HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

沼尻・神奈川フィル『ニュウニュウ(Pf.)+マーラー7番』

神奈川フィルハーモニー管弦楽団みなとみらいシリーズ第392回定期演奏会

~音楽監督(沼尻竜典)の”初マーラー”!~

 前回の「オルガン付き」の名演も記憶に新しいまま、今回で神奈川フィルの東京公演も3年目を迎える。大編成オーケストラの全機能を引き出す必要のあるマーラーの交響曲は、ヨーロッパの歌劇場での音楽総監督の経験もあり、常に数百人の舞台を率いている沼尻の最も得意とするところ。神奈川フィルの音楽監督としては今回が初めての指揮となるマーラーの大曲に、期待が大きくふくらむ。前半には、神童としてその名を轟かせたピアニスト、ニュウニュウ(牛牛)と共にグリーグの協奏曲をお届けする。ニュウニュウと沼尻は2010年、ニュウニュウが12歳の時に上海万博で共演しており、今回はそれ以来の再会となる。沼尻は、今や世界的ピアニストとなった「元神童」との共演が待ちきれないそうだ。神奈川県のクラシック音楽文化を牽引する楽団の“いま”をお聴き逃しなく!(主催者言)

 

【日時】2024.2.17.(土)14:00〜

【会場】横浜みなとみらいホール

【管弦楽】神奈川フィルハーモニー管弦楽団

【指揮】沼尻竜典

【独奏】ニュウニュウ(Pf.)

 

<Profile>

 ニュウニュウ(本名:張勝量[チャン・シェンリャン])は、1997年に中国福建省アモイ市の音楽一家に生まれた。幼いときより父親にピアノの手ほどきを受け、6歳の誕生日から数週間後の2003年8月にリサイタル・デビューを果たし、モーツァルトのピアノ・ソナタとショパンのエチュードを演奏した。その後、上海音楽学院中等部に音楽院史上最年少で入学を認められた。ニュウニュウは10歳より、上海音楽学院でハァン=クアン・チェン教授のもと学び、その後、ボストンのニューイングランド音楽院に進み、現在はジュリアード音楽院において学士過程で研鑽を積んでいる。

2007年には、世界的なクラシック音楽レーベル、EMIクラシックスと専属契約を交わした最年少アーティストとなる。さらにロンドンのロイヤル・フェスティバルホールにおけるチャールズ皇太子臨席のコンサートに招待され、レスリー・ハワード指揮によるショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番を演奏した。2008年7月にデビューアルバムとなる《ニュウニュウ・プレイズ・モーツァルト》がリリースされ、その後2010年に《ショパン・エチュード全曲集》、2012年に《ラ・カンパネラ(リスト・パラフレーズ&トランスクリプションズ)》がリリースされた。2014年6月にはワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団とその音楽監督であるヤツエク・カスプシクの指揮でラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番とパガニーニの主題による変奏曲集をレコーディングしているが、この録音が大変に高い評価を得たことで、ニュウニュウはオーケストラより再共演の申し出を受けた。

この他にも2014/15年のハイライトとしては、プラハにおけるドヴォルザーク音楽祭においてイルジー・ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団との共演で演奏したドヴォルザーク:ピアノ協奏曲があげられ、さらにはムーハイ・タン指揮のベルグラード交響楽団においても、ブラームス:ピアノ協奏曲第1番でデビューを飾っている。彼はその後、上海フィルハーモニック管弦楽団への里帰り公演でチャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番を披露している。さ

ニュウニュウは、ロンドンのウィグモアホール、北京の中国国家大劇院、上海のオリエンタルセンター、東京のサントリーホール、大阪のシンフォニーホールを始めとする世界的な音楽の殿堂に登場している。

2017年夏にはドイツ、フランスを含むヨーロッパの4つの音楽祭に参加。さらに2017年9月に中国で開催されたBRICSサミットにおいては、そのガラ・コンサートで演奏すべく中国政府より招聘され、中国、ロシア、インド、ブラジルを始めとする各国首相らの前で演奏を行った。
2017年12月にニュウニュウはユニバーサル ミュージック香港と契約を交わし、ユニバーサルにおけるデビューアルバムが2018年6月にリリースされる。

①グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調Op.16

(曲について)

 グリーグが完成させた唯一の協奏曲1868年、作曲者が25歳のときにデンマークのセレレズに訪問している間に作曲された、グリーグの初期の傑作。グリーグはその後出版社からの依頼を受け、1883年ごろに2番目のピアノ協奏曲を書こうとしたが書き上げられず(スケッチが残されている)、代わりにこの曲に何度も改訂を行っている。現在演奏されるのはグリーグの最晩年である1906年から1907年頃改訂され、1917年に出版されたもの。初期版と曲想の大きな違いはないが、楽器編成が異なり、独奏と管弦楽譜で400か所以上の変更点が見られる。

数あるピアノ協奏曲の中でも、非常に人気の高い曲であり、またグリーグの代表的な曲。

 

②マーラー:交響曲第7番ホ短調「夜の歌」

(曲について)

 第7交響曲は、マーラーの「ウィーン時代」に完成されている。第2楽章と第4楽章は1904年、交響曲第6番の完成に引き続いて作曲されており、これらの音楽には相互の関連が認められる。とはいうものの、第6番で打ち出された古典的形式への回帰とは異なり、第7番では、第5番と同様のスケルツォ楽章を中心とする対称的な5楽章構成をとっている。また、第1楽章がロ短調で開始されるが、主部はホ短調、終楽章はハ長調という「発展的調性」をとっていることも第5番と共通する。

しかし音楽的には、第5番より多声的書法にもとづく重層的・多義的展開がいっそう進んでいる。全体としては調性音楽のうちに踏みとどまってはいるが、部分的に調性はあいまいとなり、多調無調の明確な誕生を予感させる。

管弦楽の扱いでは、管楽器、打楽器の充実は第6番と同様であるが、前作のハンマーの代わりに、ギターマンドリンテノールホルンなどが使用されている。全曲を通じてホルンが重視されており、よく目立つ。奏法的に多彩なことも特徴で、音色・響きの工夫が凝らされ、劇性よりもむしろ室内楽的な配慮が見られる。

全楽章を通じての構成としては、ベートーヴェン以来の、「暗」から「明」に至る伝統的な進行が見られるものの、その経過にも帰結にもとくに明快な必然性が感じられないことから、物語としての読解が難しく、この曲は「構成的に難がある」「分裂症的」などと批判されてきた。

こうした経緯から、第7番は同じ純器楽のための作品でありながら、比較的明快で親しみやすい第5番や、緊密な構成のうちにきわめて劇的な音楽が盛り込まれた第6番の陰に隠れた存在として、マーラーの交響曲のなかでもあまり人気のない作品であった。しかし、1970年代後半から始まったマーラー・ブーム以降、第7番の再評価の動きも始まり、近年は録音機会にも恵まれ、読解についてもポストモダンとの発想的な親近性や、メタ・ミュージックとの分類など、さまざまな新しい解釈が生まれている。

なお当作品には第2・第4楽章「夜曲(Nachtmusik)」に由来する「夜の歌(Lied der Nacht)」という俗称があるが、これは後世の後付けであり、マーラーおよび作品には全くの無関係である

演奏時間約80分。

 

【演奏の模様】

 最近は、殆ど東京での演奏会ばかり聴きに行っていて、みなとみらいホールは久しぶりです。今回は独奏ピアニストとオーケストラの曲目につられて聴きに来ました。

 会場に入るや会場アナウンスがあり、間もなく指揮者の事前トークがあるとの放送でした。沼尻さんの話の大筋は、マーラーの演奏楽器には、「テナーチューバ」奏者が右翼中段に設定され、また非常にレアな楽器として左翼にマンドリンとギター席が並んで設定され、マイクの使用無しで弾くので(音が聞こえる様に)少し床高さを高くしているという話しや、ニュウニュウとは中国の万博で12歳の彼と共演して以来で、今や27歳、楽しみな演奏。とのことでした。

 

①グリーグ『ピアノ協奏曲(ニュウニュウ+神奈フィル)』

 この曲に関しては時々生演奏があるので、ここ数年で何回も聴いています。それらの中から、2020年の清水和音さんの演奏の記録を、文末に抜粋再掲しておきました。

 このピアノ協奏曲イ短調 作品16は、エドヴァルド・グリーグが完成させた唯一の協奏曲。1868年作曲者が25歳のときにデンマークのセレレズに訪問している間に作曲されたグリーグの初期の傑作です。 グリーグはその後何十年にもわたってこの曲を改良していったらしく、ピアノコンチェルトの作曲はこの曲一本やりで、他には作らなかったというのですから驚きです。

 こうして数あるピアノ協奏曲の中でも、非常に人気の高い曲グリーグの代表作が誕生したのでした。

楽器編成 PF.(Solo)、Fl.2、Ob.2、Cl.2、Fg.2、Hrn.4、Pf.(Solo)Fg.2、Hrn.4、Trmp.2、Trmb.2、Timp. 二管編成 弦楽五部14型(14-12-10-8-7)

 


ピアノ(ソロ)、フルート 2、オーボエ 2、クラリネット 2、ファゴット 2、ホルン 4、トランペット 2、トロンボーン 2、ティンパニ(一対)、弦五部。
 演奏時間30分程度

全三楽章構成

Ⅰ.第1楽章 Allegro molto moderato イ短調 4/4拍子 ソナタ形式

Ⅱ.第2楽章 Adagio 変ニ長調 3/8拍子 複合三部形式

Ⅲ.第3楽章 Allegro moderato molto e marcato イ短調〜イ長調 2/4拍子 ロンドソナタ形式

 各楽章とも非常に有名な旋律やカデンツァ等目白押しなので、その詳細は、下記の(参考)に示しました。今回この曲を弾いたニュウニュウの演奏に関して記せば、

 全体的に文句の付け様がない、ほぼ完璧な演奏でした。。特にこの曲はカデンツア的ソロ演奏の音が優勢な箇所が多く有るのですが、どの箇所でもニュウニュウの音はしっかりと聴衆に届いていたと推定します。一番最後のオーケストラの大轟音演奏の時を除けば、ピアノソロが管弦楽に飲み込まれてしまって席に聞こえないという事は一度も有りませんでした(これは自分の今回の座席が、1階中央の前方ブロックでピアニストの演奏が目の前で行われたせいかも知れません)ただはっきり申し上げると、プロのピアニストとしての魅力、個性が明確には感じられませんでした。この曲は多くのピアニストが弾いてきていますから、これぞ自分のGriegだという自己主張をもっと強く出して欲しかった気がします。心の深い所で咀嚼しそれを表現出来るといいのですが。まだまだ若い春秋に富むピアニストですから、更なる高みを目指して進まれることと思います。沼尻・神フィルはソリストによく寄り添ってバックアップしていたと思います。ソリストも指揮者の方をちょくちょく見て合わせていました。

 尚演奏後、館内(満員状態という程ではなくあちこち空席はありましたが、八割方は入っていたと思います)からの大きな拍手に答えてピアニストと指揮者は何回も退出を繰り返していました。

 

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②マーラー『交響曲第7番』

 

楽器編成:Picc.、Fl. 4(Picc.持替え 1)、Ob.3、コーラングレ、小Cl.、Cl. 3、Bas-Cl.、Fg.3、Con-Fg.  、Ten-Hrn.、Hrn.4、Trmp.3、(第5楽章でPicc-Trmp.持ち替えあり)、Trmb. 3 、Tub. 、Timp.、大太鼓、小太鼓、Tmb.、Symb.、Tria.、銅鑼、ルーテ(むち)、Grok-Spl. 、カウベル、低音の鐘、Hrp.2、

Gitr.、Mndrn.、四管編成(Hrn.5、Fg.4、Cl.4) 弦楽五部14型(①に同じ)

全五楽章構成

第1楽章Langsam (Adagio) – Allegro risoluto, ma non troppo

第2楽章 Nachtmusik I. Allegro moderato

第3楽章 Scherzo. Schattenhaft

第4楽章Nachtmusik II. Andante amoroso

第5楽章 Rondo-Finale. Allegro ordinario

 

 スケルツォ楽章を中心とし、その外側に2曲の「夜曲」、その外側に両端楽章という対称的配置となっていいます。このような構成をマーラーは好んでおり、交響曲1番 の初期構想が5楽章構成であったほか、交響曲2番、交響曲5番、交響曲10番 が5楽章構成です。10番の演奏は来週聴くことにしているので楽しみです。今回の7番の演奏時間は通常80分前後。

 かなり長大な作品でした。聴いた一番の感想は長い!冗長過ぎるのではという事でした。いつものことですが、勿論1音1音聞き漏らさない様に耳をそばだてて聴いた訳ですが、特に最終楽章に来ると、もう最後の盛り上がりかな?終焉まじかかな?と思うとアンサンブルは急速にしぼみ、再度弱音演奏から再出発し再び登り切れなかった頂上目指すといった感じで、それが一回、二回どころか何回も何回も繰り返されるので、若干食傷気味で伊賀痛くなってしまう程でした。マーラーにはかなりしつこい、粘着性の性格があったのでしょうか?これでは、アルマもいやになる時があったのかも知れません。ホントの最終場面に達し、弦楽アンサンブルが、叫び声をあげたかと思うや急に静まりかえり1Vn.奏からすぐに超高速スピードにエンジンは全開、テーマ旋律等の咆哮の怒号を張り上げると一瞬のパウゼの後ジャーンとタクトは振り下ろされやっとオーケストラは眠りに着いたのでした。この間Timpは打ちっぱなし、相当の肉体労働でしょう。さぞかしお疲れでしょう。でもお若い様ですからこの位平気かな。恐らくマロさんのご子息?

 しかし全体を顧みれば、この7番には各章各処に珠玉の光輝く調べが嵌め込まれており、例えば、第3楽章でのコンマスによるソロVnとFl.との掛け合い奏。それがさらに発展した第4楽章でのコンマスソロ、すぐにVa.アンサンブルに引き継がれ、それが非常に珍しいマンドリン演奏に受け留められ、さらには⇒ Hrn. ⇒ ギター ⇒ Hrn.との掛け合いそしてコンマスソロ演奏に戻り、マンドリン+ギター演奏へと次々と(フーガではないですが、)何か輪廻の逃れ得ない出口が見つからない富士の樹海の中の深遠なこの世のものとも思えない美しさをマーラーには見えてそれを表現したかったのかも知れません。沼尻神奈フィルは、ところどころ、アンバランスになりかける箇所も散見されましたが、概ねこの狂気とも思えないことも無い叫びを含む大曲に果敢に挑戦し、相当な善戦をしたと思います。最後は沼尻さんは相当疲れたのか、指揮台の手摺に手でつかまりながらカラダを支えて挨拶していました。今日の休日は、いい演奏を聴けて良かったと思いました。


 という訳で、帰宅途中もこの記録を書いていたので、今日、「ブーニン関係のNHKテレビ再放送」がBS1チャンネルで夜放送されることには気が付きませんでした。家の上さんから、「再放送がすぐに始まるわよ」といわれて急遽ブログにも書いた次第でした。

 

 

 

 

 

//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////(抜粋再掲)『ティアラこうとうシティフィル+清水和音』演奏会を聴く

【会場】
ティアラこうとう(江東公会堂) 大ホール
【演奏】
東京シティフィルハーモニック管弦楽団
指揮:松本 宗利音
ピアノ:清水 和音

【演奏曲目】
①ベートーヴェン『レオノーレ序曲 第3番作品72b』

②グリーグ『ピアノ協奏曲 イ短調 作品16』

③シューマン:交響曲第1番 変口長調 作品38「春」  

 

【演奏の模様】

①   《割愛》

②は、演奏者も曲自体の生演奏も久しぶりで聴きました。清水さんは今年の8月、ミューザ川崎のフェスタで、ベートーヴェンの第5番『皇帝』を弾きました。素晴らしい演奏でしたが、なぜか又聴きに行きたいと思わなかったのです。こうした印象は昨年8月『2019堀正文70thアニバーサリーコンサート』で英雄ポロネーズを聴いた時も同じく感じました。でもその後、先々月『砂川涼子ソプラノリサイタル』で清水さんが伴奏されて、トークを聴いたり、また最近余り派手ではない音楽会に参加され、地道に活動されているということを知り、今回は、グリーグのコンチェルトを聴きに行きたいと思ったのでした。

 グリーグのコンチェルトの生演奏は、約1年半ぶりです。2019年の4月に、ロシアのピアニスト、ルガンスキーが演奏するのを聴いたことがあります。その時の演奏の模様は参考まで文末に引用して置きます。

 清水さんの今日の演奏は、文句なし。強弱、短長、緩急自在に音を紡ぎ出し、1楽章では、ppの箇処は抑制を効かせた奇麗な調べで、ffの部分はオケの大音響にも負けない力強い音で、堂々と演奏していました。冒頭の世によく知られたメロディの部分も、カデンツァの部分でも、気負いはなく淡々と、しかしポイントは外さずしっかりと弾いていました。

 第2楽章では、ゆったりした柔らかい弦の響きが心地良く響き、清水さんが演奏する、スーッと力を抜いて弾く演奏は今回初めて聴きました。なかなか味がありますね。これまでの自分の記憶の中での清水さんの印象は、バンバン力で押しまくるエネルギッシュなピアニストというものでしたが、今回認識を改めました。音楽の表現力の奥義をさらに極めつつあると思います。見違える程の素晴らしさ。またこの楽章ではHrのソロ演奏の箇処が有り、女性奏者が吹いていたのが印象的。

 次楽章ではグリーグの天才性が遺憾なく発揮されます。ドラマティックなオーケストラの調べ、軽快なリズム、ピアノの静かな演奏部、きらきらするカデンツア、変化自在なリズムの躍動、その作曲者の意図を良く汲み取るピアニストと、指揮者、合わせるオケ団員も力量を発揮して来ました。指揮者はこの辺りに来ると団員の力を十分引き出し始めている感じがします。フィナーレも十分に効果を上げていたと思います。

③ 《割愛》

 

 

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////2022.5.12.HUKKATS Roc.


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 表記の演奏会はサブタイトルに「音楽監督就任記念」とあり、これは指揮者の飯森さんの事です。また演奏者の顔ぶれをみると、エレキ・ギターのフリードマンさん、尺八の藤原さん、それにクラシック演奏家の高木さんが、エレキ・ヴァイオリンと書いてあります。それに、ピアニストの牛牛。曲目は、①チャイコPf.コンチェルト、これはパシフィックの下牛牛が弾くのでしょう。②ショスタコ1番は、パシフィックの演奏でしょうから、とするとクラシック演奏会では珍しい上記の楽器演奏は、③マザーシップに違いありません。しかもこの曲は、「本邦初演」と書いてあります。こうしたことから興味を抱き聴いてみたいと思いました。

【日時】2022.5.11.(水)19:00~

【会場】サントリーホール

【管弦楽】パシフィックフィルハーモニア東京

【指揮】飯森範親(音楽監督就任)

【出演】牛牛(ニュウ ニュウ ピアノ)マーティ・フリードマン(エレキ・ギター)、藤原道山(尺八)、 高木凛々子(エレキヴァイオリン)

 

【曲目】

①チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23

 

②ショスタコーヴィチ/交響曲 第1番 ヘ短調 作品10

 

③メイソン・ベイツ/「マザーシップ」(本邦初演)

 

【演奏の模様】

①チャイコフスキー『ピアノ協奏曲』(ニュウニュウ)

第1楽章Allegro non troppo e molto maestoso - Allegro con spirito

    牛牛は、聴衆に血となり肉となる新鮮なミルクを与えました。フレッシュそのもの。何と若い好青年なのでしょう。1996年生まれの若手ピアニスト、帰り道、通路を歩きながら男性同士が話しているのが聞こえました。「演奏後の周りのご婦人達の拍手が凄かった。ピアノもいいしかわいいし、品もいい、人気だね。」中国生まれの若いピアニストがいることは、小耳に挟み知っていました。聴いたことはなく、今日が初めてです。
第1楽章のよく知られた壮麗な序奏は、シンフォニックで堂々としたものです。牛牛の演奏は、やや細身の体を直立にし、フォルテ箇所は腕と手の力を込めて、弱い箇所は、手の指を立てないで、鍵盤上を撫でる様に弾いていました。短いパッセッジでも、強弱織り交ぜ、メリハリが、表現力が、ある演奏でしたが、立ち上がりは若干、音の研ぎ澄まし不足のきらいがあったのかなと思います。また、途中何回か全管弦の強奏の箇所では、ピアノの音がかき消されて聞こえない時もあった。
この楽章で印象的なのは、カデンツァの終盤でした。それまで、フォルテの時は、力一杯打鍵している様子でしたが、非常に繊細な箇所になると丹念に弾いて心に染みる ’風の声’ の風情があった。牛牛は、たびたび指揮者の方を見て、また飯森さんもビアニストに向き合って合図を送り、呼吸がビッタリ合っている様子でした。さらに牛牛は、演奏の区切りで、オーケストラの方も見て拍子を取っている程で、演奏に没入するのではなく、余裕綽々と弾いている感を受けた。これまで数え切れない程弾いて来た曲なのでしょう。



第2楽章 :Andantino semplice - Prestissimo - Quasi Andante 
 弦のピッツィカ-ト伴奏に載せてFl.が素朴な主題の旋律を鳴らしPfがそれを引き継ぎました。ロシアの古い旋律だそうです。Vc、Obもソロで主題を弾きますが牛牛は静かに伴奏的なピアノ演奏をしていました。指をかなり白鍵、黒鍵に平行に掌を平らかにして弾いていた。続いて軽快で速い指の動きの箇所となり、指揮者がタクトを振り下ろし、オケがジャーンと比較的大きい音を立てると、牛牛は静かに旋律的演奏を演奏しますが、プログラムノートによれば、“シャンソン「歌って、踊って、笑って」のメロディが現れる”と言います。確かに1楽章での(および後に記する3楽章での)主たる旋律と比し、歌を歌う様な演奏が続く楽章でした。

 

第3楽章Allegro con fuoco                      

 Timp.の一撃のもとオケの速いテーマで鳴り出すと、同主題を牛牛も同じく民族的調べ(ウクライナ舞曲を基調とするらしい)を奏でます。時々ゆっくりとなる調べは、なかなか耳当たりがいい旋律で、さすがチャイコフスキー、耳に優しい曲群、「白鳥の湖」もこの頃同時期に作曲されました。Vnのアンサンブルはとても良く溶け合っていい音を立てていました(これは1楽章、2楽章でも同様)。最後弦楽アンサンブルは立ち上がるが如く次第に高味に上るが如く全奏すると、牛牛は猛然と駆け足で高台に走り上がる如く、ピアノ最後のフルスピード運転で、オケという強い風が吹いている荒野を走り抜けるのでした。

今日の牛牛の演奏はミスもほとんどなく、フレッシュで大物演奏家になる期待が掛けられる光が差し込む様な演奏でした。でもそうした方向に脱皮出来るかどうかは今後の精進にかかっています。今は中国を本拠地としているのでしょうか?アメリカですか?らんらんの薫陶を受けているのでしょうか。最近は(移民先も含めた)中国のピアノ界に天才が出ていますね。これも中国の経済発展と関わり合いがあるのでしょうか。

演奏会の前に、カラヤン指揮ベルリンフィルで、キーシンが1988年17歳の時にこの曲を弾いた録画を見て置きました。キーシンが独特な体の動きー前後に体を揺すりながら拍子を取って、演奏に没入する姿は迫力がありました。そこから出る音達ももっともっと力強いものでした。キーシンが指揮者を見る時は、体を演奏に没頭させながら顔も向けず、目玉を横にキョロっと動かして指揮者を一瞥するだけ、その没頭振りと認知力の素早さが分かるというものです。もっとも一か所を除き、カラヤンの指揮は、独奏者に任せるといった風でしたけれど。

尚、ソリストアンコールが有り、ベートーヴェン(リスト編)『交響曲5番運命』より第一楽章が演奏されました。交響曲のピアノ独奏版です。牛牛は力強くピアノの限界ぎりぎりまで打鍵し、オーケストラ的大音響の雰囲気を出そうと努めていました。唯オケでも繊細な表現箇所はあります。その辺りがもともとのリストの楽譜指示を知るべくもないのですが、やや繊細さが表現されていないかな?といった感じでした。                                         ピアノ演奏で交響曲演奏をカヴァーしようとする試みは、時々演奏会で見かけます。一昨年の11月に東京藝大奏楽堂で、ピアノ科の先生方の演奏会があり、その時、ベートーヴェン(リスト編曲)『交響曲第9番』を青柳晋さんと伊藤恵さんが二台のピアノで演奏していました。

 

 

②  《割愛》

 

③  《割愛》