HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

ニューイヤーコンサート2024/原田・都響を聴く

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【日時】2024.1.3.(水) 15:00〜

【管弦楽】東京都交響楽団

【指揮】原田慶太楼

【出演】前田妃奈(Vn.) 

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〈プロフィール〉

 22年第16回 ヘンリク・ヴィエニアフスキ国際ヴァイオリンコンクールで優勝し、国際的に注目を集める新進気鋭のヴァイオリニスト。卓越した技術と類い稀な表現力で高く評価されている。2013年全日本学生音楽 コンクール全国大会小学校の部第1位、2019年日本音楽コンクール第2位及び岩谷賞(聴衆賞)など輝かしい 受賞歴を誇る。ほかにもクロスターシェーンタール国際ヴァイオリンコンクール第1位、クロンベルクアカデミー スカラシップ賞など受賞多数。11歳で関西フィルハーモニー管弦楽団と共演したのをはじめ、国内の主要 オーケストラと共演多数。リサイタル、室内楽やアウトリーチにも積極的に取り組んでいる。2023年には、およそ 20カ国、60地域での演奏会を予定しており、日本でも東京、大阪などでのリサイタルやオーケストラとの共演 が予定されている。令和4年度 (2022年度)大阪文化祭奨励賞受賞。現在、東京音楽大学に特別特待 奨学生として在学中。(公財)江副記念リクルート財団第48奖学生。小栗まち絵、原田幸一郎、神尾真由子の 各氏に師事。

 

 

【曲目】

 ①J.シュトラウスII:オペレッタ『こうもり』序曲

 

②バーンスタイン(メイソン編曲):『ウエスト・サイド・ストーリー』セレクション

 

③ヴィエニャフスキ:グノーの『ファウスト』による華麗なる幻想曲 Op.20

 

④バーンスタイン:『キャンディード』序曲

 

⑤サラサーテ:カルメン幻想曲 Op.25

 

⑥J.シュトラウスII:美しく青きドナウ Op.314

 

【演奏の模様】


 ①J.シュトラウスII:オペレッタ『こうもり』序曲

 今年初めての生演奏を聴きます。今年は、NHKテレビの『ウィーンフィルニューイヤーコンサート』を聴けなかったので、シュトラウスの曲は勿論のこと、オーケストラのアンサンブル自体が初物でした。正月料理を味わうが如く堪能しました。管弦楽は東京都交響楽団、昨年末の第九の好演振りが思い出されます。その時のメンバーとは必ずしも同じ構成員とは限りませんが、コアは変わらないでしょう。大筋に於いて、都響の響きを保っていたと思います。

 演奏会は原田さんの司会によるトークをまじえて進み、快活で元気な原田節が炸裂、会場は湧きにわきました。管弦楽の規模は、二管編成(金管は三管、Hr.は4)弦楽五部14型(14-12-10-8-8)。

 序曲は、映画で言えば筋道の予告編の様なもの、オペラレッタの内容を暗示する旋律をピックアップして聞かせるのですが、原田さんは持ち前の行動力をばねに都響アンサンブルを引っ張り一気苛性に弾き終わりました。

 この底抜けにカラッとした明るさが、指揮者としては他に類を見ない原田さんの魅力です。アメリカンドリームを一手に引き受けて皆に配っている感じ。暗い話題も悲しさもつらさもすっかり忘れ切って音楽に浸った一時でした。それにしてもOb.ソロはいい音色でしたね。男声奏者でしたが、Ob.は何処のオケでも名手がいるものですね。

 

②バーンスタイン(メイソン編曲):『ウエスト・サイド・ストーリー』セレクション

 原田さんは演奏会のコンセプトを決めて進めるケースが多いですね。今回は、「物語のある曲」だそうで、①はオペレッタの物語、そしてこの②の曲はミュージカル「ウェストサイド物物語」でブロードウエイで長期間上演された有名な曲です。見たことのない人でも、コマーシャルか何かの折に、トッポイ二つの若者グループが前屈みになって finger snapping しながら曲に合わせて踊るシーンは見たことがある人が多いかも知れない。配布されたプログラムノートに依れば、❝(バーンスタインは)・・・近代的和声、フーガ等の技法、アリアや重唱の様式、ジャズその他民衆音楽の要素など多種多様な手法を取り入れている点で・・・ミュージカル史上に革新をもたらした傑作❞と褒め讃えている曲です。

 確かに今回の抜粋された曲達を組みわせた版でも曲想が全く異なるものが連結されていても自然な流れで、これは将に①の序曲の編纂に相通ずるところが有ります。シュトラウスの序曲も各場面の代表曲を非常にスムーズに繋げています。作曲家や編曲者の技法は大したものです。

メドレー7曲の中でも第5曲目『One Hand, One Heart』のHp.伴奏でVn.アンサンブルが美し旋律を謳う箇所にはうっとりでした。

 

③ヴィエニャフスキ:グノーの『ファウスト』による華麗なる幻想曲 Op.20

 この曲も原田さんのコンセプトに当て嵌めれば元が「ファウスト」のオペラ(グノー作曲全五幕)ですから、物語性を帯びている訳です。只その物語をVn.演奏だけを聴いて思い浮かべることは難しいですが。演奏者は前田妃奈さん、新進気鋭の演奏者です。この曲はヴィエニャフスキー(ポーランドのヴァイオリニスト兼作曲家)の作曲で、その名を冠したコンクールで一昨年優勝した演奏者ですから手慣れた曲なのでしょう。但し相当技巧に凝った曲の様です。確かに聴いてみると、重音演奏有り、ハーモニックス奏法の連発あり、超高速演奏他様々なテクニックを要する超絶技巧曲で、この演奏後のトークによれば、何回弾いたか分からない程沢山弾いたという言葉通り、ほとんど休みなく次々と技を繰り出して行く様は、コンクールの勝者に相応しいものでした。曲相も3回〜4回大きく変わり、オケ休止のカデンツァ的ソロ演奏も有り、この曲はヴァイオリン協奏曲的要素もあると思いました。タダ全体としては、発する音量が文化会館の大ホールの隅々まで行き届いていたか?と言う観点から見るとやや弱い演奏だったかも知れません。もっともっと迫力ある全館に轟く様な調べがあれば、演奏終了後の聴衆の反応ももっと大きかったに違い有りません。

④バーンスタイン:『キャンディード』序曲

この曲も物語性があって、プログラムノートに依れば、ヴォルテールの小説『カンディード』を元としたミュージカルの様です。さらに調べてみると❝ドイツのヴェストファーレン生まれの青年キャンディードと、相思相愛の恋人クネゴンデは、一度は結ばれそうになりながら、戦争や略奪など様々な禍に遭遇。世界中の様々な土地で一癖も二癖もある人物と出合い、その都度、それまでの全てを御破算にするような暗転(殺人、宗教的略奪、性的暴力、詐欺など)に巻き込まれていくという、奇想天外なファンタジー❞だそうです。読んだことも見たことも有りません。

 演奏は、幕開けへのワクワク感が高まるのが分かる曲でした。速い2/2拍子で、ティンパニの強打と金管楽器のファンファーレで華々しく始まり、一度もテンポを緩めることなく、終結部でさらにテンポアップ、一気呵成に終わる、短いながらも原田さんの指揮スタイルにピッタリの曲でした。

 

ここで《20分の休憩》

 

⑤サラサーテ:カルメン幻想曲 Op.25

休憩が終わって⑤の曲を演奏する前田さんが登場すると原田さんは、予定していたトークを始め、前田さんに質問し出しました。その中で、コンクール後、何十か国も廻って演奏会を行ったこと、ヴィエニャフスキの曲中でもコンチェルト2番は何回となく弾いたこと、これからは、ドヴォルザークやハチャトリアンのコンチェルトやブルッフの曲などを弾いてみたいと言っていました。中々物怖じしない豪快さを有する若者だと思いました。

さて⑤の曲は申すまでも無くオペラ『カルメン』から取られた曲です。これは、以前神尾さんが弾いた時にも物凄いテクニックに驚いた曲で、その何年か後には日本音楽コンクールで優勝した大関万結さんが弾いたのを聴いて、脳細胞が多重に(要するに聖徳太子の様に)働く必要があるのでは?と思われる程の高度な弾き振りに感心したのを覚えています。

 今回の前田さんの演奏は随分弾きこなして慣れている曲なのか、③の演奏の時と比べても見違える様な力溢れる演奏でした。スタートの低音の開始旋律も、それに続くうねる連続変化音も高音域のうねりもすべて良かった。ダイナミックな動きでした。

 終盤でも綺麗な音を立てるFl.のソロ音の中、前田さんの力強く速い旋律演奏が堂々と響き、時々高音への跳躍音も変化に富み、テーマの変奏に於いても跳躍音が効いていて、ここは前田さんの技りょうの見せ所といった感じでした。最初から最後までこれぞ若手ヴァイオリニストの本領発揮の演奏で、当然演奏終了後の観客の拍手喝采は③の時よりも盛大なものとなりました。自分もかなり強い拍手で手を叩いていました。

 ソロアンコールは無しで、次は最後の曲です。

 

⑥J.シュトラウスII:美しく青きドナウ Op.314

この曲は、原田さんも演奏に際して話していましたが、この曲をやらないと新春は始まらないといった誰もが聴きたい(演奏者は誰もが弾きたい)曲なのでしょう。ウィーンフィルのニューイヤーコンサートの正式プログラむには入っていなかった気がします。元日に聴けなかったので分かりませんが、今度土曜日にNHKEテレで放映されるので確認して見ます。

 

 アンコール曲は、これも定番『ラデツキー行進曲』でした。皆手を叩き、全員参加型の音楽演奏を楽しみました。大きな拍手と歓声。原田さんは楽しい人ですね。


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