HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

ソプラノリサイタル『ソニア・ヨンチェヴァ』を聴く

 今日は『半夏生(はんげしょう)』です。24節季の夏至(6/21)と小暑(7/7)の間に設定されている雑節です。はんげとは植物の一種で、丁度この季節に根を大きく成長させ、漢方薬として採取されています。歴書によれば、❝太陽黃経が百度に達するとき、夏至から十日から十一日目。新暦七月二日ごろ。一般的には、”梅雨明け”の時期。❞  今年は、先だって、記録的に早い梅雨明け宣言が出されていましたが、半夏生からそんなに離れていた訳ではありません。梅雨入り日と平均的梅雨明け日から見ると「記録的に早い」となるのでしょうが。半夏生のこの日日本の各地で、各種の風習が行なわれている様です。

 さて今夜はソプラノのソニア・ヨンチェヴァのリサイタルがありました。今回が初来日で、たった一日だけの本邦公演だそうです。確か彼女は、コロナの何年か前に、英国ロイヤル・オペラ来日公演でやってくる筈だったのが、来日出来ず、がっかりした思い出があります。その後も欧米で大活躍との風の便りは耳に届いていましたが、コロナ禍の時節柄、もう聴けないと半ば諦めていました。いいタイミングで来日出来たことは、招聘元ならびに関係者の方々のご尽力によるものだと思います。感謝します。

 

【日時】2022.7.2.15:00~

【会場】東京文化会館

【出演】ソニア・ヨンチェヴァ(ソプラノ)

<Profile>

1981年12月25日、ブルガリアのプロヴディフ に生まれる。プロヴディフの国立舞踏音楽学校でピアノと声楽を学び、10代の頃からブルガリアのTV番組に出演するなど音楽活動を行っていた。 2010年、プラシド・ドミンゴが主催するオペラの国際コンクール「オペラリア」で優勝し、2013年にリゴレットのジルダ役でメトロポリタン歌劇場にデビューする他、パリ・オペラ座、ウィーン国立歌劇場、ロイヤルオペラハウス。スカラ座、バイエルン国立歌劇場など、世界中の歌劇場で活躍している。世界の歌劇界を牽引している大活躍のプリマドンナです。

【管弦楽】東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

【指揮】ナイデン・トドロフ

<Profile>

 トドロフは1974年4月、ブルガリアのプロブディフ生まれ。1993年に彼はプロブディフの国立音楽学校でダリーナ・カンタルジエワのピアノクラスとリリア・コヴァチェヴァ・トポルチェヴァのトランペットクラスを卒業した。学生時代、彼はプロブディフ青年オーケストラを設立しました。1996/1997年、彼はレナード・バーンスタイン財団からイスラエルの専門分野に招待されイスラエル・フィルの指揮者であるメンディ・ロダンと協同作業をした。1997年以来、トドロフは国際フェスティバル「トラシアンサマー」の音楽監督を務めています。彼は1998/1999年ハイファの北イスラエル交響楽団の常任指揮者に就任。同じ年、彼はロサンゼルス国際室内楽フェスティバルの芸術顧問に招待されました。2001年にはソフィアフィルハーモニー管弦楽団にデビュー、2004/2005シーズンから常設のゲスト指揮者になりました。2017年、トドロフはソフィアフィルハーモニー管弦楽団の理事に選出され、それ以来、彼はオーケストラのレパートリーを広げ、ソリストとゲスト指揮者の新しい関係構築を行っている。

 

【曲目】*印は、オーケストラ演奏

①ヴェルディ 歌劇「ナブッコ」 序曲 *
②ヴェルディ 歌劇「イル・トロヴァトーレ」より ❝穏やかな夜~この恋を語るすべもなく❞ 

③プッチーニ 歌劇「マノン・レスコー」 間奏曲 *
④  同   ❝この柔らかなレースの中で❞

⑤ヴェルディ 歌劇「運命の力」 序曲*
⑥  同   ❝神よ平和を与えたまえ❞

 

《休憩》

 

⑦ベッリーニ 歌劇「ノルマ」 清らかな女神”

⑧プッチーニ歌劇「妖精ヴィッリ」第二幕間奏曲*

⑨プッチーニ歌劇「トスカ」より❝歌に生き、恋に生き❞

⑩プッチーニ歌劇「蝶々‘夫人」より、❝或る晴れた日に❞

 

【演奏の模様】

満を持して来日し公演に臨んだのか、ソニア・ヨンシェヴァは、自信を漲らせ堂々と登壇しました、明るい赤色の👗をまとっています。勝手に解釈すれはわば、ヨンシェヴァの勝負服なのでしょうか?欧米の多くの名だたる歌劇場を経験しているディーヴァでも、東洋の外れにある自由主義国家、日本での初公演となれば、幾ばくかの緊張があるかも知れない。ここ数日は暇さえあれば、ヨンシヴァの映像ばかりをYouTubeで観ていました。随分と多くの歌劇場があるものですね。しかも名も知らない大規模で立派な大寺院の様な歌劇場が。またエッフェル塔の前面に設置した特設大会場などでも歌っている。そうした映像を見ながら、東京文化会館を頭に浮かべると恥ずかしくなるほど、みすぼらしく思えて仕方なかった。

 兎に角このソプラノ歌手の声は、ビロードの様に柔らく伸びやかで、声域は驚く程幅が広いのです。

 今日初めて生演奏を聞いて、やはりそうだと予想通りの素晴らしい歌唱ばかりでした。将にこれが聞いて納得出来る、人間を震えせる様な歌い振りでした。オーケストラ演奏を除いた六曲総てが、世界最高レベルのアリアの披露でした。各曲とも、安定した詠唱法で、ホール一杯に伸びる声で、またその声が聞き手の心まで虜にする一かけらの欠点も見つからないテクニック、というか天性の変幻自在さで歌われたのでした。満杯に埋め尽くされた会場からは、歓声こそ自粛されていましたが、拍手の成り具合が通常とは異なると思う程の凄いもので、聴衆の興奮振りが分かるというものです。各アリアで特に印象深かった点を以下に記します。

 

④のマノン・レスコーは、アンコールで歌われた方が完璧だと思いました。全く完全性を備えた安定したこの様な歌い振りを他で聞いたことは記憶にない程。

⑥休憩後の後半最初の歌。白いドレスを纏い登場したヨンシェヴァは、如何にも巫女らしい清楚さをたたえてしかも心では、愛に苦しむ葛藤状態を、粛々と歌いました。このノルマは、カラスの得意とした歌、ソプラノ歌手なら誰でも歌えるものではなく、あのネトレプコでさえ、タイトルロールを歌うことは、断念したとさえ言われる難曲です。ヨンシェヴァは勿論タイトルロールも務めたことはありますし、今日の歌を聴いてもその声のしなやかさは、抜群と言えるでしょう。素晴らしい。

⑥の❝神よ平和を与えたまえ❞では、大ホール一杯に拡がる大声量を、叫ぶ様に張り上げたと思いきや、休みなく直ちに声を抑制、この変化の激しい高音部を少しの乱れも無く連続的に歌った技倆には脱帽、見事でした。

 最終部のトスカとお蝶は、往年の名ソプラノ、ティバルディも得意としていましたが、ティバルディよりも潤いのある声で、その見事さは引けを取らない程に感じました。とくにお蝶は、近年我が国のオペラハウスでも、何回かききましたが、今日ほどの完璧な歌は、聞いたことがない。これ程の歌手が今まで日本をスルーしていたことは、我々聴衆にとっては残念なことです。また今回たった1回ポッきりの公演だということも残念至極、次は、いつ聴ける様になるのでしょう?(ここ二週間、コロナが増加に転じているのも不気味です。)

それでも今日も大満足の良い日でした。

 なお鳴り止まぬ聴衆の拍手に応えアンコール演奏がありました。

《アンコール曲》

①ビゼー歌劇「カルメン」より❝ハバネラ~恋は野の鳥❞

②プッチーニ歌劇「ジャンニ・スキッキ」より❝私のお父さん❞

③プッチーニ歌劇「マノン・レスコー」より

❝この柔らかなレースの中で❞

 

①②は先頃、ガランチャのリサイタルのアンコールでも歌われたました。

これも素晴らしい歌唱でした。ただ、①でヨンシェヴァのテンボは、ガランチャとは異なり、ヨンシェヴァ独自のもので、こういうハバネラもあるのだなと思いました。歌に合わせるチェロ伴奏が、最初付いていけず、チグハグになっていましたが、最後には合ってきました。

 尚、演奏会が終わって楽屋口の近くを通ったら、人だかりがありました。出待ちの人達でした。自分も写真が撮れるかな?と思って加わって待っていたら、主催者と覚しき人が出て来て、「皆さん、申し訳ないですが、お待ちになっても、サイン会も写真会もありません。コロナ感染防止のため、解散していただけます様、お願いします。」とのアナウンスがありました。諦めて帰りました。