前日の嵐の風雨は昨夜のうちに去り、この日(6/4)は朝から見違えるような清々しい晴天になりました。雨風により宙に舞う汚れが洗い流され、清らかな空気に満たされながら、緑光に映える景勝の地、横浜山手地区を訪れました。二つの催しがあると聞いて。現地には多くの観光客(主として関東各地からが多い模様)がぞろぞろと遊歩していました。
【主催者言】
横浜山手西洋館の7つの館で開催される「花と器のハーモニー」の開催タイミングに合わせて、イギリス館で行う音楽会です。花とテーブルウェアで彩るイベントを楽しむと共に、「花にまつわる歌」や「どこかで聞いた音楽」をお楽しみいただく企画です。午前の会と午後の会がありますので、花と器のハーモニー観賞とのスケジュール立ても自由です。入場ご希望の方は、ご連絡ください。合わせて、お問合せなどありましたらご連絡をお願い致します。
【日時】2023.6.4.(日)14:30~
【会場】横浜山手・イギリス館展示ルーム及び館内ホール
A.花器展
【展示流派】a.池坊流、b.龍生派、c.草月流、d.未生流、e.古流松慶会、f.小原流、g.一葉会いけ花
【各派テーマ】a.出会 b.暮らしの中の小さな生け花 c.明日への贈り物 d.花器、光と翳り e.江戸の様式美、古流生花を洋館に f. 万緑 g. 清爽の花の間
B.音楽会
【出演】《アンサンブル海色》
土方博之(バリトン)、佐藤美沙(ソプラノ)、渡辺藍子(ソプラノ)
原田千明(ピアノ)、幸 省吾(ピアノ)
【曲目】
⁂Italian Songs ①F.P.トスティ『セレナータ』 (土方)
②G.F.ヘンデル『私を泣かせて下さい(歌劇<リナルド>より)』(佐藤)
③G.F.ヘンデル『オンブラ・マイ・フ(歌劇<セルセ>より』(土方)
⁂German Songs ④W. G. モーツァルト『すみれ(詩ゲーテ)』(渡辺)
⑤R.シューマン『歌曲集<ミルテの花Op.25より>』
⑤-1 「1.献呈(詩 リュッケルト)」 (佐藤)
⑤-2 「7.蓮の花(詩 ハイネ)」 (渡辺)
⑤-3 「24.君は花のよう(詩 ハイネ)」(渡辺)
⑥メンデルスゾーン『歌の翼に(詩 ハイネ)』 (佐藤)
⑦R.シュトラウス『薔薇のリボン (詩 クロップシュトック)』 (渡辺)
⁂Canzone ⑧ディ・カプア『オー・ソレ・ミオ(詩 ジョバンニ・カフプッロ)』 (土方)
⑨L.・デ・クルティス『帰れソレントへ(詩 G.・デ・クルティス)』(佐藤)
⑩R. ファルヴォ『彼女に告げてよ(詩 エンツォ・フスコ)』 (土方)
《20分の休憩》
⁂French Songs ⑪G.フォーレ『ネル(詩 ルコント・ド=リル)』 (渡辺)
⑫G.フォーレ『愛の夢(詩ヴィクトル・ユゴー)』 (渡辺)
⁂Japanese Songs ⑬マシコ タツロウ 『ハナミズキ(詩 一青 窈)』 (佐藤) ⑭ ライモンズ・パウルス『百万本のバラ(詩加藤登紀子)』 (佐藤)
⁂French Songs ⑮エヴァ・デラックァ『ヴィラネル(詩 エルスト)』 (渡辺)
⁂Musical Song ⑯ミッチ・リー『見果てぬ夢《ラ・マンチャの男より》』 (土方)
⑰クロード=ミシェル・シェーンベルク『オン・マイ・オウン《レ・ゼラブルより》』(佐藤)
⑱クロード=ミシェル・シェーンベルク『星よ《レ・ミゼラルより》》』(土方)
⁂全員で ⑲リチャート・ロジャーズ『サウンド・オヴ・ミュージック』
A.花・器展の模様
イギリス館には、建設当時利用されていた西欧風様式の室内と立派な調度品が展示されていて、今回は、その洋風の間の調度品を引き立たせ、室内をより美しく魅力的に見せる効果を上げるために、生け花とその器が大きな役割を果たしていました。見学者がぞろぞろと次から次へとやって来て、広い洋間も人で一杯でした。高級調度品と食器と生け花の将に「ハーモニー」が様々な工夫で展開されていて、例えばサロネーゼが(今回は説明者もいませんでしたが)、綺麗なインテリアで飾り立てた室内を開放して、その室内作法も含めた技の妙を伝授する場合等の参考にもなるのではと思われました。
尚、花・器展示は、イギリス館の他の西洋館(山手234番館、エリスマン邸、外交官の館、べーリック・ホール、山手111番館、ブラフ18番館)でも行われていたのですが、時間が足りなくて見に行けませんでした。
B.花のコンサート
この音楽会は、上記展示にあわせて、地元で活躍する歌手やピアニストがボランティア的に出演して、展示会場の盛り上がりをはかっていました。「花」に因んだ歌を中心に歌っていましたが、やはり花は『恋』や『愛』と深い関係がありますから、それらの歌に合わせてよく知られた歌、人口に膾炙した歌も聴かせてくれました。
上記【曲目】に記した多くの歌が歌われましたが、中でも、フォーレの歌曲や⑩のR. ファルヴォ作曲のカンツーネはいつかどこかで聴いたことのある曲で良かった。こうした歌は好きです(①~⑨の曲、また後半の歌も多くの人に愛され続けられている曲であり勿論好きです)。ロドルフォ・ファルヴォは1874年~1936年のイタリアの作曲家で、カンツォーネをいろいろ作っている模様。
土方さんは、今回の歌を歌う前置きとして、次の様な事を語っていました。❝私の歌の先生はイタリア人でしたが、先生が言うには、イタリア人は皆、女たらしで遊び好き、と誤解されているが、この歌の様に自分の愛を彼女に告白できなくて、彼女の友人に伝えて欲しいと頼む様な内気な人も多い❞ のだそうです。確かに⑩の歌の色調には何か切ない願い、気持ちがやりきれない感じが出ていました。土方さんは、クラシックばかりでなくミュージカルも歌っている模様です。最後の ⑱『星よ』は『レ・ミゼラブル』のジャベール警部の複雑な思いが込められた歌だと語る土方さんは、恐らくこの歌が得意なのでしょう。相当な気迫で熱唱して大きな拍手喝采を浴びていました。
この日は久し振りに気楽に色々楽しめて(天気も含め)いい日でした。
尚、女性の歌手の皆さんとピアニストは若い人ばかりで、花の歌に因んだ華やかなドレスに身につけた人もいました。観客は限定の50席位でしたでしょうか。サロン的コンサートには雰囲気がぴったりの会場です。