《ソロ&愛のデュエット西村和子ソプラノリサイタルⅧ》
お馴染みのオペラ、ミュージカルから、叶わぬ愛の美しいメロディもお楽しみ下さい(主催者)。
【日時】2024.10.17.(木)14:00〜
【会場】大田区民ホール・アプリコ 小ホール
【出演】
◯西村和子(ソプラノ)Kazuko Nishimura
<Profile>
上野学園大学音楽学部声楽学科卒業。日本コロンビア専属童 謡歌手(小学生時代)。2007年文化庁主導により製作され、コロン ビアミュージックエンターテイメントからリリースされたCD「親子で 歌いつごう日本の歌百選」に「あの町この町」が収録された。CD 「懐かしの童謡」には「うさぎとかめ」が収録されている。 当時の歌声は、YouTubeでも聴くことが出来る。
童謡を日本コロンビア専属童謡作曲家堀江貞一氏に、声楽を 柴田秀氏、永井智子氏、2019年より里中トヨコ氏に師事。 永井智子氏主宰のカンタンティ・ペル・アモーレ演奏会に10年連続出演。ラベル生誕100年祭記念公演、小澤征爾指揮サン フランシスコ交響楽団「ダフニスとクロエ」にプロ合唱団連合の 一員として参加。ウィーン楽友協会合唱団指揮者ヘルムート・ フロッシャウアー氏と山田一雄氏の指揮による合唱組曲「蔵王」 のCBSソニーでのレコーディングに参加。演奏会形式によるオペ ラ「ラ・ボエーム」のムゼッタ役、「リゴレット」のジルダ役をバリトン の直野資氏と共演。銀座サロンコンサートでジョイントリサイタルを2回開催。2008年9月ルーテル市ヶ谷センターホールにてテノ ール高田正人氏を迎え、初のリサイタルを開催。2010年9月、2012年9月めぐろパーシモンホール小ホール、2014年9月、2016年11月大田区民ホールアプリコ小ホール、2018年10月めぐろパーシモンホール小ホール、2021年5月大田区民ホールアプ コ小ホールにて各回にゲストに高田正人氏を迎え好評を得る。今回は初回から16年目に当たり8回目を数える。
◯高田正人(テノール)Masato Takada
<Profile>
東京藝術大学卒業、同大学院修了。二期会オペラ研修所終了。 (優秀賞受賞)。第8回全国ソリストコンテスト優秀賞(声楽部門第 1位)。イタリア政府給費生、及び国際ロータリー財団奨学生として イタリアに留学。ピアチェンツァ国立音楽院に学ぶ。また文化庁 新進芸術家在外派遣研修員としてニューヨークに留学。イタリアでの「ウエストサイド物語」など、各国でコンサートや舞台に出演。 オペラでは、二期会「椿姫」(宮本亜門演出)、日生劇場「魔笛」、 銀座オペラ「トスカ」、小澤征爾音楽塾「カルメン」、NHK音楽祭 「サロメ」など数多くのオペラに出演。 オペラ界のトップスターを集めた「The JADE」のメンバーとしても活躍。NHK「ラジオ深夜便」BS朝日「子供たちに伝えたい美しい 日本の歌」などメディアへの出演も多い。平成音楽大学客員教授。 洗足学園音楽大学声楽コース客員教授。昭和音楽大学ミュージカル科非常勤講師。2019年二期会公演「金閣寺」・「蝶々夫人」 (共に宮本亜門演出)に出演。二期会会員。2024年3月ミュージカ 大好評を得る。ミュージカル 「スウィニー・トッド」にピレッリ役で、市村正親・大竹しのぶと共演、大好評を得る。
◯金井信(ピアノ)Makoto Kanai
<Profile>
慶応義塾大学文学部哲学科(美学・美術史学専攻)、東京藝術大学音楽学部声楽科(テノール専攻)、尚美高等音楽学院本科(作曲専攻) 卒業。長年ピアニスト、伴奏者、作曲家、編曲者、プロデュースなど様 々な立場で活躍。ネステレンコ、オブラズツォワ、佐藤しのぶ、佐藤美 枝子、森麻季、小松英典、錦織健、五郎部俊朗、樋口達哉、高野一 郎、The JADE、The Clapps、平澤仁、山形由美、外国祥一郎ら多く の声楽家、器楽奏者を始めポピュラー系では真理ヨシ子、尾崎紀世彦、森山良子、渡辺真知子、高汐巴、村井國夫、川上大輔、梅原司平、中山譲、柳沢里実、久実らをサポート。ジャンルを問わずオールラ ウンドな幅広い技術とソリストに寄り添う柔軟な音楽性は、多くの音楽家 の信頼を集めている。また作曲家としては20のミュージカル、50の歌曲 ピアノ曲、リコーダー曲、合唱曲など多くの楽曲を手がけている。映画 音楽等を集めたピアノソロCD Delicious”も好評。東洋英和女学院大学非常勤講師。女声合唱団「アンサンブル・プリュサン」音楽監督。
【曲目】
当日配布されたプログラムでは、曲順はほぼ変わりませんが、各曲にコメントが付けられていました。
《第1部》
①I Vow to thee, My Country 我が祖国よ、我は汝に誓う :グスタフ・ホルスト作曲
イギリスの愛国歌。ホルストの管弦楽組曲『惑星』第4楽章「木星」の中間部の 旋律に付けられた歌である。ダイアナ妃の婚礼時及び葬儀にも用いられた。日本 でも平原綾香のデビュー曲 「Jupiter」 として広く知られている。
②おこりんぼさん私のおこりんぼさん:ジョバンニ・ペルゴレージ作曲
ベルゴレージ作曲のオペラ・ブッファ 「奥様女中」の中で女中セルビーナが歌う アリア。主人ウベルトは、自分が女中のセルビーナと結婚したいのか、それとも ただ彼女の境遇を憐れんでいるだけなのか自分でも判らない。それを察したセル ビーナが一計を案じ、ウベルトに言い寄る。あれこれあった末に結局のところウ ベルトは根負けしてセルビーナを娶る事になる。
③星 は光りぬ:ジャコモ・プッチーニ作曲
ブッチーニ作曲のオペラ「トスカ」の中で歌われるテノールのアリア。第3幕 で間もなく処刑されようとしている画家カヴァラドッシが、明け方の空に光る 星に、恋人トスカとの幸せが、短い夢に終わったことを悲しみ嘆く。
④4. 二重唱とフィナーレ:ジョルジュ・ビゼー作曲
ビゼー作曲のオペラ「カルメン」は 世界で最も人気のあるオペラの一つ。第4幕 の大詰め、闘牛場前の広場の場面で歌われる二重唱。人気闘牛士エスカミーリョ に心が移ってしまったジプシー女のカルメン。復縁を迫る元竜騎兵長のドン・ホ セにカルメンは「二人の間はお仕舞いよ」と冷たく答え、ホセから貰った指輪を 投げ返す。逆上したホセは隠し持っていた短刀でカルメンを刺し、カルメンは 息絶える。
~休憩~
《第2部》
⑤ 愛の小径:フランシス・プーランク作曲
プーランク作曲による歌曲。もともとは劇作家ジャン・アヌイの劇作品「レオカディア」の 中で歌われる曲。とある国の王子アルベールはある日、レオカディアと云う女性に出会い ひと目惚れの恋に落ちる。輝かしい日々を想像する2人。しかしその思いも虚しく、出会っ て3日後の夜、レオカディアは事故で亡くなってしまう。悲しみに打ちひしがれる王子。 それから2年の月日が経ち、母がアマンダと云うレオカディアにそっくりな女性を見つけ出 し、王子の引き籠もる城の中でレオカディアの様に振舞って欲しいと頼む。依頼を受けた アマンダは、アルベールの居る城を訪れる。その中で歌われのが「愛の小径」。やがて2人 は新たな愛を育んで行く。
⑥アメージング・グレース:作曲者不明
イギリス人牧師ジョン・ニュートンの作詞による讃美歌。日本においても、映画、ドラマ、ア二メ、CM曲などで多用されるなど、讃美歌の中でもよく知られた曲の一つである。
⑦グラナダ:アウグスティン・ララ作曲
メキシコの作曲家アウグスティン・ララによって1923年に作曲された作品。ラテンのリズム とメロディー、華やかなこの曲はテノールのレパートリーとしてよく歌われている。
⑧ 星に願いを:リー・ハーライン作曲
1940年に発表された、ディズニー映画「ピノキオ」の主題歌。その年のアカデミー賞の作曲賞、歌曲賞を獲得した。今日はピアノ演奏でお楽しみください。
⑨星から降る金:シルヴェスター・リーヴァイ作曲
ミヒャエル・クンツェの作詞・脚本によって1999年に製作されたミュージカル「モーツァルト」 の中で、青年になった天才モーツァルトに、その才能を認め、ウィーンに出てその才能を 開花させるようにと説く、男爵夫人が歌うのがこの歌である。
⑩ オペラ座の怪人:アンドリュー・ウェバー作曲
1986年に製作されたミュージカル「オペラ座の怪人」の中で歌われるこのミュージカルを 象徴するナンバー。怪人に誘われて地下迷宮へと降りていくクリスティーヌ、彼女の才能 を誰よりも知り、誰よりも彼女を愛するオペラ座の怪人。2人だけのオペラの幕が上がり、 地底湖にクリスティーヌの歌声がこだまする。
【演奏の模様】
《第1部》
①I Vow to thee, My Country 我が祖国よ、我は汝に誓う
ピアニストの金井さんが先ず登場、序奏を始めると次いで西村さんが赤いドレスで表われて、綺麗なソプラノでソロで歌い始めました。迫力は有りませんが、大変こなれた歌唱です。ピアノ伴奏が、力一杯弾いていたので、少し弱く感じたのかも。
②オペラ・ブッファ「奥様女中」より"おこりんぼさん私のおこりんぼさん"
この曲も西村さんの独唱です。かなりの高音も頭のてっぺんからしっかり出ていました。跳躍高音が、やや不安定の時もありました。
③オペラ「トスカ」より"星は光りぬ"
ここで高田さんが登場、マイクをもった西村さんと二人で、高田さんが、最近、市村正親さん、大竹しのぶさんとミュージカルで、共演したこと、市村さんは、西村さんより年上の筈なのに元気一杯、何日もの公演を済ませた最終日の後、ゴルフに出掛けた程だなどのトークをユーモラスに語り、会場の笑いを誘っていました。
そして舞台には、高田さんが残り、彼の有名過ぎるトスカの『星は光ぬ』を歌いました。小ホールで聞く高田さんの声は、物凄い声量で、耳にビンビン響きます。神奈川県民ホールで、グリゴーロが、歌った時は、かぶりつき席でしたが、勿論熱唱を聞いたのですが、今日の星は光の様に、耳を覆う程のだい音には聞こえませんでした。これは。高田さんの声量が、並外れて大きく力一杯歌ったことに依ることがあるとは思いますが、もう一つ、この会場が小ホールで、奥行きよりも狭い横巾の為、音波が両サイドの壁で反射され、直進する音と重なったためではないかと思われます。
兎に角高田さんの『星は光ぬ』は、迫力満点凄味まで感じられました。
④二重唱とフィナーレ(カルメン)
この場面も、オベラを見ている人には、有名過ぎる場面です。西村カルメンと高田ドン・ホセは、歌のみならず、表情、身振りまで、配役になり切って、演奏会形式オペラより、迫真に迫る演技もしていました。会場は、大いに沸きにわきました。
《休憩》
《第2部》
⑤愛の小路
西村さんのソロ演奏です。なかなかいい曲ですね。シャンソン化もされていましたっけ?
フランスの曲は、洒脱で耳当たりがいいですね。かってラジオ音楽番組で、吉田秀和さんは、プーランクを非常に評価し、その曲ばかりを紹介していたことを思い出します。
西村さんの発音は、原語を綺麗に表現していました。
⑥アメージング・グレイス
これも西村さん、これも味わいのある歌い振りでした。流石経験深いソプラノ、いい曲を沢山知っているのですね。歌詞の2番は転調して歌った様な気がします。
又、ビアノ伴奏の金井さんは、確かに歌手が歌いやすい様、よく気遣って弾いていることが伝わってきました。
⑦グラナダ
高田さんの独唱です。これまた、大声量で迫力満点の歌い降りです。勿論現在でも何時間ものオペラに出演して、バリバリ歌っているのでしょうから、リサイタルのアリアなぞ、どうってことない楽々の演奏なのでしょう。金井さんのビアノも負けず劣らず、グリッサンドも交えバンバン弾いていました(大ホールだったらお二人の演奏が同じものであっても違って聞こえたでしょう、きっと)。
⑧星に願いを
金井さんのソロです。強奏から繊細で美しくなる強弱の変化、テンボの変化も大変良いとおもいました。一部ジャズぽい演奏もあり。金井さんは、異色のビアニストの様です。高田さんとのトークのなかで、金井さんは、東京藝大をビアノ科でなく、声楽科に入学したらしいのです。それが、歌の指導教官が、金井さんのピアノの腕が良いので、歌手たちの練習の伴奏を任せる様になり、それで歌手の歌いやすい伴奏を身に付けたとのこと。そのエピソードを二人はユーモラスに面白ろ可笑しく話すので、会場も和んだ雰囲気となりました。
⑨ミュージカル「モーツァルト」より"星から降る金"
ピアノ序奏の間に西川さんが登場、日本語で歌いました。これもいい旋律でした。
⑩ミュージカル「オペラ座の怪人」より"オペラ座の怪人"
最期の曲は、金井さんの舞台上のピアノの音にあわせて、西川、高田両氏が、左右の通路の後ろから、歌いながら、ゆっくりと歩いて登場、それからステージに上り、舞台演技もかなりのもの、なかなかの演出でした。勿論二重唱は、今回の有終の美を飾るものと言って良いものでした。
会場からは大きな拍手が沸き起こりました。
尚アンコール演奏がありました。
《アンコール曲》
Ⅰ.オペラ座の怪人より、フィナーレ二重唱
Ⅱ.サウンドオブミュージックより