HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

ローマ歌劇場日本公演評(イタリア紙)等

9月26日に終了したローマ歌劇場日本公演に関する記事が、イタリア紙に掲載されたとの通知が、招聘元のNBSから届きました。参考まで以下にその記事を転載します。合わせて来たる9月30日(土)にソプラノ・リサイタルを予定しているソーニヤ・ヨンチェバへのコンサートに向けたインタヴューの様子も掲載しました。

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◉ローマ歌劇場が上演した「トスカ」と「椿姫」に東京は大喝采(伊イル・ソーレ・24オーレ紙※)

※イル・ソーレ24オーレとは?
 ミラノに拠点を置くイタリア主要の日刊紙です。ヨーロッパの経済新聞としてはファイナンシャル・タイムス紙に次ぐヨーロッパ第2位の発行部数を誇ります。

 優れた劇場であることをアピールできるのが日本である。

 招聘された劇場は忘れられない経験をすることが出来る。熱烈な歓迎を受け、熱心に舞台に見入る観客を前に劇場もまた最大の努力を惜しまない。そしてその結果素晴らしい公演が実現する。完璧なほどの音響と舞台への視界も欠点のない2300席の東京文化会館は天井に吊るされたような最上階席の最後列でさえも舞台が良く見える。今この劇場で公演しているのが、フランチェスコ・ジャンブローネ総裁が率いるローマ歌劇場だ。オーケストラ、合唱、テクニカルスタッフ、ソリスト、事務局スタッフなど総勢227名が「椿姫」と「トスカ」を上演している。半世紀の差で誕生したこの二作品はオペラの最高傑作とも言える。両作品とも観客の心に深い印象を与える。

 全7回の公演は観客を強くひきつけ、公演ごとに補助席が設けられるほどである。
ローマ歌劇場が日本公演を実現するのはこれで5回目だが、特にこの10年の間に行われた3回の日本公演は大成功をおさめ、第6回目が期待されている。

 日本の観客は鋭いアンテナでオペラ界の情報を良く把握している。観客は伝統的なイタリアオペラ公演を望んでいる。伝統を受け継ぎながらも斬新な演奏で感動を与えているのが音楽監督であり、この二演目を指揮しているミケーレ・マリオッティだ。44歳という若い指揮者がローマ歌劇場に新鮮な息吹を与えていると言っても過言ではないだろう。

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  ローマ歌劇場2023念日本公演「椿姫」より  

    (photo : Kiyonori Hasegawa)

 

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             ローマ歌劇場2023年日本公演「トスカ」より 

    (photo : Kiyonori Hasegawa)

 観客の拍手は感動の表れそのものだ。公演後にサインを求める長い列もまた観客の心をつかんだ証と言えるだろう。観客の拍手はオーケストラや合唱指揮者チーロ・ヴィスコが鍛えた合唱団の演奏の素晴らしさにのみではない。マリオッティの解釈は我々にも驚きをもたらしたのだ。彼の解釈は明確で、しかも大げさなところはなく、物語を忠実に伝えようとして内面まで掘り下げられているということを強く感じた。事細かく、フレーズを作り、意思を表示し、音色を豊かにし、強弱も休符もすべてが生かされた演奏なのだ。オーケストラピットの中ですべてをコントロールし、スター歌手が勝手な歌い方で音楽を崩してしまうことが起こらないよう厳重に注意している。大スター歌手である椿姫のリセット・オロペサと成熟したアルフレードを演じたフランチェスコ・メーリ、トスカのソニヤ・ヨンチェヴァとカヴァラドッシのヴィットリオ・グリゴーロを牛耳るのは大変なことだ。マリオッティは歌手に自由さを与えながらもしっかりと手綱を握っていることを我々に分からせた。


「椿姫」では父と子の関係、コンプレックス、苦悩などの表現が卓越していた。また「二人の子供」という前の短い間の取り方に心情が強く表れていた。ビロードのようなアマルトゥブシン・エンクバートの美しい声に魅了されながらも、それを伴奏するオーケストラの音色に言葉以上の表現力を感じられた。東京ではこれらがすべて観客に伝わったのだと思う。
「椿姫」はソフィア・コッポラの演出とヴァレンティノの衣裳も観客の目を惹きつけ、「トスカ」は2008年に制作されたゼッフィレッリの豪奢な舞台に改めて感動させられた。 ローマ歌劇場はその大成功に満足して帰国することだろう。

音楽ジャーナリスト カルラ・モレーニ
(翻訳:田口道子)


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ローマ歌劇場2023年日本公演「椿姫」カーテンコールより

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ローマ歌劇場2023年日本公演「トスカ」カーテンコールより

 

 

ローマ歌劇場日本公演で『トスカ』のタイトルロールを演じたソニア・ヨンチェヴァは、オペラ公演終了の数日後、ソプラノ・コンサートを開催します。昨年7月の〈旬の名歌手シリーズ〉で待望の日本デビューを果たしたヨンチェヴァが、いかに多彩な演目で素晴らしい歌唱を聴かせてくれるか、オペラ全幕での魅力とはまた異なる次元で魅了されるプログラムが組まれています。今回のコンサートの内容についてたずねたインタビューをご紹介します。

Photo: Kiyonori Hasegawa

 

 

Q 今回の選曲についてお聞かせください。

 昨年、ベッリーニの作曲した『ノルマ』の"清らかな女神"を日本で歌った時、お客さまから非常にご好評をいただきました。それで私はベッリーニの歌劇から、もう一つ別の傑作を披露したいと思いました。ベッリーニの歌劇『海賊』のイモジェーネ役は私のもっとも愛する役柄の一つです。光栄にもミラノ・スカラ座で歌うことができました。(※注: ミラノ・スカラ座での『海賊』は、1958年にマリア・カラスが主演後、ヨンチェヴァ主演で初めて再び舞台にかかった。) この役はマドリッドでも歌いました。
そしてもう一つあげるなら、マスカーニ作曲の『イリス』です。数年前にコンサートで歌いましたが、本当に素晴らしい音楽なのです。もっとお客さまには知っていただきたいと思っています。(注:『イリス』は日本を舞台としたオペラ)

 

Qレパートリーに関して、『トスカ』のようなポピュラーでスタンダードなものと並行して、ジョルダーノ作曲の『シベリア』や『フェドーラ』、ベッリーニの『海賊』、ケルビーニの『メデア』など、上演の稀な作品も現在のオペラ界に蘇らせていますね。どのようなお考えからなのでしょう?

 もちろん、私は『トスカ』のような人気のあるオペラは好きですが、私が心から価値を信じている、あまり知られていないオペラ作品を観客に紹介することも私の義務であると考えています。特に『シベリア』の(蘇演の)場合に当てはまります。私はこの作品を熱心に支持しているのですが、ほとんど上演されていないことは残念です。

 

 Q今後歌われたいオペラの役柄は? 海外からは、チレア作曲の『アドリアーナ・ルクヴルール』のデビューの話が近々あるそうだと、漏れ聞こえてきていますが。

 はい、アドリアーナは来年の夏にバロセロナで初役として歌います。ずっと夢見ていた役柄です。歌と演技をしっかりと織り交ぜる必要があると強く信じている私のようなソプラノ歌手にとって、理想的な役なのです。叙情的でゴージャスな音楽、尊大な感情の噴出、明るい瞬間、悲劇的な瞬間、そして壮麗で美しい死の場面を備えた、とても素晴らしい役です

 

Q最近、写真集「Fifteen Mirrors book」も出版されましたね。

 写真集『Fifteen Mirrors book』が誕生したのは、多くの人から自伝を、と望まれたのですが、私の年齢で伝統的な意味での"回想録"を書くのは時期尚早だとシンプルに思いました。そこで、私がいまできる最良の方法は、私の性格の少なくともいくつかの側面を反映している、象徴的なオペラのヒロインたちの"印象"を通して私を知ってもらうことだと判断したのです。

 

Q今回の来日ではどんなことを楽しみにされていますか?

 日本滞在では、みなさんの美しい国をさらに探索したいと思っています。観光する時間もあればいいなと思っています。昨年はコンサートを 1 回行っただけだったので、たくさん見るのは難しかったですが、秋の滞在中には状況が変わることを心から願っています。昨年見たものはとても美しかったので、日本文化をもっと探求することを本当に楽しみにしています。
前回の日本のファンの印象は、音楽に対しての知識がとても豊富で熱心ということでした。また同じように温かく迎えてくれることを願っています。

 

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 昨年7月の来日初リサイタルも聴きましたが、その本物のソプラノの歌声に歓喜しました。今回の来日では、グリゴーロと共にローマ歌劇場とのオペラ公演で、さらに凄い歌声を発揮したヨンチェバが、明日のリサイタルでどのような歌い振りを聞かせてくれるか本当に楽しみです(HUKKATS)。