HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『第130回東京フィルハーモーニー定期演奏会』…ラフマニノフのコンチェルトと幻想交響曲

 昨日木曜日夜に、アンドレア・バッティストーニ指揮の東フィル130回東京オペラシティ定期シリーズの演奏を聴いてきました(2020.1.23.19:00~)。演奏曲目は、①ラフマニノフ作曲『ピアノ(Pf.)協奏曲第3番ニ短調Op.30』 Pf.演奏は阪田知樹。③ベルリオーズ作曲『幻想交響曲Op.14』の2曲でした。また①の演奏の後でアンコールとして②阪田知樹編・ラフマニノフ作曲『ここは素晴らしい場所Op.21-7』が演奏されました。
 ①のコンチェルトは、ラフマニノフがこの作品を時間が無くて、ロシア内で完成、練習することができず、アメリカ合衆国に向かう船の中に“音の出ない鍵盤”を持ち込んで練習して仕上げたといわれます。米国に渡ってから初演されたものなのですね。阪田さんの演奏は、今回初めて聴きます。まだ30歳位の若手のピアニストですが、プログラム記載の経歴を見ると、相当な実力を備えていると推測されます。演奏が始まりました。スタートからPfは、第1主題の陰鬱なメロディを静かに、しめやかに弾いている。次の速いパッセージも、何かもう一つ元気が無い感じがする。ラフマニノフを弾くピアニストがよく見せる覇気が感じられません。今日は調子が悪いのかな?大丈夫なのかな?と一瞬危惧しました。暫しPfの休止中にオケは朗々と歌い出し、それに合わせて阪田さんもまた弾き始めるが、中盤にかけてのff演奏も弱い気がします。中盤過ぎのフルオーケストラの轟音下、Pfもかなりの強音を出すパッセージではPfの音は伴奏音の波に飲み込まれて全然聴こえない。オーケストラ編成は、基本2管編成、弦楽五部は10型の変形で、どちらかというと小型の構成で、ピアノの音を消すほどの大編成では有りません。ピアニストは自分の音が客席にどう聴こえるかまでは分からないのでしょうけれど。阪田さんも指揮者もここまで互いに知らん振りしているかの如く、ほとんど相手を見ません。わが独自の道を行く感じ。再び第1主題が繰り返され、第1楽章の2/3位進んだ処でオケは全開、大きな音をたてましたが、それに隠れてPfの音が殆ど聞こえません。しかしその後、同楽章の独奏部(カデンツァ?)に入ると次第に力が入った演奏となり、迫力も出て来ました。最後のカデンツアの部分は曲の感じもなかなか良くピアノが歌い始めています。メロディが綺麗。最後再び第1主題が出て弱い音でポロンポロンポロンと立ち消えの様に終了しました。最終段階で阪田さんはやっと波に乗ってきた感じがします。

 第2楽章は、冒頭のオーボエ(Ob)の響きがいいですね。男性の第1奏者の腕が良い感じ。引き続きPfが力強く弾き始め独奏部演奏も良く聞こえた。小休止の後、力強いPf の再開音は第1楽章の阪田さんの演奏とは別人の様に迫力ある演奏となっていました。
第3楽章はアッタカで2楽章から続けて演奏、オケの調べの後、Pfが小気味のいい音で、タラッタッタ、タラッタッタ、タラッタッタと三回鳴らした後、速いリズムで力強さとスピードを次第に速めて行き、オケも力一杯鳴らし始めています。阪田さんはもうオケを服従させたかの様に迫力ある全力演奏で、鍵盤の端から端まで縦横に指を走らせながら大きな音を立てている。力一杯鍵盤を叩く超速いパッセージでも、一つ一つの音は指が流れない様にしっかりと音が出せればしめたものです。最後は阪田さんもオケも体全体から力を振り絞って大音響の中で演奏が終了しました。もう会場からは大声援と万雷の拍手が沸き起こり、それを目の当たりにしながら、阪田さんの最初のあの弱く感じた感触は何だったのだろうと自問していました。立ち上がりに時間のかかるピアニスト?後半の力演のために力を温存していた?最初は抑制していたのかな?などなど。
でも巨匠と謂われたピアニストも含め、いろいろな録音を聴いてみると次の事は
言えると思います。
         “弱い中にも強さを!強い中にも弱さを!”

 何回かの挨拶の後、沸きに沸く会場を鎮めるが如く、アンコール曲②を弾き始めました。初めて聴く曲ですが、ゆったりと綺麗なメロディが流れます。でもあっという間に終わってしまいました。短い演奏でした。
 休憩の後は、オーケストラ演奏です。③の演奏開始前に、オケ編成が増強され、見た限りでは、コントラバス、ビオラ、ヴァイオリン、ハープ、チィンパニー等、その他もあるかも知れません。【続く】