HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

METライブビューイング『フェドーラ』ヨンチェヴァが歌う


【宣伝文】

婚約者を殺した相手に恋してしまった皇女フェドーラ!狂おしいまでの愛に差す暗い影の正体は?サンクトペテルブルク、パリ、スイスアルプスを舞台に繰り広げられる宿命の愛と死を情熱的な音楽で描いたイタリア・オペラの名作が、四半世紀ぶりにMETに復活!〈愛さずにはいられないこの思い〉ほか心揺さぶる歌の数々を、S・ヨンチェヴァ&P・ベチャワのスター・カップルが歌い上げる!オペラを知り尽くしたM・アルミリアートの指揮、一つのセットを幕ごとに変身させるD・マクヴィカーの華麗な演出で、オペラ史上屈指の激しいロマンスを!

【演目】オペラ/ボッケリーニ『フェドーラ』全3幕イタリア語

【MET上演日】2023年1月14日

【管弦楽】メトロポリタン歌劇場管弦楽団

【指揮】マルコ・アルミリアート 

【演出】デイヴィッド・マクヴィカー

【出演】ソニア・ヨンチェヴァ/ピョートル・ベチャワ/ローザ・フェオラ/ルーカス・ミーチェム

【日本上映期間】2023年3月3日(金)~3月9日(木) 東劇は3月23日まで

【鑑賞館】横浜ブルグ13

【日時】2023.3.5.(日)11:00~

【上映時間】2時間42分(休憩1回)


【粗筋】

ロシアの皇女フェドーラは、婚約者の大尉ウラディミーロを結婚前夜に殺されてしまう。下手人はロリス・イパノフ伯爵と推定された。フェドーラは彼が犯人か確かめようと、パリのサロンに現れたロリスに暗殺事件の真相を尋ねる。果たしてウラディミーロを殺したのはロリスだった。フェドーラは彼を告発する手紙をロシアに送る。だが、ウラディミーロは女たらしで、殺された日の夜もロリスの妻と逢引していたのだ。婚約者の正体を知ったフェドーラはロリスに惹かれている自分に気づき 、ロリスも愛を告白。二人はスイスで愛の生活を送る

 

【感想】

 昨年7月にヨンチエヴァの来日公演を聴きました。オペラでなく、リサイタルでした。その一抹の陰りも無い歌唱の見事さに、これぞ本物の歌と感動したものでした。たった一晩の演奏会だったので、”ああもったいない、折角来日したのに” と思ったものでした(その時の記録を参考まで、文末に、再掲します)。

でも今日のMETの上演を観ると、恐らく彼女のスケジュール表は、ズーッと何年分も埋っていたのでしょう。これだけの歌唱と演技が出来る『フェドーラ』は、今は亡きフレーニ  を除いていないかも知れない。一事が万事、他の演目だって色々歌えて、世界中から引っ張りだこに違い有りません。

 今回のMETライブビューイングの演目は、ボッケリーニ作曲『フェドーラ』です。

レアーなオペラです。先ず作曲家ボッケリーニ自体がそれ程知られていません。

以下にその<Profile>を掲げます。

<Profile>

 ルイジ・ボッケリーニ(1743年2月19日1805年5月28日)は、イタリアルッカ生まれの作曲家チェロ奏者。

同時代のハイドンモーツァルトに比して現在では作曲家としては隠れた存在であるが、存命中はチェロ演奏家として名高く、チェロ協奏曲、チェロソナタに加え、弦楽四重奏曲を90曲以上、弦楽四重奏にチェロを1本加えた弦楽五重奏曲を100曲以上作曲し、自身で演奏も行った。その中でも弦楽五重奏曲ホ長調G275の第3楽章は「ボッケリーニのメヌエット」として有名である。

その作風はハイドンに似ていながら優美で時に憂いを含むものであり、ヴァイオリニストのジュゼッペ・プッポイタリア語版からはハイドン夫人(Signora Haydn)と呼ばれた。

台本作家のジョヴァンニ・ガストーネ・ボッケリーニは兄。 

 ボッケリーニはハイドン、モーツァルトと同時代の作曲家でありながら、彼らとは一味異なる独特な作風を固持している。つまりモチーフの展開を中心としたソナタ形式を必ずしも主体とせず、複数のメロディーを巧みに繰り返し織り交ぜながら情緒感を出していくのがその特徴で、時としてその音楽は古めかしいバロック音楽のようにも斬新なロマン派音楽のようにも聞こえる。また、後期の作品にはスペインの固有音楽を取り入れ国民楽派の先駆けともいえる作品を作っている。

これは一つにはボッケリーニ自身が当時まだ通奏低音に使われることの多かったチェロのヴィルトゥオーソであったため、自らを主演奏者とする形式性より即興性を生かした音楽を作ったこと、また、当時の音楽の中心地であるウィーンパリから離れたスペインの地で活躍していたこともその理由として考えられる。

 何とチェリストだったのですね。道理で弦楽の室内楽が時々演奏される訳です。オペラは余り書いていませんが、『アンドレア・シェニ』の上演に成功し、続くこの『フェドーラ』が彼の代表オペラとなりました(他はほとんど上演されず)。

 

今日の映画を通しても、メトロポリタン・オペラの実力の凄さを身に滲みる様に感じました。タイトルロール役ヨンチェヴァは言うに及ばず、恋人ロリス役のピョートル・ベチャワの力の籠ったしかも美声のテノールは素晴らしく、一度生で聴いてみたいと思いました。オルガ役のローザ・フェオラも安定した美しいソプラノを響かせ、デ・シリエ役ルーカス・ミーチェムのバリトンはお腹にずっしりと響いて来ました。皆さん世界をリードする歌声、本物です。METはよくもこんな超スーパースター達を多く集められるものですね。これも米国の力の現われなのでしょう。今年はヨンチェヴァさんの来日オペラ公演が秋にあるという情報もあります。期待出来ますね。

 

<映画H.P.より>

 

 

 

画像

 

 

 

 

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////抜粋再掲(2022.7.2.HUKKATS  Roc)


ソプラノリサイタル『ソニア・ヨンチェヴァ』を聴く
 

 今夜はソプラノのソニア・ヨンチェヴァのリサイタルがありました。今回が初来日で、たった一日だけの本邦公演だそうです。確か彼女は、コロナの何年か前に、英国ロイヤル・オペラ来日公演でやってくる筈だったのが、来日出来ず、がっかりした思い出があります。その後も欧米で大活躍との風の便りは耳に届いていましたが、コロナ禍の時節柄、もう聴けないと半ば諦めていました。いいタイミングで来日出来たことは、招聘元ならびに関係者の方々のご尽力によるものだと思います。感謝します。

 

【日時】2022.7.2.15:00~

【会場】東京文化会館

【出演】ソニア・ヨンシェヴァ(ソプラノ)

<Profile>

1981年12月25日、ブルガリアのプロヴディフ に生まれる。プロヴディフの国立舞踏音楽学校でピアノと声楽を学び、10代の頃からブルガリアのTV番組に出演するなど音楽活動を行っていた。 2010年、プラシド・ドミンゴが主催するオペラの国際コンクール「オペラリア」で優勝し、2013年にリゴレットのジルダ役でメトロポリタン歌劇場にデビューする他、パリ・オペラ座、ウィーン国立歌劇場、ロイヤルオペラハウス。スカラ座、バイエルン国立歌劇場など、世界中の歌劇場で活躍している。世界の歌劇界を牽引している大活躍のプリマドンナです。

【管弦楽】東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

【指揮】ナイデン・トドロフ

<Profile>

 トドロフは1974年4月、ブルガリアのプロブディフ生まれ。1993年に彼はプロブディフの国立音楽学校でダリーナ・カンタルジエワのピアノクラスとリリア・コヴァチェヴァ・トポルチェヴァのトランペットクラスを卒業した。学生時代、彼はプロブディフ青年オーケストラを設立しました。1996/1997年、彼はレナード・バーンスタイン財団からイスラエルの専門分野に招待されイスラエル・フィルの指揮者であるメンディ・ロダンと協同作業をした。1997年以来、トドロフは国際フェスティバル「トラシアンサマー」の音楽監督を務めています。彼は1998/1999年ハイファの北イスラエル交響楽団の常任指揮者に就任。同じ年、彼はロサンゼルス国際室内楽フェスティバルの芸術顧問に招待されました。2001年にはソフィアフィルハーモニー管弦楽団にデビュー、2004/2005シーズンから常設のゲスト指揮者になりました。2017年、トドロフはソフィアフィルハーモニー管弦楽団の理事に選出され、それ以来、彼はオーケストラのレパートリーを広げ、ソリストとゲスト指揮者の新しい関係構築を行っている。

 

【曲目】*印は、オーケストラ演奏

①ヴェルディ 歌劇「ナブッコ」 序曲 *
②ヴェルディ 歌劇「イル・トロヴァトーレ」より ❝穏やかな夜~この恋を語るすべもなく❞ 

③プッチーニ 歌劇「マノン・レスコー」 間奏曲 *
④  同   ❝この柔らかなレースの中で❞

⑤ヴェルディ 歌劇「運命の力」 序曲*
⑥  同   ❝神よ平和を与えたまえ❞

 

《休憩》

 

⑦ベッリーニ 歌劇「ノルマ」 清らかな女神”

⑧プッチーニ歌劇「妖精ヴィッリ」第二幕間奏曲*

⑨プッチーニ歌劇「トスカ」より❝歌に生き、恋に生き❞

⑩プッチーニ歌劇「蝶々‘夫人」より、❝或る晴れた日に❞

 

【演奏の模様】

 満を持して来日し公演に臨んだのか、ソニア・ヨンシェヴァは、自信を漲らせ堂々と登壇しました、明るい赤色の👗をまとっています。勝手に解釈すれはわば、ヨンシェヴァの勝負服なのでしょうか?欧米の多くの名だたる歌劇場を経験しているディーヴァでも、東洋の外れにある自由主義国家、日本での初公演となれば、幾ばくかの緊張があるかも知れない。ここ数日は暇さえあれば、ヨンシヴァの映像ばかりをYouTubeで観ていました。随分と多くの歌劇場があるものですね。しかも名も知らない大規模で立派な大寺院の様な歌劇場が。またエッフェル塔の前面に設置した特設大会場などでも歌っている。そうした映像を見ながら、東京文化会館を頭に浮かべると恥ずかしくなるほど、みすぼらしく思えて仕方なかった。

 兎に角このソプラノ歌手の声は、ビロードの様に柔らく伸びやかで、声域は驚く程幅が広いのです。

 今日初めて生演奏を聞いて、やはりそうだと予想通りの素晴らしい歌唱ばかりでした。将にこれが聞いて納得出来る、人間を震えせる様な歌い振りでした。オーケストラ演奏を除いた六曲総てが、世界最高レベルのアリアの披露でした。各曲とも、安定した詠唱法で、ホール一杯に伸びる声で、またその声が聞き手の心まで虜にする一かけらの欠点も見つからないテクニック、というか天性の変幻自在さで歌われたのでした。満杯に埋め尽くされた会場からは、歓声こそ自粛されていましたが、拍手の成り具合が通常とは異なると思う程の凄いもので、聴衆の興奮振りが分かるというものです。各アリアで特に印象深かった点を以下に記します。

 

④のマノン・レスコーは、アンコールで歌われた方が完璧だと思いました。全く完全性を備えた安定したこの様な歌い振りを他で聞いたことは記憶にない程。

⑥休憩後の後半最初の歌。白いドレスを纏い登場したヨンシェヴァは、如何にも巫女らしい清楚さをたたえてしかも心では、愛に苦しむ葛藤状態を、粛々と歌いました。このノルマは、カラスの得意とした歌、ソプラノ歌手なら誰でも歌えるものではなく、あのネトレプコでさえ、タイトルロールを歌うことは、断念したとさえ言われる難曲です。ヨンシェヴァは勿論タイトルロールも務めたことはありますし、今日の歌を聴いてもその声のしなやかさは、抜群と言えるでしょう。素晴らしい。

⑥の❝神よ平和を与えたまえ❞では、大ホール一杯に拡がる大声量を、叫ぶ様に張り上げたと思いきや、休みなく直ちに声を抑制、この変化の激しい高音部を少しの乱れも無く連続的に歌った技倆には脱帽、見事でした。

 最終部のトスカとお蝶は、往年の名ソプラノ、ティバルディも得意としていましたが、ティバルディよりも潤いのある声で、その見事さは引けを取らない程に感じました。とくにお蝶は、近年我が国のオペラハウスでも、何回かききましたが、今日ほどの完璧な歌は、聞いたことがない。これ程の歌手が今まで日本をスルーしていたことは、我々聴衆にとっては残念なことです。また今回たった1回ポッきりの公演だということも残念至極、次は、いつ聴ける様になるのでしょう?(ここ二週間、コロナが増加に転じているのも不気味です。)

それでも今日も大満足の良い日でした。

 なお鳴り止まぬ聴衆の拍手に応えアンコール演奏がありました。

《アンコール曲》

①ビゼー歌劇「カルメン」より❝ハバネラ~恋は野の鳥❞

②プッチーニ歌劇「ジャンニ・スキッキ」より❝私のお父さん❞

③プッチーニ歌劇「マノン・レスコー」より

❝この柔らかなレースの中で❞

 

①②は先頃、ガランチャのリサイタルのアンコールでも歌われたました。

これも素晴らしい歌唱でした。ただ、①でヨンシェヴァのテンボは、ガランチャとは異なり、ヨンシェヴァ独自のもので、こういうハバネラもあるのだなと思いました。歌に合わせるチェロ伴奏が、最初付いていけず、チグハグになっていましたが、最後には合ってきました。

 尚、演奏会が終わって楽屋口の近くを通ったら、人だかりがありました。出待ちの人達でした。自分も写真が撮れるかな?と思って加わって待っていたら、主催者と覚しき人が出て来て、「皆さん、申し訳ないですが、お待ちになっても、サイン会も写真会もありません。コロナ感染防止のため、解散していただけます様、お願いします。」とのアナウンスがありました。諦めて帰りました。