HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『第1942回N響定期演奏会』at東京芸術劇場

 表記の演奏会は、当初、来シーズンN響の主席指揮者就任予定というガエタノ・デスピノーサ(伊)が振ると聞いたので、行くことにしていたのですが、入国後の待機期間開けが、11/13には、間に合わないそうで、急遽沼尻さんに変更になってしまいました。池袋の会場は遠いし体調もイマイチだし、どうしょうかな?と迷ったのですが、曲目もピアノ独奏者も変わらないと言うし、最近ピアノ演奏をよく聴きに行っているので、今回のピアニストはどんな演奏をするか興味もあったので、結局聴きに行くことにしました。

【日時】2021.11.13.(土)18:00~

【会場】東京芸術劇場(池袋)

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【管弦楽】NHK交響楽団

【指揮】ガエタノ・デスピノーサ(⇒沼尻竜典に変更) 

【独奏】アレッサンドロ・タヴェルナ(ピアノ、以下A.T.と略記)

【Profile】

〇沼尻竜典

東京都出身。桐朋学園大卒業後、ベルリン芸術大に留学。指揮を小澤征爾、秋山和慶、尾高忠明、ハンス=マルティン・ラーベンシュタイン、作曲を三善晃、ピアノを徳丸聡子、藤井一興に師事。

1990年ブザンソン国際指揮者コンクール優勝。以来、ロンドン交響楽団、モントリオール交響楽団、ベルリン・ドイツ交響楽団、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団、フランス放送フィルハーモニー管弦楽団、ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団、トリエステ歌劇場管弦楽団、シドニー交響楽団等世界各国のオーケストラに客演を重ねる。国内ではNHK交響楽団を指揮してのデビュー以来、新星日本交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、群馬交響楽団、日本センチュリー交響楽団のポストを歴任、さらにドイツではリューベック歌劇場音楽総監督を務めオペラ公演はもちろんリューベック・フィルとのオーケストラ公演でも数々の名演を残した。

 2022年4月より、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督に就任することが発表されている。

〇アレッサンドロ・タヴェルナ

1983年、イタリアのヴェネチア生まれ。2009年リーズ国際ピアノ・コンクールで第3位に入賞して一躍注目を集めた。またロンドン国際ピアノ・コンクール、ブゾーニ国際ピアノ・コンクールなどで入賞。若き日には、イモラ国際ピアノ・アカデミーでレオニード・マルガリウスやボリス・ペトルシャンスキーらに、その後、ローマ聖チェチーリア国立アカデミーでセルジョ・ペルティカローリ、ハノーファー音楽大学などでアリエ・ヴァルディのもと学んだ。
ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団などのオーケストラ、ロリン・マゼール、リッカルド・シャイー、ファビオ・ルイージ、ダニエル・ハーディングらの著名指揮者と共演している。その国際的なキャリアが評価され、2012年にイタリア共和国大統領賞を受賞した。
イギリスの音楽評論家から「ミケランジェリの後継者」で、「その音楽づくりはヴェネチアを訪れた時のように感覚を刺激する」と評された。華やかさと繊細さ、豊かな個性を持ち合わせたピアニスト。N響とは初共演。

【曲目】

①ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」序曲


②リスト/ピアノ協奏曲 第2番 イ長調


③フランツ・シュミット/交響曲 第2番 変ホ長調 

 

【曲目解説】

 オペラの中で出てくるいろいろな動機が現れる「オペラ全体の縮図」のような序曲らしい序曲です。オーケストラの演奏会でも取り上げられる機会の多い名曲。日本でもかなり知られたメロディに溢れています。

 自由なソナタ形式で書かれていて、冒頭、荘重なユニゾンで始まる序奏から始まりまり、その後,弦楽器による静かな伴奏に乗って,有名なホルン四重奏が出てきます。このメロディは,「賛美歌」としても知られる大変美しいものです。日本では「秋の夜半」という名前でも知られています。このオペラでは,この部分の他にもホルンが隋所で出てきますが,その響きによって狩猟や森の雰囲気をうまく作り出しています。

 次いで不安な気分を盛り上げるトレモロの後,主部に入ります。第1主題はドラマの舞台となる「狼谷」の音楽。クラリネットにより神秘的なメロディが奏でられ、シンコペーションのリズムの後,悪魔の力を暗示するかの様な緊迫感のある部分となります。ホルンのファンファーレの後,いかにもウェーバーらしい,魅力的なクラリネット・ソロが出てきて、その後,気分が変わりアガーテの歌う歓喜の歌による第2主題になります。弦楽器の響きが大変爽やか。この2つの主題は善と悪の対比を表現したもので,展開部でもこの対比を中心にドラマティックに進行します。再現部でも第1主題はクラリネットにより演奏、その後,不吉な雰囲気になり,曲は静まります。大きな休符が入った後,コーダに入り、バーンという威風ある音が出てきて、そのエネルギーを生かして,勢いのある音楽が続きます。やがてアガーテのテーマが出現,善が悪に勝つような形で全曲が明るく結ばれるのです。

<器楽構成>Ft.2、Ob.2、Cl.2、Fg.20、Hr.4、Trp2、Trb.3、Tim、 弦楽五部 型(オペラの場合だと、 舞台上にクラリネット、ホルン2、トランペット、ヴァイオリン2、チェロ、第2幕のフィナーレにピッコロ2を追加する。)

 リストは1839年の9月に初稿を完成させた。それ以降、数回にわたって補筆や改訂を施し、1848年頃に「交響的協奏曲」と名称を与えていたがこれは後に取り下げ、1849年に改訂を一旦終えた。しかしリストはこれに納得しなかったのか、初演前年の1856年に再度補筆を行っており、初演後の1861年に決定稿が出されるまで局所的に補筆を続けた。

   全体は単一楽章で書かれており、その形式はピアノ協奏曲第1番よりもさらに自由で、狂詩曲風の性格が顕著に浮き彫りにされている。ピアノと管弦楽が一体になったいわば交響詩ともいえる性格を呈しており、詩的な味わいや内面的な抒情性が極めて豊かな作品で、曲は6つの部分から出来ている。

②-1 adagio sostenuto assai

②-2 allegro agitate assay

②-3 allegro moderato

②-4  allegro de ciso

②-5 marziale・un・poco meno allegro

②-6 allegro animate

尚、これら六曲を二曲づつ纏め、三楽章から成るピアノ協奏曲と見なす人もいます。

<器楽構成>Ft.3, Ob2.Cl.in A2 Fg. 2,Hr in Eb2, Trp in Bb 2,Trb 3 Tuba. 1, トライアングル, タムタム,シンバル 弦楽五部(Vn. 2パート、Va.1パート、Vc.1パート、Cb.1パート)

 先ずこの曲を作曲したフランツ・シュミットについての概要です。

 近年再評価が急速に進みつつあるオーストリアの作曲家、フランツ・シュミット(1874-1939)は、シェーンベルクと同年生まれながら、ブルックナーとブラームスの伝統を受け継ぐ重厚な後期ロマン派的な作風で知られています。マーラー時代のウィーン国立歌劇場およびウィーン・フィルのチェリストをつとめ、1927年からはウィーン音楽アカデミー院長に就任し、オーストリア音楽界に多大な足跡を残しました。

 昔から間奏曲が有名なオペラ「ノートル・ダム」、ヨハネの黙示録に基づくオラトリオ「7つの封印の書」のほか、4曲残された交響曲は近年演奏・録音の機会が増えており、日本でも交響曲第4番は大野和士指揮東京都響(2014年12月ライヴ/フォンテック)、寺岡清高指揮大阪響(2012年3月ライヴ/キング)の2種類の録音が発売され、「7つの封印の書」もアルミンク指揮新日本フィルによる2009年7月のライヴがCD化(フォンテック)されるなど、フランツ・シュミットについての認知度が少しずつ高まってきています。

 1911~13年に書かれたこの交響曲第2番は、8本のホルン(マーラーの交響曲第3番と同じ!)や打楽器を含む巨大編成で知られる大作ですが、N響はそこまでの数のHr.は揃えていなかった様に思います。

 3つの楽章がモットー主題で結びつけられ、ナイーヴな抒情性・和声の繊細な変化が美しく、さらに変奏曲形式の第2楽章にはスケルツォとトリオが内包されるという個性的な構成です。初演の1年後にヴァインガルトナー指揮によって取り上げて以来、作曲者自身のほか、クナッパーツブッシュ、ミトロプーロス、ラインスドルフなど当代一流の名匠とともにこの曲を演奏してきたウィーン・フィルが、巨匠セミヨン・ビシュコフと2015年9月に定期のほかヨーロッパ・ツアーで集中的に取り上げて絶賛を博しました。

 ビシュコフは2014年5月にもこの交響曲をウィーン・フィル定期で演奏し、2014年9月にライプツィヒ・ゲヴァントハウス管と演奏した際にはMDR/accentusによって映像収録されTV放映されています。また2014年3月には、自らが指揮科の教授を務めているロンドン王立音楽院のオーケストラと演奏するなど、この交響曲への溺愛ぶりが伺えます。実弟だった指揮者ヤコフ・クライツベルク(1959-2011)もネザーランド・フィルと交響曲第4番の優れた録音を残しているので、そうした縁があるのかもしれません。

1  第1楽章 いきいきと

2  第2楽章 アレグレット・コン・ヴァリアツィオーニ  シンプルに、かつ柔らかに

第1変奏 同じテンポで

第2変奏 いくぶん流れるように 
第3変奏 速くしかも軽やかに

第4変奏 速く(同じテンポで)

第5変奏 とても速く

第6変奏 ゆっくりと穏やかに
第7変奏 とても速く 第8変奏 とても情熱を込めて、速すぎずに 
第9変奏 スケルツォ:とても生き生きと 第10変奏 トリオ:とても穏やかに

3  第3楽章 フィナーレ ゆっくりと~穏やかに、しかも流れるように

日本では、生演奏を聴ける機会はそう多くありません。

 

【演奏の模様】

 今日の東京芸劇のホールはそれ程入っていませんでした。開演の合図が鳴っても、6割強でしょうか?かなり空席のブロックが幾つか目立ちました。

①ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」序曲

序奏のホルンの響きは、何か森での狩りが連想され、誘われる感じがあります。幻想的な気分になり、物語の中に迷い込んだような気がしないでもない。オペラの場面のあちこちが、断片的に頭にちらつきます。このオペラ、来年何処かで上演されないかな?

 沼尻さん指揮のN響は、力強い指揮者のタクトに従い力強くアンサンブルを切り出していました。沼尻さんは、割りと大ぶりの指揮ですね。でもスタートから元気一杯、きびきびして中々いいですよ。

 

②リスト/ピアノ協奏曲 第2番 イ長調

②-1 冒頭部で夢幻的な基本主題が管楽器により提示、続いてピアニストはゆったりと腕を交差させながら主題を弾き始めました。変奏で力をやや強め、高音のきらめく輝きがまばゆい。オケとピアノが交互に音を出し合い掛け合って盛り上がります。力強いHr.との掛け合いは、Hrの優勢勝ちか?即ちPfがやや弱い気がしました。

②-2 エネルギッシュな新しい主題が提示され、弦楽がピアノの合間に合いの手を入れ、次にもう一つの新しい主題も力強く猛スピードで提示されますが、A.T.は問題なく演奏をこなしている感じ。ただ、オケとの掛け合いの箇所やPfソロ演奏的な箇所では、それだけを見れば素晴らしいと思われるA.T.の演奏なのですが、オケのフルスイングと一緒になると音がかき消されるきらいがありました。

②-3 優美で表情豊かなメロディに切り替わり、弦楽も流れる様な美しい低音で奏で、ピアノが、チェロソロの伴奏的な動きの中に優美な調べを、時として速いパッセジを交えて、チェロとのロマンティックな世界を広げていきます。ここでVcのソロがPfとのやり取りを素晴らしい音色で表現していて、相当の腕前のチェリストと見ました。ここでもピアニストがやや受け身か。

②-4ダイナミックな演奏で、強烈な華々しい表現が印象深い処です。 ピアノは力一杯鍵盤を左右に縦横無尽に行き来しますが、鍵盤の強打は腕と手で打ち込んでいる様に見えました、全身全霊、体全体を使って強奏するタイプのピアニストではありませんでした。即ちラフマニノフらしい、渾身の力強さがもっとも欲しかった。

②-5行進曲で、ソナタ形式の再現部に相当する部分です。オケの軽快なリズムに乗って、ピアノが進み中間でピアノは一休みの如く安息感のあるメロディに変わり、弦楽がそれをフォロー、主ヴァイオリンと共に奇麗な旋律を奏でました。最後アタッカ的にすぐ終曲に入りました。

②-6 コーダに相当。ピアノの活躍が目覚しく、非常に速い軽快なリズムで突進、クリッサンドも行き来して、圧倒的なクライマックスに到達して結末を迎えました。

 不思議なことは、沼尻さんがピアニストの方を向くことは一度もなく、A.T.も一度も指揮者を見なかった(自席からはそう見えた)ことです。急遽決まった代理指揮ですから、ソリストに安心して自由に任さられる程の練習をする時間はなかったでしょうし、かといって管弦を指揮するのに夢中でピアニストを忘れていたわけではないでしょうけれど。ソリストとのタイミングはまずまず合っていたし、ただ管弦とピアノの音量調節はどうだったのかやや気になりました。

 全体的にみると、繊細さよりももっとラフマニノフらしい強さの表現が圧倒している演奏を、A.T.には求めたかった。

演奏後、ピアノ独奏(オケなし)のアンコール演奏が有りました。

 リスト『リゴレットによる演奏会用パラフレーズ』

 最近はソリストによるアンコール演奏が定番の様になった感があります。アンコール曲は演奏者が得意とするえりすぐりの曲を選ぶのでしょから、それはほとんどの場合、完ぺきな演奏が多いです。今日もその例に違わず素晴らしい(本プログラムよりも)アンコール演奏でした。このピアニストは他の楽器との競演より、リサイタル向きではないかなと思いました。  

 

③フランツ・シュミット/交響曲 第2番 変ホ長調

各楽章の詳細は割愛しますが、

1楽章は「ニョロニョロ、コロコロ」と弱めの弦楽アンサンブルで始まったものが、すぐ盛り上がって、ティンパニーの音と共に管弦全開となり、沼尻さんは体を左右に振り、疲れも見せず精力的にタクトを振っていました。最後のパッセッジは非常に聴きごたえがあった。

2楽章では管演奏から開始、弦に移ってしばし演奏するとまた管に戻り、またその後ティンパニーの音が管弦を挑発するが如く、それらは不思議な響きを持ったメロディとなり、ここの辺りやまた他の同楽章の箇所でも面白い表現がありました。作曲家の個性が出ているのでしょうか?かなりユニークな感じです。

3楽章はホルンで開始、弦のみ、管のみのアンサンブル交差があり、奇麗な旋律でさらなる強奏に発展し、ブラスの響きが心地良く聞こえました。この辺りは管がメインなのでしょう。クラリネットのソロが管弦アンサンブルを引き出し、時々きらりと宝石をちりばめたようなアンサンブルもありました。最終局面は沼尻さんは体一杯を使って、激しく懸命に動かし、最後の大轟音を御そうと大活躍の指揮ぶりに見えました。若々しいエネルギッシュな指揮でした。

 総じて感じたことは、この曲は全体として相当姦しいですが、やかましくは有りません。新古典派的だけれどもロマン的な感触も味わえる一種独特の雰囲気を持つ迫力満点の交響曲だという事でした。

 (追記)今回の演奏会は、NHKFM放送で、生放送されました。家で録音してもらったので、後で聞いてみようと思います。ホールで聴いたのとは、違ってきこえる部分があるかも知れない。異なった印象をもつかも知れません。

(追記2)日曜の朝、録音を聴いてみました。ピアノコンチェルトは、実際に聴いたものより力強く、オーケストラの音に隠れることもありませんでした。恐らくこれは録音するマイクの位置の関係だと思います。ピアノの音はかなり至近距離からもピックアップしているのでしょうし、 広いホールになればなる程オーケストラの音は逆円錐状に広く拡散し、それに対しピアノの響板の反射は、限られた方角の限られた空間に拡散するので、座席の位置によって、極論すればすべて到達する音波は異なるし、減衰し易いのはピアノの音でしょう。かぶり付きやピアノにかなり近い席だったら、録音に近い音が聞こえるでしょう。

 最近はコンチェルト演奏の前に、オーケストラ編成を若干減少するケースを見かけます。楽譜に楽器編成の数などの指示の記載があっても、百年も経つ曲であれば、当時の楽器の音量は、今より小さいことが多い筈で、客席に聞こえる音を考慮に入れることは理にかなっています。このことに関して思い出すのは、いつだったか、数年前のことですが、鈴木優人さんのオケのゲネプロに行った時、彼はオケに新たな指示を与えると、客席に降りてきて通路や空席の処で、音がどうなるか何回もいちいち確認していたことです。中々殊勝なことですね。話しは飛びますが、鈴木さん、今度、バッハの『平均律クラヴィール』全曲演奏をするらしいのですが、既に他の音楽会に行くことにしていたので、残念ながら行けません。またその内機会があるといいのですが。