細かいことはさておいて(後日談義に回すとし)、一言で言うと、
💮グリゴーロ・ロドルフォ、圧勝!!
💮ミミ役ゲオルギュー、善戦!!
💮マルチェッロ役ヴルタッジョ、燻し銀勝負!!
💮ヌッチオ、新鮮ムゼッタ像現出!!
の感のする舞台でした。
特にグリゴーロは、コロナ禍以前に聴きましたが、その時もてはやされていた「次世代の三大テノールを担う新パバロッティの再来」という謳い文句に、'''いやいや素晴らしいけれど、パバロッティと比較するのはおこがましい。'' というのが、当時の率直な印象でした。
ところが、今日の歌い振りを聴いて、「こりゃホントだったわい。格段に進歩している。さらなる高みに達している、もう少しで、パバロッティと並び称される日が近いのでは?」と、驚嘆したのでした。
【主催者言】
グリゴーロ! ゲオルギュー!最高のキャストが実現した空前の舞台。
貧しいが希望に燃える若き芸術家たちの愛と死。青春特有の危うさと華やかさが描かれ、だれもが等身大で泣き笑いできるオペラの最右翼が《ラ・ボエーム》だ。
危なっかしいが可憐なミミと、情熱的な詩人のロドルフォの二人を軸に物語は展開し、肺病に侵されたミミの死で幕を閉じる。
プッチーニの音楽がまた秀逸だ。二人の出会いはとびきり美しいアリアと重唱で飾られ、別れは切なすぎるほど美しい。 思い出が次々と蘇った後に訪れるミミの死は、痛いほど心に刺さる。ロマンティックな抒情性の極みというべき旋律が雄弁な管弦楽をまとい、次々と胸に迫るのだ。しかし、だからこそプッ チーニの渾身の音楽の力を十全に引き出す演奏、とりわけ声と音楽性が欠かせない。
その点、このキャストには驚かされる。
グリゴーロの比類ない歌唱力と感情表現、世界一のミミと呼ばれたゲオルギューに加え、もう一組のカップルも若手のホープ、ヌッチオをはじめ申し分ない。
ツボを押さえたカルミナーティの指揮と相まって、 空前のボエームにならないはずがない。(オペラ評論家 香原斗志)
【日時】2023.6.15.(木)16:30~
【会場】東京文化会館
【演目】プッチーニ作『ラ・ボエーム』全四幕(1幕40m.2幕20m.3幕30m.4幕35m.休憩20+15=35m.その他5m.)
【配役】
ミミ、お針子(ソプラノ)
ムゼッタ、歌手(ソプラノ)
ロドルフォ、詩人(テノール)
マルチェッロ、画家(バリトン)
その他、
コッリーネ、哲学者(バス)
ブノア、家主(バス)
パルピニョール、行商人(テノール)
アルチンドロ、参議員(バス)
軍曹(バス)
税関吏(バス)
合唱:学生、仕立屋見習い、市民、店主、行商人、兵士、給仕、子ども、等々
〇アンジェラ・ゲオルギュー(ミミ役)
〈Profile〉
英国ロイヤル・オペラ《椿姫》で脚光を浴びて以来、ソプラノの指標であり続けている。確かなテクニックに裏打ちされ た抒情的で情熱的な歌唱は、圧倒的光彩を放つ。2017年、マッシモ劇場の日本公演《トスカ》も圧巻で、拍手がいつまでも鳴りやまなかったが、ミミは彼女のさらなる十八番だ。
〇ヴィットリオ・グリゴーロ(ロドルフォ)
〈Profile〉
パヴァロッティ亡き後のイタリア を代表 するテノールのカリスマとして、世界中で称賛がやまない。特にパヴァロッティから直接指導を受けたロドルフォ役は、 右に出る歌手がいない。旋律に緩急と強弱を自在につけ、生命力をみなぎらせるテクニックは比類ない。
それにしても、プッチーニのこの旋律美は、いったい何なんでしょう。その他の彼のオペラの中でも、一段抜きん出ています。神の手の成せる技?