HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

オペラ『エレクトラ』考

 明日(5/12)のミューザ川崎でのオペラ『エレクトラ』上演前日となりました。それを聴きに行く前に、若干の予備知識と準備をしようと思って少し調べてみました。

 まず台本のもととなった「ソフォクレス版ギリシャ神話」に関して。

ソフォクレス(ギリシャ読みだとソポクレス)は古代ギリシャの三大悲劇詩人の一人(他の二人はアイスキュロスとエウリピデス)。ソフォクレスは生涯で120編もの戯曲を制作したが殆どが散逸し、完全な形で残っているものは以下の7作品にすぎません。

 そうです、オペラ化された「エレクトラ」の原稿は逸散せず残っていて、そういう意味でしっかりとした内容になっているのです。

 ソフォクレスは古代都市アテナイで開催される悲劇コンテストで、50年近くの間、最も賞賛された作家であったといわれます。コンテスト参加30回のうち、第1位が18回、残りはすべて次点でした。3位以下には一度もならなかったのです。確かに『エレクトラ』の物語を読んでもすごく凄惨で、勝っても負けても双方とも悲惨なことこれ以上ないとも言える悲劇だったという事が分かります。

 オペラ化されたものは一幕物ですが、以下に示す様に、一幕の中でも第1場から第7場までの場面に分かれていて、今回は演奏会形式ですが、本格オペラの場合は各場面の舞台風景が幾つか設定されます。

第1場 屋敷の外をうろつくエレクトラの姿を認め た5人の侍女とその頭が、それぞれに、虐げられ かしら ながらもたくましく生きるエレクトラとの確執を 語る。 そのうちのひとりだけは公然とエレクトラ への同情を口にし、他の侍女を貶めるため、他の 侍女から袋だたきに遭う。

第2場: 侍女が退場したあとに、エレクトラが登場。  無残に殺された父親アガメムノンを悼み、 その殺 害の様子をひとりものがたり、 いずれ復讐をと げることを切々と誓う。 復讐をとげたなら、その 喜びを歌い踊ることを力強く宣言。

第3場: エレクトラの妹クリソテミスが登場する。 ひたすら母親とその愛人への復讐しか口にしない エレクトラとは異なり、結婚して子供を産んで育 てたいという普通の望みを語る。 エレクトラは妹 の望みを一顧だにしない。

第4場: クリテムネストラが廷臣を率いて登場し、 その場に居合わせたくないとクリソテミスが退 場。 自分を殺しに来る暗殺者の存在におびえるあ まり、宝石や護符でみずからを飾りたて、さまざ まな生け贄を捧げてきたが、夜は悪夢を見て眠れ ないと訴える。 エレクトラが賢いことを知る母親 は娘に助言を求めるが、 流されるべきは 「おまえ 自身の血」と叫び、復讐の成就をあらためて願う娘に、母親は怖気をふるう。 だが、そこにもたら された 「秘密の報せ」 を聞いたクリテムネストラ は謎の高笑いをあげ、エレクトラを不安に陥れな がらその場を去る。

第 5 場: 不安に駆られるエレクトラのもとへ、オレストがよその土地で、 馬の蹄にかけられて亡く なったという「報せ」 を知ったクリソテミスが駆 けこんでくる。 絶望のあまり、その場に倒れ伏す ふたり。 外出しているエギストのために、その報 せを知らせに行く男性の従者ふたりによるやりと り。エレクトラは、オレストの代わりにみずから が復讐という 「仕事」 を引き受けねばならない、 エレクトラはその「仕事」にクリソテミスを引きずり込もうとするが、母親を手に掛けることのおぞましさに、クリソテミスはその場を逃げ出す。

第6場 妹を引き入れることができなかったエレク トラは、この日のために埋めておいた斧 (アガメム ノンがこの斧で頭を割られた)を掘り出そうとする。 そこへ男が登場。 男はオレストの死を伝える使者 と名乗り、オレストが馬の蹄にかけられて死んだ 様子をことこまかに語る。 それを聞いたエレクト ラがあまりに嘆き悲しむために、男は不審に思うが、その女がエレクトラであることを知り驚愕。 人目をはばかりつつ、 自分こそが使者に身をやつ して戻ってきたオレストであることを告げる。 思いがけぬ再会を喜ぶふたり。 エレクトラは再会を喜びつつも、みずからの落ちぶれはてた姿を恥じ る。やがて、オレストの従者が現れ、 男ふたりは 「仕事」 をはたしに、 屋敷の中へと入る。

第7場: 物音ひとつしない緊張感のなか、 エレクト ラは弟に、 掘り出した斧を渡せなかったことを悔 やむ。やがて、屋敷内に響きわたるクリテムネス トラの断末魔の叫び。 それを聞きつけた侍女たち が、屋敷内の異変に驚き、中に入ろうとするが、 鍵がかかっていて入れない。そこへ従者の報せを とが 聞いたエギストが戻ってきたため、 不始末を咎め られることを恐れた侍女は逃げ去る。 エギストは 松明を持って出迎えた侍女がエレクトラであるこ とに驚くが、オレストの死の報せを携えてやって きた使者に会うため、屋敷内へと入る。 やがて、 クリテムネストラと同じように叫び声をあげなが らオレストの手にかかるエギスト。 クリソテミス が戻り、ふたりが殺されたことをエレクトラに告 げる。 復讐の成就を喜ぶエレクトラ。 屋敷内から たた はオレストを称える人々の声が響く。 エレクトラ は興奮のあまり、人々を引き連れて、 勝利の踊り を踊る。興奮が絶頂に達したエレクトラは地に崩 れ落ち、そのまま息絶える。 クリソテミスはオレ ストの名を呼ぶが、屋敷内にいるオレストからの 返事はない。

 

 日本での『エレクトラ』上演は何と18年振りと言いますから、それだけ上演されない演目なのでしょう。今回は昨年の『サロメ』が大好評だったことも上演されることになった切っ掛けの一つでしょう。ついでながらR.シュトラウス物オペラとしては、昨年2月に東京二期会の『影のない女』がコロナ禍で上演中止・払い戻しになったことは残念でした。以上の3オペラは比較してみるのも面白いですね。

 今回の『エレクトラ』はU-tubeで見ることが出来るので、ジュゼッペ・シノーポリ指揮「ドレスデン国立歌劇場管弦楽団」の上演を先程見終わりました。 タイトルロールは「ザビーネ・ハス」というソプラノでした。バイロイトでもゼンタを歌ったワーグナー歌手だったようですが、50歳そこそこで早世してしまったのは惜しいですね。キンキン声でなく強くも有り、ピアニッシモでもきちんと強さは保ち素晴らしい歌い振りでした。

 明日のガーキーさんの歌がますます楽しみになって来ました。

 尚、ベルリンフィルでは今後1年間の「ライブ中継」の予定が最近発表になり、全39演奏会の内、来年四月に『エレクトラ』が演奏会形式で演奏・ライヴ中継されます。指揮はペトレンコ、タイトルロールは、ニーナ・シュテンメという歌手です。39演奏会の内にはその他にも、個人的に、❝えー!この組み合わせの人達が演奏するなんてホント❞と必見とも思える演奏会が幾つかあり、これ等はデジタルコンサートホールで見ることが出来ます。映像もいいし、音声もいいし有料ですがこれはコスパがとても安いですね。このサイトはおすすめです。(念のため、自分は一切そことの利害関係は有りません)