くようだったら両者に罪を与えると警告し、場合によっては死刑にも処すると宣告する。ロミオと友人のベンヴォーリオとマキューシオは、キャピュレット家の親族の男、ティボルトとしぶしぶと和解を示す。

第2場 キャピュレット家のジュリエットの次の間 

 ジュリエットは、母親のキャピュレット夫人からはじめての舞踏服を授かる。そして翌日、フィアンセのパリス伯爵と初めて会うことになっていることを聞かされる。いよいよ彼女は、少女時代に別れを告げねばならない。

第3場 キャピュレット家の外                     

 キャピュレット家の舞踏会につぎつぎと客人が訪れ、中にはロザラインの姿もある。彼女を追って、仮面をつけたロミオと友人たちも舞踏会に現われる。

第4場 舞踏会場 

 ジュリエットは客人らとパリスに紹介される。パリスと踊りながら、彼女とロミオは互いに見つめあい、一目で恋に落ちる。ロミオの素性を怪しむティボルトは対決しようとするが、もてなしの慣習に従おうとするジュリエットの父親に止められる。

第5場 ジュリエットのバルコニー  

 寝室のバルコニーに出てジュリエットはロミオのことを夢想している。そこへ彼が庭に現われ、ふたりは永遠の愛を誓い合う。

<第二幕>
第1場 市場                              

 広場はカーニバルで盛り上がっている。夢心地のロミオは周囲のお祭り騒ぎにも興味がない。ジュリエットの乳母が手紙を届けに来て、そこにはジュリエットから僧ローレンスの礼拝堂で会いたいと書いてある。

第2場 礼拝堂                           

 修道院で僧ローレンスは若い恋人たちの結婚に立ち会う。

第3場 市場  

 カーニバルの真っ最中に、ロミオは広場へ戻ってくる。ティボルトが話しかけるが、ロミオは闘おうとはしない。怒ったマキューシオがティボルトと決闘し、彼の手でマキューシオは死をとげる。呆然として取り乱したロミオは、ティボルトに襲いかかり殺してしまう。

 

<第三幕>                                

第1場 寝室               

 ジュリエットの寝室で恋人たちは夜明けに目覚め、追放の身となったロミオはジュリエットのもとを、ヴェローナを去らねばならない。キャピュレット夫人がパリスを伴って入ってくるが、ジュリエットはパリスを拒絶する。

第2場 礼拝堂                               

ジュリエットが僧ローレンスに助けを求めると、ローレンスは仮死状態になれる眠り薬をジュリエットに与え、「ロミオがキャピュレット家の墓所でジュリエットとおちあえば、ふたりでそこから一緒に逃れられる」と説明する。

第3場 寝室                                             両親が戻ると、ジュリエットはパリスとの結婚を承諾する。パリスが両親と立ち去ると、ジュリエットは眠り薬を飲み、発見した家族と友人らはジュリエットが死んでしまったと思う。

第4場 キャピュレット家の地下納骨堂                                僧ローレンスからの計画を明かす知らせを受け取っていなかったロミオは、ジュリエットが死んでしまったと思い込み、墓所へ駆けつける。そこでいたみ悲しんでいるパリスを見つけ殺してしまう。最期にジュリエットを抱きしめ、ロミオは短剣を心臓に突き刺す。ジュリエットが目覚め、息絶えたロミオを見とめる。深い悲しみに打ちひしがれ、ジュリエットも自ら命を絶つ。

 

【上演の模様】

このバレエは、有名なシェイクスピアの物語をもとにした台本に、セルゲイ・プロコフィエフが作曲し、それに振付師たちが振付けしたもので、幾つかの版が有りますが、今回はジョン・クランコ版を採用、この版は東京バレエ団としては初演となります。この版の特徴については、シュツットガルト・バレエ団のプリンシパルが過去のインタヴューで以下の様に説明しています。

 [リフト]と言えば、ロミオ(柄本さん)とジュリエット(沖さん)の Pas de deux ではロミオがジュリエットを高々と持ち上げるシーンが多く見受けられました。その中では、高く持ち上げて急に手を放し落ちて来るジュリエットを抱きとめるのですが、その間ジュリエットが体を半回転して、まるでオリンピックで見たフィギュア・スケートのペアみたいな技も見せていました。

ロミオとジュリエットのパ・ド・ドゥ

 それにしてもこのバレエでは、ロミオとジュリエットの愛の交歓の踊りが何回も何回も出てきて、将にタイトルロールを果たす重要な役割を担った柄本さんと沖さんの呼吸はピッタリ合って重責を果たしていました。それからいつも注目して見ているのが、宮川さん。跳躍力が素晴らしく、軽々と高く飛び上がり回転するのも宙に浮いてゆっくり、ゆったりと余裕がある回り方で、見ていてさすがだと思いました。今回はタイトルロールではないですが、6月25日予定の『ドン・キホーテ』でバジルを踊る様ですから、見に行くことにしています。また、群舞がこのバレエでは非常に印象的ですね。特にプロコフィエフが作曲した曲の中心ともいえるモチーフが「騎士団の踊り」です。

photo: Stuttgart Ballet

堂々とした特徴のある響きでしかもどこか不穏な雰囲気を醸し出しているこの調べは、第一幕のキャピレット家の舞踏会に現れた、騎士団の登場の踊りに最初に出てきます。バレエの各処で変奏演奏され、雰囲気を盛り上げています。

 前奏曲もいいメロディーですね。プロコフィエフの曲は現代音楽に近い時代としては古典的な雰囲気を保っている処が多くあり、さらに新しい雰囲気の曲も多いのです。

オーケストラで『ロミオとジュリエット』全曲を聴けるのは、バレエならではの特権でしょう。

一昨年2020年11月のウィーンフィル来日公演(at ミューザ川崎)の最初の曲としてゲルギエフが演奏したのが、このプロコフィエフの『ロメオとジュリエット』でした。勿論抜粋でしたが。

 *(第2組曲より)1.モンタギュー家とキャ ピュレット家、2.少女ジュリエット、 7.ジュリエットの墓の前のロメオ 

*(第1組曲より)5.仮面

ここで組曲とあるのは、バレエの全曲版とは別に、オーケストラ演奏用に組曲として組曲1、組曲2の形に再編集された版があり、演奏会ではそちらが使われる時が多いのです。もとはほぼ同じです。その時の記録を文末に参考まで《再掲2(抜粋)》しました。

 

バレエの全曲は以下の通りです。

 

第一幕

1前奏曲

2.ロメオ

3街の目覚め

4.朝の踊り

 5.喧嘩

 6.決闘

 7.大公の宣言

 8.間奏曲

 9.キャピュレット家にて(舞踏会の準備)

10.少女ジュリエット

11.客人たちの入場

12.仮面

13.騎士たちの踊り

14.ジュリエットのヴァリアシオン

15.マキューシオ

16.マドリガル

17.ティボルトはロメオを見つける

18.ガヴォット

19.バルコニーの情景

20.ロメオのヴァリアシオン

21.愛の踊り

 

第二幕

22.フォーク・ダンス

23.ロメオとマキューシオ

24.五組の踊り

25.マンドリンを手にした踊り

26.乳母

27.乳母とロメオ

28.ローレンス僧庵でのロメオ

29.ローレンス僧庵でのジュリエット

30.民衆のお祭り騒ぎ

31.一段と民衆の祭り気分は盛り上がる

32.ティボルトとマキューシオの出会い

33.ティボルトとマキューシオの決闘

34マキューシオの死

35.ロメオはマキューシオの死の報復を誓う

36.第2幕の終曲

 

第三幕

37.導入曲

38.ロメオとジュリエット

39.ロメオとジュリエットの別れ

40.乳母

41.ジュリエットはパリスとの結婚を拒絶する

42.ジュリエットひとり

43.間奏曲

44.ローレンス僧庵

45.間奏曲

46.ジュリエットの寝室

47.ジュリエットひとり

48.朝の歌

49.百合の花を手にした娘たちの踊り

50.ジュリエットのベッドのそば

 

51.ジュリエットの葬式

52.ジュリエットの墓の前のロメオ

 

(51と52は第四幕とされる場合もあります)

 

 

 今回は最後の場面はお墓でなく、ベッドのある寝室でした(ひょっとして巨大なお墓を造りその中の寝室なのかも知れない)。ジュリエットはプラシーヴォー(偽薬)の毒薬を飲んで一時仮死状態になるのですが、それを見たロミオは絶望し、短剣で自死してしまうのでした。今度は、息を吹き返したジュリエットが、ロミオの亡骸を見てびっくり仰天、嘆き悲しみ、本当の死を選んでしまうのでした。悲劇的最後です。純愛を貫いたと言えますが、考えようによっては、馬鹿馬鹿しいですね。二人の情報交換の不手際とも言えます。プラシーヴォーだという事を何等かの手段でロミオに伝えられなかったのでしょうか?最後二人が逃げおおせて無事、結婚行進曲の下、結婚するめでたしめでたしの結末のバレエは無いのかな?そりゃないでしょう。

 以前、NHKで放送していた韓流ドラマ、『太陽を抱く月』で、同様な偽薬を皇太子妃が飲み敵から逃れ、最後は苦労に苦労を重ねて無事、以前の皇太子(今は王になっている)と結ばれるというハッピーエンドの話がありましたっけ。

 それはそうと「ロメオとジュリエット」は子供から大人まで広く知られていて、バレエの他にオペラ、ミュージカル、演劇、映画等々様々な形で楽しまれています。それの物語には結構残酷な部分もありますが、一貫してその底流には「純真な愛」が流れているからでしょう。以前オペラを見に行ったことも有るので、その時の記録を参考まで文末に《再掲1》しておきます。

 

 

《再掲1》<hukkats記録2019,3.2.15h~@なかのZERO大ホール>

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

3月2日(土)グノーのオペラ「ロメオとジュリエット」を観てきました。シェクスピアのこの話は子供でも誰でも知っている物語で、映画、演劇、ミュージカル、バレー、管弦楽曲等々多く演じられています。

 ミュージカルなど2月から4月に渡って、2か月近い公演が現在なされている模様です。日本でのオペラ公演は珍しいので、ぜひ聴いておこうと思って出かけました。演じたのは「東京オペラプロデュース」私は初めて聞く名前ですが、今回が103回定期公演会ということですからかなり歴史と実績のある知る人ぞ知る歌劇団の様です(第一回公演が1975年で出口正子さんが名を連ねている)。音楽ソフトは、ネトレプコとヴィラゾンのコンビのもの(2005年米国公演)を聴いて置きました。昨年12月にコンサートを聴いたグリゴーロも、スカラ座他で演じている様です。(今、来日中で今週コンサートするゲオルギューも過去に演じています。今週のコンサートは残念ながら都合が付かなく聴けませんが。)グリゴーロは仏語が得意な様ですね。9月の英国ロイヤルオペラ来日公演ではグノーの「ファウスト」に出ます。チケットが取れるかな?さてネトレプコもヴィラゾンも一声聴いただけでそれと分かる個性的な声の持ち主で、「ネトレプコ節」「ヴィラゾン節」だとも言える。

今回のロメオ役は「古橋郷平さん」、ジュリエット役「高橋維さん」。どちらも存じ上げない名前なので、期待と不安が相半ばして聴き始めたのですが、冒頭の合唱の後幕が上がり、敵陣の仮面舞踏会の場に、こっそり乗り込んだロメオ達だったが、メルキュシオ(北側辰彦さん、ロメオの友人役)が、‘敵が皆いなくなったので仮面を外そうか’と言うのをロメオが諫めて「Non,non,vous l’avez promis! Soyons prudents!ici nul ne doit nous connaitre!(いやいや君は約束している!慎重に!ここでは誰も知られてはいけない!…hukkats訳)」とテノールで歌い始めるのですがやや声が小さく、メルキュシオ役のバリトンの響きのある声に押されぎみで、主役は大丈夫なのかなと一瞬不安が過ぎりました。この後メルキュシオの活躍の場面があり、長いBallade「マブの女王の歌」を北川さんが朗々と歌ったこともあってロメオはやや影が薄かったきらいがある。次に第一幕の見どころ聴きどころであるジュリエットのアリア「私は夢に生きたい」を髙橋さんはネトレプコの様にエネルギッシュにガンガン歌うのではなく、綺麗な可憐な声でうまく纏めました。まだ小娘ともいえるジュリエット役としては愛らしさを出すのに成功したと思いますよ。第一幕後半の「(ロメオとジュリエット)が互いに見つめ合い」Madrigalを歌う頃からロメオ役の調子が上がって来て声も大きくはっきりとしてきた。第二幕のロメオが歌うCavatine「太陽よ上れ」ではエンジンが全開、堂々たる歌いぶりで主役の面目躍如であり、」二階のテラスで歌うジュリエットと、真下で別れを惜しんで歌うロメオとのDuoは大きな見せ処、聴かせ処であった。前後しますが、第一幕の舞踏会でジュリエットを皆に紹介する父親キャピュレ卿役の清水宏樹さんは終幕まで堂々とした威厳のある演技でバスの低い声を響かせていた。

紙面と時間の関係で先を急ぎますと、第三幕の第1場は結婚の場で、神父と愛し合う二人の三重唱があり、さらにはジュリエットの乳母ジェルトリュードが加わった四重唱で結婚成立の感謝を神に祈って歌う場面、及び第2場のロメオの小姓(少年)ステファノ役を女性の辰巳真理恵さんが演じて舞台や舞台下を縦横に走り回り、Chanson「白いキジバトよ」を歌ったのが印象的だった。舞台では両家の家臣たちの剣と剣とで決闘となり、両者共犠牲者を出してしまう。ジュリエットの従弟ティバルトを殺めたロメオは追放処分となりジュリエットと別れることになるのを嘆き悲しむ。この辺りの筋書きも昔から今一つスッキリしない処です。目には目を血で血を争ういさかい(家と家の反目であって戦争ではないですよね)だったら、ロメオは追放された時、ジュリエットと共に逃亡出来なかったのか?それよりもジュリエットを愛してから両家の和解を望むようになったロメオは、何故この決闘を命がけで防げなかったのか疑問が残ります。(まーシェイクスピアが書いた事ですからネー) 

次の第四幕は白い天蓋がかかるベッドのセットに青い光があてられ愛する二人のベッドシーン。ネトレプコとヴィラソンの演技はくんずほぐれつ見るのも恥ずかしいような濃厚な場面ですが、今回はさらりと演じた演技が如何にも日本人らしかった。ここで歌われる

Romeo et Juliette のDuoは、「Nuit d’hymenee!…」と愛に燃える二人の心を高らかに歌いあげます。髙橋さんの歌は第一幕から崩れず安定した可憐な声で、古橋さんは益々エンジンがかかり主役を踏ん張っている。親の決めた婿殿(パリス)と結婚式を上げる羽目になったジュリエットは一時仮死状態となる薬を飲んで指揮を逃れ、皆が「Morte!」「Morte!」と

嘆き歌う。結婚式に向かう僧侶たちの行列が、客席中央通路を通って舞台に上がったのは花道の如き効果か?最終の第五幕はジュリエットが葬られた墓の中。墓は各幕で使われた小さな凱旋門風のセットに照明でそれらしい雰囲気を醸し出していた。第二幕では同セットがジュリエットの二階の部屋のベランダとしても使われる等低コスト化の工夫が良く分かるが、出来ればテラスに出て歌うジュリエットの背後に、窓枠を模した飾り付けをすれば、さらに雰囲気が出たことと思える。管弦楽は前方客席4列分の細長いオケピットに小編成のオーケストラであったが、総じて音も綺麗だったしアンサンブルも良く、また合唱が素晴らしくてその場面、場面の雰囲気を良く表現出来ていたと思います。 思っていたより何倍も見ごたえ、聴きごたえのあるオペラでした。それにしてもグノーの曲はいいですね。

 

《再掲2(抜粋)》<hukkats記録2020-11-08 17:00~ ウィーンフィル来日公演@ミューザ川崎>
/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

【演奏曲目】

①プロコフィエフ:バレエ音楽『ロメオとジュリ エット:作品64 』

 (第2組曲より)

 1.モンタギュー家とキャ ピュレット家、

 2.少女ジュリエット、

 7.ジュリエットの墓の前のロメオ 

 (第1組曲)

  5.仮面、

 

②プロコフィエフ『ピアノ協奏曲第2番ト短調 作品16』  

 

③チャイコフスキー『交響曲第6番口短調作品74「悲愴」』

 

【演奏速報】

    今回はプロコフィエフの曲が中心でしたが、これはゲルギエフが最も得意とするところです。

  • 『ロミオとジュリエット』

バレエはほとんど観ないのですが、これらの曲は組曲として結構演奏されるので聴いたことがありました。

①ー1は、冒頭クラリネットのジャジャッチャジャッチャジャッチャジャジャッチャジャという上下にうねる音にテューバの伴奏音が重なり、弦のアンサンブルも寄り添ってスタートしました。何と厚みのある、迫力ある金管群の音でしょう。 

 ゲルギエフは非常に細い耳掻きの様な指揮棒を持ち他の指を広げ、時々指をひらひらとあたかもピアノの鍵盤をなぞっている様な仕草で、譜面台に楽譜を置いて静かに指揮していました。これは、おそらく、ウイーンフィルとのリハーサルの時間が少なくて、また今回の演奏曲は組曲からの選抜なので、やはり楽譜を置いておいた方が間違いないでしょう。各曲の特徴、演奏の一般的特徴は、以下の曲目解説を参考とするとして、一番印象的なのは、弦と金管の迫力ある響きでした。

①ー2

 Ft や Kr のソロなどの活躍と弦(Vc+Vn)とのつながり、pizzicatoとの掛け合いが印象的

①ー5

 曲の軽快さが弾ける様

①ー7

ゆったりとしたしめやかな曲を楽団は 悲劇性を将にはらんでいるようにドラマティックに表現したのが印象的

///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

【参考曲目解説《千葉フィル指揮者金子建志氏の曲目解説より抜粋》】

 

⚪モンタギュー家とキャピュレット家(第2組曲の1)

 クレッシェンドして威嚇するようなトゥッティの不協和音に達する2回の大波は、ヴェローナの大公エスカラスの主題。街頭での両家の小競り合いが決闘も交えた騒乱になりかかったとき警鐘と共に現れ、「今後、平和を乱す者は死刑に処す」と宣言する。

 プロコフィエフは不協和音を絶壁的に断ち切った後、ロ短調の和音がpppで身をすくませたように残る絶妙なオーケストレーションを施している。この領主の描き方は、原作よりも遥かに威圧的で、帰国した祖国ソヴィエトでプロコフィエフを待っていたスターリンの恐怖政治を投影しているという見方は的を射ているだろう。

 弦による「騎士たちの踊り」とホルンが居丈高に咆哮する「決闘」の間に、フルートによる楚々とした「ジュリエットの踊り」が象徴的な対比をみせる。

 

⚪少女ジュリエット(第2組曲-2)
  十代前半の娘らしく活発に飛び跳ねる様子「少女ジュリエット」で始まり、女性的な優雅さ。フルートによる「恋への憧れと不安」から、曲はより内面へと入り、チェロとサクソフォーンのソロが、その予感を繊細に歌い上げる。

 ジュリエットは12歳。当時は早婚で、原作では母キャピュレット夫人がジュリエットに「私がお前の年頃には、お前という子を生んでおりました」という台詞があり、年頃だから、といって夜会に招待してあるパリスとの婚姻を勧める。

 

⚪仮面(第1組曲-5)
  ロメオ、マーキュシオ、ベンヴォーリオの親友3人組は、仮面を付けて敵方の屋敷の舞踏会に客として紛れ込む。陽気で冗談好きなマーキュシオの性格は、〈真夏の夜の夢〉の悪戯好きの妖精パックと瓜二つの、マブの女王を絡めた台詞をシェイクスピアが語らせていることからも明らかで、プロコフィエフはそれを描く。

 他にも仮面の者は大勢いるので敵方とは気付かれないが、独り、タイボルトは声からロメオだと特定。決闘を始めようとするがキャピュレットにたしなめられ、騒ぎには至らない。

 一方、ジュリエットに一目惚れしたロメオは、巡礼と名乗って近づき、接吻を交わす。その直後、ロメオは、乳母の言葉からキャピュレットの娘だと知るが、恋の炎を消すことはできない。一方のジュリエットも恋に落ち、乳母から、敵方モンタギューの息子と聞かされて愕然とするが、もはや手遅れだ。

 

⚪ジュリエットの墓の前のロメオ(第2組曲-7)
  ローレンスは、「親にパリスとの結婚を迫られているジュリエットに、42時間、仮死状態に陥る薬を飲ませる」→「葬儀が行われ、遺体は納骨堂に安置される」→「目覚めた頃、ロメオが納骨堂に入り、二人してヴェローナを去る」という策をジュリエットに言い聞かせ、薬を飲んでもらう。ところが、この策を伝える手紙が手違いでロメオに届かなかったために、「ジュリエット死す」の伝聞だけを聞いて納骨堂に忍び込んだロメオは、遺骸として横たわるジュリエットの姿に愕然とする。

 曲は「死」を変奏的に繰り返す悲痛なエレジー。打楽器の強奏を伴う最後の頂点は、絶望のあまり服毒自殺するロメオを表す。静かなコーダで「ロメオへの呼びかけ」の背景で第2ヴァイオリンがリズミックな「ジュリエットの幻影」が奏されるが、これは次第に意識のもどるジュリエットの脳裏に浮かぶ、生への憧れともとれるし、死の刹那にロメオの脳裏を過る、生き生きとしたジュリエットの姿とも考えられる。

 この曲は、第2組曲の最後に置かれているため、ジュリエットの死を暗示する5小節のコーダが加えられているが、内容は、次曲と重複するため、カットしてアタッカで続けられる。