HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

榎(Ob.)×藤平(Pf.)Duo Recital

【日時】2023.3.9(木)19:00~

【会場】紀尾井町サロンホール

【演奏】榎かぐや(Ob.) 藤平実来(Pf.)

【Profile】

〇榎かぐや Enoki kaguya

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<Profile>

 12歳よりオーボエを始める。東京音楽大学卒業。同大学主催卒業演奏会に出演。
第91回日本音楽コンクールオーボエ部門第1位及び岩谷賞(聴衆賞)・瀬木賞を受賞。
第37回日本管打楽器コンクールオーボエ部門第3位。第19回東京音楽コンクール木管部門入選。
第31回宝塚ベガ音楽コンクール木管部門第4位。
第21回全日本中学生高校生管打楽器ソロコンテスト高校生部門第3位。
第72回東京国際芸術協会新人演奏会審査員賞受賞。第6回K木管楽器コンクール優秀賞受賞。
2021年度東京音楽大学学内オーディション合格者によるソロ・室内楽定期演奏会出演。
第25回浜松国際管楽器アカデミー&フェスティバルにて吉井瑞穂氏のマスタークラスを受講。
これまでにオーボエを金光圭子、荒木奏美、安原理喜、加瀬孝宏、荒絵理子の各氏に師事。

 

〇藤平実来 FUJIHIRA Miku

〈Profile〉

 千葉県出身。東京音楽大学付属高等学校を経て、東京音楽大学器楽専攻ピアノ演奏家コース4年に給費奨学生として在学中。第40回ピティナ・ピアノコンペティションF級全国大会ベスト賞。第67回、第71回全日本学生音楽コンクールピアノ部門東京大会入選。第26回、第29回ヤングアーチストピアノコンクールSグループ銅賞。第90回日本音楽コンクールピアノ部門入選。これまでに吉井恭子、岡田敦子、長川晶子の各氏に師事。

【主催者言】

2022年第91回日本音楽コンクール、オーボエ部門第一位の榎 かぐやさんと
ピアノ部門第三位の藤平 実来さん、若手実力派のお二人をお迎えしての
フレッシュな木曜コンサート、旬なお二人による音楽に期待が高まります。

お二人からお客様へ下記メッセージを頂きました♪
「東京音楽大学同期のデュオリサイタルです。在学中から何度も共演している仲ですが、
毎回新たな作品の可能性を見出し切磋琢磨して音楽に向き合ってきました。
超絶技巧から歌い込むようなしっとり系まで盛りだくさんのプログラムです。
皆さまのお越しをお待ちしております。」

【曲目】

①シューマン『アダージョとアレグロOp.70』

 

②シューベルト『3つのピアノ曲D946より第2番,第3番』

 

③プーランク『オーボエソナタFP.185』

 

    《休憩》

 

④M.マレ『スペインのフォリア』

 

⑤M.ラヴェル『水の戯れ』

 

⑥スクリャービン『ピアノソナタ第4番嬰へ長調 Op.30』

 

⑦A.バスクッリ『ドニゼッティ<ポリウート>の主題による幻想曲』 

 

 

【演奏の模様】

 今日の会場は100席にも満たない小さいホールで、コンドルの設計で有名な「旧北白川宮邸」のすぐ近くのビルの一階にありました。


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      旧北白川宮邸

 

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      会場エントランス

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        ホール受付


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      紀尾井町サロンホール 


 オーボエ奏者の榎さんは今月初めに、「日本音楽コンクール」のトップ入賞者演奏会で吹いたのを聴きました。また藤平さんは、昨年8月の「東京音楽コンクール」のピアノ部門本選時の演奏を聞きました。2位入賞だったのですね。今回は、タケミツホールに聴きに行った時の配布チラシにあった演奏会で、別のコンクールのトップクラスの演奏者二人の組合せなので、おやっ!と最初思ったのです。でも経歴を見ると二人共東京音大の同級生だったのですね。曲目もそれぞれのソロ演奏もある(詳細プログラムは当日発表)のでしょうけれど、Duo演奏も楽しみにして聴きに来ました。


①シューマン『アダージョとアレグロOp.70』
 この曲は、Pf.とOb.のデュオ演奏でした。ピアノの音は大きいので、響板を少しだけ開けて演奏。最初のAdagio部分の演奏では、Pf.は綺麗な音で、伴奏的に弾きます。Ob.は、前回の演奏でもそうだったのですが、堂々とした太い中・低音で相当強い調子で吹いています。ただ会場が非常に小さいホールなねで、反響音が混じったためなのか、クリアな澄んだ音とは思いません。後半のallegroの箇所では、榎さんは、速いテンポで、体を少し左右に揺すって、器先もあちこち動かしながら、吹いています。非常に高度な技術を身につけていることは、分かりますが、前半も含め何か一本調子になっている感じがしました。メリハリが欲しい。
 藤平さんのPf.は、相変わらず綺麗な音をたてています。藤平さん達は演奏の前や演奏後にステージ上で、短い話しを交えていました。シューマンについて、藤平さんは、”シューマンは管楽器が好きでなかったので、管の曲は少ない” と言っていました。

 

②シューベルト『3つのピアノ曲D946よりNr.2,Nr.3』

藤平さんのソロ演奏です。響板は勿論全開。この曲がとても素晴らしく、シューベルト好きの自分にとっては藤平さんの演奏に充分満足しました。演奏前のトークで、この曲はシューベルトが死の半年前に作曲し、死後発見されたものの長らく忘れ去れていて、80年後にブラームスによって出版されたそうです。

〇Nr.2変ホ長調Allegretto、8分の6拍子、ロンド形式。

ロンドの主題は、作曲者自身の歌劇「フィエラブラス」から引用されたもの。とても落ちついた良い旋律で、美しくシューベルトらしさがあります。やや寂しさも感じるかな。すぐにザーット急に振り出した雨の如く激しい旋律に変化、それもにわか雨がバタッと止む様に静まると、また最初の穏やかなテーマが平穏な生活を呼び戻し、再度曲相は急変、速いテンポに変化し異なった旋律で高音部中心に繰り出しました。鍵盤に当てる藤平さんの手、指を見ると、白いしなやかな手で柔らかくしかも速い指使いでしっかりと鍵盤上を動き回り、右手の小指と薬指で強打した後は、再三、最初の美しい主題に戻り終曲となりました。表現も◎です。

自分勝手にこの曲を想像たくましく妄想するならば、「シューベルトは日々貧困の中でも好きな音楽の演奏やら曲作りに満足し、充足した日々を過ごしていたものが、死の床に伏してしまい、心は激しく動揺、涙を抑えることが出来なく激しい慟哭が生ずるのです。しかし再び自分の人生を思い起こしてみると、美しい光景が広がりこの苦痛も癒されるのでした。ただ天国への旅たちの心の準備をせよと呼ぶ声が聞こえてせわしく迫られ、以前の様な動揺はないきれいさっぱりした清澄な気持ちでそれを迎え入れることが出来て、自分の人生の様な美しい音楽に囲まれた天国に向かうシューベルトでした。」

Nr.3 ハ長調 Allegro、4分の2拍子、三部形式。

 軽快なタンタンタンタンタンタンタラッタタタラッタという速い調ベで始まり、ここの旋律はラにアクセントの有るシンコペーションです。時々結構激しくなり、藤平さんは右手の指を硬くして打鍵、緩やかな旋律になると藤平さんは静かな高音の調ベを丹念に弾いていました。短い変奏パッセッジが次々と繰り出して行き、テンポも徐々に速くなり相当な強打鍵で力奏、そのまま駆け抜けました。コロコロと変わるパッセッジとリズムにシューベルトの不安な心理が感じ取られる様な気がしました。実力があるピアニストだと思います。

③F. プーランク『オーボエソナタFP.185』

 プーランクの曲はほとんど聴いた事が有りません。これはPf.とOb.のDuo(原題はSonate pour hautbois et piano)といってもPf.はほとんど伴奏に徹している曲です。この曲はプーランクがプロコフィエフの追悼として捧げた曲という話などがありました。

第1楽章「悲歌」(静かに、急がずに) Elégie (Paisiblement, sans presser)

第2楽章「スケルツオ」(活気よく) Scherzo (Très animé)                     

第3楽章「嘆き」(きわめて穏やかに) Déploration (Très calme)

 Ob.の高音でスタート。最初スーという空気が混じったような高音が気になりましたが、こういう音を出すのですね。すぐに中音域に下がりその後、高音⇒低音⇒高音と変化する速い旋律を榎さんは、コンクール受賞演奏会の時と同じような安定した太い調べを出して吹いていました。しかし時々混じる高音パッセッジは音の伸びが無く、Ob.独特の聞き手を惹きつける様な響きは有りません。第二楽章の高音は割りと良い感じ、第三楽章では高音は研ぎ澄まされた音の感じは無く、でも時々いい音を出していました。こうして聴いてみると、榎さんは高音域に課題が残っていると思いました。一方伴奏的な演奏が多かったPf.ですが、藤平さんの演奏は、第二楽章でのOb.との対話的な合いの手を入れる演奏や途中かなり力を入れて弾く箇所も良く出来ていたし、第三楽章の最初のゆっくりした悲しそうな旋律もよかったし、最後の美しいゆっくりとしたメロディの弱音表現も良く(耳⇒心に)響いて来ました。

 

《15分間休憩》

 

④M.マレ『スペインのフォリア』

この曲は昔フルート演奏で聴いたことがあります。確かニコレの演奏だったかな?LPレコード(CD以前の時代)で聴いた記憶があります。Ob.による演奏は初めて聞きました。榎さんの演奏は、コンクールで吹いたというだけあって、この曲に熟達している様に見えました。今日の演奏で、一番良かった。(最後の⑦も素晴らしいテクニックを披露して良かったのですが、出音から響く音色を併せ考えると④が一番だと思います)

 音は伸びやかで安定し、修飾音も決まっていたし、この曲では高音も良く出る様になっていました。息継ぎの音がやや気になりました(5mと離れていない直近の席のせいかも?)。

 演奏後のトークで。榎さんは❝この曲はフランス映画「巡り合う朝」に描かれている❞といった趣旨のことを話していたので後で調べたら、この曲の作曲家マラン・マレとその師に関する映画の様です。❝音楽家マラン・マレと、その師サント・コロンブの葛藤と愛を描いた人間ドラマ。全篇に二人の代表曲が流れ、また撮影は、当時と同じ光源を使って行われた。九一年ルイ・デリュック賞、九二年セザール賞主要七部門(作品、監督、助演女優、撮影、音楽、録音、衣装デザイン)受賞。❞ だそうです。

 

⑤ラヴェル『水のたわむれ』

 この曲も次曲の⑥もピアノ独奏です。ドビッシーの『月の光』的情景を連想してしまいました(実際ドビュッシーにも水やしぶき関係の曲があります)。高音のきらきらする音を速いテンポで右手で繰り出し、左手は伴奏的というより、右手の響きを受けてさらに磨きがかかる響きとなっていました。後・終盤では左右の手をクロスして弾く場面が続き、また下行クリッサンドもあったり、技術的にはかなり高度と見ましたが、藤平さんは、やや顔に疲れの色は見えますが、黙々と真剣に弾いていました。


⑥A.スクリャービン『ピアノソナタ第4番嬰ヘ長調Op.30』

 藤平さんの話では、スクリャービンのこの曲は、ソナタといっても謂わゆるソナタ形式からはかけ離れていて、単一楽章といっても良いとのこと(調べると実際はⅠ、Ⅱの二楽章構成ですが二つがアッタカ的に連続して演奏されるため)。また非常に短い曲だとも言っていました。スクリャービンを弾くというので期待して来ましたが、少し期待はずれでした。演奏というよりも曲自体に。後半はかなりジャズっぽかった。この作曲家にはもっともっといいピアノ曲があると思うのですが、時間の関係なのでしょうね。確かに短い演奏時間でした。(8分程度)

最後の曲です。榎さんと藤平さんのDuo演奏です。この曲はOb.奏者にとっては、必ず足を踏み入れなければならない熟達のための課題曲とも謂われる曲の模様。冒頭の話しでは、相当なテクニックを要する超絶技巧曲と言っていました。そう説明する榎さんは自信満々といった風に見えました。

 

⑦A.パスクッリド『ドニゼッティ《ポリウート》の主題による幻想曲』

 オペラのゆっくりとした主題旋律を強奏するPf.で演奏開始、間もなくOb.が入って来ました。確かにその最初の旋律からして、堂々とした中音域の調べは仲々良い響きを有しています。ドニゼッテイの美しいテーマを変奏で次々と繰り出し、中には猛スピードの超絶技巧的パッセッジ有り、上昇アルペジョ的旋律あり、速い修飾音の連続的連なりありと、Ob.で可能な表現のありとあらゆる技術が詰め込められた難曲をほぼ完璧に吹いた榎さんの素質は素晴らしいものがあると思いました。又藤平さんのピアノの合いの手がOb.と息がぴったり合っていて効果抜群、矢張り最後を飾る曲として、二人の演奏は見事なものでした。

なお、アンコール演奏がありました。今日の日付に因んだ曲という事で、卒業ソングとも謂われる

        藤巻亮太作詞・作曲『3月9日』

でした。ブラバンでもよく演奏される曲なのですね。